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その9

 食器などの後片付けも終わり、ライカさんとアデラさんはまた集中して調合するためにそれぞれ離れた机に行ってしまった。


 お腹いっぱい、略しておっぱいになってやや眠いけど、午後からもしっかりとスキル上げに精を出そう……、と思ったのだがそれは一旦中止して、必要なスキルを入手する事はできたのでこれからの暮らし方、生活方針について考えてみる事にした。

 ちょっとずるい特別スキルの効果を知ったおかげでさらに幾分か心に余裕が出て来たのかもしれない。スキル上げを急がなくて済むのはずるいとかそういうレベルではない気もするが……。


 ちなみに『生産品質向上』のスキルは、名前が知られているだけでどこの誰が持っている、とかそういった噂は全く流れていないらしい。あまり吹聴して回るのはやめておいた方がよさそうだ。




 まずは改めて現状の整理から。


「私の今の手持ちは3千ゴールド……、借金も2万ゴールド近くありますけどね。まずはどういう使い方をしていけばいいと思います? 生活費の事も考えないといけませんよね……」


「生活費もとりあえず暫くの間は私が全て立て替えますから、その3千ゴールドはお小遣いのつもりで好きに使ってもいいですよ。もし使い切ってしまってもある程度ならまた貸してあげますからね」


 まだまだ私を膝の上に乗せたまま降ろす気配のないレナ先生が、笑顔で超絶甘やかし宣言をする。

 まるで初孫が出来たお爺ちゃんお婆ちゃんの様な甘やかしっぷりだが……、しかし!!


「駄目です! 甘えすぎはよくないですから! でもおっぱいには毎日でも甘えさせてもらいますけどね」


 これ以上甘やかされ続けると私はきっと駄目人間、じゃないや、駄目エルフになってしまう。実際既になりかけているかもしれないが、本当に手遅れになってしまう前に考えを改めなくてはならない!。


 こうなったら、これ以上借金を重ねる事態に陥った場合は独り立ちなんて最初から無理な話だったんだと諦めて、レナ先生の子供なり跡継ぎなり何にでもなって調合一本生活を送ろうと思う。それがせめてもの恩返しというヤツだ。

 それはつまり、レナ先生以外のおっぱいが揉めなくなるという厳しくも険しい道に進まなければならないと言っても過言ではない!


 軽く背負ってみたが、なんという重さ(プレッシャー)だ……!!


「そうですか? 私はもっと甘えさせてあげたいのですけどね……。どうしましょうか? カリンさん」


「私も甘やかしすぎはよくないと思うよ、いくらスーちゃんが子供だからってね。とりあえず毎月決まった金額返済していく事にしよっか……、と言いたいところなんだけど、最初の一月二月くらいは練習程度に調合しながらこの町で生活するっていう事だけを目指していこうよ。スーちゃんは森から出て来たばっかで町での暮らしなんて全く分からないだろうし、いきなり借金返済を考えさせるのは厳しすぎるからさ。んふふ、それくらいはお姉ちゃんたちに甘えときなさいって!」


 う、それは確かに……。

 一日100ゴールドあれば最低限生きていける。私が知っている情報はこれだけで、この町で本当に一ヶ月3千ゴールドで生活していけるかどうかはまだ分かっていない。

 その状況で借金の返済とスキル上げ、さらに今後の衣食住その他についても考えを回さなければならないのは、うん、厳しいと思う。


 一歩一歩確実に前へ、か。まずはこの町で暮らしていく、という事だけを考えてみようかな。結局二人にかなり甘える事になってしまいそうだけどね……。


「素材の入手方法などまだまだ教えなければいけない事は沢山ありますから、それがいいかもしれませんね。暫くは工房に毎日通って3レベルを目指し……、と、寝泊りの場所はカリンさんと同部屋の予定でした? 私はできたらここに住む事をお勧めしたいのですが……」


 そういえば素材を自分で採取できれば元手ゼロで調合ができるんじゃないか? その辺も後でしっかりと教えてもらわなければね。ん? ここに住む?


