第9話 虫モンスターの使い方
いつもより多めに悩んで出来上がりました。
あるモンスターが強すぎて全然戦いになってませんけど、ダンジョンは戦うだけのものではないことを教えてあげましょう。ああっ! 偉そうにしてごめんなさい!!
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森人族 Lv36
職業:『奴隷』『死霊使い』
森人族 Lv29
職業:『奴隷』『格闘家』
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「ガイドちゃん、この世界のエルフってどういう種族だ?」
『森人族、その名の通り森に集落を作り暮らす。他種族との交流が殆ど無い、閉鎖的な種族です。寿命は平均800年。生まれてから20年目までは普通の人間と同じように成長し、そこから成長が遅くなります。その性質上、肉体を鍛えることができるのは生後20年までで、それ以上はいくら鍛錬を積んでも筋力は余り育ちませんので、精神面の強化が必要な魔力方面、魔法に長けた種族になっています。自然界との相性が良く、精霊魔法と呼ばれる魔法を最も得意としているようです」
俺のよく知るエルフとほぼ一緒だな。
あ、どもども。初戦闘を控えた群城火狩です。……初戦闘だよ? ほんとだよ?
『そして、寿命が長いため、生殖本能は薄く、個体数は少なめ。そのため、奴隷として高い価値があるみたいです。そのせいで、普通人族による大量誘拐事件が起きて、他種族とのわだかまりができたとか』
「そこはあまり知りたくなかったな」
本当、この子は空気が読めるのか読めないのか……。
しかし、今聞いた情報を参考にすると、少し疑問が出てくるな。
「その高価な奴隷を、なんであんな金も持ってなさそうな盗賊被れが連れているんだ? しかも2人」
『そこなんですね。ええ、確かに気になりますけども。……奴隷商人の馬車でも襲ったのではないでしょうか』
「なるほど」
それなら確かに野盗でも、エルフを手に入れるチャンスはあるな。しかし……。
「普通そう言った馬車には護衛がついてるだろ? そう簡単に奪えるものか?」
『もうそこは掘りかえさなくていいんじゃないでしょうか!? きっと弱い護衛だったんですよ。ほら、あの野盗のレベル。30台はそこそこベテランの戦士ですし、今は奴隷を奪い返そうとしている追っ手から逃れてここに来たとかそういう感じではないでしょうか?』
「それもそうだな」
じゃああと、不自然なところは……。
「30台はベテランと言ったな。ならなんであのレベル36のエルフは奴隷に……」
『そこじゃないでしょ!? 経緯はどうでもいいんですよ! っていうか火狩、随分と余裕があるようですね! もっと、「エルフなのに格闘家!?」とか、「精霊魔法が得意なのに属性としては正反対の死霊使い!?」とか言う驚き方があるでしょう!』
「……おおっ!?」
『気付いてなかった!?』
いや、気付いてたけど。なんてコメントしていいのかわかんなかったんだよ。
「……まあ、それはともかくとして、あいつら、まだ入口でウロウロしてるのか?」
『会話内容はわかりませんが、奥に進むかどうかで迷っているようですね』
「音声とか聞き取れないの?」
『そのような機能はありません。……レベルを上げれば、そういった設備も設置可能になるでしょうが』
「それまでのお楽しみってことね」
しかし、会話が聞けないのは不便だな。相手の出方がわからないのに、こっちが動き出しづらい。
……あっ、だからDP払わなきゃ使えないのか。
簡単に楽はさせてくれないってわけね。
『火狩、どうやら動いたようです。奥に進んでいますよ』
言われて映像を見ると、確かに奥に向かっているようだ。『探索者』の野盗、『格闘家』のエルフ、『重戦士』の野盗、『剣士』の野盗、『死霊使い』のエルフの順だ。
さて、ようこそ虫の腹の中へ。入り込んだからには逃がしはしない。
「全軍に通達。やつらを逃がすな。食らい尽くせ!」
さあ、始めよう。今から行なわれるのは戦いではない。一方的な蹂躙だ。
『……火狩。うちのダンジョンに遠隔通信なんて便利なものは無いのですが』
「今すぐ伝令用のハエちゃんを呼んで来い!」
カッコつけると、グダグダになる。
本当にままならないものだ。
これだから人生はやめられない。いや、二回やめたけどさ。
あぁ、やっぱりカッコイイ事言うと締まらない……。
「クソッ! クソッ!! クソッタレがぁ!!」
この俺、ガルディアはムカムカとする苛立ちを押さえもせずに、怒声として思い切り吐き出す。
何故だ。つい数時間前までは全部うまく言ってたんだ。なのになんで!
