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第6話 蹂躙戦 妹 VS 姫騎士 VS Chara男

グロ注意。

『残酷な描写あり』は伊達ではありません。

 恐怖に駆られて突き出される短剣。逆手に構えていたのに、最大射程で突く為にわざわざ順手に戻すという無駄な手間がかかっています。

 そんな温い攻撃は避けるまでもなく、手首を捕まえ伸びきった肘に、籠手(ガントレット)に鎧われた拳を叩き込む。



「ぎゃげぇッ!??」



 肘があらぬ方向に曲がり、痛みに叫び声を出そうとしたので、拳を開いて手刀で喉を潰します。

 肉袋(あなた)が奏でるのは、肉の裂ける音と、骨の砕ける音で十分です。聴くに堪えない雑音は……今は(・・)いりません。



「どうしました? まだ右腕しか壊れていませんよ?」



 手刀で叩き込んだ衝撃を逃がすように、捕まえていた手首を解放します。

 いけないいけない。ついつい癖で、流れるように投げを入れそうになりました。



「ゲフッごふッ」



 壊された右腕は勿論、喉を押さえる為に無事な左腕も短剣を取り落とし、咳き込んで蹲ります。

 そして、追い詰めるかのようにゆっくりと近付くと、その体勢から左腕でナイフを投擲してきます。



「ぁッ!?」



 が、甘いです。

 闇の中、背後から射られた矢を投げ返せる私に、正面から投げたナイフが届くはずないじゃないですか。

 一応警戒して、柄に毒針が仕込まれていないか、確認してから掴み取って投げ返しました。


 流石に投擲用のナイフは矢と違って投げやすく、お返ししたナイフは肉袋の左肩に刀身の根元まで刺さりました。

 その衝撃で、肉袋は仰向けに倒れ込みます。



「ほら、どうしました? まだご自慢の脚が残っているじゃないですか。早く立ち上がって、勇敢に立ち向かって下さいよ」



 一向に起き上がってこないので、無防備に近付いてあげます。

 それでも何もしてこないので――



「おねむにはまだ早いですよ?」


「……ッ!? ァッ!!」



 突き刺さったナイフを踏んで上げます。

 すると、漸く反応があったのですが……。



「はぁ……男の癖にもう立てないんですか? 早すぎませんか? そこで転がっているブリジットさんの方が、もう少し頑張ってくれましたよ?」


「……ぇァッ!」



 みっともなく涙を流して、首を横に振り続けます。



「やれやれ、仕方ないですね」



 肉袋の傍にしゃがみ込んで、壊した右肘を正しい位置に戻してから、治癒魔法をかけてやります。

 この治癒魔法は骨折などに特に効果的ですが、一般には広まっていません。



「ァッ! ィッ?!」



 何故なら、壊れた箇所を時間が逆行するように、無理矢理治していく為、治る過程で負傷した時と同じような痛みを感じるからです。

 即効性、魔力の消費効率、後遺症が残らないなど、外傷の治癒魔法としては最高峰なのですが、いかんせんこの欠点の為に広まっていません。


 右腕の処置が終わったら、次は右大腿、喉と治していき、最後にナイフを抜いて左肩を治します。



「な、何の、真似だ?」



 治療の際に発生する痛みに、息も絶え絶え……と言った風情で尋ねられます。



「貴方がたと違って、弱者を嬲るのは趣味ではありませんの。どうせ逃げられないでしょうけど、精々足掻いて(・・・・・・)私を楽しませて下さい(・・・・・・・・・・)



 背中を向け、そう語る()。フッ、決まりましたわ。



「あ、ありがとう……この恩は、今すぐたっぷりと返してやんよ!!」


「危ない! 後ろ!!」



 倒れたままのブリジットさんが警告するものの、それはあまりにも遅すぎました。

 隠しナイフを取り出し、()の背中に突き立てる屑。



「ざぁんねんでぇしたぁ~。俺様はお前らみたいな頭の緩い女を嬲るのがだぁい好きでぇす。今日だけじゃねぇ、今まで散々苦労させてくれた礼は、そこのションベン臭ェチビともども、その貧相な身体にたぁっぷりと返してやるからな!」



 そう言いながら、人間の言葉を喋る獣はアイテムボックスから瓶を取り出します。中身は魔人薬でしょう。

 あれには興奮作用と五感の鋭敏化という、擬似的な催淫効果もありますから。



「その後、俺様を楽しませてくれた方を連れて、こんな国とはおさらばだ! まぁ、胸のでけーグレイシアやアイリーンを連れて行きたいところだが、貧相な胸で俺」―――グチャ―――「さまをたのし……へ?」



 幻影に騙されたバカの背中を貫手で貫き、胃袋を掴んでから腹を突き破ってやりました。



「あぺ?」



 そして、囀るゴミの胃袋を握り潰します。ほら、よく言うじゃありませんか。



「殿方の心臓(は・ぁ・と)を射止めるなら、まずは胃袋を掴めと……まぁ、こんな汚いハートはいりませんが」


「そぺ、おぺの、胃ィィィィィィッ??!」



 本当は空っぽの頭を握り潰して差し上げたいところですが、流石にそれをやると蘇生できませんからね。

 ショック死程度(蘇生可能な範囲)にしておきます。

 それに、ね?






