思想と相違の衝突
深い密林の奥――
一頭の獰猛な虎が、ある獅子の縄張りへと侵入した。
その縄張りは、獅子が辺境に放った尿の匂いで示されている。
獅子は侵入者に気づき、両者は対峙する――
互いを見据えたまま、張り詰めた空気が張りつめていく。
警戒、静寂……避けられない衝突の始まりだった。
メインシーン
物語は、ハーマン・ザランとシャーメル・コラミの邂逅から始まる。
イザンは倒れたまま意識を失い、
アズロンもまた、イザンの最後の一撃でボロボロの状態で地面に倒れていた。
アズロンは白い長髪の男を見上げて呟く。
アズロン(驚愕):
「まさか……夜を駆ける影……アルマザの恐るべき将軍、シャーメル・コラミ……!」
そして興奮を押し殺した笑みを浮かべる。
アズロン:
「俺はなんて幸運なんだ……
この目でハーマン・ザランとの戦いを見られるとは……世界最強同士の激突を!」
語り手:
力に憧れ、名誉を求めるアズロン。
世界最強と謳われる二人――伝説級の存在が目の前で対峙している事実に、
彼は自分が夢を見ているのではないかと疑っていた。
イザンの保護
シャーメルは少し離れた場所へ移したイザンに視線を向け、低く呟く。
シャーメル:
「戦いが始まれば……イザンも巻き込まれる。」
手を上げ、〈闇の結界〉を展開する。
黒く透明な立方体がイザンを包み込み、外部の危険を完全に遮断した。
緊張の爆発
ハーマンは嘲笑気味に口角を上げる。
ハーマン:
「そこまで守るとは……やはり、あの少年がリースの息子に似ているからか?」
シャーメル:
「お前の親友でもあったろう。お前たちは単なる友ではなく、兄弟のようだった。」
ハーマン(冷淡):
「昔はな……だが死ぬ前に奴は道を外れ、俺の敵になった。」
シャーメルはイザンを見つめながら続ける。
シャーメル:
「だが理解できないのは……お前だ。
どうしてこんな幼い子供の血を――問答無用で奪おうとする?」
ハーマン:
「理由は単純だ……奴の血は我々にとって危険だからだ。
世界そのものにとってもな。」
シャーメル:
「だが彼に罪はない。
人は生まれを選べない。種族も、姿も、名前すら……自分の意思では決められない。
人は“行い”で裁かれるべきだ。」
ハーマン:
「お前の言うことは正しい。
だが、正しさだけでは世界は守れん。
時に、より残酷な選択をしなければ……最悪を避けられない。」
シャーメル:
「“人に思想を押し付けるな、すべての思考は異なる”……
確かに、そう言った者は正しかったようだ。」
ハーマン(薄笑):
「お前は情に流されすぎだ。
だからお前は長く生きられん。」
オーラの衝突
ハーマンの赤い殺気が爆発し、
大地が震え、木々が揺れ、空気そのものが震えあがる。
アズロンは圧力に押しつぶされそうになる。
アズロン:
「な……なんだこのオーラ!?
さっきまでと桁が違う!」
シャーメルも頭を上げ、黒い闇気を爆発させる。
赤と黒のオーラが激突した瞬間――
森全体が燃え上がるような光を放った。
動物たちは逃げ出し、地面は裂ける。
戦場の外
タジル村の丘陵
シグランが突然立ち止まり、目を見開く。
シグラン:
「くそ……この力、間違いない……あいつだ。
なぜここに? イザン……無事でいてくれ。」
スカイ:
「間違いなくあの化け物だ……だが、隣にいるあの力は……誰だ?」
シグラン(苛立ち):
「今はお前に構ってる暇はない!」
彼が駆け出すと、スカイが時空を歪ませて目の前に現れる。
スカイ:
「動くな。これは“首領の命令”だ。」
タジル村
アドナンは騎士団を率い、捕らえたルーカスと共に進んでいた。
アドナン(小声):
「とんでもない力を感じる……急がないと!
村の仲間と合流してから森へ戻る。」
マヤ(胸に手を当てて):
「このオーラ……凄まじく邪悪……。
シグラン……イザン……どうか無事で。」
アルマザ街道 ― タジル方面
ラカンが信じられない速度で駆ける。
ラカン:
「ヤバい……これはただ事じゃない!」
再び伝説の戦場
オーラ同士がぶつかり合い、木々が吹き飛び、岩が砕ける。
そしてオーラが消えた瞬間――
今度は肉体同士の超高速戦闘が炸裂する。
一撃ごとに爆音が走り、森全体が震える。
アズロンは口を開いたまま凍りつく。
アズロン:
「こ……これが伝説級の戦い……?
俺は……夢でも見ているのか!?」
属性の激突
ハーマンの拳に赤い〈血の力〉が宿り、
シャーメルは背後へ瞬間移動。
黒い〈闇の剣〉を生成して突き刺す――
しかしハーマンは消えた。
幻影だった!
背後に現れたハーマンが雷を放ち、
シャーメルは〈闇の盾〉で受け止める。
アズロン(震えながら):
「属性……いくつ持ってるんだあいつら……!」
五分間の戦闘。
たった五分で森一つが破壊されるほどの暴威。
両者は一歩ずつ後退する。
シャーメル:
「どうした、ハーマン。
随分と鈍ったんじゃないか?」
ハーマン:
「お前もな。
これはただのウォームアップだ。」
シャーメル(楽しそうに):
「若い頃を思い出すな……」
アズロン(内心で絶叫):
「こ……これがウォームアップ!?
この二人……どこまで強いんだよ!!」
幻術の攻防
ハーマン:
「早く終わらせるぞ……」
彼は〈血の幻術〉を発動。
シャーメルは真っ暗な世界に閉じ込められ、
死者の怨霊のような影が襲い掛かる。
だがシャーメルは目を閉じ、
〈コラミ一族の闇牢〉を発動。
幻術を破り、逆にハーマンを閉じ込めようとする。
ハーマンは〈血のオーラ〉を解放し、闇牢を引き裂いて脱出した。
アズロンの精神崩壊
アズロンは膝をつき、震えながら呟く。
アズロン:
「俺は……“闇の領域”に届くと思っていた……
でも……化け物みたいな奴らを見た後じゃ……
俺なんて……無に等しい……」
拳を地面に叩きつける。
アズロン:
「クソッ……道は……まだまだ遠い……!」
その瞬間――
意識を失っていたイザンの指が、かすかに動いた。
象徴的な締め
冒頭の情景のように――
獅子と虎は互いを傷つけ、
どちらも倒れる気配を見せない。
戦いはまだ終わらない。




