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第8話 徹底抗戦 妹 VS 兄

フレア編最終話。

今回も、普段より長めです。


それと、今回は色々とR-15です。

ご注意下さい。

 あの事件から約二ヶ月が過ぎました。




 ブリジットさんのとんでも発言の後、終始お兄様が押されるという非常に珍しい事態がやや続き、お兄様達は王城に向かいました。

 私はと申しますと……キャラ被り(グィネヴィア)達の事をお兄様に伝えるのも忘れるほど、茫然自失となって寮の自室で一夜を過ごす羽目に……。


 お兄様も年が明けるまで王城で行われる会議に駆り出され、そのせいで彼らへの対処が後手に回りました。

 一応、お兄様がグレイシアに手紙を出したようですが……まぁ、彼女が役に立つはずもなく、案の定挫折知らず(ランスロット)はポンコツ王子を助けようと救援(懲罰)部隊について行きました。


 おかげで、お兄様はスレイプニル(ニィル)という手札を晒す事に……。

 まぁ、『自力で飛行魔法が使える』という札よりかは、状況的にマシでしょうか?


 魔法が使えないとされているお兄様が、自力で飛行可能な魔法を行使できると知られれば、当然その魔法式を教えろという意見が殺到しますし、他の魔法式もあるのではと探られます。

 それに比べれば、スレイプニル(神獣)を従えている……という方が権威付けされる分、いくらかマシです。


 どちらにせよ、お兄様を手に入れようとするバカが後を絶たずに出てくるのですから。



「おい、お前! あの神獣騎士とか持て囃されている奴の妹だな? 喜べ、お前を僕様のつばげふッ?!」


「「「ぼ、坊ちゃまーーッ!?」」」



 何やら人語を話す虫がブンブンと集って来たので、軽く殴り飛ばしておきました。

 冬だというのに、虫がやたらと湧いてきますね? 異常気象でしょうか?


 しかし、こうなるとガラティーン公爵がお兄様を婿養子にと画策するのは、こちらにとっても好都合かもしれませんね。

 彼と同じ主流派に属する貴族達は、お兄様にちょっかいをかけないように彼が働きかけるでしょうから。


 まぁ、逆に反主流派貴族や、教会派貴族なんかはお兄様を獲得しようと躍起になるでしょうけど。


 何せ、我が家は領地もなければ役職もない、しがない下級官吏の男爵家です。

 当然ながら、中央で華々しい活躍を果たす主流派には属していません。

 それどころか、先祖の功績(領地)に胡坐をかく無能揃いの反主流派でもなければ、出世の金蔓(領民)を持っている教会派でもありません。

 何処にも属せない(悪い意味での)中立派貴族です。あ、因みに、何処にも属さない(良い意味での)中立派貴族は、この国に三家だけある辺境伯家のみです。


 自陣営に取り込み可能と見做される我が家に、兄のような傑物が現れれば、それは形振り構わず獲得しようとしてくるのも頷けます。


 が、それはそれ、これはこれ。

 彼らがこちらの心情や事情を斟酌しないように、こちらも彼らの事情を慮る必要など皆無です。

 具体的にいえば、例の事件の被害者を使ってお兄様を取り込もうとか……街ごと消し去りますよ?





 と、いう訳でやって参りました。

 本日はここ、えー……名前は忘れましたが、反主流派の伯爵家が所有する王都屋敷。その屋根の上にお邪魔しております。


 名前は覚えていませんが顔はばっちり覚えています。

 あのショッキングピンク女の家です。


 冬は日が沈むのも早く、屋敷の周囲は若干の警備以外、全員屋内にいるようです。

 知覚領域を広げ、屋敷内部の生命反応を調べると……いました。

 一つだけ、気が何かに汚染されている女の反応があります。


 え? これですか?

 気功をある程度使えるようになれば、こうやって他人の気を感じ取る事も出来るようになります。


 密偵さん達も普段展開しているこれで見つけています。

 彼らは身体技能としてある程度気配を消す事ができますが、体内魔力にはオドと気の二種類がある事を理解しない限り、オドだけを操作して隠蔽してもすぐに見つけられます。


 普段は自分の周囲10mほどを知覚していますが、今回は屋敷全体を探る為に一時的に拡大しました。

 都合よく、彼女の周辺には誰もいないようなので、早速移動しましょう。


 屋根を伝って、窓の上まで来ました。

 何やら中から声が聞こえますが……はて、生命体の反応は一人分しかありません。

 お兄様並みに気を隠蔽できる手練と会話していると?