「あ、れ? 俺、生きてる?」


「えぇ、あなたは死にませんよ。少々、胃は小さくなりましたが、だいたいは元通りです」


「は、はは、生きてる……生きてる! 生きてるぞ、俺ぇぇぇぇぇぇッ!!」



 目が覚めた肉袋が生きている事に驚喜しています。



「死体に治癒魔法は効きませんが、修復魔法はよく効くんですよね~」


「へ?」


「あとは、脳死する前に心臓を」



 未だ起き上がれない肉袋の心臓の上に、電撃を纏わせた拳を叩きつけます。



「ぎゃぁぁぁぁぁぁァァァァッ!!?」


「こうやってマッサージしてあげると、蘇生する……事があります(・・・・・・)



 間に合わなかったらその時はその時です。

 ですが、間に合ったので、もっとも~っと壊して差し上げます。



「言ったでしょう? 精一杯、泣いて叫んで足掻いて足掻いて抗って抗って抗って抵抗して抵抗して抵抗して抵抗して抵抗して抵抗して、私を楽しませて下さい、と」


「あ、あ、あぁッ……」


「さっきまでのあなたは、まだ諦めていませんでした。必ず隙を見つけて復讐してやると、その濁った目が語っていました。だから、隙を見せてあげたんですよ? 唾棄すべき屑野郎にまで()を見せてあげるなんて、私ってば本当にアイドル(偶像)ですね」



 この男が木属性を持ち、風魔法が得意であるように、私にも属性があります。

 それが『光属性』です。

 この光属性は希少性が高く、同時に非常に強力な属性でもあります。

 何故なら、他の5属性が得意とする魔法もある程度適性を持つ、汎用性の高い属性だからです。……まぁ、器用貧乏とも言いますが。


 私が使った魔法は実に簡単なもの。

 土魔法で土人形を作り、それに光魔法で私の幻を被せただけです。


 あとは夜陰に紛れ、身体能力で気配と足音を殺してバカの背後に回っただけです。



「こ、ころ、ころし」

「あらあら、この期に及んで『殺してやる』ですか? まぁ、恐いですわ。そうそう、恐いといえば、ご存知ですか?」

「てく、へ?」


「最近、行方不明になる貴族出身の冒険者が多いそうです。街の外に出た記録はないのに。確か……皆さん、あなたと同じ次男坊三男坊で(爵位を継げず)、第一騎士団にも入れなかった方ばかりだそうですが、ご存知でしたか?」


「な、なにを……そい」

「ところで、話は変わりますが、アイテムボックスって便利ですよね。生き物は運べませんが、モンスターのドロップした()()()を運ぶのに重宝します」

「つら……な、ら……」



 漸く理解したようで、肉袋の目が驚愕に見開かれます。



「大丈夫、あなたは死にません。ただ、壊して治して壊して治して壊して治して壊して治して壊して治して壊して治して壊し尽くした後にッ! ……()してあけますから、ね?」


「や、やめ、ゆr」

「まずは、四肢をぐちゃぐちゃに壊してあげます」

「ひぎゃぁあァぁあァぁあァぁあァぁあァぁあァッ!!!」


「大丈夫、ちゃーんと、動くように()してあげますよ。安心して泣き喚いて下さい」



 私、弱者を嬲るのは趣味ではありませんが、淑女の嗜みとして、お掃除は好きですの♪






「ふぅー……少しだけすっきりいたしましたわ♪」



 一仕事終えた私は、心地よく溜まった疲労を吐き出すように息を吐きます。

 私の足元には、顔以外が綺麗な肉袋が転がっています。

 服すら真っ赤で綺麗な状態です。えっへん。


 足りなくなった血えk……水分は、お兄様特製の増血剤をぶち込んでおきました。私ってばやっさしぃ。


 脚よりご自慢だった顔面は……そっちは私何もしていませんよ?

 流石に頭部に何かすると蘇生不可能ですし。

 まぁ、涙やら涎やら何やら、自分で汚した分は自分で始末して下さいな。


 まー、命までは取れないので、完全にすっきりする事はできないんですけどね。



「さて、ついでです」



 私は肉袋の毛髪を掴んで、引き摺ります。



「ころ、ひて、くらは、い……じょ、お……ざば……」



 肉袋から何か聞こえますが、きっと疲れから来る幻聴でしょう。


 私は肉袋を、未だに倒れ伏しているブリジットさんの目の前に放り投げます。



「ひッ?!」



 あら?

 この人、あれから更に粗相をしたみたいですね?

