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第4話 情報戦 妹 VS 最終兵器

ついに明かされるアイリーン(とグレイシア)のスペック!

 そうこうしている内に、茶番劇を取り巻いている人垣を一周しました。

 署名していないのは、ゴミ共とその被害者くらいで、会場にいる生徒のほぼ全てが署名する結果になりました。

 後は、お兄様に呼ばれるまで、じっくりとお兄様のお姿を目に焼き付けるだけです。じー……。


 ~♪

 ……。

 …………。

 ………………おっぱい(グレイシア)邪魔!


 うー……お兄様が庇うような位置にいるせいか、視界にチラチラとあの脂肪の塊が目に入ります!


 グレイシア・ガラティーン。

 ガラティーン公爵家の長女にしてあのポンコツ王子の婚約者。

 そして、私と同じ『王都三大美姫』の一角……と言いますか、筆頭?


 輝く太陽のような黄金の髪をツーサイドアップなる髪型にし、女性としては高めな身長に最早凶器としか言いようのない胸! 胸!! 胸!!!


 なんですか、そのだらしない脂肪の塊は? メロンでも入っているんですか? 羨ましくなんかないですよ……時代は回避です! 防御力ではなく回避力です!! と言いますか、なんでそんなにデカいのに、形が崩れていないんですか? 魔法ですか? 魔法ですよね? 魔法で重力を操作しているとか、そういう理由ですよね?! 呼吸するだけで震えるとか、私に対する嫌がらせですよね? 歩いたら地震とか、もう殺しにかかってますよね!? 馬に騎乗した時なんか……これが格差社会というものですか……。


 腰もキュッとくびれており、コルセットも大して締めてませんよね、それ?


 斯様なまでに攻撃的なプロポーションをしていますが、かんばせは逆にか弱い小動物のような印象を与えます。


 シミ一つない白く透通った肌。

 不安そうに垂れ下がった目、小さな鼻と口がお行儀よく整った、まるでお人形のように綺麗な顔。

 ですが、アメジストのように神秘的な紫の瞳を潤ませ、そこに人形などではなく、生きた感情を湛えています。


 小動物のような庇護欲を掻き立てる容貌をしていながら、暴力的なプロポーションを持ち、しかも私のように計算して演出しているのではなく、天然でやっているところが非常に恐ろしい女です。



 ふむ……。しかし、改めて考えてみると、なんでポンコツ王子はこのおっぱいお化け(グレイシア)ではなく、あんなブ女を選んだのでしょう? 目が腐っているんでしょうか? 趣味が壊滅的に悪いとか?


 見たくないですけど、一応比較検証する為に、ブ女の方も見てみましょう……。


 ……。

 …………ぉぇ。


 見るだけで不快になり、観察し続けると吐き気を催します。

 特徴は黒髪黒瞳。顔は整っています。人形みたいに。

 しかし、おっぱいお化け(グレイシア)とは違って、憎悪剥きだしの形相を浮かべているのに、そこに生きた感情を感じません。

 そうですね、グレイシア・ガラティーンは女の子が好きそうな「可愛らしいお人形さん」と言えるのに対し、酒月 聖は……ひどく出来の悪い石膏像でしょうか?


 スタイルもそうですね……出るべきとこは出ていて、引っ込むべきとこは引っ込んでいる、非常に均整のとれた体つきですが……アイリーン(最終兵器)さんほど魅力は感じませんね。

 あれに比べたら、やっすい玩具です。


 何と言いますか……非常に精巧な人形が人間の振りをしているかのようで、この上なく不気味です。

 皆さん、あれを見て何も感じないのでしょうか?



 そんな事を考えているうちに、先程の隅っこにいた集団から二人の女性が呼ばれました。

 アイリーン・アシュフォードとブリジット・バーナードです。


 という事は、『外道』という言葉(ガ ウ ェ)の方が正道な男( イ ン)の最期も……あらー……お兄様が感情を抑えに抑えつけたせいか、私ですら鳥肌が立ちます。


 ややあって、案の定『小悪党』の方(ガウェ)が格上な男(イン)は宙を飛び、お兄様に蹴り飛ばされました。

 あれはお兄様の癖みたいなもので、足場を確保する為に染み付いた動きです。敵を足元に転がしたままだと、戦闘中に足を取られる可能性がありますからね。


 因みに、私の理想とする男性像第3位は「お兄様の足元に這い蹲れる方」です。

 第1位は「お兄様」、第2位は「私より強い人」と、お兄様以外には条件を満たせないので、この第3位が譲歩できる最低ラインです。


 理由は見ての通り。

 お兄様は倒した相手を蹴り飛ばしますので、お兄様の足元に這い蹲るには――


1.お兄様に挑んでボロボロに負けて蹴り飛ばされる

2.更に魔法や投擲など遠距離攻撃の手段も全て尽き

3.それでもなお、お兄様に立ち向かおうと足元まで這う


 という、根性の限りを尽くさなければなりません。

 まぁ、それだけの根性を見せられるなら、殿方として見てあげなくもありません。



「フレア」



 お兄様が私の名前を呼んでくださいました!

