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【なろう版】私を拾ったスケベ野郎がタイムリープ中の運命の相手でした。  作者: 白米


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6/8

街へ

よろしくお願いします。

「おはよう。」


ふっ


「……っひゃっ!?」


スタスタスタ。


「っ…はあ?!なんなの、もう!!」


熊を倒した日から、ルカがおかしい。

やたらと距離が近いし、セクハラ紛いのちょっかいが増えた気がする。

その度、「また間違えた」とか嘯いてるけど、二人しかいない空間で他人と間違える訳ないんだからそんな無意味な嘘をいちいち吐かないでほしい。

腹立つだけだ。


今も、わざとらしく耳元に息を吹きかけるようにして朝の挨拶をしてきた。

こっちが狼狽えると余計に嬉しそうにするので、余り過剰に怒れないのも癪な理由のひとつだ。



斃した親熊の肉は、捌いて近くの村へと持っていくことにした。


あの日の翌日、解体作業を終えてからは、なんだか何もする気が起きなくて、ソファに無言で蹲っていた。


そこへ、飲み物を二人分持って、ルカがやってきた。


「どうしたの。なんか、悩んでる?」


いつも私が使っているタンブラーの方を手渡しながら、ルカが尋ねる。


「んー…、なんか、後味悪いなあと思って」


くぴりと、もらったお茶を一口含む。

甘い。優しいミルクの味がする。


「ベルグリズリーの親子のこと?」

「そう。…大体、なんでこんな魔力の小さな森に来たのかしら?彼らのテリトリー対象にはそもそもならないと思うのだけど」

「たしかにね」

「他にも、この森にはおかしなところがやっぱり多い。外来の魔獣が集まっているのも、理由が明確じゃない。…ギルドはこの状況を把握できているのかな」

「なにか追加情報は来てないの?」

「ここへ来てから街に戻っていないから…緊急のメッセンジャーも特に来ていないし。」

「…手を引いた方がいいんじゃないの?」

「ルカはどうすんのよ。住処が荒らされたら困らない?」

「俺は自衛する策くらいならある。いざという時は、まあ、色々と」


またそうやって、はぐらかす。


「街に戻ったら?家があるんでしょう?」

「…………」


はい、お次はだんまりですね。

わかります。

いつもそうですから。ん、いつも?