 髪が垂れ下がらないように注意しつつ、窓の上から逆さまになって静かに中を確認します。

 すると……。



「ぁ……ん……」



 うぇー……。

 いや、まぁ、これからする事を考えれば、ある意味好都合かもしれませんけど……はぁー……。


 まぁ、何ですか。彼女もあのボロ雑巾どもに狙われるくらいには美少女ですからね。

 男性諸氏にとっては、嬉しい光景かもしれませんわね。



「キャス、トン……さま、ぁ……」



 おいこらぁぁぁッ!?

 なにを勝手に私のお兄様でいたしているんですか?!

 それをしていいのは私だけですわッ!!



「んぁ……いけま、せん……ガウェインさまぁ……」



 おぅっふ……こ、これは強烈な一撃をもらってしまいましたわ……え、どういう事態ですの?



「ぁぁ……ケイさまに……ん、パーシ……さまも……わたくしの、ぁ……帰って、きてんん……くれ、ぁ……まし、たのね……」



 うわー……何だか、見えちゃいけないものが見えちゃっているようですわね……。

 しかし、あの3クズとお兄様を同列に語るとは……。



「んぁ、でも……ダメです、わ……わた、くしはぁ……キャスト……さまのぉ……まに、なっ……て、んん……おうひにぃ……ぁぁッ」



 『王妃に』ですか……まぁ、そうですね、お兄様がその気になれば、この国をひっくり返して、ご自身が王になる事も可能でしょうしね。

 反主流派は神獣騎士(お兄様)を手に入れて、王権の奪取まで視野に入れているという事ですか?

 尤も、そんな面倒な事は、お兄様が一番望んでいない事なのですが。


 或いは、彼女の勝手な願望なのでしょうか?

 と、申しますか、何だか、私の妄想とも合致する部分があるだけに、非っ常にムカツキます!



「ぁぁッ! ぁぁぁッ! もっと、もっと下さいッ!! キャストンさまッ! もっとわたくしを愛してッ! わたくしだけのものにィッ!!!」



 あ……これはダメです。これは本当にダメです。これだけは赦せません。

 ブリジットさんの『ただ、ボク達を愛して欲しい』という、静謐な、それでいて痛切な祈りの込められた、あれを聞いた後では看過できません。



「風よ」



 防音の結界を起動させ、窓をぶち破って室内に侵入します。

 お兄様ならばこの程度の結界、指を鳴らす程度で展開してしまいますが、私ではどんなに頑張っても起動句くらいは必要になります。



「だ、だれ?!」


「こんばんわ。ご機嫌麗しいようで、大変結構ですわね」



 チッ、私よりある……。

 慌てて胸元をシーツで隠す……えー、っと……うん、ショッキングピンクさん。



「あんたはッ! 誰か! 侵入者よッ!!」


「無駄ですよ。大声を出そうが、大暴れしようが、外には一切『振動』が伝わりません」


「くっ!」



 逃げようとしますが――



「きゃっ!?」



 足を縺れさせてすっ転んでいます。

 まぁ、足腰立たないほど熱心に励んでいらしたので、それもやむをえないかと。


 それでも、這いながら扉を目指しています。その根性は、もっと他のところで発揮して頂きたかったですわ。

 しっかし……同性である私からしたら、非常に萎える光景ですわね……。



「きゃあ!?」


「はぁー……気は済みましたか?」



 髪を掴む訳にもいかないので、腰を抱き上げてベッドに放り投げます。



「う、く……あんた、私にこんな事をして、ただで済むと思っていないでしょうねッ!」


「へー、ただでないのなら、おいくら頂けるのでしょうか?」


「なんであんたにお金を支払うのよ!」



 そんな事を言われましても、ねぇ?

 真っ裸のそれなり美少女程度に凄まれましても、ねぇ?



