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救済2 世紀の大泥棒参上! その1

某日、アタツ区。


山田は、喪服に身を包み、北百住駅に着いた。商店街を突き進み、住宅街に出ると看板があった。


『山田家 儀 葬儀場』


それを見た山田は顔を歪ませた。彼は看板の案内の通りに進むと、すでに何人かの老人が集まって、受付を行なっていた。


山田も受付を形だけ済ませると、古賀がすでに座っていた。


「古賀も来てたのか」


「お久しぶりです。山田さん。ジェットさんも来てますよ」


古賀に言われ、彼の隣に座っているジェットを見る。ジェットは、足を組んだまま腕は頭の後ろで組んでいる。


(不謹慎なやつ)


山田は、ジェットに葬式の態度について、注意しようと思ったが、辞めた。どうせ、碌な返答にならないからだ。そう思った瞬間。


「古賀・・・葬式では、死者が出てくる時もある。だが、話しかけるな・・・山田の弔いのために」


「俺は死んでねーよ!!!!」


やっぱり、“山田”という文字で、ジェットは山田が死んだのだと思っていたのだ。山田の声に気づいたジェットは、深く被ったキャップ越しに山田を見る。


「山田・・・生きていたのか・・・?」


「おかげさまでな!!!!」


山田は古賀の隣にドカッと座る。


「お行儀悪いですよ。仮にもお葬式なんですから」


古賀に咎められたが、知ったことではないと山田はそっぽを向く。


役者が揃ったのか、黒井烏がお経を読んでいる和尚の前に現れた。心なしか、お経を読む音量が小さくなっているので、黒井の声が聞こえやすくなっている。


「諸君らに、真白様の天啓を伝える!!」


黒井は、相変わらず長い手を羽のように伸ばした。彼は木魚のリズムに乗って語り始める。


「今回、救いの手を差し伸べるのは、この男!」


彼の合図とともに、前に座っていた老人たちが振り向いて、山田たちに写真を渡す。


(和尚もこいつらも、真白信者なのか・・・)


山田はこの異様な空間に、戸惑いながら、写真を受け取る。


年齢は16-18歳ほど。高校生のようだ。そばかすが目立つが、どこにでもいる平々凡々な男の子だ。


「この男児!壮大な夢を抱えている!洋画で見た大泥棒に!憧れているのだ!」


黒井は正面を向いたまま、後ろへジャンプし、和尚の手前にあった、木製の棺桶の上に飛び乗る。


(不謹慎すぎんだろ)


山田は呆れた表情を見せた。古賀は黒井の大道芸を素直に感心しているようだ。


「それはなぜか?そう!彼は自信の無さから人の輪に入れない!だから世紀の盗みを行い!度胸をつけたいのだ!」


黒井は棺桶に乗ったまま、片膝をつけ天を仰いだ。スレンダーな身体かつ、柔らかいので綺麗なカーブをつけている。


(んな計画実行する度胸があるなら、人に話しかけろや)


山田は心の中で悪態をつく。ジェットは引っかかるワードがあったのか、足を揃え、身を乗り出して聞いている。


黒井は棺桶の上で、和尚の木魚とお経に合わせながら、見事なタップダンスを始めた。


「彼は!決意した!下野美術館で展示されている南アフリカの太陽と呼ばれた100万カラットのダイヤモンドを盗むと!」


ラストスパートが近いのか、黒井のタップダンスは激しさを増す。


「それを天から見られていた真白様は!この健気な男児の()()()()()()()()()()()のです!」


お経が終わると同時に、黒井のタップダンスも終わり見事な決めポーズをした。口には薔薇の代わりに菊を咥えている。


パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


葬式なのに、参列者たちがスタンディングオベーションで拍手した。山田と古賀を除いて・・・。参列者たちは涙ぐんでいる。


「なんと・・・素晴らしい御心じゃ・・・」


「真白様・・・なんという慈愛の精神」


個人を偲んだ涙でないことを、山田と古賀は察する。古賀は山田に耳打ちする。


「これって、黒井さんが用意した仮の葬儀なんですかね?」


「そうだろ、誰も故人なんか偲んでないしな」


山田が古賀の疑問に自分の意見を述べていると、後ろから声が降ってきた。


「死んどるよ」


山田と古賀は振り返る。そこにはお爺さんが立っていた。


「今日は、山田健三の葬式じゃ・・・あの棺桶には、健三が入っとる」


「嘘だろ・・・」


山田は顔を引き攣らせた。あまりの衝撃だったからだ。古賀も目を丸々としている。お爺さんの隣にいたお婆さんが付け加えるように話しだす。


「けんちゃんは、真白様のお役に立ちたいと死ぬ前に行っていたから、けんちゃん・・・きっと嬉しいだろうねぇ〜・・・」


お婆さんは、天井の先の天国を見据えるかのように、上を見ている。その拍子に、涙が下に流れた。


山田と古賀はどうリアクションをとったらいいか、戸惑っていると、参列席ので入口の方から、声が近づいてきた。


「やーっと見つけました〜!お久しぶりです〜山田ちゃん!古賀ちゃん!」


山田は、助け舟とばかりに反応する。


「青桐じゃねーか」


「お久しぶりです」


青桐と呼ばれた男は、細い目を吊り上げにこりと笑って見せた。


「今日のミッションは、私もご一緒させて頂きますわ。何卒よろしゅう〜。あ!ジェットさんも」


青桐は、黒井にスタンディングオベーションで拍手を送り続けているジェットにも、挨拶をした。


ー葬儀場近くのカフェー


山田、古賀、ジェット、青桐の4人は葬儀場近くのカフェにやってきた。


山田はウインナーコーヒーを注文し、飲んでいる。黒井と会った日は頭を使うので、糖分補給にはちょうどいいのだ。


古賀は、メロンソーダを飲みながら、青桐に声をかけた。


「青桐さん、今回のはあなたが得意な分野だと思います。見解とかありますか?」


青桐はわざとらしく唸り声をあげた。


「難しいっすね〜下見しないとなんともいえないって感じです〜」


そういうと彼は、暖かいミルクコーヒーを飲み始めた。


「だったら、下見に行けばいいだろう・・・」


そういうジェットは、ソフトクリームとコーヒーゼリーが、合わさって飲み物になったこのカフェの名物を啜っていた。


「下見するって・・・人が多いだろうに」


公共の場なので、言葉を濁す山田。そこに青桐が閃いた!と言わんばかりの声を上げた。


「あ!じゃあこうしましょか?」


山田たちは、青桐の計画に耳を傾け、山田だけ苦虫を噛み潰したような嫌な顔をした。


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