第32話 またまたダンジョンマスターのお仕事
……言い訳はしません。煮るなり焼くなり好きにしなさい。
…………ほんっっっっっっっっとうに!!!
更新がここまで滞ってしまい、申し訳ございませんでしたァ!!
本当は年明け前に投稿するつもりだったんです! ですが、色々とありまして……
「年明け前に作業終わらすぞー」
↓
「正月だー、やること終わったし打ち上げすんべ! おら全員参加じゃコラ」
↓
「冬休み休んだ分取り返すぞ!」
↑この流れはなんなんでしょうね? 私をおちょくってるとしか思えない!
しかも! 今年に入って急遽車の免許が必要になり、限られた自由時間が8割以上削られるし!
虫全然見ないし!
冬だし! 寒いし! 雪だし! 餅うめえし!
はぅ!! いつの間にか言い訳だらけになってた!
ごめんなさい! では本編へどうぞ!!
【運営に追い出されて】新人歓迎スレ【作っちゃったZE☆】
※このスレでは、スレ主の意向によりID非表示となっております。
1:名無しのゴブリンマスターさん
挨拶板で雑談するなって言われたから作ったった。
2:名無しのアンデッドマスターさん
荒らしまくってたもんな。今part200だっけ?
3:名無しの虫っ娘マスターさん
一体何を話したらそんなにスレ消化できるんですか
4名無しのゴブリンマスターさん
虫っ娘キター!
5:名無しのアンデッドマスターさん
虫っ娘キタ━(゜∀゜)━!
6:名無しの妖怪マスターさん
虫降臨と聞いて
7:名無しの妖精マスターさん
皆さんこちらにいたんですね! タイトルでピンときたのでやってきたのですが……。虫さん! お久しぶりです!
8:名無しの虫っ娘マスターさん
どうもどうも
9:名無しの獣マスターさん
ちょっと出遅れたか。スマソ
10:名無しのアンデッドマスターさん
鳥はまだか
11:名無しのゴブリンマスターさん
まあ、しゃーねーだろ。いつも掲示板に張り付いてるわけでもないんだから
12:名無しのアンデッドマスターさん
それもそうか。
……じゃあ、折角だし、虫っ娘に例の事件の顛末をお話し願おうか
13:名無しの妖怪マスターさん
こんなバカ板に戻ってきたくらいだし、敗けてはいないわよね
14:名無しの虫っ娘マスターさん
はい、皆様の協力のおかげでなんとか勝利できました
15:名無しのゴブリンマスターさん
お、俺の罠が役に立ったか
16:名無しの虫っ娘マスターさん
いえ、全部躱されました
17:名無しのアンデッドマスターさん
俺の『蠱毒の壺』で強力な呪いを
18:名無しの虫っ娘マスターさん
掛けませんでした
19:名無しの妖怪マスターさん
私の生み出した妖怪達が
20:名無しの虫っ娘マスターさん
化かしませんでした
21:名無しの妖精マスターさん
という事は、私のポーションが!
22:名無しの虫っ娘マスターさん
使いませんでした
23:名無しの獣マスターさん
…………そろそろ1時間経つんだが、誰か書き込みしろよ。いや、落ち込んでるのはわかるんだけどさ……。
★
よっ、この世界にやってきて、ついに三ヶ月程経った群城火狩だ。
なんだかんだでAランク冒険者集団を追い返したのが一月前。
あれから、週一のペースでAランクの修行場として使われているんだが、まあ、本気で攻略する気はないみたいだし、撃退する度収入も入るから、特に気にしない事にする。
来るたび、うちのガキ連中とボコスカ打ち合ってくれるおかげで、虫っ娘の戦闘経験も随分積まれてきたしな。
まあ、そんなこんなで冒険者による損害と利益の差を計算する毎日。倒された虫達を蘇生させていくだけでDPがどこかに飛んでいく不思議。
そして、今はもう第3階層を作り、もうすべての準備は整ったと思われるのだが……実はまだ侵入者に対処できる状況ではない。
何故かって? それは…………。
「ほーら、ご飯の時間だぞー。喜べガキ共。って、だから順番だって言っただろうが。毎度毎度ワラワラと押し寄せやがって……。こらこら登るな、危ないって……おわっ!? 落ちる! ……だから言っただろ? 危ないことはするんじゃありませ……今するなっていったばっかだろこら! のーぼーるーなー!」
子育て中だからですが何か?(威圧)
俺は、周囲に転がる20人の赤ん坊に翻弄されつつ、今日も今日とて子育てに追われていた。
……いや、聞いてくれ。今こうなっている事には深い深い事情があるんだよ。
最近の子育ては、『蟻人族』の面々の仕事になっていたはずだ。だから、俺はこんな事をする必要は一切なかった。オーケー?