「私を誰だと思っているの? 私こs」

「あ、そういうのは要りませんので。頭の中までショッキングピンクな方のお名前とか、興味がありませんもの」


「くきィィィィィッ!!」



 はぁー、やれやれですわ。

 これだから、自意識が肥大化しちゃってる女は手に負えませんの。



「私はあんたの義姉よ! あんたは私の義妹になるんだから、私に逆らうな!!」


「……は?」



 ナニイッチャッテンノ、コノコー……。

 アナタハワカリマス? ワタクシハサッパリデスワー……。



「ふん。流石は恥も知らずに平民に媚を売る雌犬ですこと。三大美姫などと大衆にはしゃがれていい気になっているようですけど、真に持て囃されているのは私ですわ。何故なら、私は沢山の殿方が求めて群がるほどの存在。この差が分かりまして?」



 え? えー?

 あー……あれですか? 辛い現実から逃避する為に、心が耐えられるようにご都合解釈するとかいう?



「そんな私が、あんたの芋兄と結婚してやると言っているのよ! あの男、私の手を握る事くらいしかできないヘタレですけれど、我が伯爵家の婿ともなれば王になれるそうですからね……精々私の為に使い潰して差し上げますわ」



 よし、殺そう。うん、ちょっとくらいは哀れんでいたけど、もうどうでもいいや、この女。



「言いたい事はそれだけですか?」


「んんッ!?」



 好き勝手に喚いていたバカ女の顔下半分を右手で掴み、左手で両手を捕まえて押し倒す。

 バカ女が抵抗した拍子に、その脚がサイドテーブルにぶつかり、上に載っていた小瓶が転がる。



「うん? なんですか、これ?」



 嫌な予感がして、口元を塞いでいた右手を離し、小瓶を確認してみる。



「……正気、ではありませんわね、コレは……」



 口を解放したせいで何だか色々と喚いていますが、最早耳を傾ける必要もありませんね。

 ま、魔人薬ではないとだけ申し上げて起きます。

 この際です、素っ裸なのと併せて、コレ(・・)を誤って大量服用した事にしておきましょう。



「んんッ?!」



 ショッキングピンクの顔中に、小瓶の中身をぶちまけて、再度口元を塞ぐように右手で掴む。



「大丈夫。次に目が覚めた時には、色々な柵から解放されていますよ。それでは、御機嫌よう」



 そう告げて、私は体内にある気のほぼ全てを、彼女の口へ一気に流し込みます。

 残念ながら、同性間では房中術は使えません。

 なので、一切調整されていない気が大量に流れ込み、彼女の中にある彼女自身の汚染された気を押し流します。



「んん! んんんんーーーッ!!」



 その結果、行き場を失った彼女の気は出口を求めて、排出されやすい形(・・・・・・・・)で体外に押し出されます。

 まー、つまりですね、魔人薬で汚染された気が、黒いぶよぶよとした物質となって、彼女の下半身をこー……うん。粗相したみたいになります。



「っぐ……っはぁー……はぁー……」



 あー……これは……なるほど、本当にこれは危険ですね。

 気を一気に流したせいで、その通り道である経絡がズタズタになっています。

 考え事をするのも、非常に億劫です。


 私がやったのは単純な事。

 自分の内気功を他人の内に叩き込むという、気功における絶対の禁じ手です。

 あー、破壊目的ならむしろありですよ?


 一応、確認してみると、彼女は息をしていますが……おそらく、精神が仮死状態に陥っています。

 肉体そのものには、そう影響はないようにしたので、遠くないうちに目覚めるでしょうが……その時には全くの別人、まっさらな赤ん坊みたいになっているでしょう。


 ま、そんな状態になったこの子を、この家の人間がどうするかは分かりませんが……これで、お兄様がこのショッキングピンクに煩わされる事もなくなります。


 さて、目的は果たしたので、あとは見つからない内に、とっとと離脱……あ、そうだった、窓をぶち破ってたんだった……。

 うー、構造も壊れ方も単純だから、窓ガラスと窓枠に修復魔法を一回ずつかければ簡単に直るけど、気を殆ど使い果たした状態だと、本当に億劫ですねー……。




 その後、何とか窓を直し、結界を解除し、屋敷を離脱しましたが……そこで気をほぼ使い果たしてしまいました。

 早く自室に戻って、少しでも回復に努めないと……。



「おい貴様ッ! さっきはよくもやってくれたな!」


「は? どちら様でしょうか?」


「むっきぃぃぃぃッ!!」



 えー? なんなんですの?

