表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

拒否された勝利

帝国騎士学校の試験場に立つヤザン。

観客の嘲笑、血と汗にまみれた戦い――だがその瞬間、隠された力がついに目を覚ます。

校長は立ち上がり、秘書のアマルに命じた。

「少年をすぐに試験会場へ連れて行け。」


シャーミルはヤザンに静かで威厳のある声で言った。

「ここからが本当の試練だ。忘れるな…決して諦めるな。これが我々の最後の出会いとなるだろう。」


ヤザンは動揺した。

「最後の出会い?どうしてですか?」

「そうだ…しばらくの間、二度と会うことはない。」


ヤザンの目に涙が浮かんだが、シャーミルはすぐに拭い取り、厳しく言った。

「弱さを見せるな。二度と泣くな。」


ヤザンは強く抱きついたが、シャーミルは沈黙を守った。やがてアマルが少年を試験会場へ連れて行った。


予期せぬ参加


到着すると、係員が立ち塞がった。

「名簿はすでに埋まっている。新しい参加者は追加できない。」


その時、別の係員が駆け込んできた。

「参加者の一人が気絶して、戦えなくなった!」


全員が一瞬黙り、最初の係員はヤザンを見て嘲笑した。

「偶然か、運命か?…いいだろう。代わりに出てもらう。」


「名前は?」と尋ねられ、ヤザンは一瞬ためらったが、シャーミルの言葉を思い出し、顔を上げて言った。

「俺の名は…ファドゥスだ。」


係員は眉をひそめた。

「ファドゥス?そんな一族は聞いたことがない。」


だが、アマルは不安そうに小声で呟いた。

「“影の将軍”は彼を甥だと言ったけれど…何かがおかしい。」


参加者控室


ヤザンが控室に入ると、数十の視線が一斉に彼に注がれた。居心地の悪さに座り込むと、鋭い眼差しをした美しい少年が彼を見下ろした。その後ろには、堂々とした気配を放つ美しい少女が立っており、ヤザンの心臓が高鳴った。


突然、扉が開き、係員が告げた。

「参加者よ!観客に挨拶する準備をしろ!」


試験場


参加者たちは一人ずつ巨大な闘技場へ歩み出た。数千人の観客が押し寄せ、声援が響き渡る。ヤザンの足は震え、まともに歩けなかった。


審判が中央に立ち、声を張り上げた。

「第一戦…シグラン・ラザン!」


観客席が歓声で揺れた。

「ラザン一族の者だ!」


だが、ヤザンの心臓は凍りついた。

「ラザン…?父と同じ一族…?もしかして親戚なのか?」


審判は続けた。

「対戦相手は…ファドゥス・ヤザン!」


会場は一瞬静まり返り、その後ざわめきが起きた。

「ファドゥス?そんな一族は聞いたことがない!」

「ただの弱い小僧だろう。」


戦い


二人は闘技場に立った。審判が規則を説明する。

「降参したら試合終了。武器の使用は禁止。違反すれば即失格。」


「構え…始め!」


ヤザンは固まり、一歩も動けなかった。シグランは素早く突進し、軽く一撃で彼を倒した。冷笑して言った。

「退屈な戦いだ。すぐに終わらせてやる。」


ヤザンは苦しみながら立ち上がったが、再び倒された。それでも何度も立ち上がり続けた。


シグランは苛立ちながら叫んだ。

「なぜ降参しない?弱虫め!」


審判すら驚いて呟いた。

「信じられん…この少年の耐久力は尋常ではない。」


怒りを募らせたシグランは炎の球を生み出した。観客が叫ぶ。

「ラザン一族の炎だ!」

「もう終わりだ!」


ヤザンは恐怖で震えたが、訓練を思い出した。器、力を引き出そうとした瞬間、体内から謎の力が流れ出し、透明なオーラが彼を包んだ。


シグランの炎が襲いかかったが、ヤザンは焼かれなかった!


観客席からマヤが叫んだ。

「見た!オーラが彼を守った!」


審判も叫んだ。

「内なる力で自らを守ったのか!」


シグランは冷たく言い捨てた。

「つまらん。訓練用の人形と戦っているようだ…俺は棄権する。」


観客は騒然としたが、審判は宣言した。

「勝者…ファドゥス・ヤザン!」


衝撃


ヤザンは傷だらけで息を切らしながら立ち尽くした。審判の声が再び響いた。

「勝者は…ファドゥス・ヤザン!」


だが歓声はなく、観客の叫びが突き刺さった。

「不公平だ!」

「どうしてあの得体の知れない奴が勝つんだ!」

「最初から追い出すべきだった!」


参加者たちすら軽蔑の眼差しを向けて囁いた。

「“ファドゥス一族”?聞いたこともない。」

「騎士の舞台に立つ資格はない。」


ヤザンは地面が崩れるような感覚に襲われた。勝ったはずなのに、その勝利は拒絶された。


思い出したのは村での囁き、軽蔑の視線、「呪われた子」と呼ばれ続けた日々。

そして今、帝国の中心でもなお、彼は“異端者”のままだった。


心が震え、衝撃は傷よりも重く彼を押し潰した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