「うん。私がいつも使ってる宿の同じ部屋の同じベッドで仲良く寝るつもりだったけど……、工房って寝泊りできる部屋があるの? でも子供一人置いて行くのはちょっとねえ……」


「あ、休憩用の仮眠室みたいな部屋はありそうですよね」


 でも仮眠室って、ベッドが並んでるだけで他には何も無さそうなイメージがあるね。知らない人ばかりの中で眠れるかどうかは不安だけど、お金が掛からずカリンさんの負担も軽くなると考えると……、これ以上我侭を言う訳にもいかないしいい提案かもしれない。


「いえ、工房には仮眠室も勿論ありますが、お勧めしたいのはそちらではなくてですね。ふふふ、私の住んでいる所で一緒に暮らしませんか? というお誘いです」


「へ?」「え?」


 うふふふふ、ととても楽しそうにしているレナ先生。


 それって……、レナ先生は工房に住んでいるっていう事? あ、宿直室みたいな部屋かな? イメージに合わないなあ……。



 突然のお誘いに戸惑いながらも詳しく話を聞いてみると……。


 工房の各生産部屋の代表者、先生には、工房のすぐ隣に専用の建物が居住スペースとして用意されているらしい。なんという特別待遇。

 個人の研究のためという名目で各人の部屋以外にも複数の部屋が用意されており、現在住んでいるのはレナ先生ともう二人、調理と裁縫の先生でどちらも女性とのこと。あと四、五人入居者が増えたところでなんの問題ないいくらいの広さなんだそうだが……?


 ちなみに鍛冶スキルの先生は男の人で、さすがに女性三人の中に男一人で入っていく訳にはいかないと入居は断ったらしい。実に紳士的である。



「あー、隣のあの大きな宿屋っぽい建物かー! 何だと思ったらそんな、ってお風呂もあるんだ? 宿にはお風呂なんて無いから羨ましいなー。ふふ、よかったじゃん。スーちゃんとの新生活は楽しみにしてたからちょっと残念だけどね!」


「い、いいんですか? そんな特別施設みたいな場所に勝手に住んでも。見つかったらレナ先生の立場が……」


 恩を仇で返すような事になったら……、今の私には謝る以外の償う方法すら浮かばないっていうのに。


「はい、何一つと言っていいくらい問題は全くありませんよ。それとですねカリンさん? 少し思い違いをされているみたいですが、貴女も宿を出て一緒に住んでもらいますからね? カリンさんもスノーの保護者の一人なんですから」


「へ? はあ!? ど、どうして? いや、お風呂ありでしかもただ宿ときたら断るどころかこっちからお願いしたいくらいなんだけどさ……。レナ先生ちょっと無茶してない? スーちゃん可愛さに判断力が下がっちゃってるんじゃないかな」


 私的にはカリンさんとレナ先生と一緒に暮らせるとか、天国にも等しい家になりそうだから大歓迎したいんだけど……、さすがにこればっかりはやりすぎだよねえ? それともそんなに私を娘として可愛がりたいんだろうか……。

 いや、反対に考えるんだ。レナ先生は実はこの町、は言いすぎか、この工房ではかなりの発言力を持つお人なんだと。あはは、いくら四人しかいない先生の一人だからってそんなまさかな話がある訳が……、うん? この工房に四人しかいない……?


「無茶なんてしてませんし、冷静ですよ私は。それに保護者であるカリンさんも一緒に暮らすのは当然の事ですからね。こうなったら言ってしまいますけど、そもそもこの工房自体が私の持ち家なんですから、本当に何も問題はないんです」


 なにそれ超こわい。


「ここってレナ先生の家なんですか!?」


「マジで!? あ、レナ先生ってお金持ちなんだっけ? 冗談じゃなく?」


「知らなかった!! あっ、あー!! 失敗しちゃったじゃない!!」


「初耳」


「初めて言いましたし、秘密にしてましたから」


 ふふふ、とにっこり笑顔のレナ先生。機嫌が良すぎて逆に不安になってきてしまうのは何故だろうか……。



 さらに詳しく説明をお願いしてみたが、これ以上は特にこれといって話す事も無いみたいだった。確かに何をどう聞けばいいか一つも思い付かなかったのだが……。

 一つだけレナ先生の方から教えてもらえたのは隣の建物を自分の家だと秘密にしていた理由だけで、他の職人見習いの人たちが泊めてくれとやって来る事を防ぐために、先生たちの個人の仕事場の様な扱いにしていたらしい。


