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新入生

厳しかった寒さが緩み、春めいてきた。私たちはもうすぐ3年生。

3月の終わり、屋根裏組の新入生がやってきた。


「じゃっじゃっじゃっ!」


大きな声が聞こえる。

アミの出身地に近いところ出身のタカノハシくんは、基本的に声が大きい。

ビックリすると『じゃっ!』、もっとビックリすると『じゃじゃっ!』と言う。

あと、人の前を横切るときは体を屈めて、手を体の前で縦に振りながら『じゃじゃじゃ』か『さ-さ-さ』とか言って通り過ぎていく。『さ』と『さー』の中間くらいの長さののばし加減が微妙。

それに『じゃじゃじゃ』と『さささ』の使い分けが微妙でよく分からない。

アミに言わせると、ビックリとか申し訳ない気持ちだとか感謝とからしいけど、イマイチ理解できなかった。



それから、通いのおねーさまから『ちょすもっこ』にされる子が、私から新入生に変わった。

ホーザワサチちゃん、サッちゃんって呼ばれてる。細っこくてめんこい子。


「サッちゃん、スラーっとしてっこど」

「ぎゃー!」


おばちゃんがサッちゃんのお腹の辺りから鎖骨の辺りまで、サラッと撫で上げている。

あれ、乳に当たるから、初めの頃ってすっごいショックなんだよな。

撫で上げからの熱い抱擁。

うん……、がんばれ……。

助けてやれない、不甲斐ない先輩でスマン。



でも、一番ビックリしたのがコイツ。


「ねーちゃん、たまには手紙出してやれよ。ばーちゃん、寂しがってたぞ」

「……はい」


すぐ下の弟のコウだ。

全然帰省しなかった2年の間に、なんか目線が同じ高さになってるし。

コウは私と違って黒目で、眼鏡なんかは必要ない人だ。

私の家族で目の色が違うのは私と祖母だけ。


「これ、ヨウとばーちゃんと母さんから」


ヨウと言うのは、私たち3人兄弟の『バヂっこ』。

渡された袋の中身はジャムの瓶と母さんお手製のおかきだった。

ジャムは祖母とヨウで作ったらしい。おかきには小腹がすいたら食べなさいってメモが付いてた。

はい、弟2人との生存競争に負けないため、よく食べる子だったからなー自分。母さんが心配するのも無理はない。


「えー! 何!? 弟くん、リウと似てる~」

「ホントだ。ウノさんとそっくり」


屋根裏組の面々が騒いでいる。


それと「伝説のウノさん」の甥っ子が男子寮に入るってことで、寮監さんや先生方も戦々恐々としているらしい。

まぁ、私が大人しい学生だったので、コウは叔父ほど大暴れはしないだろうという予測もしてるらしいけど……。

思わず遠い目になるってもんよね。

叔父の伝説は、叔父だけじゃなくコマツ先生の所為でもあるんだけど、コマツ先生は今は薬草園のみで奇行を繰り広げてるので、あまり脅威に思われてないし。

……叔父が不憫だ。


コウはまだ、「伝説のウノさん」の話を知らないから、あとできっと驚くだろうなぁ……。



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