救済2 世紀の大泥棒参上! その3
ー真白の天啓から7日後ー
黒井経由で、泥棒キッズが送ったとされる犯行予告状が画像で古賀宛に送られてきた。
「あ、届きましたよ」
「マジでどこにでもいるんだな、真白の駒は」
山田は真白様の駒の多さに、内心ドン引きしていた。
「まぁ、あんなに協力者がいなきゃ、僕は今頃“犬”
になってませんよ〜」
笑いながら言う青桐を横目に、ジェットは古賀の方を向く。
「犯行予告状はどんな内容だ?」
古賀は、ジェットに促されるままにノートパソコンの画面を3人に見せた。
“春に昼と夜が同じ日、日が隠れる時、馬と共に、南大陸の太陽をいただきに参上します”
「イテェ!!!」
山田は思わず叫んだ。
「プクク・・・いや〜・・・お気持ちはわかりますよ・・・ふふ、これに振り回される警察は大変ですね〜」
青桐は笑いを堪えるので必死だったが、ついにダムが崩壊したのか笑い崩れた。
「何を笑っている?予告状ぽくていいではないか」
ジェットは感心しているが、彼の興味は次元大⚫︎にしかないので、どうでもいいという気持ちが大半を占めているのだろう。
「とりあえず!この暗号とかないと!ですよね?」
古賀がみんなの空気を正そうと、少し大きな声を上げる。笑い疲れた青桐が、呼吸を落ち着けながら、古賀を見る。
「簡単ですわ、春分の日の夜7時でしょ?」
「はやいな」
ジェットが感心する。青桐は椅子に腰掛けた。
「山田さんもわかってらっしゃると思いますよ〜」
ジェットと古賀が山田を見る。山田は、めんどくさそうに話し出した。
「春分の日は、朝と夜の時間が同じ日だ。それに、馬と共には十二支を鼠を午後0時として考えると、7番目だから7時だろ?」
「正解〜さすがFBI」
青桐が山田にウィンクを送る。山田はため息をついた。
「別にFBIじゃなくたって、ちょっと考えたらわかるだろ」
これで、泥棒キッズの犯行計画がわかった。問題は、春分の日まで2週間しかないことだ。
「時刻がわかっても、どうやって盗ませるか?ですよね?」
古賀がため息混じりに言う。
「当日の警察と警備員を全員真白の信者にできないのか?」
「できるかもしれないですけど、不自然ですね〜ボロが出ると思います」
ジェットの疑問に、青桐がすぐ回答する。山田はさっきまで走り抜け、疲れ切った頭でつぶやく。
「あーあ、泥棒キッズが勘違いして俺らが用意した建物に入ってくれれば楽なんだけどな〜!」
それを聞いた青桐は、何かを閃いたように顔を輝かせた。
「さっすが!FBI!」
山田のこの発案が、この後あんなに大掛かりなものになるとは、彼は知る由もなかった。
…
ー真白様の天啓から9日後ー
山田、古賀、ジェットは、閉館した下野美術館にいた。
「本当に今日でいいんだな?」
山田は古賀に確認を取る。
「はい。今日が、真白の信者が全員警備員として配備できた日です」
「んじゃ、行くか」
古賀とジェットは山田の後に続く。警備員の前に立つ。警備員はニコリと笑い帽子を取る。
「お疲れ様です。真白様の加護が在らんことを」
「あー、はいはい」
山田はうんざりと言った感じで返事をする。古賀は人のいい笑みを返し、ジェットは黒いキャップを深く被った。
「・・・真白の犬になって楽なのは潜入だな」
山田がポツリと言うと、古賀が案内図を見ながら道案内をする。
「その代わり、失敗すれば即死ですけどね」
ジェットは美術館の展示に興味があるのか、キョロキョロしている。山田たちが話している間にも、警備員が現れたが、全員にこやかに会釈するぐらいだ。
ちなみに、監視カメラの映像は古賀が誰もいないものと差し替え済みなので、カメラの視覚を気にせず、客のように堂々と廊下の真ん中を歩くことができる。
山田たちが雑談しながら歩いていると、目的の場所に到着した。
南アフリカの太陽と呼ばれる宝石が展示されている特別展示室だ。部屋は電気が消えているが、廊下から入るわずかな光に反応して、輝いている。
「・・・ついたか」
ジェットが、肩に抱えていたボストンバックを地面に下ろし、銃を迷いない動作で組み立て始めた。
その間に、山田と古賀は赤外線ゴーグルをつける。
「うわッ!どんだけあんだよ」
山田は文句を言う。山田が赤外線ゴーグル越しに見たのは、無数に張り巡らされた赤外線センサーだ。幾重にも重なった赤外線センサーは手編みのセーターのようになっている。
「少し待ってくださいね」
古賀が、赤外線ゴーグルで見えているデータをノートパソコンに繋げて解析を始めた。しばらくすると、解析完了の通知音がなった。
「角度割り出せました」
「こっちも組み立て完了だ。いつでも撃てる」
山田はどうだ?と言わんばかりに2人の視線が彼に集中する。
「〜ッ!!なんで俺ばっかり肉体労働なんだよ!!」
山田は、来ていた服を脱ぎ、身体のシルエットがわかるぐらい、タイトな作業着姿になった。
そう、犯行予告当日は厳戒態勢の警備がされるため、素人の侵入は無理と判断した4人は、警備が手薄な日に本物とレプリカを入れ替えることにしたのだ。
「マジで、うまく行くんか?この作戦全部!!」
山田が文句を言いながらも、手袋をつけて準備を進める。
これから、青桐が考えるトリックのために、あたったら即警報の綱渡り作戦が始まる。