 人目に付きたくないから、人通りの少ない路地を選んだのですが……こういう道にはやはり変質者が付き物なのでしょうか?



「妻にする前に、どっちが偉いかその身体にたっぷりと教えてやる! おい、お前達!!」


「へっへっへ」

「坊ちゃん坊ちゃん」

「俺達にも楽しませて下さいよ」



 子分らしきチンピラがワラワラと現れて、包囲してきます……まったく、普段なら跡形もなく消し飛ばすところですが、今の状態だと魔法一つ使うのも難しいですわ。

 これは、長期戦を覚悟……あ。



「おいおい、お前達、あの神獣騎士とかいうのを引き入れるまでは壊すなよ?」


「それはこの嬢ちゃんの心がけ次第でさぁ」

「坊ちゃんこそ、また拷問かまして壊さねーで下さいよ?」

「ちげーねぇ」


「「「「あっはっはっは」」」」

ドパン

「「「は?」」」



 私を囲んでいたチンピラの一人が、下半身を残して消滅(・・)しました。

 あー、いえ、正確に言えば、上半身が跡形もなく吹き飛ばされました。

 何をどうすればあんな風に、衝撃が一方向にしか飛ばないようにしながら、人間を破裂させる事ができるのでしょうか?



「ぎゃぁぁぁぁぁぁッ?!」


「「ぼ、坊ちゃん!?」」



 その衝撃は、坊ちゃんと呼ばれている男の立っている方に向かって伸びています。

 見たところ、破裂したチンピラの骨の破片が無数に突き刺さっているようです。



ドパン

「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!」



 更に、もう一人のチンピラが先程のチンピラと同様の運命を辿ります。

 当然、その小さな骨の破片は他称・坊ちゃんに命中します。



「ひぃッ?!」



 それを見た最後のチンピラ。他称・坊ちゃんとの間に私を挟んでいたおかげで、まだ標的になっていなかった男が逃げ出そうとしますが……。



「がぺ」



 数歩も進まないうちに、喉を押さえて両膝を折って地に突きます。



「あれは何をしたんですか?」


「ん? 横隔膜を動かしても、肺が伸縮しないように穴を開けてやった」


「あちらは?」


「あっちは衝撃が拡がらないように、素早く思いっきり殴っただけ。技術的には大した事はしていないぞ?」



 と、なんでもない事のように言ってのけたのはお兄様です。



「さて、言いたい事は色々とあるが、まずはあの喧しいのを片付けようか」



 そう言って、お兄様は他称・坊ちゃんの傍まで進み――



「さてさて、南方の特にこれと言った特徴もない小領の子爵家四男坊様が、自分如きに何の御用でしょうか?」


「いたい……いたいぃぃぃ……」


「はぁ、なるほど、遺体ですか」



 そう曲解すると、あっさりと他称・坊ちゃんを遺体にしてしまいました。



「少々時間がないもので、遺体は後日ご実家にお届けいたしますよ」



 非常に強力なモンスターに襲われたかのような様相を呈する周囲を、お兄様が一通り片付けている内に、胸部に穴を開けられたチンピラも窒息死していました。





「さてと、お説教は後回しだ」


「あぅ……」



 うぅ、やはり、お説教は確定ですか……。



「女の子が体内をボロボロにして……今はとにかく眠りなさい」



 そう言うと、お兄様は私の頭を撫でて……うぅ、それは卑怯です、お兄さ、ま……。





   歌が聴こえる

   懐かしい声が不思議な詩を奏でる

   あぁ、これは子供の頃に歌ってもらった――



 目が覚めると、そこには……。



「おはよう」



 お、おおおおおお兄様の顔が!



「よく眠れたようだな」



 う、うわーーーッ!?

 お兄様に間抜けな寝顔を見られてしまいましたわッ!

 恥ずかしいーーーー!!



「その様子だと、もう大丈夫みたいだな」



 え? あれ?

