第7話 掲示板と通販
いつの間にか日刊ランキングに乗っていました。これは驚きです。
評価をつけてくれた皆様、本当にありがとうございます!
感想もすごくすごく嬉しいです!
作者の励みになります。がんばれます。
無性に謝りたくなります! ごめんなさい!
『火狩様……そこは……』
「ここが一番弱いところだろ?」
『そ、そうですが……いきなりそんなもので』
「嫌なのか?」
『嫌では……ないです』
「それとも、こっちを使ってみたいか?」
『こっち……とは、まさか……』
「ああ、グルグル回るぞ」
『ぐるぐる……』
「それともこの挟む奴か?」
『はさむ……』
「電気が走るのもいいんじゃないか?」
『でんき……ですか?』
「ガイドちゃんは、どれがいい?」
『私……は……』
『やはり、狭い通路ですし、落とし穴が最適ではないかと。最初の一人が嵌れば、後ろの侵入者も足止めできますし』
「それもそうか。……この感電装置とか使ってみたかったけどな」
『この通路に使うにはコストが勿体無いでしょう。それはもっと人の通りそうなところに使うべきです』
おいっす、キノコとタケノコの煮物なら断然キノコが好きな群城火狩だ。
え? 今何をしているのかって? 通路に罠を張る作業に決まってんだろ。
……まさか、何か良からぬことをしていたと勘違いしたんじゃ……あ、それはない? デスヨネー。
『そういえば火狩、この作業は拠点から遠隔で行えたはずですが、何故この場まで来ているんですか?』
「お、このタイミングで聞いちゃう? そうだな、わざわざ出向いた理由は、やっぱ罠だからな。掛かる人の視点で考えて置いていかないとダメだろ」
罠に掛かるのは侵入者で、俺が掛かって欲しいのは侵入者。なら、侵入者視点で歩いてみて、ここに罠はないだろうと思った場所に敢えて置く。
悪戯の基本だ。
『……ところで火狩様? 潤沢だったDPが何故か7000近く無くなっているのですが……』
「さて、どうしたんだろうな」
『上質なベッド500×10、高級な椅子200×9、硬質な大テーブル500×2。甘味数点』
「だって女王様だぜ!? どういう扱いしていいのかわかんねーよ!?」
明らかにやりすぎたが、後悔はしていない。
『……まあ、いいでしょう。その分彼女達には働いて貰えばいいだけですから。勿論火狩にも』
「俺に安永は訪れない」
バカなことを言っているうちに3つの罠が設置できた。ゴキちゃんが引っかからないように、虫の敏感な触覚にしか感知できない微弱な電磁波を流す。これで味方は安全だな。
『罠、宝箱、隠し部屋。置けるものは大体おいたのではないでしょうか?』
「そうだな。特別な装置も今は使えなさそうなものばかりだし」
『部屋に設置すれば、自動でDPを消費し、モンスターを召喚する『自動召喚陣』などですね』
「自動で幼虫人が増えるとかそれはそれで恐怖だな……俺にとって」
あれ、おかしいな。ダンジョンモンスターってもっとこう……召喚だ! さあ戦え! って感じじゃないのか? なんで間に育成が挟まるんだ?