だがその事情が変わった。
それが、つい昨日の事だ。
★
「よし、取り敢えず改修作業はひと段落だな」
『一度作った道を崩して作り直すのは大変でしたね』
「まあな。だが、これでスペースの無駄が無くなった。あとは、新しい罠とかモンスターを加えて行くだけなんだが……」
四方を土で覆われた狭い空間……いつもの拠点でダンジョン制作を進めていた俺は、ようやく一息ついたと疲弊したため息を付いていた。
Aランク冒険者の集団に、少なくない虫モンスターを葬られ、罠も壊されていたために今の今までその復旧に時間を費やしていたのだ。
そして、そのついでにと改良も行い、外装がなんとか完成した所である。
現在は、また少しだけ広くなった拠点の中で、ボロボロではない机と椅子で寛いていた。
ハクビは、俺の布団で勝手にゴロゴロしている。
「……♪」
「ハクビ、仕事が終わってお疲れなのはわかるが、自分の部屋で休んだらどうだ?」
「…………(ジトー)」
「な、なんだよ……あー、うん。ガイドちゃん、何かやることないか?」
普通に提案しただけなのに、何故かハクビから責められるような視線を受けてしまい、居心地が悪くなった俺はガイドちゃんに話題を振る事で逃れようとする。
『でしたら、前回ダンジョンレベルが3になったため、新規モンスターや新しいギミックが追加されています。まだ手を付けていない機能もたくさんありますし、そちらを試してみてはいかがですか?』
「ああ、そうだな。本格的に侵入者が増えてくるんだから、使える手は使い尽くさないとだな」
今までは虫っ娘達の面倒やら、ダンジョンの急造やらで、DPが足りずに泣く泣く後回しにしていた様々な機能があった。が、今回は何度もやってくるAランクの実力者のおかげで撃退ポイントが結構溜まっている。
これなら、第3階層の作成から、本格的な作業に取り組めそうだな。
「取り敢えず、どんな機能があったか教えてくれ」
まだ何も手を付けていないためか、どんなものがあったのかすっかり忘れてしまった。
だから、改めてガイドちゃんにチュートリアルを頼む。
すると、姿はないが、どこか呆れた様子の声が頭上から降ってくる。
『はぁ……しょうがないですね。では、今から行える機能を確認します。……そうですね。新しい設備や罠が使用可能になっていますね。新モンスターも召喚できます。それと、レベル3から、洞窟以外のフィールドの設定が可能となりました』
「フィールド? どう言う意味だ?」
『簡単に説明すれば、階層をまるごと森や海に変えることができるんです。環境によって運用方法の変わるモンスターも多数いますし』
「なるほどな」
ほお、やはりダンジョンの拡張が有意義になるような要素が追加されているんだな。
確かに、狭い洞窟内じゃ、弾丸蝿とかが自由に飛び回れないし、今はまだいないが、擬態するタイプの虫も、草木があった方が有利だろうな。
「よし、折角だ。3階層は森にしよう」
『了解しました第1階層の下に設置しますか?』
「いや、最初はそのつもりだったんだが、やっぱ一番上にしよう。地表に出せないか?」
『可能です』
丁度ここは森の中のダンジョンらしいからな。表に出たところで、見栄えに違いは出ないはずだ。
どうせなら、範囲指定型の作成方法にして、自然の形そのままで使うのもいいだろう。
「だが、問題はどんなモンスターを置くかだが……」
『レベル3から召喚可能な新モンスターは、作ったフィールドに応じて種類が変更されるようです』
「何? どういうのがいるんだ?」
『現時点で確定しているのは『幼魔虫人』。魔力を多く持った幼虫人です。魔法の使用に長けた種族に進化すると思われます』
魔法か! ついにこのダンジョンにも魔法使いが生まれるんだな。まあ、子育てはアリス率いる蟻人族軍団がやってくれるし、一気に召喚して戦力を整えるのも1つの手だな。
『そして、もう一種類いるのですが、こちらは階層を設置した時に解放されるようです』
それが、フィールドに適応したモンスターってわけね。まあ、森を出せば森に適応したモンスターが召喚できるんだったら、悪い様にはならないだろう。
洞窟で戦えるモンスターはもう沢山いるしな。
『では、このダンジョンの真上一面、最大範囲でダンジョン指定します』
「ああ、登録フィールドは森」
『了解しました。既存の動植物はそのままですが、設置時に範囲内にいた生物からはマナを吸収できませんので、ご注意下さい』
「構わん。やれ」
『5000DPを消費し、10平方kmの面積を指定。高さは1kmとします。残りDPは約18000DPです』
「いや、約じゃなくって計算をしてくれ」
こうして、俺のダンジョンはついに、草木の茂る広大な土地を手に入れたのだった。
……これ、土地の権利どうなるんだろうな。この森の持ち主と交渉した方がいいんじゃないか?
