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俺が育てたモンスターでダンジョンハーレム  作者: どげざむらい
第一章 蟻集まって木揺がす
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おまけ2 アリは今日も働いている

お待たせしました。今回は蟻人族の統率者、女王蟻のアリスさんの様子をご覧下さい。

共に育った姉妹がいなくとも、立派に姫様をしているんです。

遠征組、早く帰ってくるといいですね。


……おまけをいくつ作るかで迷っているつい今頃。

「姫様! 次は何しましょう?」

「あら、もう終わったの?」

「はい!」


 私は『女王蟻人族クイーンアントロイド』のアリス。配下の蟻達を産み、統べる女王です。

 ここは私の生みの親である火狩様の運営するダンジョンの一角、私達、『蟻人族アントロイド』が生活するために作られた第2階層『蟻巣コロニー』です。

 この階層は、普通のダンジョンとは違い、土が脆く、人力でダンジョンを広げる事ができる作りになっています。


 ダンジョンの作り方にはいくつかの方法があるようです。

 火狩様の側付きである、ガイドちゃん様から教えて貰った事なのですが……。



 普通のダンジョンは、DPという魔力の様なもの? を消費し、面積を広げていきます。

 その結果出来た通路は、魔法とは違う不思議な力で守られていて、どのような手段を用いても、その壁を傷つける事はできません。


 それが、火狩様のダンジョンの第1階層に当たります。DPで購入した罠(飛び出す槍など)を使用しなければ、穴どころか、土くれ1つとしてこぼれません。壁の外側から来ても、絶対に侵入できないそうです。

 そして、階層毎のダンジョンの敷地面積は上限があるのですが、この方法だと、通路や部屋の広さがそのままダンジョンの面積となるので、面積の無駄ができません。


 その代わり、この方法では、通路を1メートル作るのにもDPを消費してしまう上、あまり凝った形にすることができません。

 更に、その作った空間に元々あった土や石は消えてしまうので、もし、貴重な鉱石があったとしても、回収することはできません。




 しかし、ダンジョンには例外もあり、それが私のいる第2階層でもあります。

 こちらは、最初に面積を指定して、その面積に比例したDPを支払うことで、通路を作らずにダンジョン指定ができると言った方法らしいです。


 この場合、指定した範囲を自分の手で掘ってダンジョンが作れるのですが、そのダンジョン制作の役目を買って出たのが、私達、『蟻人族』です。


 この方法だと、掘り返した土は資源として再利用できますし、鉱石や魔石といった物も採掘しました。

 好きな形に作れるので、私達も割と気楽に掘っています。


 土が柔らかいままなので、簡単に破壊されてしまいますし、いないとは思いますが、外から掘ってきて、ここまでショートカットして侵入されることもあるかもしれませんし、何より、先に面積を指定してダンジョン化するので、最初の方法よりも、使用できる面積に無駄が多くなってしまうのが欠点ですね。