……まあいいか。今の所侵入者の影も見えないし、ゆっくり体勢を整えていこう。
スローペースも大切だ。
『ああ、そうだ。そうですよ。フィールドワークが終わったのなら、家に帰って子供の相手をする時間です。家庭も省みましょうお父さん』
「誰がお父さんだ。……だがそうだな。そろそろ名前も決まったし、あいつらの所に行ってみるか」
急いでやることはない。じゃあ、仲間たちとの親交を深めるとしよう。
「わ、わたしたちになまえを……こうえいです!」
「うれしいです!」
「おにいちゃんありがとう!」
「なまえ……いい」
「かっこいいなまえ? かわいいなまえ? どっちもいい!」
「…………」
訪れた一室で待っていたのは、色とりどりのローブ娘達。幼蝶人族というモンスターだ。
服までが体の一部という、少しおかしなモンスターだが、人型系統はそういった者が多いらしい。
さて、そしてどうやら、召喚したてのこの子らには名前が無いらしい。という訳で、今考えた名前をつけることにする。俺のネーミングで悪いが、無いよりはましだろう。
「お前達に授ける名前は……」
結果だが、俺のネーミングでも大層喜んでもらえた。いや、これで一安心だ。
「このアゲハ、おにいさまにすべてをつくします!」
アゲハチョウのアゲハ。清楚でしっかりした子だ。フードに隠れて顔がよく見えないが、見ようとすると隠してしまう。そう言う性質のモンスターなんだろう。無理に見ようとは思わない。
「コクイはあにさまにぜったいのちゅうせいをちかいます」
ジャコウアゲハのコクイ。顔の下半分しか見えないが、アゲハと似通った顔立ちで、双子なんじゃないかと疑い始めている。
「おにいちゃん! マシロ、がんばります!」
モンシロチョウのマシロ。頑張り屋さんだ。
「おにい? ユカリはユカリです?」
ようやく思い出した。二本角の緑の幼虫、オオムラサキのユカリ。若干天然が入っている節がある。
「チナ、かわいいなまえ! にぃにありがと!」
このメンバーで最小のチナ。可愛いものをやたらと押してくる。
「おにいさん、わたしは、ミノ?」
ノンビリした性格のミノムシ、ミノ。
「にいちゃんにいちゃん! カエデはにいちゃんがだいすきだよ!」
今日も一番元気なカエデ。薄緑に黒い斑点模様のケバケバローブ。正体は……謎だ。ごめんよ、俺の知識不足で適当に好きな木の名前しか付けてあげられなかったよ……。
「……ヨナ……あにうえのため……ねないでがんばる」
この中で一番大きいヨナ。ヨナグニサンだと期待を込めてこの名前にした。いつも眠そうな声だが、実際居眠りしたことはない。もしやこの中ではこの子が一番頑張ってるんじゃなかろうか。
「ドクかー。あにきにもらったなまえ、たいせつにするよ!」
前世の因縁があったドクガのドク。サバサバした性格だな。こういう子は好きだが、触らんぞ。
「…………」
そしてハクビ。カイコガの彼女だが、昨日から一度も言葉を発したのを見ていない。最初は喋れないのかとも思ったのだが、見たところそうでもないらしい。
……ふむ。
『火狩が何かを企んでいる顔をしています』
「どんな顔だよ」
『写真に収めましょうか?』
「もうその話はやめろ」
……まあ、ハクビに対して今できることはあまりない、か。これについては時間をかけて解決していこう。
「ああ、そうだ。お前達にまた仕事を頼みたいんだが」
「はい! なんでもおっしゃってください!」
ん? いまなんでもって……これは前もやったな。
「ああ、また幼虫人の世話をな」
「あかちゃんですか。わかりました!」
そういえば子育てができるようになったこいつらがいるのだ。なら、この仕事は任せてしまっても問題ないんじゃないか? だが、全部人任せってのも気が引けるな。
「勿論俺も手伝う。だが、ずっと付きっきりって訳にもいかないからな。大体の世話はお願いしたい」
「わかりました! そのおやくめ、はたしてみせます!」
うん。やはりこの子達は頼りになるな。
子を育てるという観点から、蟻人族の方にお願いしても良かったんだが、少しでも経験のある方がいいだろう。次回からはまた考え直せばいい。
「今回は二人お願いしたい。食料も一緒に置いていこう。ガイドちゃん」
『了解しました。召喚及び、食料の購入、完了です』
定番の召喚陣の中から二人の幼虫人が出てきて、何もない空中からは『エキドナの母乳』が現れる。
アゲハとコクイが二人の幼虫人を抱き、笑顔で俺に向き直った。
「「元気な女の子です!」」
「おい、それ誰に教わった。答えろ」