 はぁ~…………お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様~♪



「はい、お兄様」



 ふぅ、とりあえず出番ですので、このくらいにしておきましょう。

 お兄様の呼びかけに、昂る気持ちを抑えつつ返事をいたします。



「おい、道を空けろ」



 あら、先程の二重丸さんが小声で周囲の生徒に指示を出してくれました。

 機を見るに敏な方ですね~。



「お待たせいたしました、お兄様。こちらになります」



 お兄様の前まで進み、可愛らしくカーテシーでご挨拶します。

 この、ドレスの裾が地に着かないよう、ちょんと持ち上げる仕草が可愛いので、いつもお兄様に披露しています。

 当然、他の方にこれをするつもりはありません。

 ウーゼル王にはちゃんと跪いて礼を取りましたよ。それで十分でしょう?



「ありがとう。それでは、あちらのお二方を別室にご案内して差し上げなさい」



 アイテムボックスから取り出した署名用紙の束を手渡すと、お兄様から次の仕事を与えられます。



「かしこまりました、お兄様」



 お兄様の御前を辞する事になるので、もう一度カーテシーを披露して、アイリーン(最終兵器)さん達の前まで移動します。


 お二人は……まぁ、今の今まで、自分達を苦しめていた存在があの通り……あら、ビックリ、お兄様に痛め付けられたおかげで、ボロ雑巾くらいの価値に上がりましたわ。

 とにかく、自分達を苦しめていたボロ雑巾(ガウェイン)の有様を見て、お二人は唖然となさっています。



「アイリーン様、お手をどうぞ」



 まずは、序列に従ってアイリーン(最終兵器)さんに手を差し伸べます。

 ですが、彼女はまだボーッとして……うん? あれ?


 何でこの人……既にお兄様に視線が釘付けなんですかね?

 ちょっと、何で頬がうっすら赤いんですか?



「あ……も、申し訳ありません、あり、ありがとうございます」



 見兼ねたブリジットさんが彼女を揺すり、漸くこちらに気付いて手を取る。

 アイリーンさんを引き上げて立たせたら、次はブリジットさんに手を差し伸べ――



「ん……いい。ありがとう」



 ようとする前に、ご自身で立ち上がられました。

 それに、この方はこの方で……私に熱い視線を向けすぎではありませんか?

 熱いは熱いでも、こう……何というか……暑苦しい? 闘志? 何故に??


 まぁ、その辺のことは全部後回しにして、まずはお兄様から任された仕事を片付けましょう。



「それではお二人とも、まずは落ち着ける場所へ移動いたしましょう。これ以上ここにいても、不利益こそあれ、お二人に有益なものは得られませんから」



 二人は互いの顔を見て頷きあう。

 それを確認してからお二人を先導します。


 登場時の余韻があるのか、人垣が勝手に割れて道を作ってくれます。

 お二人は周りから突き刺さる視線に耐えながら、この舞台から退場する事に。



「それでは皆様。私共はお先に失礼させて頂きます。皆様はどうぞ、最後までゆっくりとご観劇下さい」



 出入り口の一つに辿り着く。

 まだこちらに視線を送ってくる観客の視線を舞台に戻す為、最後の挨拶を残して会場を後にします。


 ふぅ。とりあえず、これであのグレイシア(おっぱいお化け)とは(ほぼ)縁が切れました。

 あの暴力的な脂肪の塊が、お兄様の周りをうろちょろする機会はグッと減る事でしょう。


 ……まぁ、その代わりに――



「あの、なにか?」


「いえ、何でもありませんわ。さぁ、こちらです」



 このアイリーン・ア(最終)シュフォード(兵器)が次なる強敵に……。


 この建物の一番奥にある一室まで、二人を先導する間に彼女()の性能を検討してみましょう。


 アイリーン・アシュフォード。

 父親は軍務大臣のオーガスト・アシュフォード侯爵。

 アシュフォード侯爵家は軍系貴族の代表格で、彼女とあのボロ雑巾の婚約は、王族に新しい血を入れる為であり、同時に軍系貴族との関係強化の為でもありました。

 家族構成は両親に兄二人。彼女自身は末っ子であり、唯一の娘。その為、家族からの愛情を一身に受けて育ってきたそうです。


 こんな事件の被害に遭っていたと侯爵家が知れば、この国の軍系貴族が一斉蜂起とか、普通に有り得ますわねー。


 同時に、アシュフォード侯爵家の懐刀と言われるバーナード伯爵家の次女、ブリジットとは幼馴染であり、両家の関係よろしく、妹のような存在であった為、末っ子の割りにしっかりした子に育ったようです。


 まぁ、いざという時の対応力と言いますか、判断力? そういうのはブリジットさんの方があるようですが。


 ……ですが、私にとって問題なのはそんな事ではありません。

 彼女自身の性能です!


