調査1 猟犬と猟師 その2
翌日。
犬飼と二階堂は、情報解析課の報告から容疑者が借りた可能性が高いレンタカーショップへ向うため、警視庁の地下駐車場にいた。
二階堂の車に乗る犬飼。
「あの〜・・・今日は安全運転でお願いしますね?」
犬飼の上目遣いのお願いを、二階堂は鼻で笑う。
「何言ってる犬飼。俺は、いつでも安全運転だ」
「嘘だぁあああ!!!」
二階堂はいつものように、法定速度ギリギリのスピードを出しながら現場に向かった。
その道中、何度かドリフトをし犬飼がGで首が鞭打ちになりかけているのを、横目で楽しみながら。
…
ー現場付近のレンタカーショップー
レンタカーショップの従業員よう控え室の一室で、犬飼と二階堂は店長が資料を持ってくるのを待っていた。
「本当に、容疑者の情報出てきますかね?」
「出てくる・・・やつは素人だ。盗難車を用意すると言った芸当も知らんだろ」
二階堂は、めんどくさそうに話す。この事件、引っかかることがありすぎて、釈然としないと言った態度だ。
「えぇ〜!?あんなことしたのに!?二階堂さん、今回ばかりは、その感当たんないんじゃないですか〜?」
「じゃあ、賭けるか?俺が勝ったら、ニャイッチとやらを俺によこせ」
その提案に、犬飼は拒絶反応を出す。
「いやです!!4回目の抽選でやっと当たった宝物っすよ!!!」
そうこうやりとりしていたら、奥から店長がやってきた。ふたりは、気分を切り替え起立する。
「いや〜・・・すみません・・・なにしろ4ヶ月前のことでしたから、探すのに手間取っちゃって・・・」
「いえ、こちらこそ、ご協力ありがとうございます」
二階堂が代表してお礼を言うと、店長が座るように促し、ふたりは着席する。その後、店長がふたりと向かい合うように椅子に着席した。
「4〜5ヶ月前に契約した人の契約書です・・・お役に立てばいいのですが・・・」
「ありがとうございます。拝読します」
二階堂の発言を合図に、犬飼は契約書の束に手を伸ばす。性別が女性のものを弾いているのだ。
二階堂は、犬飼が仕分けた契約書の性別が男性のものから、確認を始める。免許証のコピーと監視カメラの画像を照らし合わせながら。
パラ・・・パラ・・・
規則正しい、紙をめくる音が数分続いた。そして、その音が止まった。
「あった」
二階堂が目的の人間を見つけたのだ。二階堂も作業の手を止め、監視カメラの写真とレンタカーショップが控えていた免許証のコピーを確認する。
「うわ・・・!ほんとだ」
そこには、山田たちが“野球マン”と呼んでいた男がレンタカー契約した契約書があった。
…
ー1週間後ー
二階堂と犬飼は、容疑者のマンションにいた。朝から貼っている仲間からの報告では、容疑者はマンションの自室にいることを確認している。
ふたりは、容疑者の部屋の前につくと、インターフォンを鳴らした。
ガチャ・・・
控えめなドアが開く音がすると、男が出てきた。
年齢は20-30代ほど、見た目はスポーツをやっていたと一目でわかる体つき。第一印象は、爽やかなスポーツマンだと大半の人が言うだろう。
二階堂は、ドアを閉められないように片足をドアに滑り込ませると、逮捕状を見せる。
「大谷翔平太だな?警察だ。逮捕状が出ている。署まで同行頂こうか?」
大谷は、観念したように項垂れた。
「はい・・・」
…
ー警視庁 取り調べ室ー
「・・・んで?バッターがデットボール受けなければ、サポーターがヒートアップしなければ、その子はしななかったと?」
犬飼は、大谷から聞いた話を確認する。
「はい・・・」
大谷は、俯きがちに動機内容について同意する。犬飼は小さくため息をついた。
「そんで?どうやって爆弾作ったんすか?」
「はい。AIチャットに聞いたら、作り方の手順が載っててその通りに・・・」
大谷の供述に嘘を言っている様子はなかった。犬飼はA4の白紙とペンを出す。
「じゃあ、その手順を書いてくれますか?覚えてる範囲でいいんで、後携帯のAIチャットの履歴見るけど、いいっすよね?」
「・・・はい」
大谷は、犬飼の指示通りに爆弾作成の手順を書いた。これが二階堂をさらに違和感の迷路に誘い込むことになる。
…
ー警視庁 鑑識ー
「うーん・・・無理だね?」
鑑識の初老の男性が、大谷の書いたメモと携帯のAIチャットからの爆弾生成のプリントを見ていた。
「え!?」
犬飼が、その発言が意外だったのか、声に出てしまった。
「だって・・・これ、材料も仕組みもでたらめだもん。もしうまくいったとしても、線香花火ぐらいの威力しか出ないけど、それでも成功確率低いだろうね」
「・・・やはり、そうでしたか」
鑑識の説明に、二階堂は納得する。その時、情報解析課の担当者が走ってきたのか、息を切らせてやってきた。
「ハァ・・・!いた!!大谷の携帯の中身を確認しました。爆弾の材料を購入した、アマソンの販売店の情報は消されています!」
「え!?」
犬飼が、矢継ぎ早にやってくる新情報に、驚くことしかできない。
「やはりそうか・・・」
ただひとり、二階堂を除いては。彼は情報解析課の担当者に向かっていう。
「爆発直前のスタジアム内部の映像は出せるか?」
「はい」
二階堂と担当者は、早足で歩きながらその場を去ってしまった。犬飼を置いて。
「あ・・・二階堂さん・・・!待ってください〜!」
犬飼は、鑑識に渡した資料を慌てて回収すると、鑑識に会釈してから、バタバタと走っていった。
それを鑑識は微笑ましく見ていた。
「今度は、失うなよ。二階堂・・・」




