第24話 孤立無援
話がだいぶ長引くように感じられます。
あまりグダグダしないように頑張りますが、サクサク進むとは言えませんので、それでもいいんじゃないかと言う方はお付き合い下さい。
新しい作品を書いてみました。片手間で、1時間くらいしか掛けずに書いた駄作ですので、そちらもよろしくお願いします!
『どっちが正解だと思う?』
『こっち』
やばい、やばいぞ。これは。
【ダンジョンレベルが3になりました】
んなこと知らねえよ。
【…………】
『火狩、やめて下さい。ナレーションさんが落ち込んでしまいました』
「そいつにも人格とかあんの!?」
『はい、同期です』
「マジか……」
いや、今はそれどころじゃないな。うん。
「なあ、入口の選択肢が即行でクリアされたんだが……あの神官は何者だ?」
『さて。しかし、仲間が一切疑っていないところを見ると、何か、幸運値を上げるタイプのスキルでも持っているのかもしれません』
「そういうものか……あるいは、神官だし、神の声とか聞いてたりな」
『神託ですか。しかし、そう言った類のスキルは、代償が大きいものがほとんどなのですが。最低でも、こんなダンジョンの端くれの入口で使っていい類じゃありませんよ』
「そうか……謎だな」
いや、どんな方法を使ったかなんて、今はどうでもいい事だ。
問題は、その力が、俺の作った別の罠にも通用するものなのかどうかだ。
もし適用されてしまったとしたら…………大惨事である。
「ガイドちゃん、ハクビ。作戦変更だ。まずはあの神官を潰すぞ」
『了解しました。全部隊の配置を入れ替えます』
「…………!(罠も入れ替える)」
こうして、俺と一緒に戦ってくれる仲間のためにも、負けるわけにはいかないんだよ……!
★
『ギギギ?』
「ヒィッ!?」
あの……入って早々アレなんですが……。
帰らせて下さい。
ワサワサワサ…………。
いやぁああああ!!
ムカデ! ムカデです! 1匹だけムカデがワサワサしてます! しかも超大きいです!
「ら、ら、ラインゴッドさんんん…………」
「お、おぉ? あんだ、パラライズピートか。安心しろや。この程度の虫に噛まれたって大して痛くねえだろ」
「いやぁああ!! 近づけないで下さい!!」
助けを求めたはずなのに、ラインゴッドさんはあろうことか、ムカデのしっぽの部分を思い切り掴んで、こっちに近づけてきました! うわぁああ、暴れてる! 気持ち悪い!
『キー! キー! キーーー!! …………キィ』
「お、ほら、大人しくなった」
「は、はぁ……」
……あれ、何か、可哀想に思えてきました。どうしてでしょう。虫ですよ? 大丈夫ですか、私。
「ま、この魔物じゃ、精々Dランク相当だな。あとは魔物の数と、ダンジョンの大きさ、罠の質と……調べる事はたくさんあるな」
「あとで、外れ側の調査もしないとね」
そうでした。私はここを隅々まで調べなければいけないんでした……この、魔物もしっかり見ないといけないんですよね……うぅ。
『ギ……キィ』
握られ、弱ってしまったパラライズピートが、弱々しくも私の足元に縋り付いてきます。噛み付く気配はありません。……それだけ怖かったんですね? 可哀想に。……さあ、こちらに来ましょう。
『キー! キッ!』
そっと頭を撫でてみると、嬉しそうに身を捩ります。……か、可愛い?
