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第25話・辿り着いた真実


()()()()()()()()()()()()()()()()()──」


 大使の発言を聞いた瞬間、全員が黙った。先ほどまで騒がしかった応接の間にしばし無言の時が流れる。


 薄々気付いてはいたが、わざと見て見ぬ振りをしていた。そんなはずはないと否定していた。感覚が麻痺していたというか、非常時だからおかしくなっているだけだと無理やり思い込もうとしていた。


「……なんか、皆さま王様のこと好き過ぎません?」


 ティルナの一言が静寂を破った。彼女は昨日初めて私と会い、巻き込んでしまった下働きの女性である。これまで私どころか宰相のローガンや大司教のクレイ、王宮医師セオルドなどの高い身分の者に接触する機会はほとんどなかった。故に、今回の出来事を一歩引いた冷静な目線で見ることが出来るのである。


「ジークは国王だ。我ら家臣が敬うのは当然のこと」

「でも、行き過ぎてる感じがするんですけど。なんかおかしいの、皆さまも分かってらっしゃいますよね?」


 ローガンの模範解答にティルナが食ってかかった。禁呪の布が手中にあるからか、かなり強気な態度だ。この状況を打破したいという強い意志を感じる。


 違和感は最初からあった。死んでから現在に至るまで、引っ掛かるものが確かにあったのだ。


 問題提起をする際、女神アスティレイアはなんと仰っていたか。なぜ我が国は滅亡するのか。今一度思い返してみよう。



──滅亡に至る理由は人口減少と後継者不足よ。



 人口が減ることと後継者不足は切り離せない問題である。単純に考えれば、結婚率の低下に伴い国家を維持できなくなるほど出生率が下がる。優秀な者が子孫を残さぬまま生涯を終えてしまい、未来のロトム王国は未曾有の人材不足に陥る……ということか。


 ハッとして、私は応接の間にいる者たちを見まわした。


『この中に結婚している者はいるか!?』


 私の問いに女官長一人が挙手し、他の全員は沈黙した。聞かずとも知ってはいるが、改めて考えるとおかしいとしか思えない。アストとサヴェルはまだ二十歳になったばかりだから良いとして、問題は他の者である。


 マティアスとローガン、クレイとセオルドは私と同世代の三十代半ば。ディーロとフレッド、オラードとダビエドは二十代後半。大使はもうすぐ四十だが隣国の人間のため除外する。我が国の主な有力貴族の男が軒並み未婚という事態は明らかに異常だ。


『なぜだ、なぜ結婚していない!』


 大変な問題に気付いて焦る私に、ティルナとエルマが呆れ顔で溜め息をつく。


「それ、王様が言っちゃうんですか」

「自覚されていないって罪ですよね」


 二人はもう答えに辿り着いているようだ。ここまで来れば鈍い私でも理解せざるを得ない。認めたくはないが、恐らく我が国が滅びる原因は……


『──わ、私のせいか』


 愕然とした。まさか自分に原因があるなどと考えたことすらなかった。私が国王に即位したせいで、みなの人生どころかロトム王国が存亡の危機に瀕している。どこで選択を間違えたのか分からない。


『戦後の復興やら何やらで忙しかったから気にも留めなかった。私はおまえたちに将来を考える暇すら与えず、自分だけが結婚して世継ぎをもうけて……』


 他の国はどうか知らないが、気が利く国王ならば家臣に良い女性を紹介するのかもしれない。政略結婚になってしまう可能性もあるが、日々仕事に追われていては出会いすらないのだから多少は仕方がない。


『い、今からでも遅くはない! 王宮内外から若い女性を集めて集団見合いをさせるのだ! 全員は無理でも、何組かは成立するかもしれん!』


 名案だと思って提案して見たが、全員から「は?」という冷めた視線で睨まれてしまった。


「やっと自覚されたかと思ったら的外れな……」

「女性との出会いがないとか暇がないから結婚してないってワケじゃないと思いますけど」

『どういうことだ?』


 問い返すと、ティルナは仁王立ちしてビシッと私を指差した。肩に羽織った禁呪の布がマントのようにはためいている。


「みんな王様のことを恋愛的な意味で好きだから、他の人なんか眼中にないってことです!」


 なんて???


『ロ、ローガン』

「私の生き甲斐は隣でジークを支えること。結婚など時間の無駄だ。心配せずとも、パスメナス家は遠縁から養子でも迎えて継がせる。もしくは、今アリーラが身籠っているジークの第二子に継いでもらえたら願ってもないことだが」


『ディーロ』

「女性は可愛いから嫌いじゃないけど好きにはなれませんね。既に本気で好きな方がおりますんで」


『フレッド』

「オレが結婚? ジョーダンじゃないっスよ。陛下以外にゃ勃たないんで無駄っスね」


『アスト』

「陛下に助けてもらった日からオレの人生は始まったんだ。他の人なんか要らない。他の人に時間を使うくらいなら陛下のために働いて働いて働いて、役に立ってから死にたい」


『サヴェル』

「僕もアストと同じだよ。陛下がいなけりゃ多分十年前に死んでた。だから、僕の命はぜーんぶ陛下のために使う」


『オラード』

「陛下以上に俺を高揚させる女性がいるのなら連れてきてほしいものだね。ま、無理だろうけどさ」


『ダビエド』

「私の全ては我が王のために捧げております。女など財力に惹かれてまとわりついてくる鬱陶しい羽虫のようなもの。我が王より優先すべき存在とは成り得ません」


『クレイとセオルド……は確認せずとも良いか』

「くふふ、わたくしの愛情が伝わっているようで安心いたしましたよ」

「生憎、陛下以外に性的興奮を感じたことないので……」


 個々の意見を聞き、軽く絶望した。


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