 気の通り道である経絡がほぼ治っています……これは……まさか!?



「お兄様! もしや、『梔子』を私に使ったのですか!? なんでそんな事を?! お兄様にはオドがないのですよ!?」



 私なんかを圧倒するほどの才気と努力、経験を持ちながら、何故お兄様が世間一般で出回っている魔法を使えないのか。落ちこぼれなどと言われるのか。生活魔法ですら使えないのか。

 その理由がこれです。


 お兄様には、体内魔力のうち、オドが全くありません。

 従って、オドの使用を前提とした世間の魔法は一切使えません。



「ただでさえ二十六人もの女性に、お兄様の命である気を分け与えているのですよ? 私なら気を使い果たしてもオドで生命維持が出来ます! 気功も使えるので自力で回復可能です!!」



 そして、気は生命の根源です。

 普通の人ならオドである程度の代用は出来ますが、お兄様にはオドそのものがありません。

 気を使い果たしたら、戦闘どころか生命維持すら不可能です。


 その上、アイリーンさん達に房中術の第二段階である『梔子』を使っているのです。

 あれは、互いの気を交換する『手合わせ』と違って、房中術の使えない相手には、一方的に気を譲渡する事になります。つまり、お兄様は文字通り、命を削って彼女達の治療をしているのです。



「それなのに、妹の私にまで……」



 どうせなら、意識のある時にして欲しかったですわ!



「それなら大丈夫だよ。何処かのアイドル(天使)が、一部の患者に裏事情を話しちゃったからな。おかげで、我が家には元上位貴族のご令嬢が二人も、見習い使用人として居着いちまった。親父も大変だ」



 そう言って、お兄様は私の頭を撫でてくれます。

 うぅ……こ、この程度で、ご、誤魔化されません、わよ?



「それに、俺が使ったのは『梔子』ではなく、その更に上だ」



 …………え?

 更に上?

 二の上は三であって、房中術の第三段階と言えば……ほぁ?!



「『神交法』……房中術における一つの到達点だな」



 ………………………………え?



「肉体に触れず、淫念を持たず、相手を父母の如く愛せ……という方法でな、『体交法』よりも効果が高いんだよ。だから、俺の負担は一切ない」



 …………………………………………それはつまり?


「まぁ、こんな方法、流石に女がいまいち苦手な俺でも、妹のお前にしか出来ないがな。ん? どうした?」


「……お……」


「お?」


「お兄様のバカーーーーーーーッ!!!」


「何故に?!」


「バカバカバカバカバカバカバカバカーーーーーッ! うえーーーーーーーん!!」


「ちょっ?! フレアさん? なんで泣くの!?」



 うぅ……期待させておいて、この結果はあんまりです。

 今回ばかりは徹底抗戦です!

 断固たる態度で、私のお願いを聞いてもらいます!!



「知らない知らない! お兄ちゃんなんか嫌いッ!!」


「ぐはっ……」



 うぐぅ……演技とは言え、お兄様に嫌いだなんて……経絡をズタズタにするより効きます……。



「ど、どうしたら、許してくれるのかな?」


「ぐすっ……歌って」


「え?」


「子供の頃に、歌ってくれた子守唄を、聴かせて下さい……そうしたら、許してあげます……」


「子守唄って……どれだろ?」


「あの、不思議な歌です」


「あぁ、あれか! いいよ」



 そう言うと、お兄様は私の頭を撫でながら、静かに旋律を紡ぎ出します。

 どうやら、実家のお兄様の部屋で寝かされていたようで、何事かとアイリーンさん達が様子を見に来ていました。

 まぁいいでしょう。折角なので、彼女達にもお兄様の素晴らしさをお裾分けして上げます。



   歌が聴こえます

   記憶にあるものより低い声が不思議な詩を奏でる

   子供の頃に歌ってもらった、私だけの子守唄がいま――

拙い作品をここまでお読みくださり、ありがとうございました。


次回からは三人目の視点となります。

残念ながら、更新が追いついてしまった為に、一週間ほどストックを溜めさせてください。


その代わり、オマケの蛇足話を活動報告に明日掲載します。

気が向かれましたらご覧下さい。

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