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すみる

短いです。

いつの間にか冬。

この学校は小高い丘というか小さい山の中腹くらいにあるので、平地より冷え込みが厳しい。


「おはよう。寒いね~」

「おはよー」


朝ご飯の準備のために厨房へ向かう。外は霜が降りて、うっすらと白く見える。


「ストウさん、おはようございます」

「おはよ。卵が届いてっと思うがら、中さ入れてけで」


食堂のおばちゃん挨拶して指示をもらう。いつも厨房の戸口の外に卵が入ったケースが農場から届くので、それを厨房の中に入れる。


「今日は卵焼きにすっから」


そう言われて大きなボウルに卵を割り入れる、と……。


「ストウさん! 卵、半分『すみ』でだよー!」


『すみる』と言うのは『凍みる』と書く字の通り、凍るという意味だ。ちなみに高野豆腐は『すみ豆腐』という。

あまりの寒さに卵の中身は半分凍っていて、半分は普通の白身と黄身だった。


「あら、んで、しばらく置いといて。竃の近ぐさ置げば『ほどる』がら」


『ほどる』というのは『あたたかい』とか『あたたまる』とかそういう意味の方言だ。

しかし、卵って凍るんだなーと驚きを隠せない。あのまま卵かけご飯とかしたら、かき氷みたいにシャリシャリしそう……。あ、炊きたてご飯なら少しは解けるのかな?


その間にも味噌汁の具を切って、昨夜から仕込んであった煮物を煮て……と準備は進む。ご飯はストウさんの担当だ。


「おばちゃん、卵とけたよー!」

「んで、味っこして卵焼きにして~」


カイがストウさんに報告して、出汁と醤油を少し、あと隠し味に砂糖なんかを入れた。チャカチャカと卵を混ぜる音がする。

卵焼き用のフライパンが5つほどあって、それを5人で分担して卵を焼いていく。ノマも1年生の頃から見たらだいぶ上達した。2年生から入ったお嬢はまだまだだけど。


「いや、しかし、卵って『すみる』んだね~」

「んだがら! びっくりしたなぁ」


盛り付けをして一段落したところで『はなしかだり』をする。『おしゃべり』って意味の方言だ。

ホントに、卵が凍るなんてビックリだ。


「冬は早ぐ来て、卵は中さ入れどかないとダメだなぁ」


今日の結論はそこに尽きる。



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