 今は、配下達が通路を広げながら、鉱物を集めているところです。



 ダンジョンを作る。これがどれほど重要な役割なのかは理解しているつもりです。それをこなせるのが、蟻である私達だという事も。

 ……しかし。


「では、続けて作業を頑張って下さい」

「もう上限いっぱい掘り尽くしてしまいました!」

「…………」



 ……でも、私達では仕事が早すぎて、直ぐに暇になってしまいます。


「採掘資源は全て火狩様の元へと送りましたし、やることがありません! 何かお仕事を!」


 私達『蟻人族』は、とにかく働き者です。働いていないと気が狂いそうになる程度には働き者です。

 なので…………。




 もっと、仕事が欲しいです。



 火狩様に掛け合って、仕事を増やしてもらおう。そう思ったのは、何度目のことでしょうか。




 ☆



「仕事が欲しい?」

「はい。なんとかなりませんか? 私達は日々増えているのに、仕事は減る一方で……何か、やりがいのある仕事を貰えませんか?」

「やりがいのあるって言われてもね……」


 ということで、火狩様の拠点まで赴いて、相談することにしました。

 火狩様は、顎に手を当てて、真剣に悩んでくれている様です。


 あぁ、火狩様を困らせてしまうなんて……私はなんと愚か者なのでしょうか……。


「お、おい、急に青ざめて、どうした?」

「……いえ、急に死にたくなったもので」

「本当にどうした!? しに……は!? え!? ちょ、ちょっと待て! 早まるな!」

「……大丈夫です。死にたくなっただけで、死のうとは思っていませんから」

「それも大問題だけどな」


 本当に死んでしまったら火狩様のお役に立つという目標を達成できません。

 私は今回の失態の分も働いて返さなければならないので、まだ死ぬことなど出来るわけがないのです。


「……こんな事でお手を煩わせてしまい申し訳ございません。しかし、我々には働く事が必要なので」

「ああ、分かってる。つい先日レベルが3に上がったから、色々忙しくなるとは思うんだが、いかんせん、人手が必要な仕事はなくてだな……」

「そう……ですか」


 本当に火狩様を困らせてしまっています。ああ、愚か。愚かよ私……こんな私は、女王失格だわ……。


「……やっぱり死のうかしら」

「まてーい! わかった! 近日中に仕事を探しておくから早まった真似だけはするなよ!」

「本当ですか!?」

「あ、ああ。3階層は今のところ、1階層と2階層の間に作るつもりだ。感知系スキルが使えないように、手作りの落石トラップとかを設置したいんだが、その石材の運搬なら、頼む事になると思う」

「そんなことなら、是非私達にお任せ下さい!」


 運搬や掘削、建設は私達の得意分野ですからね。ここは、火狩様のお役に立つチャンスです。


「それと、罠が発動した後、片付けや再設置の手間もある」

「そうですね。手作りですし、再設置も手作業ですよね」

「それだけじゃなく、遠征に行っている9人が帰ってくれば、そいつらを指南役に、戦闘訓練を行ってもらうつもりだ。戦闘員と工作員に分けるから、そこそこ人手は足りなくなってくると思うぞ」

「そうですか。それは良かったです」


 私の生み出す『蟻人族』の種類はランダムで、戦闘を得意とする『パラポネラ種』や『ディノポネラ種』、統率力に長けた『グンタイアリ種』、見張りに適した『ジバクアリ種』、防衛戦を得意とする『タートルアント種』、栽培を得意とする『ハキリアリ種』、物資運搬を得意とした『ミツツボアリ種』、建設と篭城戦が得意な『アロメロス種』。

