表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

救済1 野球スタジアム爆破計画 その2

ー真白の天啓から1週間後ー


写真の男のことを、山田と古賀は便宜上、“野球マン”と名付けた。


山田は野球マンのオフィスに来ていた。オフィスビルの清掃員の格好をして。


ちなみに、このオフィスビルが契約している清掃会社も、真白の信者が経営と人事を担当している。


山田は、清掃員の帽子を深く被ると、深呼吸した。


「・・・いくか・・・」


そう呟くと、野球マンのオフィスビルに入って行った。


野球マンが働いている階は5階。今日はそこの清掃という名目だ。山田は、野球マンのオフィスに行くと彼の席に向かう。


机を拭くふりをしていると、野球マンのデスクに、プライベートの携帯が充電されているのを発見した。どうやら、充電したまま離席したようだ。


山田は、野球マンが戻ってくる前に素早く携帯を起動させる。ロックがかかっているようだったが、あまり重要な問題ではない。


彼は専用の端末をかざすと、すぐに野球マンの携帯に同期プログラムを読み込ませる。


(昔みたいに、USBダウンロードさせなくていいから、良い時代になったもんだ。Wi-Fiだけで同期させることができるんだから)


端末の同期率が、上がっていくのを眺めながら、昔を少し懐かしむ。そして、誰もいない野球マンのデスク島周辺の清掃を開始した。


画面をチラリと見ると、同期率87%とあった。


(もう少しか)


その瞬間。背後から声がした。


「あの、俺のデスクに何かようですか?」


山田は驚いたがすぐ平静を装いながら、振り向く。振り向いた先には、写真の男“野球マン”が不思議そうに立っていた。


「あ・・・!あぁ!すみません・・・!清掃をさせていただいておりました〜」


山田は、へらりと笑って見せた。野球マンはしばらく彼を睨むと、ため息をついてきた。


「じゃあ、清掃は、もうやめていただいても良いですか?仕事の邪魔なんで」


「は・・・はい!大変失礼致しました!すぐ退きますね〜」


山田はなるべく弱々しく見えるように努めながら、清掃道具を手早く片付け、その場を去る。


もちろん、同期が100%になった端末の回収を忘れずに。


彼は、野球マンにヘコッと腰を折ると、そのままオフィス全体をしばらく清掃した後、その場を後にした。


オフィスから出て、清掃会社に辿り着き、清掃員の制服を焼却処分してもらってから、外に出た。


入り口で、古賀が携帯をいじっていた。


「なんだ古賀、俺に会いにきたのか?」


山田が揶揄うように、古賀にここにいる目的を尋ねる。古賀は山田を見ないが、携帯を操作する手を止めなかった。


「まぁ、そんなところ。携帯の件、ありがとね。また連絡するよ」


「あぁ・・・」


山田と古賀は短く会話すると、何も言わずにお互い、別々の方向に歩き出した。


山田が仕掛けた同期端末が、思っていたより早く効力を発揮するとは、2人も思っていなかった。



ーその夜ー


古賀に呼び出された山田は、古賀がいくつか借りているマンションの一室にやってきた。


「やぁ、早かったね。どうぞ入って」


「随分と”野球マン”の動きが速いじゃねーか、何したんだ?」


古賀は、席に座るように促し、山田にお茶を出した。


「これと言ったことはやってないけど、彼の携帯に入ってたAIチャットアプリで、愚痴ってたから、そのAIの設定を少しいじっただけさ」


「AI?」


山田が不思議そうな顔をしているのを察したのか、古賀がノートパソコンの画面を見せた。


「野球マンは、AIに今回の事件の構想を鬱憤を晴らすが如く、呟いてた。だから、その構想を実行しやすくするように、AIに構想を褒めるようにいじったんだ」


山田は、古賀のノートパソコン画面を見た。そこには、野球マンが考えていた犯罪計画が記載されていた。


『野球場爆破!


爆弾を作り、電光掲示板に設置する


時間になったら、爆発する


観客とバッターのあいつを事故を装って・・・』


山田は眉を顰めた。


「おい。小学生でも、もうちょい詳しく考えるぞ」


FBIの工作員舐めるな。と言いたげに、野球マンの代わりに古賀に苦言を呈した。


「僕に言われても・・・。あ、でも僕が調整したAIがいい感じに回答したみたいだよ」


古賀にそう促され、山田はもう一度AIチャットのやりとりを見る。


『素晴らしい考えです!手軽に作れる爆弾の作り方を以下に提示します・・・』


『その爆弾の材料ってどうやって買うの?』


『こちらのURLから購入可能です』


「おい、こいつ良いカモじゃないか。詐欺られてないのか?」


山田は、野球マンの素直さに日常生活が心配になってしまった。古賀は苦笑いをする。


「ここは日本だからね。必要最低限の警戒心があれば、詐欺に引っ掛かる可能性は低いと思うよ」


そういうと、古賀はノートパソコンを操作し、アマソンのショップページを見せる。


「先ほど、彼から購入されたよ。これで住所ゲットだね」


古賀の管理しているアマソンの取引履歴には、商品名はこう書いてあった。『ドッキリセット』


(もうちょっとマシなネーミングはなかったのかよ)


山田は、心の中でガクッと項垂れた。この後、野球マンがAIチャットの力を使っても、爆弾制作ができなかったので、FBI仕込みの爆弾作成をするハメになるとは知らずに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