地獄の太陽
風が草原を激しく揺らし… 大地が足元へと広がっていく。
そして、一頭のライオンと一匹の虎が向かい合って立つ広場へとたどり着く。
ライオンが咆哮する。
大地を震わせる咆哮――脅しではない… これは追い払うための命令だ。
疲れ切った虎は足を踏ん張る。逃げる道はない。
飢え、恐怖、そして決意が彼を戦いへと駆り立てていた。
──ハマーンとシャーメルの戦いへ戻る。
ハマーン(ゆっくりと歩み寄りながら)
「まだ私の前に立つつもりか?」
シャーメル
「それは… お前がどれほどその目的に固執しているかによる。」
ハマーン(目を細めながら)
「私の決断は覆らぬ。この少年… もう生きる価値はない。」
シャーメル(剣を構えながら)
「ならば… 私の死体を越えていけ。」
ハマーン
「望むところだ。貴様は既に死んでいるも同然だ。」
巨大なオーラがハマーンの周囲で爆発し、天へと立ち昇る。
彼の頭上には巨大な火球が凝縮し、まるで今、生まれたばかりの太陽のようだった。
熱気は狂ったように高まり、周囲の木々は次々と燃え上がる。
アズロン(汗を流しながら)
「な… なんだこれは?! 太陽が降りてきたみたいだ!
このままじゃ… 全員焼き尽くされる!」
タジル高原 — スカイとシーグラン
スカイ(空を見上げて呆然と)
「まさか… 太陽が地上に…?!
なんて恐ろしい光景だ… 族長を確認しないと!」
シーグランは言葉を失い、沈黙が高原を支配する。
村の入口
アドナン(恐怖と驚愕で)
「ば… ばかな! 敵がこんな力を持っているはずがない!」
マヤは空を見つめ、目を見開く。
その心は真っ先にシーグランとイザンへ向かった。
アミル、ナダ、アナスも同じ光景を見て息を呑む。
村の中心ではアルダが叫ぶ。
「何が起きている?! これは攻撃か?! あの燃える球体は何だ?!」
レードは空を指差す。
「先生… あれは何ですか?」
アスマ
「流れ星… なの?」
ワーイル(震えながら)
「こ… これは終末の日か…?!」
住民たちは悲鳴をあげて家へと逃げ込む。
首都への道 — ラーカン接近
地平線に燃える太陽が現れる。
ラーカン(息を止めながら)
「これは… あり得ない。最初から何か恐ろしいものを感じていた…!」
彼は速度を上げ、後ろに砂煙を巻き上げる。
戦場へ戻る
シャーメル(後退しながら叫ぶ)
「ハマーン! 緑も大地も焼き尽くす気か! やりすぎだ!」
ハマーン(氷のような声で)
「構わん。私の道を塞ぐ者の末路だ。」
シャーメルはイザンへ向き直る。
「できるだけ離れるんだ… 私でもこの攻撃は防げない!」
ハマーンが手を下ろす――
灼熱の太陽が落下を始める。
大地が爆ぜ、
森が炎に包まれ、
世界が灼けるような橙色で満たされた。
そして――沈黙。
周囲のすべてが消え去った。
村から離れた場所
時空の門が開く。
アズロンが膝から崩れ落ち、激しく息を吐く。
スカイが彼を支え、恐怖に顔を引きつらせている。
スカイ
「最後の瞬間に引きずり込んだんだ… あの熱気は耐えられなかった!
族長… 大丈夫ですか? これは… 夢じゃないよな?」
アズロンは汗まみれの拳で地面を叩く。
「今日… 生涯忘れられない戦いを見た…」
スカイ
「ハマーンの相手は誰だったんだ?!」
アズロン
「“閃影の亡霊”… だ。」
スカイ
「な… なんだって?! だが何で戦う? 同じ国のはずだろ!」
アズロン
「原因はあの少年だ…
あの子はゼラン一族の“真”の後継者だ。」
スカイの瞳が大きく開く。
「なに…?!」
アズロン
「俺の腕を切り落としたのもあの子だ…
さっき少し戦ってみたが、恐ろしく強かった…
疑いようがない、あれは正統な後継者だ。
だが… あの攻撃では生き残れまい。
亡霊も… あの少年も。」
再び、爆心地へ
巨大な穴から煙が立ち昇る。
“灼熱の太陽”が残した爪痕だった。
ハマーンは風を操る外套を揺らしながら手を振り、
周囲の煙を吹き飛ばす。
ハマーン
「出て来い… 死んだとは思っていない。」
煙の奥から、黒く透明な立方体――
“闇の障壁”が姿を現す。
中にはシャーメルとイザンがいた。
シャーメル(荒い息を吐きながら)
「この一撃を防ぐのに… 力のほとんどを使い果たした…」
ハマーン(嘲笑して)
「お前は疲れ切っている。
あの少年を守ることに必死だったからな。
逃げていれば助かったものを。」
シャーメル(微笑しながら)
「燃え死ぬ少年を置き去りにして逃げると思うか?」
ハマーン(高らかに笑って)
「そうは思わん。そのために灼熱の太陽を使ったのだ。
お前を消耗させるためにな。」
シャーメル
「だが、私はお前が思うほど弱くはない。」
ハマーン
「ならば… 見せてみろ。」
シャーメルはイザンの身体を優しく地面に寝かせる。
イザンはゆっくりと目を開け、驚いて周囲を見回す。
イザン
「ここは…? 何が起きてるんだ?
シャーメルさん、どうしてここに…?」
次にハマーンを見て目を丸くする。
「上級司令官… 敵なのですか? これは… 全部そのせいで?」
シャーメル
「目が覚めてよかった。ここからすぐに離れろ。振り返るな。」
イザン
「え…? 何も分かりません!
シーグランは? 無事なんですか?」
シーグランの名を聞いた瞬間、ハマーンの目が細くなる。
シャーメルはイザンの肩を掴む。
「イザン… 行くんだ、坊や。」
イザン
「でも… どうして僕が?」
シャーメル(小声で)
「まったく… 頑固な子だ。」
そして強い声で:
「シーグランを確認して来い。すぐに行け!」
イザン
「は、はい… シャーメルさん。」
その時――
ハマーンが厳しい声で命じる。
ハマーン
「どこにも行かせん。
これは命令だ。
お前は新帝国部隊の一員… 私がその指揮官だ。
命令に従え。」
イザンは動けなくなり、シャーメルを見る。
シャーメル(厳しい表情で)
「坊や… 今からお前は誰にも属さない。
部隊も… 全て捨てろ。
誰にも見つからない場所へ行け。」
イザン(困惑して)
「シャーメルさん… 何の話ですか…?」
その瞬間――
ハマーンが信じられない速度で動き、
“幻影のオーラ”をイザンに発動する。
シャーメル
「しまった…!」
イザンの身体が完全に静止する――
目が大きく開かれる。
彼は暗黒の世界に落ちる。
まるで瞬間的に“殺された”かのような感覚。
影が迫り、邪悪な霊たちが追いかけてくる。
恐怖で足が地面に縫い付けられ、指一本動かせない。
――ここで、イザンは“恐怖の幻影”へ落ちた。
果たして… 生き延びられるのか?
幻の中で、虎とライオンが戦っている。
ライオンが虎に傷を負わせ、虎は倒れる。
だが… 虎は再び立ち上がる。
──章末。