「なに。街に居られない理由でもある訳?罪を犯して隠れてるとか?」

「違う」

「じゃあ、どうしてこんな住みづらいところで生活を続けてるわけ?あんな豪勢な整備を小屋に付けてまで」

「…………」


ルカは、言いたくないことになるとこうだ。こうなったら絶対に話してくれない。

仕方ないので、タンブラーのお茶を全て飲み干して、立ち上がる。

すると、背中側からぼそりと低い呟きが聞こえてきた。


「…月が変わる前に、街へ行く」


椅子に腰掛けたまま、ルカはちらりとこちらを見た。

ふうとあからさまな溜息をついてみせて、私もまた、応える。


「私も行くわ。報酬になるアイテムが溜まってるし、情報を仕入れたいから。」


こうして、ルカと私はベルグリズリーの件の約二週間後ほどした頃に、街へ行くことになった。

ルカは、街から馬車を呼んでいてくれている。


…ということは、電信魔法か何かの道具もこの家にあると見た。

やはりこの男はなんというか、肚の底が見えない。


馬車に揺られて、口数の少ない気まずい時間を過ごすこと、約二刻半ほど。


街に着いた私は、なんとなく集合の時間と場所を定めてからルカと別れて行動することになった。


とりあえずは、害獣駆除で得た骨やら牙やら皮やら、希少価値のある内蔵の部位などを溜め込んだ袋を背負って、臙脂色の屋根がある方へと向かった。


大きなカウベルが鳴る音がして、店の中の人間が一斉に入り口を振り返る。


「やあ」と一声かけて笑うと、この赤髪を見て『ニコリナ』を認識した人たちが、私の周りに賑やかな輪を作る。


皆、屈強な騎士や冒険者たちだ。

各々実力だけを見てものを言う。


そんな彼らにこうして笑顔で迎え入れてもらえることが、今の私の誇りでもある。


「久々じゃねえか、ニコリナ。死んでなかったか?」

「わかんない。何回か死んだかも」

「笑えねえ冗談いってんじゃねーよ!ニコリナは俺の嫁にならないと死んでも死に切れねえよな?」

「やだよ」

「何をう?!」

「だって、あんた結婚したら仕事辞めてくれってタイプでしょ?あたしは嫌よ。冒険者は辞めない。それに、あんたみたいな向こう見ずな冒険者を夫にするなんて御免だね」

「向こう見ずはお前もだろ?」

「まあね。だから、私は結婚しません」

「くっ…いつか見てろ!」


言い負かされて、ぐぅと喉を鳴らすほぼ同期に、みんなが「辞めとけ」とか「お前にゃ荷が勝ちすぎる」とか言って肩を叩いている。


以前、滞在した魔窟周辺の街で知り合った人たちが多い。

若い娘一人の冒険者でAランクは珍しいから、どこのギルドへ行っても目立つし、おまけにこの赤髪赤目の風貌がそれをより一層際立たせる。


初めライバル心ばちばちで来るやつもいるけれど、結局みんな気の良い人間が多い。

拠点に集まればこうして互いの近況を交換したり、他愛のない話で盛り上がることができる。

この付かず離れずの関係が私にとっては居心地がよかった。


逆に年若の娘だからと侮ってきたり、変に世話を焼いてくる奴もいるが私の実力が判るとそういう人達はひっそりと消えていく。


ここは、ギルドに隣接している鑑定所だ。

ギルドの掲示した案件を請負う以外で、素材やらなんやらの質を確認して換金してくれる。

冒険者にはなくてはならない施設のひとつだ。


鑑定所には大抵バーが併設されていて、結果を待つ間はそこで皆酒を煽っている。

鑑定結果をちょろまかして報酬をピンハネしようとする輩が生み出した設備らしいが、冒険者はザルばかりなのでただ居心地の良い待合室が出来ただけになったとかいう。

まあそれはそれで、双方儲かっているからいいんだろうけど。


輪の中の一人が、お前も一杯やれよとショットグラスを滑らせてくれる。

年長の冒険者たちは皆、羽振りが良さそうだ。

「ありがと」と返しながら、きゅっと一口で飲み干す。

それから目的の鑑定を依頼する為に素材受け取りのカウンターに、ハイヨっと掛け声して袋をどかんと乗せた。

その質量を見て、周りの冒険者たちもカウンターの中の鑑定士も騒ついたのが分かった。

それだけ、私の集めた素材量は異常だということだろう。

我ながら今回はかなり稼げてる方なんじゃないかと、鼻が高くなる。

ふふん。


「おお、お前もやってんなぁ。じゃ、今日はニコリナの奢りか?」

「やだな。ベンさんの方が稼ぎがいいくせに…、みんな、カルラの森へ?」

「ああ。ここんとこは、カルラが一番景気がいいなあ。…掲示板はそればっかりだからな。みんな集まってきてる。お前もだろ?」

「そうよ。でも、こんだけ大勢で取り掛かってるのに、いつまで続くのかしら?なんていうか…じわじわと集まってきて、キリがないのよ。スタンピードとも訳が違うし、魔力は変わらないのに…」

