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俺が育てたモンスターでダンジョンハーレム  作者: どげざむらい
第一章 蟻集まって木揺がす
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第30話 虫も集えば波となる

遅くなり申した。

色々努力したのですが、虫ッ娘を出さない話は、書く気力が沸かないという事が分かりました。

いや、だったら虫ッ娘だせよという話なんですけどね…………。


今回は、虫ッ娘なしでも案外いけるんやぞーという事をお伝えしたかったんです。気力なかったんで、結局描写もイマイチで、一番使えたいこと伝えられてませんがな。



最近、スマホアプリのMHをやっています。虫さん装備縛りをしているのですが、ゲームが元々上手くない私では直ぐに死んでしまいます。

でも、MHの虫装備ってかっこいいですよね。色とか、デザインとか。双剣使いの私は、2Gで使った時の、虫双剣専用音がカッコイイと思いました。


やっぱ、虫は優遇( )されてるなと思った瞬間は、このゲームのこの双剣でした。

 カトリックは、剣を振るう。


『ギッ!』


 胴体を真っ二つにされ、力なく足を痙攣させるビッグローチが転がった。


 カトリックは、また剣を振るう。


『ギィ』

『ギギ……』


 次は、複数のビッグローチが同時に切り裂かれる。



「…………」


 カトリックは、いつまで経っても止むことがないゴキブリの濁流に飲み込まれぬ様、必死に剣を振り続けた。






 見渡す限りの虫、虫、虫。


 人より巨大なゴキブリが、重なり合う程に地を埋め尽くす。


 人の頭と同じ大きさのハエが広い空間を埋め尽くし、高速で飛行している。


 ゴキブリ達の間を縫う様に、人の腕くらいの長さのムカデが這い回り、


 天井からは手の平大のナメクジの様な生き物が次々と落ちてくる。


 小さな蜘蛛が足を登ってくる。



 様々な虫が、波の様に襲ってくる。



 いや、もうそれは……『波そのもの』だった。





 カトリックは、このままでは埒が明かないと悟り、剣に黄金色の魔力を這わせる。



「『ライトレイ・スラスター』!」


 剣を一閃。刃からは、光り輝く魔力が迸る。

 それは剣から離れてもなお、その形を保ち、光の刃として真っ直ぐに飛んでゆく。

 その刃は前方の敵を切り裂きながら辺りを飛び回る。



「『ライトレイ・アロー』」


 天に向かい突き出した剣先から魔力が吹き出す。

 薄暗い洞窟内を明るく照らす、魔力の柱は、空中の虫達を消し去り、天井に突き当たった所で、何十個もの破片に分割。それらは、矢の形に変形しつつ下に這いずる魔物達に穿たれる。