俺は元王国の兵士だった。だが、詰所の金を盗んでいることがバレて、昨日までは同僚だったはずの奴らに追われる事になり、今は俺と同じような表に出ることが出来なくなった奴らを集めて盗賊団を纏める頭領をやっている。
街から村へ向かう商人の馬車を襲っては金目の物を奪い、最近はそこそこ大きな盗賊団として有名になり始めていた。
だが、それが今日、全部なくなっちまった。
まず、いつものように商人の馬車を狙っていた俺たちは、通りかかった馬車に襲いかかり、積まれていた荷物を奪い取った。
奴隷商だったようで、中には数人の薄汚れた男女と、運がいいことにエルフの奴隷が2人もいた。
エルフは高値で売れるのだ。俺たちは喜び合い、優先的にそのエルフを拘束した。
しかし、その時だった。
1人の仲間の首が飛んだ。
最初は何が起こったのかわからなかったが、笑ったまま転がる首を見て、直ぐに俺は悟った。
敵襲だ!! 追われるのは慣れたもんで、俺達は全員、散り散りに逃げ始めた。
だが、その日はいつも通りとはいかなかった。
逃げる足音は長く聞こえない。草を踏む音が聞こえたと思ったら、次の瞬間には悲鳴が響いている。
……強すぎる。
そう思った俺は、敵の顔を見ることなく、すぐにその場を離れた。
信頼できる2人の仲間と、エルフの奴隷を持って近くの森の中に逃げ込んだんだ。
後ろからは仲間の悲鳴が聞こえるが、立ち止まるわけには行かなかった。
そして、今に至る。
「全部、全部なくなっちまった! 仲間が全員殺されたんだ!」
「ボス、少し落ち着きましょう。あんま大声出すとあいつに見つかりますぜ」
言われて気付く。そうだ。こんなことをしてもあいつらは帰ってこない。
今はただ、生き残らなければ……。
俺が冷静になったと分かるや、俺より前を歩いていた仲間、探索者のディバリーが、前歯のない歯を見せてニカッと笑う。お世辞にもハンサムとは言えねえブサイク面だったが、俺はその笑みに少しだけ元気づけられた。
「そうですぜ、旦那。俺達はあいつらの分も生きねばならんからな」
いつでも豪快な男、ブライアン。木をこる為の物としては、あまりに大きすぎる斧を片手で担ぐ、盗賊団一の怪力男だ。
職業は重戦士で、鎧もなしに『アンガーベア』の突進を受け切ったという伝説を持っている。
この二人が俺の最も近くにいた仲間。親友といってもいい。
「にしても、こんな洞窟、前来た時にあったか?」
「さあ、入口は木の陰に隠れるようについてましたし、見逃したんですかね」
「どちらにせよ、こんな広い洞窟があったというのは幸運だな」
「…………」
俺達が会話を続けても、連れてきた奴隷は一言も話さない。
それも当然。こいつらが付けている首輪は『隷属の印』。しかも、最下位品と来た。これは、行動の一切の自由、会話も含まれるそれが、主人の命令なしでは一切できないと言う制約が付いているものだ。
このレベルの印が付いている奴隷は、凶悪な犯罪奴隷か、はたまた拐われたかのどちらかになるが、エルフということは、後者の可能性が高いだろう。
だが、それがどうした。俺達は盗賊団だ。奪い奪われる世界を真っ向から生きている。今更、誘拐されたエルフ程度に同情なんか出来てたまるか。
化け物みたいな奴に追われている今、このエルフを売ることはほぼ諦めている。まず、しばらくここに潜伏しなければならないんだ。食料も限られるし、真っ先に殺すだろう。
精々、盾として働いて欲しいところだ。
「おい、ちょっと待て」
そんな事を考えていると、ディバリーが立ち止まり、耳を澄ませていた。
ディバリーは探索者だ。あらゆる探知能力に優れ、暗闇でもものが見えるようになる『暗視』、どんな小さな音も聞き取れるようになる『聴覚強化』など、役立つスキルも持っている。
俺は、ディバリーの集中を切らさないように注意しながら、小声で呼びかける。
「……どうした」
「…………何か聞こえる」
何か……洞窟に住んでいる獣の声だろうか。それとも、追っ手か?