『さあ、時間も押してきましたし、そろそろ戻りましょうか。火狩、なにやら侵入者が現れるか現れないかギリギリどっちつかずな予感がします。拠点に戻って戦闘態勢を整えるのです』
「お前だな? お前だろ。お前以外いないよなぁ?」
本当にガイドちゃんには感情がないのか、よくわからなくなってくる。やれやれ……。
あ、戦闘態勢で思い出した。
「なあ、ガイドちゃん」
『私ではありませんよ』
「いや、その話はもういいよ。……あ、お前達は部屋に戻って自由にしていいぞ。また来る」
アゲハ達を帰し、俺は拠点に戻りながら話すことにした。
「このダンジョン、ゴキとハエが10匹しかいないじゃん?」
『蟻人族も立派な戦闘要員ですが、それでも30。ダンジョンの戦力としては若干心許ないですね』
「だろ?」
そうだ。このダンジョン、今まではあまり気にしていなかったが、明らかに戦力不足なのだ。
召喚できるモンスターは尽く即戦力にならない。
つまり、手薄な今の状態では、ゴキちゃん達が突破された時、全員が詰みな状況でしかない。
「だからさ、戦力の補強がしたいんだが……」
『しかし、それにはモンスターを召喚するしか……』
「いや、アレがあるだろ?」
『……アレ? ですか?』
そう、俺の唯一と言ってもいい戦闘要員の出処。
「虫モンスターを、買おう」
『なるほど。それはいい案ですね。虫系統は繁殖が容易ですから、比較的安価で取引されていますし、今のうちに調べて買っておくのもいいと思います』
そう、DPにはまだ少し余裕がある。……あるったらあるのだ。
だから俺は、買える虫は全部買ってしまおうと思っている。
「昨日、ゴキちゃんハエちゃんを安く売っていた人が出している虫はいるか?」
『調べてみますが……そうですね。火狩が自分で確認した方がいいのではないでしょうか?』
「それもそうだな。で、その通信販売はどこで出来るんだ?」
拠点にたどり着いた俺は、ギシギシと音が鳴る使い古した椅子に座り、傷だらけの机に肘を付ける。
……チクチクする。
『……何をやってるんですか。安物を買うからです』
「しょーがねーだろ。こんなもん使えればいーんだよ。で、通信販売は?」
小うるさいガイドちゃんに舌を突き出しながら聞く。ガイドちゃんはため息を吐きつつ、力のない声で答えてくれた。
『……掲示板ですよ。そこで出品しているようです』
掲示板。名前からして、インターネットで有名なあの某情報交換サイトの事ではないかと予想……いや、予知する。
予知しながらも、使うざるを得ない俺は、覚悟を決めて、メニュー画面を開くことにした。
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・【初心者歓迎!!】友達作ろうぜ!【挨拶版】Part120
・【初心者必見!!】異世界の情報交換しようぜ!
・【明日から】雑談掲示板【ダンジョン開く】
・【魔物は】自慢の魔物出せよ【俺の嫁】
・侵入者ってどうしてる?
・俺「よう」→魔物「 」 誰か俺と会話してくれ
・【俺氏の博物館】みんなが作った芸術的造形のゴーレムを貼るスレ
・こんな魔物生まれたんだが……
・【画像あり】可愛い魔法使い捕まえたったww
・ダンジョンショッピング
通信販売
・ダンジョンショッピング
オークション
・ダンジョンショッピング
注文受付
・ダンジョンショッピング
商品提供窓口
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……ふむ。
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【画像あり】可愛い魔法使い捕まえたったww
1:名無しのDMさん ID:19871
ようこそ階層腹筋スレへ!
可愛い魔法使いちゃんは、強い男を所望している!
ここは自分のダンジョンの階層の数だけ腹筋をするという、簡単なエクササイズスレです!
弱い奴は1回で終わらせられるとか何ソレ裏山ww
俺は13回だぜ!
さあ、腹筋したまえ。
2:名無しのDMさん ID:28097
俺178回だわ
3:名無しのDMさん ID:83021
俺600なんだけど……。
4:名無しのDMさん ID:80921
俺10000
5:名無しのDMさん ID:187
↑お前ら……
6:名無しのDMさん ID:4208
サバ読みすぎワロタww
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「騙された!!」
『何やってるんですか』
くそう! また俺は同じ過ちを……!
