表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/78

ちょすもっこ

中盤くらいに「お姉さま(おばちゃん)」によるセクハラのようなものがあります。

苦手な方は回避してください。

恐る恐る職員室の戸をノックする。

「失礼しまーす」

おっかなびっくりお辞儀して入室。

顔を上げたら、広い職員室の隅っこの方からコマツ先生が手を振っていた。


「ウノの姪っ子ちゃん、ウノは元気?」

いや、叔父さんとは入学式以来会ってないし、そんなの知りませんけど?

「なんだ、ウノと連絡取り合ってないんだ~」

残念そうな口ぶりだけど、顔はニヤニヤしてて残念そうじゃないっすよ。

「で、本題はなんですか?」

「うん、今度定期試験あるよね?」

「はい」

確か、6月の終わりに試験があったはず。

「分かってると思うけど、そこで学年5位までに入らないと、学費免除にならないから」

あー、そういう話か。

「屋根裏組だと勉強時間とかキビシイかもだけど、がんばって」

「はい」

定期試験は年に4回。6月末と9月後半、12月中旬、3月初めだ。

学費免除は申請しただけじゃダメで、学業成績とか鑑みて決定される。

入学試験では私は2位だったらしく学費免除が通ったけど。定期試験での成績維持もしなくちゃならないのか…。

もちろん、実習だって気を抜けない。

かと言って屋根裏組の仕事だって手を抜けないし。

これは授業で覚えられることはしっかり覚えて、部屋での自習の時間を有効に使わなきゃ。

家族の反対を押し切ってこの学校に来たんだから、余計な負担はかけたくない。

私は決意を固めるのだった。



 ☆ ☆ ☆



ところで最近、昼に通いの「お姉さま」たちの中に困った人がいることに気がついた。


「あら~リウちゃん、スラッとしてイイねぇ~」

とか言いながら、サラッとお腹から鎖骨のあたりまで撫で上げる「お姉さま」。

もちろん、私のなけなしのムッむっむ胸も、腹から鎖骨までの間にあるわけで…。

最初に触られた時は衝撃だった。

昼の食堂の手伝いは屋根裏組の学年ごとに代わりばんこだから、毎日じゃないことだけが救いか…。


屋根裏組の先輩方の話によると、あれでもあの「お姉さま」はだいぶ手加減しているそうで。

もっと昔(10年くらい前?)には、良いと思った娘をギュッと抱きしめて『ちょすもっこ』にしていたらしい。


『ちょす』は『触る』という意味の方言で、『もっこ』は『おばけ』という意味だが、『ちょすもっこにする』と言うと『もみくちゃにして触りまくる』というイメージ。


『ちょすもっこ』にするのはニャンコくらいにしていて欲しいものである。

…と言っても、今はサラッと撫でるくらいなのだから、だいぶ被害は減ったと言えるのかもしれないが。

2年生と3年生にもお気に入りの娘がいたらしくて、でも先輩方の成長(特に胸)とともに触られる回数が減ったらしい。

ソコですか?ソコが育ったら興味はなくなるんですか「お姉さま」。趣味がちょいと特殊過ぎやしませんか???

他の「お姉さま」方はカイを愛でて喜んでいるのに…!

「今日のお茶菓子は、カイくんが作ってくれた(・・・・・・)生地でホットケーキにすっから」

「きゃー」

とか言ってて、なんか平和な感じなのに!

あの「お姉さま」、ホントは中に中年のおっさんが入ってるんじゃあるまいか。



 ☆ ☆ ☆



昼の食堂の手伝いがあった日は精神力がガリガリと削られている気がする。

部屋に戻ってきて自習しようと思うのだが、ついついランプの火を眺めてボーッとしてしまう。

あぁダメだ。気持ちを切り替えないと。コマツ先生からもらったミントティーでスッキリしよう。


寮の各階にある給湯室でお湯を沸かす。マグカップにミントティーをいれて、気分転換。

コマツ先生、あんなだけど香草とか薬草の扱いは上手いよね。…なんて考え、飲みながら自習する。


「リウ~、お風呂の時間だよー」

「一緒に行こう」

タキとアミが誘いに来た。

もうこんな時間か。けっこう集中して自習できたみたいだ。

屋根裏組は入浴時間の最後のあたりに入浴し、終わりに風呂掃除をすることになっている。

当たり前だけど男風呂は男子で、女風呂は女子だ。

更衣室でこっそり屋根裏組の皆さんを観察すると、やっぱり私が一番発育不良かも。

身長だけはあるんだけどな…。

いやいや、これから育つんだから!大丈夫!と思い直し、湯船にどぼんと浸かった。


いい湯だ。

「はぁ~」

のびのびと大きな湯船に浸かって溜息をついていると、先輩方が声をかけてきた。

湯気があるから、眼鏡無しでもたぶん目の色はごまかせてると思う。

「あのおばちゃん、娘さんを若くして亡くしてるから、つい雰囲気が似てるコにかまっちゃうのよ」

「許してあげてね」

…そんなヘビーな過去があったとは。娘さんの代わりみたいな感じで触ってるんだろうな。

うん。ちょっとついていけないトコもあるけど、そう考えれば少しは許せるかも。

また、明日からがんばろう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