「なんか、魔物に懐かれるようなスキルでも持っているのか?」
「ふぇ? い、いえ。持っていませんが……」
パラライズピートを抱き上げる私を見ていたラインゴッドさんが、そんな事を聞いてきましたが、特に懐柔スキルや、調教スキルといった、テイマーの持っているスキルは持ち合わせていません。
「それが、どうしたんです?」
「……いや、なんでもない」
この時、ラインゴッドは違和感を抱えていた。
……スキルなしで、魔物を懐柔できただろうか…………と。
しかし、気づかぬうちにスキルを手に入れているということもあるし、もしかしたら、特別人懐こい魔物だったのかもしれない。そういえば、先程も攻撃性が低い魔物だと感じていた。
そう思ったラインゴッドは、あまり気にかけないことにした。噛まれても、マリネの治癒魔法があるさ、と。
☆
「潜入成功。これからは、もっと簡単に内情を知れるぞ」
『パラライズピートには荷が重い仕事と思っていたのですが、案外通用するものですね』
「……(かわいいもん)」
さて、わざと置いておいた1匹のムカデが、殺されないとも限らなかったが、案外優しい冒険者で助かった。
さて、これからが本番だ。……奥に進まれる前に、あの神官をどうにかしなくてはな。
★
「……罠の類は見つからぬでござる」
レイシンさんが周囲を警戒しながら、奥に進んでいきます。
隠し部屋、魔物、罠は、レイシンさんやルサルカさんが全部発見してくれますし、安心ですね。
「なーんか、変わり映えしないわね。ジメジメしてるし虫だし、つまんないわぁ」
ミスティさんが伸びをして退屈そうに愚痴をこぼします。
「まぁまぁ、お仕事ですから、頑張りましょう」
そして、それを宥めるマリネリースさん。
「……」
喋らないカトリックさん。
「む、隠れている魔物を発見でござる……逃げられたでござるよ」
やる気を見せては落ち込むレイシンさん。
「宝箱の中身は……パン? あっ、柔らかい……」
何故かパンに感動しているルサルカさん。
「なんも襲ってこねえな」
ミスティさん同様、退屈げなラインゴッドさん。
マイペースを貫いている私たちですが……まさか、このダンジョンにこんな仕組みが施されているなんて、思いもしませんでした。
「……ほう、そう来たか」
「なるほど、これは厄介ね」
「どうするでござるか?」
「…………」
私達は、目の前の部屋を見て、立ち止まっていました。
ここは、俗に言う謎解き部屋……なんですかね? ダンジョンにたまにある、条件をクリアしなければ次の通路への扉が開かないといったものです。
広い部屋に、いくつもの鉄の扉が並んでいます。
扉の前には1つずつ、水晶球のような物が置いてあり、水晶球と扉の間の床だけ、周りの岩とは違い、白いラインが入っています。
どうやら、あの水晶に触れると、対応する扉が開くようです。
そうと分かれば簡単。まずは、一番端の扉から開けようと、リーダーのカトリックさんが水晶に触れましたが……何も起こりませんでした。
じゃあ、と思い、全員で触れても何も起こりません。
色々考えた末、今度は、全員、別々の水晶に触れてみた所、見事、触っている水晶と繋がっている扉が、開きました。
そして、扉が開いた後、その場から誰か1人が退いた時、全ての扉が、閉まりました。
……つまり、1度開けたら、真っ直ぐ目の前の扉に向かって進まなければならないということ。
扉を開けるには、1人ずつ、別々の水晶に触れねばならないということ。
…………これは、パーティーを分断する罠です。
「なあ、もしかしたらよぉ、誰かが扉の向こうに行ったあと、また水晶を選び直して、同じ通路に入れんじゃねえか?」
「……いえ、可能性は低いわね。1度誰かが入ったら、その扉の水晶は無効化されるかもしれないわ。多分向こうから開けることもできないだろうし、誰かを先に送るのはリスクが高いわ」
「では、どうするでござるか? この水晶、下手に弄ると爆発する仕組みでござる。そうなると、奥に進めなくなるでござるよ」
「…………」
さて、これから先、どう進めばいいのでしょうか……。
「……取り敢えず、誰か1人入って様子を見てくればいいんじゃねえの? 扉の前までは戻ってこれるだろうし、あわよくば帰れるだろ」
ラインゴッドさんがそう言いますが……危険ではないですか?