『わざわざ許可を求めてから領土を侵略する軍隊はいませんよ』
「それもそうだな」
せめて宣戦布告はするものだと思うのだが……深く考えないようにする。
★
一時間後、一体の弾丸蝿を偵察に出し、ダンジョンと化した森を観察し終えた俺は、小さくため息をつく。
「ふぅ……よし、結構いい場所じゃないか? 小川があるから水を汲み放題だし、木もしっかりしてるし、崖とか洞穴とか、面白そうな場所もある」
『しかし火狩、このままではモンスターのいないただの森です。早速召喚ないしは貿易にて新たなモンスターを配置しましょう』
「おぉ、そうだな。それじゃ、新しいモンスターとやらを見てみるか」
森で有利に働くモンスターか。一体どんな奴が来るのか楽しみだ。
そう思い、召喚できるモンスター一覧を開いてみたら、予想以上の名前が載っていた。
▼
【蟷螂人族】
▲
「蟷螂……これは当たりだろ」
『間違いなく戦力にはなりますね」
カマキリといえば、捕食者の名で知れ渡る肉食昆虫の代名詞だ。腕そのものが強力な武器に変化している、まさに戦うために生まれたような生物。
これで戦闘力がないとか言われたら俺はもう誰も信じない。
「これはもう、召喚しないという選択肢はないな。DPはどれくらいだ?」
『1人につき800DPです。割と高めですね』
確かに、今までのモンスター達と比べれば大分割高だ。だが、それだけの価値があるということだろう。ここは出し惜しみする必要はないな。
「9人でいい」
『なんで1人分ケチったんですか。まあ、いいです。では、合計で7200DP消費します』
そして、毎度お馴染みの魔法陣が地面に浮かび上がる。今回は、いつもより広くなっているからか、魔法陣もどことなく大きくなっている気がする。
そして、時間も経たずに魔法陣の放つ光から出てきた9つの人影。
それは、俺の身長より高いものがほとんどだ。
……よかった。小さくない。
「……蟷螂人族が9人の兵士、只今到着致しました。チーフ、ご命令を」
俺の目の前に傅く長身の男。その見た目は、レザースーツと革ベルト、暗視ゴーグルのような物が付属しているヘルメットで、腕にはベルトで固定された篭手のようなもの。その篭手は、逆手の方向から刀の刃が飛び出しており、見様によってはトンファーの様な形状にも思える。
全身が光沢のある深緑色のスーツの彼は、微動だにせずこちらをジッと見据えていた。
……戦士というより、スパイとかの、隠密系の格好だ。
目の前の男だけでなく、その後ろで待機している蟷螂人族も見渡す。
パッと見で男と分かるのが2人。あとの6人は女性か、中性的な子供だ。
黒、白、黄土色、様々な色のスーツを身に纏っている者もいるが、ほとんどは緑系の色だ。
スパイなのに蛍光色とはこれ如何に……。
「……よし、よく来てくれたな。皆。……ひとつ聞きたいんだが、お前達は洞窟と森、どちらでの戦闘が得意なんだ?」
「命じられればどのような環境でも。……しかし、戦い易さで言えば、森が一番かと。背の高い草があればなお良いです」
よし、この9人は3階層に配置で決定だな。
「んじゃあ、早速だがお前達には防衛の仕事を任せる。最上層の守りを頼むよ」
「了解しました」
最後までキビキビとした動きで出て行った蟷螂人族達を見送って、姿が見えなくなったところで椅子に座り直す。
「ふぅ……うちのダンジョンも大分賑わってきたな」
『まあ、今まで購入した虫モンスターしか犠牲が出ていませんし、そのモンスターも全員蘇生済みですし、仲間は増える一方ですからね』
「まあ、減るよりはいいけどな」
『ですね』と笑うガイドちゃんの言葉を最後に、拠点内は沈黙に包まれる。
静かな空間にハクビの寝息だけが響くなか、俺はふと手元のモニターに視線を向ける。
「あ、『幼魔虫人』忘れてた」
『そういえばそうですね。先程も言った通り、このモンスターは魔力が多く、魔法系スキルを覚えています。部隊に後衛を投入できますよ』
「魔法は色々便利そうだし、3階層を調整してる合間に育ててもいいかもな」
『主に蟻人族の仕事になりそうですね』
そうだな。いくら赤ん坊を増やしても、育てる人材は有り余っている。ここは一気に召喚しても問題ない
んじゃないか? どんと50人くらい。
「んで、その幼魔虫人は何ポイントだ?」
『1人につき1000DPです』
「高っ!?」
蟷螂人族より割高かよ! というか幼虫人の倍かよ。
それだけ魔法の有無が重要ってことなんだろうな。
「わかった。今度こそ出し惜しみは無しだ。20人召喚する」
