テストの夜は、君の隣で
暖かい紅茶を啜り、数学の参考書へ目を落とす。
ややこしい式が書かれたそれと戦い始めて、早2時間。
時計の針は午前三時を示しており、俺の眠気も最高潮だった。
「わっかんね…」
がしがしと頭を掻きむしっても、理解できるはずもなく。
もう数学捨てちゃおうかなぁ、漫画読んじゃおうかなぁ、なんて、何十度目かの現実逃避。
ふと窓へ視線を向ければ、隣の家にも明かりが灯っている。
窓と窓が面していて、多少危ないが渡れる距離だ。
窓を開けじっと見つめていると、向こうの人影も動いた。
シルエットが揺れ、窓を開ける。
「調子どう? 黒崎くん」
そうにっこり笑いかけたのは、同じクラスの雨宮。
高校入学と同時にこの土地へ引っ越してきた、秀才タイプの優等生だ。
「もーわけわかんね。雨宮は?」
「んー、なんとか? 良かったら教えようか?」
「こんな時間に? まじで」
笑いながら問い返すと、まじで、と頷く。
「窓からだったら親にばれないし、渡ってきなよ。ちょっと危険だけど」
ちょっと危険だけど、と言いながらも、雨宮の顔は面白そうだ。
午後三時に同じクラスの女の子の部屋に入るとはなんとも言えないが――――、ここは、誘いに甘えることにしよう。
「よろしくお願いしますっ、先生!」
俺はノートと筆箱を脇に持つと、雨宮の部屋へとお邪魔した。
テストの前夜は、まだまだ長い。
もーね、勉強しようよ私。
けれど、もう三時なので寝ます。←
あ、明日現文だけだし…っ!
これだって、書くのに15分もかかってないから…大丈夫…。