「まあ、『伝達』の魔法を掛けとけば、随時状況もわかるし、別の部屋から合流する道でも見つけられれば儲け物と思って、1人斥候が行くのもありかもしれないわね」
「そういうことなら、罠の看破に長けた拙者が行くべきではござらぬか?」
「…………」
「リーダーは行くべきじゃないだろ。ここは、どんな魔物が出るかも分かんねえし、一番死に難い俺が行くべきじゃねえか?」
「…………」
「ルーはここで使うべきじゃないわね。もっと探索すべき所はあるだろうし」
誰が先行するかで、意見が飛び交います。私としては、別行動はかなり危険なので、やめたほうがいいと思うのですが……。
ね? ピートちゃん?
『キ?』
「じゃあ、俺が行くって事でいいな?」
「……まあ、あなたが死ぬ所が想像できないし」
「罠にかかってもケロッとしてそうでござる」
「そもそも、天然で罠とか回避しそうですね」
「好き放題言ってくれんな」
ということで、ラインゴッドさんが行くことになりました。
まずは、端っこの扉から試すようです。
私達は、別々の水晶に手を触れ、扉を開けました。
「で、俺だけ進む、と」
「あの、頑張って下さいね!」
「おう、死にゃしないから安心しろ」
そう言い、ラインゴッドさんはさっさと進んでいってしまいました。
ラインゴッドさんが扉を抜けた瞬間、その扉は閉まり、中の様子は分からなくなってしまいました。
「……あ」
そして、ミスティさんの声から、私は、何か嫌な予感がしました。
「……魔法の妨害が掛けられてるわ。……伝達魔法、切れちゃった」
こうしてラインゴッドさんは、完全に孤立してしまいました。
☆
「よし、うまく別れたな」
『これで、大分楽になりますね』
「あのタンクは、戦闘で倒すか?」
『ですね。硬いだけだとしたら、彼らの経験値としては最適ではないでしょうか。もし、手強い相手なら撤退し、罠に嵌める作戦に乗り換えればいいですし』
「だな。じゃあ、全員出撃だ!」
★
「へぇ、中はこうなってんのか。……で、俺の相手は誰だ?」
ラインゴッドは、通信が切れてから、1人で狭い道を進んでいた。
道中に敵はなく、罠も発見できなかったため、一気に進むことにしたのだ。
そして、辿りついたのは広い空間だった。
円形の空間は、どこかの闘技場のような形をしていて、壁の上を見てみると、観客席のような物があることが確認できる。
闘技場内部、今ラインゴッドがいる場所は、ボロボロの石柱が何本も立っていて、地面は細かい砂。
そして……石柱の上に、何者かが複数佇んでいることに、ラインゴッドは気がついていた。
「…………」
石柱から飛び降りてきたのは、1人の青年。
まるで執事のような、薄紫色の燕尾服を着ている片眼鏡の若い男で、かなり細身で長身だ。
メガネをかけていない方の目を前髪で隠し、その髪は後ろをおさげにしている。
青年は、白い手袋を付けた手を胸に当て、深く一礼。
「ようこそいらっしゃいました。我がご主人様のダンジョンへ。さて、私は一執事として、お客様には丁重な御もてなしをせねばなりません。どうか、ご堪能頂けたら幸いと思います」
凛とした張りのある声。その仕草の一つ一つから、かなり洗練された使用人に思えるが、ラインゴッドに、その方面の知識は乏しかった。
「なんだ、1人だけでいいのか? 他の奴らも一緒にかかって来てもいいんだぞ?」
「いえ、他の方は……その、お客様に失礼な態度を取りかねないので」
一瞬、頭上からの殺気が増したのに気付いたのか気付かないのか、執事の青年は、顔色1つ変えることはなかった。
「……では、参りましょう。『蠍人族』、セル。以後、お見知りおきを」
「おう、『守護騎士』のラインゴッドだ。……さあ、殺し合おうぜ」
この対立が、果たして吉と出るか凶と出るか。
まだ、お互いにその答えは、知らない。
新虫人の1人が登場です。前回から、存在感のあった執事さんです。
執事=暗殺者的な連想から、執事ってストーカーみたいなスキル持ってそうだよね、と思い、デスストーカーさんを選出しました。
執事っ子の蠍さんをよろしくお願いします。おさげですが、一応男の子です。
あ、私は虫なら男の子でもイケるくt(殴
私の作品をよろしくお願いします。