 駆け出しの頃の辛さは先生たちにも分かるけど、だからといって全員無条件で甘やかす訳にはいかない、という事か。それなら尚の事私という例外を作ってはいけないと思うんだけどな……。


 とりあえず現在一緒に暮らしている二人の先生はそのあたりの事情も含めてちゃんと理解しているみたいなので、改めて了解を得たりなどの必要は一切なく、レナ先生がいいですよと許可を出せばそれだけで済む話なんだとか。まあ、大家さんの決めた事ならそれも当たり前か。



 その先生たちについても四人からどんな人物なのか簡単に教えてもらう事ができた。

 ライカさんとアデラさんはもう今日のスキル上げは諦めたらしい。騒がしくしてホントにごめんなさい。



 まずは一人目、調理スキルの先生の名前はクリスティーナ先生。通称クリス先生。


 『料理なんて愛情とか憎しみとか殺意とか、食わせる相手に対する感情をぶち込めば美味く出来るんだよ!!』

 という納得していいのかいけないのかよく分からないモットーの持ち主で、冒険者のカリンさんも知っている結構有名な人らしい。


 つまり料理とは気持ちが大切という事か。物は言いようっていう言葉の極みだね。しかし名前の優美さと乱暴なセリフが合わないこと合わないこと……。


 他は実際に会うまで内緒だけど、会ってみれば絶対に驚くから楽しみにしておけとニヤニヤしながら言われてしまった。

 ライカさんとは結構気が合うみたいで、先生と言うよりお友達に近い仲。そしておっぱいも同じくらいのサイズらしい。なるほど納得、という表情をしていたらデコピンされてしまいました。超痛い。



 二人目の裁縫スキルの先生は、名前はソランジュ先生。通称ソラ先生。


 ソランジュ先生はミストユークというとても珍しい種族の人。性格はとても温和でのんびりとしていて、レナ先生とは同じくらいの年齢という事もあってとても仲が良いようだ。

 ミストユークという種族については、分かっていない事の方が多いみたいなので詳しくは聞けなかったが、とにかく魔力が多い種族らしい。


 またもや会うと驚くだろうからこれ以上は内緒、と説明を打ち切られてしまったが、おっぱいが大きめの人だという事だけはなんとか聞き出す事ができた。

 大きなおっぱいに囲まれる生活が待っているぜ! げへへへへ。とニヤニヤしていたら、何故かレナ先生におっぱいに抱き寄せられてしまいました。超幸せ。



 最後に、調理の先生と裁縫の先生も保護者としてと一緒に暮らす事になるのだから、衣食住に関しては本当に一切心配しなくてもいい、とのお言葉を頂いた。レナ先生の本当の狙いはこれだったんだろう。


 アデラさんは極普通に、ライカさんはちょっと羨ましそうに、カリンさんはかなりの呆れ顔で、でも三人とも笑顔で、よかったね、と言ってくれた。



 いや、泣いてませんよ? みんなのあまりの優しさに嬉しさと申し訳ない気持ちが溢れてしまいそうだけどね。

 四人には、あ、後二人増えるのか。とりあえずこの四人にはどうにか感謝の気持ちをもっと伝えたいね。ありがとうの言葉だけじゃ全然伝え切れないよ。


 とりあえずおっぱいを揉みまくる事をお礼としようじゃないか。まずはレナ先生から気持ちよくさせてあげ、あっ、やっぱり先っぽは摘んじゃ駄目でしたか! 拳骨でグリグリはやめてくださ、っきゃー!!!




 その後はもう調合部屋まで閉めてしまい、日用品の買い出しに町へと繰り出す事になった。

 レナ先生が最強すぎるのか、それとも調合がそこまで不人気スキルなのかは怖くて聞けなかったが、ええと、こういうのは何て言うんだったか……。とにかく凄く楽しい。


 前世の私にもこんな友達や家族が一人でもいたら少しは違っていたんだろうな、と一瞬考えてしまったけど、全く意味の無い考えだったので即座に頭の隅に追いやっておいた。







新キャラはまだ名前だけ。でもすぐに出て来ると思います。

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