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俺が育てたモンスターでダンジョンハーレム  作者: どげざむらい
第一章 蟻集まって木揺がす
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おまけ4 ぎるどいんのゆううつ

……もう、どんな顔で謝ればいいのかわからない。


こんなに投稿が遅れてしまったのは、前々から言っていたようにリアルの事情によるものです。

ようやく山は越えたものの、まだ忙しいことに変わりはありません。

もしかしたら、次の章に入るのはもっと先になってしまうかもしれません。

誰か代わってくれないかしら(チラッチラッ)。


一日一行とかそういうレベルで書いていましたので、当初はカーリィ視点にしようと思ってたはずなのに、いつの間にかギルド員がメイン張っててビックリしました。なので思い切ってギルドメインに書き換えました。

「では、こちらが今回の報酬となります」

「はぁ~い、ありがとぉ~」


 私は、差し出された小さな……とても小さな掌の上に硬貨を一枚乗せます。

 報酬を受け取った少女は、嬉しそうに柔らかな微笑みを私に向けて、硬貨……金貨を胸の前で握り締めました。



 金貨といえば。子供のいる3人家族が、一年過ごせるだけの価値がある金額で、言わずともかなりの大金であることが測り知れる。




 ……あ、私、『セソの町』冒険者ギルドの受付担当、リリアです。

 現在私は、つい最近冒険者になったばかりのFランクの少女……カーリィちゃんの、依頼完了の報告を聞いていました。


 あの日、ついぞ彼女の冒険者デビューを止める事のできなかった私ですが、それからの彼女の働きを見て、あの時の考えは早急だったと、認識を改めています。



「それにしても、ゴブリン討伐のついでに盗賊の拠点を殲滅ですか……これ、Bランク相当の依頼ですよ?」

「えへへぇ…ちょっと運が良かっただけだよぉ」



 既に少なくない報酬額を支払っているというのに、あいも変わらず、サイズの合わないボロ布の様な服を身に纏っている、体の細い少女。

 どこからどう見ても冒険なんて言葉とは無縁な見た目にも関わらず、彼女は、主に魔物や盗賊の討伐等といった、『戦闘依頼』を主にこなしています。


 見た目は完全に、戦う術もなければ我が身を守る力もない、スラムでひっそりと生きている少女。

 しかし、その実は受けた依頼を確実にこなし、既に凶悪な魔物を何体も屠っている実力派少女なのです。



 このギルド内でも、彼女の存在は様々な問題を起こしました。


 まず、彼女を格好の獲物と見たのか、態度や言動に問題のあった低級冒険者の集団がカーリィちゃんを裏路地へと引き込んでいく事件が発生したのですが、その次の日には、ケロッとした様子のカーリィちゃんが現れ、低級冒険者の一団は行方不明になっていました。


 その次に、彼女の格好を見て、「こんな少女が、命を危険に晒してまで働かなければならないなど、間違っている! 安心して。俺が君を保護しよう」と言い、彼女を連れて帰った貴公子風の上級冒険者がいたのですが、その次の日には、やはりキョトっとした様子のカーリィちゃんが現れて、そのハンサム冒険者は行方不明になりました。


 それ以来、彼女の存在は悪い意味で噂になり、「浮浪児の格好で人を欺き、油断した背後から襲いかかる幼女が現れる」とか、「夜な夜な人の生き血を啜る、薄汚い屍鬼グールが現れる」とか、様々な怪談話が生まれることになったのですが……本人は、そのことを知っているのでしょうか?