「『ライトレイ・ブラスター』!」


 剣先に魔力を集め、横薙に振る。

 剣の軌道線に魔力の塊が残る。

 その魔力は、一本の光線となり、前方の虫達を焼いた。



 あまり得意ではない攻撃魔法を使いながらも応戦するカトリック。



 魔法の応酬で100単位の虫達を消し去ることはできたが、それでもまだ、数えるのも億劫になる数の虫が視界を埋め尽くしている。


 ……いや、何かがおかしいと、カトリックは気が付いた。




 確かに、カトリックの魔法は虫を屠っている。

 その証拠に、光の刃に切り刻まれたハエの羽がヒラヒラと舞い落ち、光の熱線でバラバラになったビッグローチの肢体が宙に舞う。

 だが、よく見てみると、光に焼かれながらも、ダメージを受けた様子もなく平然と動き回る虫も、何匹かいるのだ。



 カトリックには、一体何が起こっているのか分からなかったが、とにかく、魔法の効かない魔物がいると言う事を認識した。


 ……実際には、それがただの『幻術』により生み出された虫の虚像であるとも知らず。


 この事実にカトリックが気づくのは、10分程後の事になる。



 様々な虫が行き交う空には、場違いな程に優雅に空を舞う、煙の様に不定形な灰色の翅を羽ばたかせる蝶の姿があった事にも、カトリックは気がついていない。




 ▼


【幻視蝶】


 系統:『虫』『不定形』

 属性:『幻』

 成長:晩成

 魔力依存度:中

 食事:不要


【初期所持スキル】

 『物理無効』『幻惑Lv―』『浮遊Lv―』『煙幕Lv―』『透明化Lv―』


 通常サイズの蝶だが、翅は煙のようもので構成されている。その本体に実態はなく、魔力の帯びた攻撃以外は全て通り抜けてしまう。

 翅から出る煙は幻影を出し、敵に様々な幻を見せる。


 ▲



 この蝶の出す幻が、この空間内の魔物の数を増やしている。幻でできた虫は攻撃することはできないが、実態を持つ者がこんなにもいるのだ。攻撃してこない敵がいたところで、気付ける人はいないだろう。



 現在、この空洞内を埋め尽くす虫の割合は、実態と幻で7:1。だが、実態はその数を次々に増やしている。

 それも、とある魔物の働きのためである。



 ビッグローチの影で守られるように。小さな一匹の虫が、壁に張り付いていた。


 その虫は、耳が張り裂けそうなほどの大音量で、鳴いていた。


 その音に釣られてかなりの魔物が別の通路から引き寄せられているのだ。

 カトリックもそれは分かっているのだが、いかんせん、地上の敵が多すぎて近づけないでいた。



 ▼


【騒々蝉】


 系統:『虫』

 属性:無し

 成長:晩成

 魔力依存度:微

 食事:不要


【初期所持スキル】

 『拡声Lv―』『領域Lv―』『警戒Lv―』『大音量Lv―』『引き寄せLv―』『音波Lv―』


 とても小さな蝉の魔物。自分の生活領域に侵入者が現れた時、広範囲に聞こえる大音量の鳴き声を放ち、敵を怯ませる。

 その後、その音に引き寄せられた別の魔物によって、侵入者を殲滅する。

 自身の戦闘力は低め。

 音の衝撃波で微量のダメージを与えられる。


 ▲



 カトリックが部屋に入った瞬間、響き渡る声。そして、次から次へと溢れ出る虫。

 戦い続けること十数分。


 体力も魔力も、限界だった。



 仲間がいない事により援軍も期待できない。

 いつ終わりが見えるかも知らない。

 延々と繰り返される虫の津波に、しかしカトリックには、何の対策も見い出せなかった。


 集中力も途切れ、遂にビッグローチの一匹に押し倒されたカトリック。




 もうおしまいかと思ったその時、カトリックは1つ、あることを思い出した。



(……俺の鎧。レベル10以下の魔物の攻撃は完全無効化だったな)



 『伝説級』の防具、『聖天蒼鎧』。カトリックは大量のゴキブリに囓られながら、今まで役立つ事のなかったおまけ効果を噛み締めた。


 Aランクの冒険者が、レベル10以下の魔物と戦うこと自体ないので、仕方がないのである。


 そして、この瞬間、どちらの陣営にも…………勝ち目は無くなった。




 ☆



「助けてガイドちゃん」

『今すぐモンスターのレベルを上げればいいんじゃないでしょうか』

「出来たら苦労しないな」


 おう、虫溜まりを鑑賞中の群城火狩だ。必死に戦っていた聖騎士を倒したはずなのに、全然傷を付けられなくて混乱している。

 相手の防御力が高いのか、ダメージを与えられない様だ。

 ……これは、虫達にはもう無理か。かと言って、割ける人材も限られるし……ここはもう少し時間を稼いでもらうか。


「『妖怪の間』も『死虫の間』も誰も入ってこないし、今回唯一、人が入ったモンスターハウスだったんだがな」

『そう考えると、他の罠が起動しないというのは少々勿体無いかもしれませんね。この戦闘が終わったら、通路の見直しをしましょうか』

「だな。パーティをバラバラに、っていうのは良い手だと思ったけど、必然的に使われない通路が出てくるからなぁ。……次は別の方法で分断させよう」


 実践で解る弱点もある。

 今日は1つ学んだな。うん。


「神官の方はどうかな?」


 それはモニターを切り替え、最後の1人の様子を見ることにした。

 そこには、特に何もない通路を歩き、たまにある分かれ道も迷うことなく即決して歩いていく神官の女性の姿があった。

 この部屋は、大量の分かれ道のある運試しルート。道を間違えると、罠やモンスターに当たるという作りになっている。

 そして、当たりの道には何もない。


 ……それを、あの神官は一度も引っかからずに、当たりの道を選び続けていた。


「……だから、何なんだよあいつは」


 一番最初の分かれ道と言い。この通路は一番選んで欲しくなかったのだが、そこにピンポイントで入ってきた事と良い、この神官。ただ運がいいって訳じゃ、無さそうだよな……。