 夜闇のようにしっとりとした美しい黒髪! 深い海のような青い瞳!

 美しく整った顔立ちは、派手さはないものの、却ってそれが安らぎを齎す、まさに清楚な女性です。

 いいですか、美人なのに圧迫感を与えないという事。これ、実はお兄様に対して非常に有効です……。


 お兄様は……忌憚のない言い方をしますと、女性全般が苦手です……特に『美人』と称されるほどの派手な方は。

 観賞物としてなら、美しく着飾った女性も好まれますが、実際に接するとなると……女は扱いが面倒だから嫌とバッサリです。

 私がお兄様に愛されているのは、『女』ではなく『妹』だからです……これが嬉しくもあり悲しくもあり……。


 そんなお兄様ですので、どこかのブ女のように「私があなたを支えてあげるのー嬉しいでしょー」みたいな、上から目線で押し付けがましい上に、方向を間違えるような輩は蛇蝎の如く嫌います。


 対して、アイリーンさんのように落ち着いた雰囲気を纏い、「あなたのお役に立てたのなら、私は幸いです」なんて、他者に奉仕する事に、自分の喜びを見出せる相手には報いたくなる人です。


 分かり難いですか?

 簡潔に言うと、好きな人の笑顔を見たいが為に努力する人です。これだけです。これだけで満足できちゃう人です。


 ここが、私との大きな差です。

 ……越えられない壁です。


 私はお兄様が好きです。愛していますし、憧れてもいます。適うならば赤ちゃんだって欲しいです!

 ……まぁ、法的に無理なんですけど。


 当然、お兄様の為ならば、どんな苦行でも乗り越えてみせます!

 ですが、同時にこうも思います。「もっと、私を褒めて欲しい」と。「もっと、私を見て欲しい」と……。

 どうしても、有形の見返りを求めてしまいます。


 具体的に言うと、「お兄様、褒めて褒めて~♪」って、子供の頃から頭なでなでを要求してました……。

 いいじゃないですか!


 無論、働きに対する見返りを要求されたところで、お兄様が相手を不快に思う事はありません。……度が過ぎなければですけど。


 ですが、その辺はお兄様も人の子、男の子です。

 こんな清楚系美人に尽くされたら……はぁ。


 しかも、この方はそれだけではありません。

 先程も少し申し上げましたが、プロポーションも大変秀でています。


 おっぱいお化け(メロン)ほどではありませんが、確実にオレンジ以上はあります。

 そうですねー……アレ(メロン)の1サイズか2サイズ下なくらいです。


 それでいて、全体の調和も取れていて……実に羨ましい限りです。


 私が見せ物(アイドル)をやっていなければ、確実に『王都三大美姫』と呼ばれる美人であり、お兄様に対して特効な性質。

 まさに『最終兵器』と呼ぶに相応しい女。

 それが、アイリーン・アシュフォード侯爵令嬢です。


 はぁ、今日からはこの(ひと)が兄の傍にいる事になるんですね……。

 治療、断ってくれないかなー、断ってくれないよねー、無理ですよねー……。



「さぁ、着きました。こちらへどうぞ」



 そんな風にうじうじと悩んでいる間に、目的の控え室に到着しました。

 扉を開けて、お二人を中へ案内します。


 ここに来るまでに、それぞれに覚悟を決めていたようで、お二人は一つ頷いてから扉をくぐり、入室されます。

 私も、お二人を見送った後、中に入って扉を閉めました。


 室内は一般的な応接室のような作りとなっていて、長方形のローテーブルをコの字に囲むようにソファが並んでいます。



「どうぞ、お掛け下さい」



 と、声をかけたものの、ブリジットさんが何かを決意したような顔をして――



「私と付き合って欲しい」



 などと、抑揚のない声で言ってきた。

 ………………………………は?

拙い作品をここまでお読みくださり、ありがとうございました。


…………1日30時間欲しいです。

そしたら、6時間は執筆に回せるのに……。

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