 他にもたくさんの『蟻人族』がこのダンジョンに、私達の住処にいます。


 1日に最低1人の蟻人族を召喚するのが私の能力の1つ。しかし、それは最低であって、意識すれば1日に10人でも生み出すことは可能なのです。

 私がこの力を使い出してから15日くらいですが、生み出した配下は現時点で20人です。


「では、その事を前提に今いる配下達を選別していきます」

「ああ、頼む」


 これで、将来的な労働は約束されました。

 ……しかし、一番大切な事は今なのです。


「今すぐできる仕事はありませんか? できれば全員で活動できるような……」

「ああ、ある」

「あるんですか!?」


 あるならなんで先に言わなかったんですか!? とも言えるわけがなく、私はただ、恨みまがしい目で火狩様を見つめるだけに留めました。


「あるにはあるんだがな……、その……あまりオススメしない」


 常に眠そうな目をしている火狩様が、いつにも増して気だるそうに眉をひそめる。

 ……一体、どんな仕事なのでしょうか。火狩様がここまで苦しそうな顔をするなんて……。



 ……。


 …………。



 …………ハッ!? 私に言い辛い仕事……まさか、いや、つまり……。






 ひ、火狩様に……よ、夜の……おおお、お務めなど………キャァーーー///





「キオとエマの喧嘩を止めてきてほしいのだが……流石に単身行かせるのは危険すぎるからな。できれば戦える者全員で行って欲しい」

「あ、はい」


 という訳で、私は後輩の喧嘩の仲裁に行く事になりました。



 …………女王って何なんでしょうか。



 ★



「だーかーら! ヤるんなら正面から堂々と一撃必殺だろ!?」

「なんでわざわざ危険な賭けに出るん? せめて死角から確実に一撃必殺やて!」

「テメーも女なら真っ向勝負しかねえだろうがよォ!」

「生存競争に勝ってきたのはいつも狡猾な作戦を立てる奴や!」

「「グヌヌヌヌ…………」」

「……何を言い争ってるのですか、あなた達は」


 鉄プレートの胸当てにランスと言った完全防備に、周囲を完全戦闘態勢の配下で固めたフルバトルモードの私は、新築なのに、まるで廃墟の様にボロボロになった室内で言い争っている後輩バカ2人に呆れていました。


 私の目の前では、短ランのセーラー少女が4枚の羽を激しく震わせ、長ラン特攻服の少女がガチガチと歯を鳴らして睨み合っていました。

 その2人は私の声に気がつくと、同時に振り返り、何事もなかったかの様に殺気を引っ込めます。


「あ、姫さん、チィーッス」

「姫先輩まいど」

「あなた達に姫と呼ばれると、敬われている気が全くしませんね。……それで、一体何が原因なのですか?」


 『蜻蛉人族ドラゴノイド』のキオと、『斑猫人族タイガロイド』のエマ。この2人は、龍と虎という対極的存在……という事は一切関係なく、只々仲が悪い。

 事あるごとに喧嘩をし、些細なきっかけで殴り合っているこの2人に対して、喧嘩を始めた理由なんて事を聞いてもほとんど無意味なのですが、それでも一応聞いておきます。


「いや、それがよぉ、姫さん。コイツと侵入者の殺し方について話し合ってたんだけど……このバカが待ち伏せして奇襲するとか、卑怯臭え事ばっか言うからよ」

「アホ過ぎてあかんわ。敵の戦力が分からんのやから、下手にぶつかり合うのはあかんて。まずは確実に相手を殺せる方法をやな」

「流石、逃げ足だけが取り柄の奴の言うことは違うな」

「なんやと!? ……ふふん、初速で勝てんからって負け惜しみか? 女々しいやっちゃなあ」

「んだとコラ!? その初速しか勝てねえくせにほざきやがるぜ」

「何事も初めが肝心って言うやろ! 敵の反撃を受けん為にも、最初の一撃が大切なんや! この前だって思い切り避けられとったやん、はっずかしー!」

「あぁ!? 結局最後に勝った奴が正義なんだよ! 終わり良ければすべて良しだ。あんときゃそもそも、お前の邪魔が無ければ二撃目で勝ってたんだよ!」

「ウチが悪いって言うんか?」

「それ以外どうだって言うんだよ?」

「「ぐぬぬぬ…………」」


 口を開けば二言目には喧嘩を始めるこの二人に、嘆息が止まらない。

 火狩様……流石にこの仕事は疲れます。


「はぁ……取り敢えず落ち着いて下さい2人とも。私から言わせてもらえば、2人の意見は両方正しいですし間違ってもいます」


 とにかく今は、この喧嘩を止めなくてはなりませんね。さて、上手く説得できればいいのですが……。


「お互いに、能力や得意戦術は全く別でしょう? でしたら、やりたい戦法がお互い違っていても不思議はありません。キオにはキオの戦い方が、エマにはエマの戦い方があるのですから、ここは相手を尊重し、自分とは違うという事を認識し合ってですね……」


 私がそう言い、喧嘩の原因となった内容を解決させようと思ったのですが、私の話を聞いた2人が、同時に首を振ります。


「いや、それじゃ駄目だ。私が戦ってるとまたこいつが邪魔しに来るからな。そん時に息が合わないってんじゃ私が困る。だからここで、こいつの腐った考え方を改めさせないといけねえ」