『合計20000DPですね? いいのですか光。残り800DPになってしまいますが』
「また集めればいい。余裕はなくなるが、ダンジョンの安全のためなら、先行投資だと思え」
『了解しました。今から幼魔虫人の召喚を開始します』
本日二度目の魔方陣展開。……そうだ。今のうちに蟻人族を呼んでおこうか。
一度ガイドちゃんを止め、俺のベッドで蛹に逆戻りしているハクビに声をかける。
「ハクビ、頼めるか?」
「…………zzz」
「……(イラッ)」
☆
「……(グスッ)」
頭頂部のタンコブを両手で抑えてテチテチと歩く涙目のハクビがそこにいた。
「んじゃあ、頼んだぞ~」
[横暴だ。安眠妨害だ]
「また拳骨喰らうか?」
「……(だっしゅ)」
[ひかりのアホー]とデカデカと書かれたフリップを頭の上に掲げて、ハクビは走っていってしまった。
まあ、仕事はキッチリやる奴だし、問題はないな。
「じゃあ、先に召喚して待っておこうか」
『了解しました。では、召喚に入ります』
そして、ガイドちゃんの声と共に俺の目の前に現れたのは……とても小さな20の球体。
数ヶ月前、初めて召喚した虫人と、そっくりそのままの姿の赤ん坊が、丸く固まっていた。
「……見た目は、完全に幼虫人だな」
『外見的な差異は無いようです。期待するのならば、この子達の進化先でしょう』
さて、それじゃああとは、蟻達の到着を待つだけなのだが…………。
俺は、この時。……まだ事の重大さに気付いていなかったのだった。
「マスター、蟻人族の伝令役、アリシラでございます。ご用件はなんでございましょうか」
1分も経たずに俺の元にやってきたのは、1人の黒騎士。もう名前を聞いても誰だか把握できないくらいに増えているので、心の中では普通に蟻人族と呼ぼう。
「アリシラか。取り敢えず、また育成の仕事を頼みたいんだが」
「…………」
「ん? アリシラ、どうかしたのか? そんなに顔を青くして」
俺が命令を下すと、膝を曲げて騎士の礼をしていた蟻人族が、僅かに体を引き攣らせ、次の瞬間にはわなわなと口元を震わせているのが分かった。
「マスター! ご報告します!」
「お、おう」
急に声を張り上げる蟻人族に驚きながらも、冷静を保つ。
一体、なんだというのか。
「我らが姫、アリス様は、我ら配下に対して常日頃、良き女王として君臨してあらせられます」
「おう」
「そんな姫は、我らとともに、日々成長を続けております」
「おう」
「先日など、めでたくスキルを強化するまでに至りました」
「おめでたいことだな」
そう言えば。2日前くらいに珍しく浮かれた様子のアリスが、俺のところに報告に来たな。
色々喋っていたようなんだが、ダンジョンの調整の片手間に話を聞いていたため、どんな事を言っていたのか思い出せないんだが……。
「そういえば、なんのスキルが成長したんだ?」
「……『カリスマ』です」
「ん?」
「……『カリスマ』。同族の成長を高めるスキルが強化され、『真・カリスマ』になりました」
「ずいぶんテキトーな名前だな。また運営の悪ふざけか。……で、どんな感じに強化したんだ?」
たまに洒落っぽかったり、変だったりする名前のモンスターがいることを思い出しながら、俺は話を聞く。
「……成長補正の範囲が広がり、自身だけでなく、自身の配下の周囲にいるモンスターにまで、同族への成長促進ができるようになりました」
「へえ、それはすごい」
「故に、私達がその子を育てると、もれなく20人全て、蟻人族に進化します」
「…………え?」
…………え?
「もう我々が、新たなモンスターの世話をすることは、難しいと思われます」
★
こうして俺は、解決したはずの子育て問題を再発させるどころか、行き場のない20人の子供達の子守りに明け暮れるのであった。
「進化まであと何日続くんだよーーーー!!!」
『諦めて下さい。お父さん』
「お父さんじゃねぇええええ!!」
俺のダンジョンに、安息は訪れない。
火狩の苦労再び。
そんなことより新しい虫だ!
強い虫と言えば、蜂と蟷螂で二分されるのが基本ですよね。
空の狂戦士と、陸の捕食者。
ですが私としては、カマキリは戦士より、忍者的扱いです。
じゃあ陸上最強は誰なのかと聞かれれば、私は迷わずゲジゲジと答えます。
ゴキブリを越える俊敏性。
自切という切り札を持ち、身軽な形態に縦横無尽なその機動力。
か……かっこいい…………///
若干、親の欲目の様なものが入っていますが、私にとってのヒーローはゲジゲジ一択です。