「……どんな音だ」
「わからねえ、いろんな音が混じってやがる。虫の羽音とか、カサカサカサカサ、大量の小さな足音が重なってる音や、何かが這っている音もだ。後は…………っ!! 上だ!!」
「!?」
俺は一歩後ろへ飛び、ディバリーが何かを見つけた洞窟の天井に目を運ぶ。そこは真っ暗で、天井の高さすらよく分かりはしなかったが、よく目を凝らすと沢山の何かが蠢いているような、気味が悪く、不可思議な想像が掻き立てられる、不気味な空気が漂っているようだった。
だが、それは想像や妄想ではなく、実際にソレはそこにいた。
なんの予兆もなく、ポツリポツリと生暖かいものが俺の頬を叩く。
雨のようにも思えたが、ここは洞窟の中だ。雨が降るはずがない。
そう不思議に思っていたのは一瞬のこと。洞窟内の不思議な雨の正体がわかった時には、全てが手遅れだった。
「ギャァアアア!! なんだコレ、なん……ッ!! ウォオェエエエ!! くせェ! クセェ! 何だ、コレは……オォェエエエ!!」
「誰か……っ! だず……ウォオオオ!! ぐ……ザイ! グザィイイイイ!!」
「目……目に!! 目に入って……ウガァアアアア!! イイイダイイダイイダイィイイイ!!」
今まで嗅いだこともないような刺激臭。鼻の奥から頭を突き抜け、まるで針のように突き刺さる。
臭いの元はこの雨みたいな液体だ。そう分かっていても、延々と降り続ける雨など、どう足掻いても避けられはしない。
目に入った液体は槍だ。痛い。痛すぎてもはやそれ以外の感覚がわからなくなる。
「く……ソォオオオオ!!」
俺は持っていた銅の剣を天井に向かって投げる。あわよくば、この地獄のような光景を生み出した元凶に一矢報いることができるだろう。
俺が投げた剣は、明らかに岩とは違う何かに当たり、若干鈍い音を立てたあとに俺の傍らに落ちてくる。
その直後、剣よりでかいナニカが、ズンと重々しく地面を揺らし、落下した。
俺と仲間達の丁度真ん中に落ちてきたそれは、黒一色の巨大な球体だ。
前面硬質な殻のようなものに覆われていて、切れ込みのようなものがいくつも入っている。
なんだこれは……、魔道具か?
……いや違う。これは甲殻だ。
……切れ込みが入っているんじゃない。こいつは丸まっているんだ。
でかい……でかい虫だ。
こいつは……。
「モンスターだ!!」
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【大ヤスデ】
系統:『虫』
属性:土
成長:晩成
魔力依存度:極低
食事:不要
【初期所持スキル】
『繁殖』『生命力Lv―』『触覚Lv―』『潜伏Lv―』『腐臭Lv―』『硬化Lv―』
3m程の巨大なヤスデ。動きは鈍く、強力な攻撃手段も持っていないが、背を覆う攻殻は固く、長い体をボールのように丸める事で鉄壁の防御が出来上がる。体から、臭液と呼ばれる毒性の液体を出す。この液体はかなりの刺激臭を放ち、大ヤスデ自身が死亡してしまうほどの強力な臭い。この液体を体内に入れると、毒により死亡する可能性があり、危険。
時間経過により進化する。
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「ふっ、ざけるなぁあああ!!!」
たかが虫一匹にここまで苦しまされたなど、絶対に許されることではない。
鼻が死に、片目も不能になったが、酸を浴びせられたわけでもない。俺は、傍に落ちている剣を拾い、目の前の虫ケラに思い切り振り下ろした。
しかし、片目が使えず、距離感の掴めなかった俺は、剣の振りを誤った。当たり所が悪かったのか、その一刀は攻殻に僅かな傷を付けるだけで、球体状の虫はその衝撃で奥まで転がっていってしまった。
「待ちやがれェ!!」
俺はコロコロと転がっていく虫ケラを追いかける。苦しみながらも、慌てて俺を追って来るディバリーとブライアンには気もとめず、俺は、ただあの虫を屠る事だけを考えた。
