教師ラカンの登場
入学式が終わると、校長が勝者たちに向かって言った。
「君たちには学寮での住居が与えられる。アマル嬢が案内して、それぞれの部屋へ連れて行ってくれるだろう。」
秘書のアマルは長い廊下を案内し、新しい棟へと彼らを導いた。
各生徒にはベッド、机、小さなクローゼットを備えた個室が割り当てられていた。皆それぞれの部屋に入り、期待に胸を膨らませたが、イザンだけはこれまで以上に孤独を感じていた。
その後、アマルは彼らを大食堂へと連れて行った。
生徒たちは二人、三人のグループで座って夕食をとったが、イザンだけは遠い席に一人で座り、他の者たちのささやきと嘲笑を耳にした。
「見ろ…あれが“ファドゥース”だ。」
「氏族もないのに…どうして入学できたんだ?」
イザンは答えず、ただ静かに食事を続けた。
夕食の後、各自が部屋へ戻った。イザンはベッドに腰を下ろし、思索にふける。頭に浮かんだのはマヤの姿――その力、美しさ、自信。その記憶に微笑むが、すぐにシグランとの戦い、屈辱的な敗退、そして彼と共にいた謎の男を思い出すと、胸の痛みが蘇り、憂鬱な眠りに沈んでいった。
――翌朝。
日の出とともにドアを強く叩く音が響いた。
「生徒たち! 授業の時間だ。」
イザンは皆と合流し、列を作って教室へと向かった。最後列に静かに座るイザンの前に、やがて傲慢な少年が現れる。
「立て、この袋小路野郎! そこは俺の席だ。」
イザンは黙ったまま。
少年は怒声を上げる。
「無視する気か?! 俺はリコウザ氏族のアミールだぞ! お前みたいな奴がここに座れると思うな!」
事態がさらに悪化しかけた瞬間、マヤが静かに言った。
「座って、アミール…席なら他にもあるでしょう。」
アミールは怒りの目で彼女を睨みつけた。
「お前に関係あるか? 戦う気か?」
彼が手を上げると、空気にひび割れた雷が走った。
マヤも手を上げ、水滴が周囲に集まり始める。
だが突然、厳しい声が響いた。
「やめろ!」
教師が足早に教室へ入ってきた。
「校内で仲間を攻撃すればどうなるか知っているか?」
アミールは声を落として答えた。
「退学…そして永遠に追放される…。」
雷と水は瞬時に消え、生徒たちは席に戻った。
――最初の授業。
教師は高身長で鋭い眼差しの青年、カザミ・ナシームと名乗った。
「私は今日からお前たちの“エネルギー学”の教師だ。覚えておけ、礼儀と規律は必須条件だ。」
黒板にこう書く。
源 → エネルギーは魂から生まれる。
媒介 → それは体を通じて流れる。
出口 → 集中と指向によって放たれる。
「ここでは剣を持たない。本を持つのだ。理論を学び、定期的に試験を受ける。理を欠いた力は無知、無知は死を招く。」
生徒たちはため息をつく。シグランは退屈そうだったが、イザンは必死に理解しようとしていた。
――授業の終わりに、カザミは告げた。
「今から君たちは三人一組のチームとなり、実地指導者のもとで学ぶ。ここからが本当の競争だ。」
◆ 第一チーム:アルダ・ツシマ
「私はツシマ氏族のアルダだ。チーム1は、アスマ・カザミ、ラエド・カグチ、ワエル・ユキナラだ。」
◆ 第二チーム:アドナン・カグチ
「私はカグチ氏族のアドナン。チーム2は、アミール・リコウザ、アナス・コラミ、ナダ・ヒカリだ。」
アミールはイザンに向かって不敵に笑う。
「見てろ、このチームは全てを焼き尽くす。」
◆ 第三チーム:待機するイザン、マヤ、シグラン。
扉が開き、最後の教師が現れる。
ラカン・ヒカリ――乱れた髪、穏やかな表情、少し照れたような青年。
シグランは嘲った。
「これが俺の教師? 失望だな。」
だがイザンの心は不思議な安らぎを感じていた。
「初めまして…私はラカン・ヒカリ。チーム3の教師だ。メンバーはイザン・ファドゥース、マヤ・ハスミ、そしてシグラン・ラザン。」
こうして三人の運命は交わり、彼らはラカンに導かれて、街の外れにある森へと向かうのだった。