第6話 四月の政変 (1)
お待たせしました。
4月13日。快晴ところにより……
「おい、今のは何だ!?」
「あれを見てみろ、あの煙は……?」
霧ならぬ爆煙と言ったところでしょうか?
轟く爆音に浮き足立つ後輩達と……
「ふふふふ……やってくれたわね……」
思いっきり楽しそうに笑っているグィネ。
皆、呆然と立ち上る煙に気を取られていて、グィネが零した声には気付いていません。
今日は、新1年生最初の実習日。
ここ、王都キャメロットの南へ1日ほどの位置にある森、通称『ゴブリンの森』において、新1年生が無事に人型に分類されるモンスター、ゴブリンを自らの手で討伐できるよう、2年生を引率役とする恒例行事が行われています。
貴族の子弟が護衛も付けずにモンスターと戦闘する実習授業があるのは、偏に貴族だからだといえます。
そもそも、貴族というのは領地を与えられる代わりに、その地の防衛及び戦力の提供を義務付けられた軍務制度がはじまりです。
領地防衛の為に、陣頭に立つ必要に迫られる事もあるでしょう。
その際、最低限自衛できるように……というのがこの実習の趣旨です。
では、何故護衛が付かないのかと言えば、使用人と同様に護衛という名の暗殺者が(以下略)という訳で、各家の専属護衛を付ける事は禁止されました。
その為、各実習地は学園の私有地として扱われ、学園が雇用した人間によって管理され、モンスターの数も適度に間引きされて安全を確保するようになりました。
更に、実習の成績によって行ける実習地が開放されるので、実力に見合わない無茶な実習は出来ないという事です。
……それでも、無茶をする人間は少なからずいるので、人の手で管理している実習地であれば、学園が雇用している管理人達がコッソリと尾行して、いざという時には救助してくれます。
まぁ、精々LV30以下で行ける範囲ですけどね。
とはいえ、新入生の最初の実習となると、初めてモンスターと対峙するという生徒も少なくはありません。
加えて、一つの実習地で一学年全員分の面倒を見るとなると、とても常駐している管理人では手が足りません。
そこで、2年生の中でも実習の成績優秀者を引率役として付ける事で、最低限の安全を確保しているという訳です。
私達生徒会はこの恒例行事の運営本部として転送魔法陣の近くで陣取り、現在は実習を終えたパーティの帰還を待っているところでした。
そんな中、お腹の底に響くほどの爆音が轟き、遠方の森から黒い煙が立ち上っています。
火の手が上がっていない事から、火事の心配はなさそうですが……あれ、生きています、よね?
「三人で確認に行って来て下さい」
「「「はい!」」」
何が起きたのか分かってはいますが、これはあくまで私達は関与していない事態。
という建前の為、2年生の役員達を現場に向かわせます。
……これ、本来なら会長であるグィネが下さなきゃいけない指示ですよ?
さて、何が起きたのかというと、約1週間前の入学式当日まで遡ります。
☆
「あーーーーー! やっぱりムカツクーーーーッ!」
今日も今日とて怒り心頭な幼馴染が、その有り余る感情を発露させています。
まぁ、何が起きたのかというと、卒業式と同様の事が、先程まで行われていた入学式において、卒業式を上回る勢いで起きたからなんです。
それも、今回の入学式は非常に間の悪い事に……。
「だ・れ・が! アンタみたいな気持ち悪い男の妻になるかーーーーーーッ!」
私達と年齢の近い公爵家の次男が入学してきたんですよね……。
しかも……。
「新入生代表の挨拶で、個人的な話をするんじゃないわよーーーーーーーーッ!!」
はい、在校生代表の祝辞を生徒会長であるグィネが担当し、その答礼とも言える新入生代表の挨拶で……まぁ、甚だ個性的な理想的展望を滔々と語って、途轍もなく好意的な見方をすれば愛の告白?とも取れなくもないような、やっぱりそれはないですねー的な挨拶を……そうですね、ぶちかまして下さいました。
……ごめんなさい、がんばって上品に表現しようとしたんですが、最後まで保ちませんでした……。
勿論、それらは全て彼のアドリブです。
提出されていた真っ当な挨拶とは違います。
あれですね、入学式という公けの場で大言壮語し、既成事実とさせてしまおうという魂胆でしょう。
……そういう手法が流行っているのでしょうかね?
まぁ、そんなこんなで、式典終了後は前世におけるマスコミのように雀さん達が私達を取り囲もうとして、暴動寸前までいったんですよねー……。
パッと見たところ、囲みに来たのは反主流派の出席者ばかりで、その狙いが透けて見えましたねー……。
つまりは式典後、グィネがノーコメント、或いははっきりと拒絶したとしても、囲んでいた雀達が「殿下は口も利けないほど照れていた」とか、「恥ずかしげに頬を赤らめて否定なさった」とチュンチュン囀れば、事実が捻じ曲げられ、『虚構の真実』が出来上がるという寸法です。
今更ながら、『情報』というものの恐ろしさが身にしみてきます。
散々、キャストンさんに言われていた事だったんですが、まだ私の認識が甘かったという事ですね……。
「グィネ。ここで叫んでいても、何も解決しませんよ」
「わかってるわよー……」
「事がこうなると、私も他人事ではなくなるんです。何か対策を考えないと……」
「他人事だなんて酷い! 私達は一蓮托生じゃなーい」
どうにか、ふざけるくらいの余裕は取り戻してくれたみたいです。
「分かってますよ。だから、一緒に対策を講じる必要があるんでしょ?」
さて、何が起きているのかといいますと……。
まず、現時点で私もグィネも婚約者がいません。
次期女王と、それを支える二大公爵家の片翼たる次期女公爵に配偶者候補がいないという事です。
本人達がどう言おうが、これが厳然たる社会的事実です。
当然、それでは問題があるので、早急に新たな配偶者候補、つまりは婚約者を立てるよう求められます。
人は植物でもなければ単細胞生物でもありません。
父親と母親の間に生まれるものですから、その点で後継者に不安があるようでは格好の標的とされます。
そして、以前にも申したように、この世界では自由恋愛を是としつつ、こと王侯貴族の婚姻となると家格という問題が出てきます。
つまり、第一王女であるグィネならば下は侯爵家まで、私ならば伯爵家までという事になります。
では、私達の婚約者足り得る家格の男性はいないのかと問えば、いるにはいます。
ただ、私もグィネも、婚約者不在となった背景にはそれぞれ複雑な事情があるため、同じ主流派の貴族家は遠慮してくれて、子弟を売り込みに来るような事はありません。
まして、私達に直接売り込みに来るような不躾な真似はしません。
きちんと、王家や公爵家を通して打診する程度でしょう。
ですが、対立派閥である反主流派はここぞとばかりに、子弟を婚約者に押し込もうと動いてきたという訳です。
当然ながら、家を通して申し込んでもお父様達が取り合うはずもないので、本人達が私達に直接アプローチする事で『自由恋愛』という免罪符を得つつ、数だけは多い反主流派の情報操作により、民衆に意図的な情報を植え付けて既成事実化させようというのでしょう。
拙い作品にお付き合いくださり、ありがとうございます。
ポ○モンGO……社会問題にまでなってますねー。
正直、運転中にまでするか?
……と思うのですが、命を捨ててまでやりたい、人を殺してでもやりたいと思わせるゲームを作れるというのは、趣味とは言えエンタメ発信者としてはSO☆N☆KE☆Iすべきなのでしょうかね~。
因みに、私はガラケーユーザーなので、見向きもしてませぬ。
というか、ポケGOよりFGOがやりたい……。