エルフの奴隷共が居なくなっていることなど、俺は一切気がつかなかった。
「いやぁ、流石ヤスデちゃんだわ。全国の梅雨明けを阿鼻叫喚の地獄に陥らせたその力は異世界でも健在のようだな」
モニターに映るのは臭い雨に打たれて死にそうになっている野盗達の様子。
それを安全な拠点でニヤニヤ見ていると、まるでドッキリの仕掛け人のような優越感に浸ることができる。
『これは酷過ぎですね。外道と呼ばれても否定できませんよ』
「ああ、大きさが変わればその匂いも強烈になっていくからな。人間よりでかいヤスデの出す臭液の臭いなんて、想像したくもない」
出る家には本当に出るからな。2、30匹ならともかく、日に100や200も出てくれば、虫嫌いな人も克服できるようになるだろう。
ショック療法というものがあるが、あの虫は確実にそのキッカケになるに違いない。
「さて、割といい戦利品も手に入ったし、これは大収穫なんじゃないか?」
『そうですね、エルフの持つ魔法知識を教われば、技石を使わずとも魔法を覚えられるかもしれません』
そんな会話をしつつ、俺は後ろを振り向く。狭い部屋の角で、体を小さくして蹲っている2人の人の姿。なんの特徴もない革のローブに身を包んだ二人は、互いを庇い合うように寄り添い、もう一人を俺から遠ざけるように抱きかかえている。……2人で同じ行動しても意味がないんだが……思いやりの心は評価すべし、だな。
この2人は何を隠そう、あの野党共が連れてきた例のエルフの奴隷である。
え、何も隠せてないって? またまたご冗談を。
で、何故あいつらといたはずのこの2人がここに居るのかって?
そんなもの、ヤスデちゃんが陽動している隙に、ゴキちゃんタクシーで送って貰ったに決まっているだろう。
……おかげでゴキちゃんが臭いにやられて2匹ご臨終した。……恐るべしヤスデちゃん。
ちなみにこの2人も臭いが染み付いてしまっている。拠点が臭くてかなわん。
臭いの元であるあのローブを引き剥がしたい所だが、近づきたくないというこのジレンマ。
「……なあ、そのローブかなり臭いだろ? 脱いだほうがいいんじゃないか?」
「「…………」」
はい、無視ですね。明らかに警戒されてます。だがめげない。主に俺の鼻のため。
「新しいローブはいくつでも見繕ってやるからさ。……一回脱ごうか?」
「「…………」」
なんか、イヤラシイ事してるみたいになってきたんだが……、大丈夫だよな、これ?
もしもこの音声だけ聴いてる人がいても、誤解されないよな?
『完全に誤解されますね』
「そんなわけ無いだろ」
『「……一回脱ごうか?」』
「待て、なんで録音機能なんかついていやがるんだ。その技術を侵入者用に活かせよ。こんなところで無駄な技能発揮するんじゃねえ……っていうかその音声今すぐ消せ!!」
ヤバイ、何がヤバイって部屋に臭いが染み付いてきてることとあとガイドちゃんのせいで俺の立場がヤバイ。証拠品として提出されたら一発でお陀仏である。
『そんなことより火狩、この2人、奴隷のようですし、命令してみてはいかがでしょうか?』
「命令? さっきのお願いとどう違うのか分からんが、やってみるか。……あー、そこのお2人さん。『ローブを脱げ』」
俺の声に反応した2人がピクンと体を震わせ、その後、恐る恐るローブに手を掛け始めた。
おー、ほんとに効いてら。
~♪(オープニングのような何か)
……あ、そうそう、ここでワンポイントアドバイス。
命令の形を、『脱げ』ではなく『ローブを脱げ』にする事。これが重要なポイントだ。
こういう絶対服従系の支配に掛かっている奴隷は、命令をどこまでも遂行する。
だから、命令にはしっかりと『遂行するべき範囲』を決めてやる事が必要なのだ。
安易に『脱げ』なんて言って、全部剥がしてしまうような極悪非道なドジっ子主人公とは訳が違うのさ。
~♪(エンディングのような何か)
「以上、群城火狩のワンポイントアドバイスでした」