 そう思いながらも、俺は神官の様子を見続けることにした。



 彼女のいる通路の最後は……運で超えられるものじゃない事は、よく知っているからだ。

 あの異常なまでの決断力の正体は、上手くいけばそこで見抜けるだろうな。



 ★



「ええと、これはどういうことでしょう?」


 白い生地に青色の装飾が輝く神官服に身を包んだ女性が、その雰囲気とは似合わぬジトジトとした洞窟内を歩く。


 ここは今まで人が入ったという記録のないダンジョンで、勿論神官服の彼女……マリネリースも、この洞窟に足を踏み入れたことは一度もない。



 だというのに、マリネリースの歩みに迷いはない。



 二つの扉と隠し通路の三択でも即座に行く道を決めたし、その後の12個ある扉も部屋に入った時点でどの扉に入るかは決めていた。

 その通路に入り込んでから今までの、21箇所あった分岐も、一度も立ち止まる事は無かった。



 それは、マリネリースの持つ個性……というより、特性によるものが大きいのだが……その話の前に、今は急いで描写しなければならない状況である。



 全ての分かれ道を一切の障害無く乗り越えたマリネリースが、今は初めて足を止めている。


 それも仕方がない事だ。

 今、マリネリースの前に立ち塞がるモノは、ただの分かれ道なんかではない。

 もっと特殊な……こんな洞窟内にはあるまじき障害だったのだ。




『これより試練を始める』




 小さなハエの大軍が、そんな文字を象りながら空中で滞空している。


 マリネリースが知る限り、その文字は森人族エルフのよく使うものだったが、魔法使いのほとんどは、魔法技術の先人と行っても良いエルフの言語を覚えている事が多く、彼女もまた、エルフ言語は読みも書きも可能なため、しっかりと内容が理解できた。



 今までとは趣向の違うギミックに多少戸惑いつつも、敵意は見られなかったためか、まだ冷静にハエ達の動きに目を配らせている。

 ゆっくり10秒、ハエはその文字を浮かばせたあと、次の形を作るために移動を始めた。



 そして、またとある文字が浮かび上がった。




『この文を読んだなら、最後の問いの答えを示せ』




 たっぷり20秒。また、ハエは移動を開始する。






『あるところに、一人の剣士がいた。剣士には、昔馴染みの少女と、唯一無二の親友がいた』


『剣士は少女に好意を向けていた。親友も少女を好いていた』


『剣士と親友は夜が明けるまで話し合い、どちらが少女を娶るのか、少女自身に決めさせることにした』


『その日の朝、剣士と親友は少女の元へ行き、どちらを選ぶのかと聞いた』


『少女は剣士を選んだ』


『剣士は喜び、親友は涙を浮かべながら剣士と少女を祝福した』


『剣士は喜びのあまり、少女と親友を抱き寄せ、永遠の絆を誓った』



『それから数年後、少女は子を生んだ』



『だが、それは剣士の子とは思えなかった』



『髪の色、目の色、顔立ち、全ては親友のそれとそっくりそのままだった』



『少女は偶然だという。親友は身に覚えがないという』




『しかし剣士の耳には届かない。ついに剣士は、怒りのあまり少女を斬り殺してしまう』




『なにをするんだ! そう叫びながら親友が腰の剣を抜く』


『2人は向き合い、剣を構える』




『さあ、何が始まった?』









 それ以降は、いくら待ってもハエが文字を変えることはなかった。

 つまり、ここまでが問いの内容。


 少女の浮気を疑う剣士と、潔白を主張する親友のその後の話だ。


 マリネリースは、深く考え、答えを出す。



「……信じがたい事ではありますが、『殺し合い』、と言った所ではないでしょうか。愛とは人を変えるものです。たとえ、信頼を寄せた親友であろうとも、敵にしてしまえる力があるのだと思います」