「しかし、今回討伐した『ダング盗賊団』には、炎の魔剣を持った用心棒が付いていたと報告があったのですが……参考までに、どの様に盗賊団を全滅させたのですか?」

「う~ん、言わなきゃダメぇ?」

「ダメ……というわけではないのですが、この先、盗賊団の討伐依頼を受ける冒険者も出てくるでしょうし、多少でも参考になれば、教えていただけるとありがたいですね」

「……うん、分かったぁ。じゃあ言うねぇ~」


 カーリィちゃんと出会って日が浅い私ですが、その間に、彼女はとても優しい人だということはよく理解しました。

 面倒な事が嫌いなためか、頼まれたことは最初は渋りますが、二度三度と頼み込むと、快く引き受けてくれるのです。


「えーっとねぇ、まずぅ……見張りの人に見つかってぇ……潜入するのぉ」

「それは潜入ではなく誘拐です」

「そのあとぉ……笑いながら近づいてくる人をぉ……殺すの」

「はい。大変参考になりましたありがとうございますもう二度とやらないでください」

「えぇ~~?」


 この子の実力が確かなのは認めますが、やはり見た目が幼気な少女だからか、無茶なことをされるととても心配になってしまいます。


「暗殺型の戦闘が得意なことは前にも説明されましたが、せめて隠密して下さい。一歩間違えたら大変なことになりますよ」

「えへへぇ……できるにはできるんだけどぉ……めんどく「カーリィさん?」……はぁい」


 物凄く嫌そうな顔をしていますが、了承した以上はしっかりと約束を守ってくれることでしょう。

 彼女はそう言う人です。



 「アゲハのいる店でお祝いだぁー」と、あまり盛り上がっていない声ではしゃいでいる彼女がギルドから出て行き、ただでさえ人気の少なかった室内はシンと静まり返ってしまいます。

 私はこの時間が嫌いなわけではないのですが、毎日こうも静寂が続くと、いつの間にか真理に至っていそうで怖いです。




 人は何故生きるのかと考えながら、窓から覗くギルド前の通行人の数を数えていると、そっと扉を開けてギルド内の様子を見ている1人の女性が視界に入り込んできました。


「今は誰もいませんよ。どうぞ、こちらへ」

「あ、はい」


 貴重な客を奪われ、暇潰しの機会を失った隣の同僚が私を睨みつけてきますが、そんなことはどうでもいい。大切なお客様に最大限のサービスを与えるのが私の仕事です。満面の営業スマイルで、たった今入ってきた女性を迎えいれます。


「あら、お久しぶりですね。例のダンジョン探索はもう終わったのですか?」


 その女性は、先日近くの森にできたダンジョンの調査を行いに、本部からやって来た冒険者の一人でした。

 急ぎだったのか、あの時は会話らしい会話もないまま終わってしまったけど、今日は割と本気で暇なので、逃しません。


「あー、えっとですね……調査自体はまだ終わってないんですが、定期的に報告を入れるように言われてまして……本部へ報告書を送りたいんです」

「配達依頼ですね。重要書類として、Bランクの依頼に登録しておきましょう」


 ダンジョンの情報を伝えるというのは、言うまでもなく重要な事です。

 それ故、その情報を伝える人にも、相応の力が必要です。

 ギルド本部があるのは、王城のある中央都市。ここは国の中でも端の方、移動にはかなりの時間が掛かり、その間、魔物や盗賊に襲われることもあるからです。


「お願いします。ああ、それと、サポート登録もしたいんですが」

「え、サポートですか? もしかして……」

「あ、はい。実は今回一緒に探索した『最果ての探求者』の方々に勧誘されちゃいまして……」

「Aランク冒険者のサポートですか! それはおめでとうございます」


 冒険者パーティは、基本的に6人までとされています。

 これは、人数が多くなると、その分チーム内での連携が上手く行かなかったり、報酬の分け前が減ったりして、人間関係が円滑に進まなくなるからです。

 そうは言っても、やはり「数が多い方が有利だ」と言って聞かない人もいます。

 そう言う人達の中には、結局依頼先で喧嘩別れしたり、物資が尽きたり、ギルド内で分け前などの揉め事を起こす人が多く、生存率やギルド員の精神衛生面などを鑑みて、ギルドの原則として、登録できるパーティは6人までと規定したのです。


 しかし、例外はいくつもある。


 例えば、護衛任務の時、護衛対象が既に用心棒を連れていた場合、一時的にだがその者をパーティに加えていい。


 例えば、旅先で遭遇した冒険者が、パーティの全滅などで孤立していた場合、街までの道中、パーティに加えることができる。


 例えば、奴隷には人権がないのでパーティーの人数には含まれない。



 この様に、特例や例外を含めれば、7人以上で冒険をすることも可能なのです。

 また、二組以上のパーティーが合同で行動することもあり、この場合は、パーティーではなく、レイドと呼ばれることもある。



 そんな特例の中の一つ。


 それが『サポート』。役割は、パーティーメンバーへの『戦闘以外』での支援です。

 6人パーティーとは言っても、その中の1人や2人は、旅に必要な荷物を背負う役割を担っている場合が多く、戦闘準備が整っているのならともかく、道中で急に襲われた場合など、十全に戦えるのはパーティーメンバーの半分ほどでしょう。

