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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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二体の怪物の誕生

海辺――荒れ狂う波


海辺では、巨大な波が岩へと激しく叩きつけられていた。

空は黒い嵐に覆われ、ただの雨よりも恐ろしい何かが潜んでいるようだった。

鳥も獣も姿を消し、本能が「この場所は危険だ」と告げていた。


スカイは膝と手を地面につき、荒く息を吐きながら汗を滴らせている。

首を押さえ、苦しげにうめく。


スカイ

「……もう少しで窒息するところだった……本当に、墓の中で死ぬかと思った……」


その横で、アズロンも息を切らしながら立ち上がっていた。

まるで死の淵から戻ってきたような顔だ。


アズロン

「これが……“ザラン”の本当の力だ。」


スカイが驚いた表情で顔を上げる。


スカイ

「リーダー……“アルマザの騎士”の暗殺を実行しろって、どういう意味なんだ……?」


フラッシュバック


“墓”の技に閉じ込められていたアズロンとスカイ。

完全に無力化されていたその瞬間――

ハマンは突然技を解除し、ゆっくりと二人へ歩み寄る。


ハマン

「よく聞け……お前たちに任せたい任務がある。」


アズロンは怒りと誇りを滲ませた目で見上げる。


アズロン

「俺は……誰の指図も受けない。」


ハマンは薄く微笑む。

そこには嘲りも慈悲もなかった。


ハマン

「最後まで聞け。そのあとで、受けるか断るか決めればいい。

だが──断れば、この場で死ぬことになる。」


アズロンは唾を飲み込み、心の中で叫ぶ。


(くそ……断れば死ぬ……こいつは俺たちを虫けらのように潰せる……)


それでも顔を上げ、誇りを失わず答える。


アズロン

「……なら、命令は却下だ。俺の誇りが、誰かに従うことを許さない。」


ハマンは静かに問いかける。


ハマン

「そうか……死にたいのか?」


アズロン

「世界の“伝説”に殺されるなら……それも名誉だ。」


ハマンは一歩近づく。

その一歩だけで骨が震えるほどの威圧感が溢れた。


ハマン

「興味があるのは……お前たちの生死じゃない。

だが──一つだけ重要なことがある。」


アズロン

「なんだ?」


ハマン

「アルマザの騎士の一人を……暗殺してこい。」


アズロンの顔が一瞬で凍りつく。


アズロン

「誰だ……ヒカリ一族の者か?」


ハマン

「いや……仲間の一人だ。」


アズロンの脳裏に少女の顔……そして、もう一人の少年の姿が浮かぶ。

そして、目を見開く。


アズロン

「あの……妙な力のガキか……!

くそっ、あいつのせいで腕を失った……!」


ハマンは低く呟く。


ハマン

「確信した……あいつは間違いなく“レイスの息子”。

あの日のことを隠し、俺が来る前に全て覆い隠したあの男……

シャーミル、お前だ……“偽名”を使って学校へ連れてきた……“イザン・ファドス”を。」


そしてハマンは、過去の一瞬を思い出す。


フラッシュバック(第6章)


ハマンはシグランを叱責していた。


ハマン

「お前は何もしていない……弱い相手と戦っただけだ。」


その時、胸に妙なざわつきを感じる。

ゆっくりと振り返ると、廊下に立つイザンが視界に入った。


ハマン(小声)

「……気のせいか。」


だが、気のせいではなかった。


フラッシュバック終了


ハマン

「直感は正しかった……」


アズロンは失った腕を見つめ、低く答える。


アズロン

「命令など必要ない……あいつは俺の“獲物”だ。」


ハマン

「殺せ。

成功したら──“闇の大地”への近道を教えてやる。

やつは今、タジル村にいる。」


現在


二人は無言のまま海を見つめる。


アズロン

「……タジル村には、一度行ってたんだな。」


スカイ

「俺の“時空術”なら、一瞬で行ける。」


アズロンは不気味に笑った。


アズロン

「クッ……行くぞ。」


タジル――森の中心、戦場


シグランは軽やかに降り立ち、腕の中にはナダが抱かれていた。

ナダは顔を赤らめ、呆然と見つめる。


後ろでマヤが歯ぎしりする。


マヤ

「いつまで抱えてんのよ……早く下ろしなさい!」


一方、イザンはアミルを抱えていた。


アミル

「ちっ……この弱虫に助けられるなんて……くそ……」


イザン(微笑み)

「大丈夫か、友よ?」


アミル

「友じゃない!!」


イザン

「じゃあ……せめて同じ隊の仲間だろ。」


アミルは顔を伏せる。


アミル

「……くそ……」


毒針で倒れているアナスが弱い声でつぶやく。


アナス

「シグラン……強くなった……イザンも……」


エヴリンが叫ぶ。


エヴリン

「ちっ……人数が増えた!」


ルーカス(笑う)

「ますます面白くなってきたじゃないか。」


クララが後ずさる。


クララ

「あの水の矢……強すぎる……」


シグランが三人を見る。


シグラン

「本当に……人間か?」


イザンも困惑。


イザン

「蜘蛛……木の化け物……蛇……なんだこれ……?」


マヤが息を呑む。


マヤ

「カゴラの……禁忌の実験体……?」


アドナン

「ああ……そうだ。」


マヤ

「遺伝子……本当に混ぜてるなんて……」


アドナンが指示を出す。


アドナン

「イザン、シグラン、マヤ——仲間の保護を優先しろ。

この三体は、俺がやる。」


だがシグランはナダをそっと下ろし、一歩前へ。


シグラン

「悪いが、アドナン……あなたは俺の師ではない。

仲間は任せる……こいつらは全部俺が潰す。」


アドナン

「待て! やつらは危険だ!」


イザンが微笑みながら走る。


イザン

「シグランにだけいいところ取らせるか!」


アドナンが絶叫。


アドナン

「お前もか!?

ラーガン! お前が甘やかすからだ!!」


二人が突っ込む瞬間――


イザンが先にルーカスを殴り飛ばし、木を粉砕しながら吹き飛ばす。


全員が息を呑んだ。


アドナン

「こいつ……破壊力が……跳ね上がってやがる……」


アナス

「……最初から……強いと思ってた……でも……影に隠れてただけだ……」


マヤ

「イザン……すごい……」


ナダは震え、アミルも目を見開く。


アミル

「あれが……あの“無価値な奴”……?

どうして俺より強く……!?」


シグランがイザンの胸ぐらを掴む。


シグラン

「俺の邪魔をするな!!」


イザン

「そいつは俺の獲物だ。

お前は蜘蛛を選んだだろ。」


エヴリンが叫ぶ。


エヴリン

「ふざけんなァ!!」


シグランは冷たい視線で言い放つ。


シグラン

「黙ってろ……虫ケラ。

お前の番はすぐだ。」


瞬間——

シグランが閃光のように消え、エヴリンの目の前へ。


次の瞬間。


エヴリンの右腕が宙を舞った。


クララの悲鳴。

仲間たちの戦慄。


煙と風の中――


背中越しのアニメカット


シグランとイザンが並んで立っている。

後ろ姿だけで圧倒的な威圧感を放ち、

アドナンたちは言葉を失う。


アドナン(震える声)


「……本当の“怪物”は……あいつらだ……

カゴラの兵じゃない……

シグランとイザン……

この二人こそ……脅威そのものだ……」

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