「それじゃあかん。このアホの戦い方は危なっかしくて敵わんわ。せめて怪我せん様な安全な戦いを覚えさせんとあかんねん」

「あぁ!? 私がんな簡単にくたばるって言いてえのか? 馬鹿言うなって、どんな相手だろうが、鈍足のテメエを逃がすくらいの時間はいくらでも作れんぞコラ」

「もしもの話や! って、なんでうちが逃げる事前提なんや!? バカ正直なキオの戦い方くらい、いくらでも合わせられるわ! 合わせんだけで!」

「はっ! だったらいくらでもコソコソしてやがれ! その隙に私が獲物を全部かっさらってやるよ!」

「危なくなったらウチの助けが必要になるくせによう言うわ」

「アァ!?」

「なんや!?」

「「ガルルルル……」」

「……はぁ」



 ……もう、仲が良いのか悪いのか全然わかりませんね…………けど。


「これはもう、『仲裁』は必要ありませんね」


 だって、これは『喧嘩』じゃなくて、この2人だけの特別な『コミュニケーション』なんですから。

 私は、そっとその場を離れることにしました。

 遠く後ろから聞こえてくる、楽しそうな声を聞きながら。




 ☆




「姫様! もうお休みになられてはいかがですか?」


 日の光が入らないダンジョン内ではわかりにくいですが、今は夜。火狩様からいただいた、木の幹のような形をした可愛らしい置き時計の針は丁度10時を指しています。

 私の一日は、こうして過ぎていきます。今は、配下達に明日の仕事の割り振りを考えていた所です。


「ええ、そうね。そうさせて貰うわ。……じゃあ、配下のみんなにも、もう今日は休むようにと伝えてくれないかしら?」

「了解しました!」


 私達に睡眠は必要ありません。それはモンスターとしての特性の一つです。

 しかし、火狩様はそれを許してはくれないみたいです。

 『必要ない』と『できない』は違う、できることならやっておいた方がいい。と言われて、1日6時間以上の睡眠を義務にされてしまいました。


 普通、寝る必要のないモンスターがいれば、いくらでも使い潰してしまうものだというのに、本当にうちのダンジョンマスターは優しいお方です。


 まだ、少しだけ残っている採掘仕事を行なっている現場の蟻人族と、私の間を行き来していた伝令係の蟻人族の少女が、朗らかに笑いながら礼をして部屋を出ていきます。

 ……さあ、それでは私は寝てしまうとしましょうか。

 着ているドレスを、一瞬で、黒いレースのネグリジェに変化させ、寝床の準備を整え始めます。


「……明日は、配下の皆と、もっと会話をしてみましょう」


 ベッドに布団を敷きながら、そんなことを呟きます。

 仲睦まじい竜と虎の姿に感化されたようです。

 たまにはお仕事もお休みにして、チームワークを高める修行というのも、面白いかもしれませんね。




「姫様、ただいま帰還したであります!」

「姫様! おやすみなさいです!」

「姫様~、ギュ~」

「あらあら……皆、おかえりなさい」



 もうすでに、仲は良いんですけどね。ふふ。



 優しい主様と、可愛らしい配下に囲まれたこの生活は、私の唯一にして、最高の宝物です。

めっきり寒くなってきましたね。

私はついこの間風邪をひいたので、あと4年は安泰ですが、皆様はどうお過ごしでしょうか。

風邪などひかれないようにお気をつけくださいね。


まあ、風邪で寝込んでいても、部屋にいる蜘蛛ちゃん達と見つめ合っているだけで幸せな気持ちになれますからね。

ベッドから見える位置に蜘蛛の数匹くらいを放しておくと、寂しくありませんから、どうぞお試し下さい(真面目顔)




それともう一つ。最近全然執筆の時間を取れなくなってしまい、夜中に寝る間を惜しんで細々と書いている毎日です。

その為、書いた内容を確認したり手直ししたりする暇もなく……お見苦しいものになっていたら申し訳ございません。


皆様の感想は欠かさず見ておりますので、「ここ、誤字ですよ」とか、「この文法おかしい」と言った指摘などくれると、すごくすごくありがたいです。


投稿期間は空いてしまっていますが、今のところ失踪予定はないのでご安心を。

また頑張って時間を見つけては少しずつ書いていきます。


よーし、がんばるぞー。えいえいおー。

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