 旅の安全のためには、幾分か余裕のある量の荷物は必要。

 しかし、不測の事態のために荷を軽くしなければ戦えない。


 そんな時には、『荷物を代わりに持ってくれる』運搬係が欲しいと思う人は少なくありませんでした。

 そして生まれたのが、『サポート』という役割。


 パーティーに含まれない旅の同行者。

 戦闘などの危険な仕事は行わない代わりに、荷運びや、野営の準備など、雑用をこなしてくれる人です。

 深く突き詰めていけば、サポートの存在にはメリットとデメリットの両方が存在しますが、そこはギルド側が細かなルールを決めることで、なんとかバランスを保っています。


「私、戦闘はからっきしですけど、運搬なら誰にも負けませんし、サポートにおいて最も重要な『逃げ足』には自信がありますからね」

「Aランク冒険者の方直々の勧誘ですし、疑い様はありませんね。では、サポートメンバーの証明書を発行致しますので、必要事項をこちらにお書き下さい」


 私は常に常備している用紙を即座に取り出し、カウンターの上に置きます。

 サポートは数が少ないため、登録用紙はいつも余っています。


「ええと……雇用期間は無期限で、専属希望……。はい、書きました」

「確認させていただきます。…………はい、必須事項は全て確認しましたので、今日から晴れてサポーターですね」

「ありがとうございます!」


 証明書を受け取った彼女は、嬉しそうに顔を綻ばせた。


「では、仲間が待っているので、私はこれで」

「はい、どうかいい冒険を」


 そして、噂に違わぬ速さで駆け出していった彼女の背が見えなくなって、ギルドはまた静寂に包まれました。


「……近くにいいダンジョンでも出来たら、もっと賑わうんだろうけどな」


 早く例のダンジョンの調査が終わってくれないものかと、私は暇潰しとして、壁に張り出された依頼書や、『指名手配書』を読みながら机に突っ伏します。


「……そういえば、国王を殺して逃亡中の第4王女、まだ見つからないんですね」


 もう3年も前の事件なのに、手がかり一つ掴めないなんて、とても逃げ足の早い王女様ですね。


















 ……そういえば、今日サポート申請した彼女、3年前に冒険者登録したと書いてありましたか、と。

 私は、手元にある『氏名無記入』の登録用紙に目を落としました。





 ★





「お待たせしました! 無事登録完了しましたから、これからは一緒に冒険できますよ!」

「おお、待ってたぜ嬢ちゃん。さて、それじゃあ7人目の『最果ての探求者』の歓迎パーティと行きますか!」

「そうね、私も久しぶりに飲みたい気分だわ」

「拙者は新しい小太刀を買うために無駄な出費は……ああ、わかったでござる! 拙者も行くでござるよ!」

「……あのダンジョンの宝箱から、美味しいパンを回収してきた。これをつまみに」

「ああ、製法不明な柔らかいパンか。いろんなダンジョンで発見されてるが、一体どうやって作られてるんだろうな」

「まあまあ、そんな話は置いといて、今はこの子の歓迎会でしょ?」

「おお、そうだな。じゃあ、いっちょ派手にやるか! なあ、『エリー』」


 原則……。


「我々の新たな仲間、『エリー』を暖かく迎え入れようではないか」


 冒険者登録の際、偽名の使用は固く禁じられており、名を明かしたくない場合、無記名のみ可とする。

 しかし、無記名者には厳しい身元鑑定ほか、心眼者による罪の有無の診断が課せられる。


「『エリー』さん、これからは一緒に旅に出られますね」


 ……なお。


「……はいっ! この『エリー』、誠心誠意皆様のお役に立てるよう頑張ります!」


 口頭での名乗りで偽名を使うことに対して、ギルド側からの主な罰則は無いものとする。


「私の逃げ足は……速さだけではないことを教えてあげます」


 この規則は、3年前、とある権力者により付け加えられた、ギルド規則である。



「一緒に頑張ろうね、ピーちゃん!」

『……キィ?』


 エリーの懐に隠れていた一匹の虫は、一体何を知っているのだろうか。

カーリィちゃんは意外と強いです。隠された能力をいくつも持っていそうな雰囲気です(持っているとは言っていない)。


そして、例のCランク冒険者に新たな設定追加か!? ……いやまあ、当初の予定通りなんですがね。

取り敢えず彼女には主要人物になって欲しい(願望)。

さて、ダンジョン外でも話が進展し始めておりますが、しばらくはダンジョン内で話を進めたいので、次の章ではまた火狩視点ですよ。喜べ喜べ。




最近は話題になりそうな虫エピソードがないのが辛い。

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