 そんなに我慢していたなら、試合をする前に済ませておけば良いのに。



「さぁ、ブリジットさんもどうぞ」


「え?」


「私は……十分とは言い難いですが、もう碌に反応もしなくなって飽きましたから」


「なに、を……アイタタタタッ!?」



 彼女の傍にしゃがんで、治癒魔法をかけていきます。

 まぁ、試合とは言え、やったのは私ですからね。



「何って、決まっているじゃないですか。復讐ですよ、復讐」


「ふく、しゅう……? ッ!? そんな事しない!」


「はぁ? 何を仰っているんです? 貴女だって、あの男に恨みの百や二百、千や二千は軽くあるでしょうに?」



 直接食い物にされた彼女ならば、私以上に恨んでいてもおかしくはないんですけどね?



「わた、しは……騎士、だから……アイ、リの……」


「は?」



 真っ青な顔で芝生を握り締め、俯いたまま出たのはそんな台詞。

 本気で言っているんでしょうか?



「貴女は騎士ではありませんわ。敗戦国の女。城壁を破られ、蹂躙されるただの街娘です。『騎士』という名の野獣どもに、『戦利品』として浚われて穢されるだけの弱い小娘です」



 ブリジットさんの下顎を捕まえて目を合わせます。

 嘘偽りは赦しません。



「……ッく」



 案の定、目は逃げています。

 彼女の心が那辺にあり、何処を見ているのかは分かりません。

 ですが、こんな弱い小娘の心の傷まで、お兄様が肩代わりするなど我慢なりません。



「それでも『騎士』を名乗りたいのなら、『騎士』(ケダモノ)らしく、その小賢しい『理想』()を捨てなさい。そこに転がる肉袋は、貴女のみならず、貴女が守るべき『お姫様』(理想)を踏み躙ったクズです」


「あ、ぅ……」



 瞳孔が開いたり閉じたりして……いい具合に葛藤して混乱しているようですわ。

 あ、そう言えば、魔人薬を飲まされた件、罪に問われないって教えていませんでしたね。

 それもあって、精神的に追い詰められているんでしょうか?

 ……ふぅむ……ちょっと遊んでみますか。


 一旦、彼女を解放し、お兄様から頂いたペンダント(お守り)をアイテムボックスに仕舞いながら、ある物を取りに行きます。

 このペンダント(お守り)、『あなたに幸あれ』という祈りを込められた、どこにでもあるただの装飾品(気休め)のはずなんですが……お兄様の手にかかると、神話級(状態異常無効)の魔導具になるから驚きです。

 これだけは、基本的に外すなと言われているのですが、これからやる事に少々影響がある為、一時的に外させてもらいます。



「貴女が心配しているのはこれですか?」



 私は肉袋が取り出して、落としたままになっている、魔人薬の入った瓶を見つけ――



「そ、それはダメ!」



 一気に飲み干します。待ったなしですわ。



「思った以上に不味いですわ……」



 お兄様から聞いた話では、この魔人薬を10倍に薄めた物が『避妊薬』として、スラム街の娼婦達の間で出回っているとか。

 それを一ヶ月に一瓶というペースで服用するのが『安全基準』だそうで……。こんな物に『安全』も何もあった物ではないと思いますがね。



「な、なんでそれを飲んじゃったのッ! それはッ……」


「一級の禁制品で服用すれば一族郎党死罪もやむなし、ですか?」


「知っててなんで?!」



 ほほほ、子犬がキャンキャン吠えていますわ。



「こんな物、お兄様の手にかかれば……」



 魔人薬は人の体内魔力を汚染して、身体を魔人に作り変えていく薬物です。


 ですが、『体内魔力』と一言で片付けていますが、実際には『オド』と『気』の二つが渾然一体となったものなのです。

 多分、マーリン学園長もこの事は知らないと思います。流石に学園長なら『体内魔力』と『魔素』(マナ)が別物だと気付いていると思いますけどね。


 まぁ、魔法の細かい理論は置いておくとして、魔人薬はこのうちの『気』を汚染します。

 そして、『気功』も『房中術』も、『気』を取り扱う術法であり、習得には渾然一体となった『体内魔力』から、『オド』と『気』を見分ける事が必須です。


 つまり、私のように気功をある程度習得している者なら、こうして結跏趺坐という姿勢をとり、自分の中に意識を向ける事で、私を蝕もうと奮闘している汚染源が判ります。


 後は、『内気功』で体内の気を操作して汚染源を一箇所に集め、『外気功』で体外に排出すれば良い……のですが、このまま楽な方法(・・・・)で排出するのは、淑女的に不許可です。絶対にダメです。

 なので、掌に集めて――



「はッ!」



 そのまま倒れている肉袋に、魔人薬入りの気弾をぶち当ててやりました。



「な、なに? いまの??」



 知らない人からすれば、私が無詠唱で魔力弾を肉袋に撃ったようにしか見えません。

 当然、何も分からないブリジットさんからしてみれば、突然の暴挙に見えるでしょう。



「魔人薬……あー、魔薬を体外に排出したんです」


「そんなこと……」



 脳筋なりに、魔法というものを心得ているようで、不可能だと判断したようですが……。



「出来ますよ。お兄様の教えを受けた私には」


「……それ、ボクにも、できる?」



 食いついてきました!

拙い作品をここまでお読みくださり、ありがとうございます。


次回は……男性が読む場合はお気をつけ下さい。

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