 どこか気を落とした様子でマリネリースは答える。


 少女を斬り殺した剣士と、剣を抜いた親友がその後始める事といえば、それが真っ先に思い浮かぶだろう。

 だがしかし、ダンジョンの罠は、そんなに甘いものではない。




『不正解。争いは今望む答えではない。チャンスをあと一回与えよう』



『さあ、何が始まった?』



 そう、その答えは不正解。つまり『殺し合い』……牽いては『争い』に関連する何かではないという事なのだ。


 で、あれば、と、マリネリースはさらに考える。


(何が始まる? 争いはしない……となると、決闘でもないし、仇討ちでもない。なら、話し合い? でも、それじゃあ剣を向けるという行為の意味が成立しない。……いや、考えを改めましょう。剣士側ではなく、親友側を中心に考えてみるのです。剣士は怒り狂って少女をあやめた。親友にとっては、剣士も少女も大切な友人。だから、剣士を殺したくはないし、少女を殺した剣士を許せない。なら、親友のとろうする行動は…………)



 マリネリースは考え、そして、1つの答えを導き出すが、それはまだ口には出さなかった。



(まずは、この問題、間違えたらどうなるのか考える必要があるわね。正解したら次の道に進める。でも、失敗したら? 入口に戻される? 罠が発動して命を奪われる? 可能性は……多いわね。ああ、これじゃ『絞れない』わ……)


 マリネリースは悩んだ。悩み続け、そして…………答えは、出なかった。



「…………わからないなら、正解すればいいのよね」


 ボソリと呟くマリネリースの言葉に、一瞬ピクリと反応したハエだが、回答と認識しなかったらしく、一層羽音を立ててマリネリースを急かした。



 マリネリースは、俯いていた顔を上げた。



「答えは『自殺』。信頼を寄せていた友人の変貌、昔好いていた少女の死。永遠の絆を誓った2人の変化にショックを受けた親友が、生きる意味を失った末、握った剣を自らの体に突き立てたのです」



 酷い試練だ。マリネリースは思う。

 神を信仰する神官の彼女は、全ての報われぬ人を救いたいと、少なからず願望を持っている。

 不可能な事だとは分かっていても。夢は大きく持つものだと、叶わぬならせめて抱いていようと、世界平和という夢物語を胸の内に秘めている。


 そんな彼女に対し、人の愛と、それから来る残酷な未来を見せ付けるというのは、あまりにも酷な話だ。


 だが、何もここのダンジョンマスターだって、そんな事を考えてこの問題を作ったわけではない。

 全ては、ダンジョンに置くギミックの相談を持ちかけられ、嬉々として自分の考えた罠を取り入れさせようとした、掲示板の住民が悪いのである。




 さて、そんな事はともかくとして、今の回答に対してのハエ達の反応はというと…………。




『次回に続く』


「あらぁ?」



 続くったら、続くのである(※次回、このハエとマリネリースの記憶の一部は消去されます)。

Aランクパーティ最後の2人の現状をお届け。

リーダーはどこか抜けている所があります。

でも、戦場で一番生き残りやすいタイプです。


マリネリースさんは聡明です。よくあるうっかり天然僧侶なんかとはわけが違います。

真面目で優秀。そんな評価を「貰っています」。


最後の問題の答え、果たして「自殺」は正解なのか……皆様ならわかりますよね?




ちなみに、ハエちゃん達はこの日のために『集団行動』の練習をしていたとか、いないとか。


「そこ、遅れてるよ!」

「危ない! ぶつかる!」

「羽が当たるって、マジ!」

「ピピーー!!」

「笛五月蝿いよ」

「笛五月蝿いよ」

「笛五月蝿いよ」

「蠅だけど五月じゃねえよ」

「そうじゃねえよ」



楽しそうだったとかじゃないとか……。

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