まあ、冗談はこのくらいにしてだな。
……一回、と。
「さて、ダンジョンショッピングを開きたいのは山々だが、最初は挨拶板に行った方がいいのか?」
『そうですね。他のダンジョンマスターとの繋がりを作っておけば、もしかしたら求める商品を今から用意してくれるかもしれません』
……じゃあ、挨拶板に行くか。
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【初心者歓迎!!】友達作ろうぜ!【挨拶板】Part120
※ダンジョン間対戦実施にあたり、初心者狩り防止のため、このスレでは名前以外の全ての個人情報は表示されません
1:名無しのゴブリンマスターさん
また一つ、スレが終わってしまった……
2:名無しのアンデッドマスターさん
お前が荒らすからだろ
3:名無しの妖精マスターさん
こんにちわ。初めて来ました。レベル1の新人です。
4:名無しのゴブリンマスターさん
ちわー
5:名無しのアンデッドマスターさん
おお、荒らし以外の人が来た
6:名無しの獣マスターさん
新人と聞いて
7:名無しのゴブリンマスターさん
はええよ
8:名無しの鳥マスターさん
俺氏参上
9:名無しの妖怪マスターさん
馬鹿共の巣窟と聞いて
10:名無しのゴブリンマスターさん
すくつ
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……どうやら、リアルタイムで更新されているようだな。俺以外の初心者もいるらしい。
俺も名前を決めて、行くとしよう。
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11:名無しの妖怪マスターさん
新人さんいらっしゃーい。
先輩に何でも聞いてくだしあ。
あ、そこの馬鹿は役に立たないけど
12:名無しのゴブリンマスターさん
言われてるぞ、ゾンビ
13:名無しのアンデッドマスターさん
お前だよ
14:名無しの妖精マスターさん
わぁ、色んな人がいるんですね。ダンジョンとか、初めてだからよくわかりません。先輩に色々教わりたいと思います。
15:名無しの虫っ娘マスターさん
俺も昨日ダンジョン作りました。新人ですよろしくお願いします
16:名無しのアンデッドマスターさん
なんかすごい名前の新人きたww
17:名無しのゴブリンマスターさん
虫っ娘ww虫じゃないのかww
18:名無しの鳥マスターさん
あれ、今日は豊作?
19:名無しの獣マスターさん
虫っ娘氏は同族の予感
20:名無しの妖怪マスターさん
黙れケモナー
21:名無しの妖精マスターさん
虫さん、同じ新人同士よろしくお願いします!
22:名無しの虫っ娘マスターさん
よろしくね
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「これで多少は顔が売れたと思うか?」
『虫マスターよりは印象は強いでしょうね』
「なら大成功だ」
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26:名無しの虫っ娘マスターさん
あの、通信販売で虫系統モンスター買いたいんですけど、どうすればいいですか?
27:名無しの妖怪マスターさん
それなら通販サイトに行って、欲しい商品の名前を打ち込めば、関連商品が出てくるわ
28:名無しの虫っ娘マスターさん
ありがとうございます。
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「よし、行ってみるか」
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ダンジョンショッピング
通信販売
欲しい商品を入力してください[ ]
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ここに打ち込めばいいんだな。
「虫系統……と、出た」
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【プレデターマンティス(雄雌セット)】5000DP
【アイアンビートル(♂)】7000DP
【幻視蝶(5匹)】2500DP
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「高くないか?」
『強いモンスターが多いみたいですね。値段順にしてみましょう』
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【ミルワーム(2匹)】1DP
【ビッグローチ(在庫30)】5DP
【弾丸蝿(在庫50)】5DP
【大ヤスデ(在庫10)】5DP
【パラライズピート(在庫30)】5DP
【チェインスパイダーキッズ(在庫3)】30DP
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なんだこれは
「なんか増えてるんだが。ていうか値上げされてるんだが」
『先日と同じ出品者です。買い占めたからでしょうか』
おそらく処分したい在庫を全部出してきたんだろう。……さて。
「ガイドちゃん。俺のDPはどのくらい残ってる?」
『6000程です』
ついにガイドちゃんが計算しなくなった件。
「まあいいか。じゃあ、買えるだけ買い占めて」
『よろしいのですか?』
「ああ、ここに居る奴ら、全員食料不要で、今の魔力濃度で生活できる。何の問題もない」
『かしこまりました。重要度の高いモンスターから順に買っていきましょう』
「ああ、そうだ、ガイドちゃん」
『なんでしょう』
「これからは、この出品者……『悪夢の巣窟』ダンジョンのマスターが出品する度に教えてくれ」
こうして、俺のダンジョンには……
『チェインスパイダーキッズ』3匹
『パラライズピート』30匹
『弾丸蝿』50匹
『大ヤスデ』10匹
『ビッグローチ』30匹
が、仲間に加わったのだった。
「ようこそ、俺達のダンジョンへ!」
そろそろ戦闘しろや、と思っている方、多数おられることでしょう。本当に申し訳ございません。作者の腕が足りないばかりに、読者の皆様には歯痒い思いをさせてしまっています。
しかし、今回主人公が戦力を整えました。これがどういうことだか……目敏い皆様はもうお分かりですよね?
次話も張り切って執筆していますので、もうしばらくお待ち下さい。