「ん、だなあ。…敷地は広いが森の魔力はせいぜい中の下程度なんだが、最近はどうしちまったんだか」


二つ前の拠点くらいから知り合った年長者のベンさんは、くいっと蒸留酒をひと飲みしてから態とらしく首をぶるりと振った。


換金がしばらくかかるとのことなので、先に買い出しに行くことにした。


「俺も行くよ」と待合所にいた一人が私に付いてきた。

彼はこの街に来てから知り合った新米冒険者のカイトだ。

金髪碧眼の爽やか系男子だ。

爵位のある家柄だと噂で聴いた。

わざわざこんなむさ苦しい冒険者所帯にくることないだろうに、こいつも変わり者だな。


「ニコリナは、今どこを拠点にしてるの?やっぱりカルラのなかに野営?大変じゃない?」

「んーー…や、知り合いの家に仮住まいしてる」

別に後ろ暗いことがあるわけでもないのに、何故が曖昧な言い方をしてしまう。

「へえっこの街に知り合いがいるの?」

「いや、ここに来てから知り合った、ていうかね」

「じゃ、俺と変わらないじゃないか。森に通うの大変じゃないの?」

っていうか、森に住んでます。

けど、そんな奇特な一般人はあんまりいないからなあ。説明したら面倒くさくなりそう。

「ね。そしたら、俺のところ、一緒にこない?森の入り口は近いし、結構いい設備の宿屋でさ…隣の部屋、まだ空いてたよ?」


がしりと、何気ない感じで肩を組まれる。

冒険者同士ならよくあるスキンシップともいえる範囲だ。が。

彼はまだ、ニコリナを『女子』として見ている分類なのだよね。もう少ししたら目を覚ましてくれるかなあ。

ギルド関連の人間関係は崩したくないので、こういうの厄介なんだよなあ。わたしは曖昧な言葉を返す。


「あー…、うーーん。そうね」

「俺、ニコリナともっと仲良くなりたいんだ。なんていうか、近い空気を感じるんだよね」


肩に添えられた指がつつ…と僅かに肌を滑る。

ぞわりと鳥肌が立って、今すぐ走り出したくなった。


「あー…カイト?あのね「ニコリナ!!」…っ?」


唐突に名を呼ばれて、それに乗じてカイトの腕を振り払うようにして振り向いた。

そこには、ひどい表情をしたルカがいた。

大量の画材を小脇に抱えている。

彼の登場に、心から安堵して私はルカに笑いかけた。

ところが彼の剣幕はいまだ恐ろしく、その顔のままずんずんこちらに歩いてきた。

あれ、私なんか悪いことしましたかね?


「ルカ様…!」


ふとルカの後ろを見やると、小間使いらしき少年が彼に懸命に呼びかけていた。


「…呼ぶなここで。…あとでまた手紙を送るから」


ルカは少年にそう言い捨てると、私の元にやってきてグッと手首を掴んだ。力が強くて少し痛い。

この細っこい体のどこにそんな力があるんだか。


「…帰ろうか」

「えっでも、まだ時間あるし。買い出しが…」

「あと何が残ってる?」

「保存食と、パンと。…あと服も買い足したい。換金も終わってないし」

「分かった。一緒に行く。どこ?」

「えーと、あっちのマーケット」

「分かった。…君は僕の代わりに同行してくれていた荷物持ちかな?ありがとう。ここまででいいよ」

「…なっ、なんだ、お前!俺はなっ」

「じゃあカイト!またね!」

「えっ?あ、に、ニコリナぁ??」


ルカは、私の手を握りしめてぐんぐんマーケットに歩き出した。

また黙り込んでしまった。

なんか、空気がわたしを責めてくる。

気まずいことこの上ない。


「あの…ルカ?」

「…あーいうの、タイプ?」

「へっ?」

「モテそうだよね。彼」

「………はあ?」


それきり、ルカはまた話さなくなってしまった。

マーケットについてからはテキパキと食材を選び、画材と合わせて荷馬車に届ける手配をした。

その間、ルカはずっと私の手を握っていたけど、私は何故だかそれを指摘することができなくて、徐々に湧き出る手汗にひやひやしながら彼について行った。


そういえば、ルカと手を繋いだのは初めてのことだった気がする。

ありがとうございます!

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