『BGMは私、ガイドちゃんがお送りしました。って、なんですかこれは』
「一時の気の迷い」
きっと臭いで頭がイカレテシマッタンダ。
「……」
ふと視線を下げると、脱いだローブを持って俺の目の前に突き出すエルフの2人。……臭い臭い。
……本当にエルフなんだな。
金色の糸のような髪が肩に当たるくらいまで伸ばされていて、その隙間からは、特徴的な細長い尖った耳が飛び出している。
目は宝石みたいな翠色だ。
……にしても臭い。
「ぬ、脱ぎ終わったか。それじゃあ、そのローブは外に放り出しといて」
薄汚れた白の布切れのような服になった2人は、俺が指さした方向、扉のない拠点出入り口に向かってトコトコと歩いていき、ローブの端をつまんで部屋の外に投げ捨てる。……やっぱ臭かったんだな。
俺はすかさずメニュー画面を開き、『強力消臭剤(100DP)』と『火種(1DP)』を購入。
スプレー式の消臭剤は部屋と、ついでにエルフにぶちまけた(エルフは慌てて逃げ惑ったが、無情な俺は追いかけて全身くまなくシューってしてやった)。流石100DPなだけあって効果は抜群だ。……ヤスデちゃん用に常備しよう。
火種のマッチは部屋の外のローブに向かってシュート! 煙が中に入ってこないように『頑丈な扉(50DP)』を設置して完了。
「なんだなんだ!?」
「火事!? マスターは無事なの!?」
「消火だー! って、くっさ!」
「姫様! 臭くて火元に近寄れません!」
「くっ! あそこには火狩様が……火狩さまぁ! どうかご無事で! 火狩様ぁああ!!」
「姫様! 危ないです!! 臭いが移りますから下がっていて下さい!」
「姫様が臭くなったら私、同じ部屋で過ごしていける気がしません!」
「あなた達割と酷いわよね!?」
……なんか外が騒がしいが。気のせいだろう。そうに違いない。
「……あの野盗はどうしてる?」
『ダンジョン内で迷っているみたいですね。刺激臭が目に影響を与えていたのでしょうか、全員、仲間を見失ってバラバラになってます』
「……そうか、この拠点に近づかない限り殺すのは控えろ。ダンジョン内に滞在してくれればその分マナが吸収できるからな。……宝箱を増やして食料でも入れておくか」
『放し飼いですね。絞れるだけ絞ってから、最後に頂くと。とても効率的で素晴らしい方法だと思います』
最初はとっとと殺してしまおうかと思ったんだが、よくよく考えたら、人の殺し方なんて知らないしなあ。ダンジョンを経営するって話を聞いた時から覚悟はしていたんだが、どうもいざとなるとな。……もう少しだけ整理をつけて、そのあとであの野盗共は俺達の糧になってもらおう。
結局、このダンジョン初の戦闘は、ヤスデちゃんのワンサイドゲームになってしまった。
その上、結果は物理的勝利にして精神的に敗北という、訳のわからないことになった。
敗因はもちろん俺の心。……ダンジョンを守るためにも、覚悟決めないとな。
本日の戦闘
犠牲:『ビッグローチ』×2 死因:『窒息』
戦闘報酬:『臭いエルフ(消臭済み)』×2 状態『奴隷』
エルフのこれからの処遇はまだ決めてません(えっ)
成り行きだらけの作品ですが、こんな作品がランキング上位に登りつつあるのは奇跡でしょうか。皆さん、本当にありがとうございます。
それはそうと、この作者、作中のヤスデの描写の資料として、ヤスデ 画像で検索してみたんです。
悶えました……なんですか、あの生き物。あんなのが地球に存在していていいんですか?
滅茶苦茶可愛いじゃないですか!
この世のものとは思えない造形! まるで媚びているかのような腰(腰? うん、腰)の動き! あれは人を萌え死にさせるために生まれた生物です。そうに違いありません!
早速外に出てヤスデをツンツンしてきました。モジモジしてて可愛かったです。
おら、ここがええんか? ここがええんやろ?
くっさい汁出すなやこら、感じてるんか?
……気付けば、2時間の時が過ぎていました。
虫っ娘は俺の嫁。異論は認めない。




