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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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きょうふをこくふくする


シーン1:城の中

小さな城の一室。

タジール村の治安を守る責任者、ロック・リコマが立っていた。

緊張した様子の兵士が近づく。

兵士:

「隊長… 村人たちには口を割らないよう脅しておきました。

子供たちの命が危険に晒されると伝えました。」

ロック:

「そうか。しかし… 騎士団に発見されるのも時間の問題だろう。

――ならば、犠牲を払うしかない。誰か一人を“替え玉”にする。」

少しの沈黙。

ロックは冷たい眼差しで兵士を見る。

ロック:

「借金の多い者を選べ。金に困っている奴なら脅しも効く。

誰が適任か調べろ。騎士団に地下の研究所を見つけられる前にな。」

兵士:

「了解しました、隊長。」


シーン2:森の中

鬱蒼とした森。

アルダと仲間たちは木々の間を慎重に進んでいた。

突然、アスマが足を止め、何かの気配を感じる。

次の瞬間、風が唸りを上げる――!

激しい突風が木々を切り裂き、落ち葉が舞い上がる。

砂埃の中から、小さなウサギが転がり出た。

アスマ(驚愕):

「えっ…! 私、まさか……」

そっと駆け寄り、震える手でウサギを抱き上げる。

涙が頬を伝う。

アスマ:

「ごめんなさい… 本当に、ごめんなさい、小さな子…」


シーン3:地下の隠れ家

地面の下。

薄暗い地下牢に、村の子供たちが怯えながら身を寄せ合っていた。

監視役のフィクスが険しい表情で立っている。

フィクス:

「何の音だ?」

コル:

「外を見てきました…! 騎士たちが! 今まさにここに近づいています!」

フィクス(怒鳴る):

「何だと!? 騎士団だと!?

あいつらはロック・リコマ隊長の管轄じゃないはずだ!」

別の男:

「馬鹿野郎! なぜ別の方向に逃げなかった!?

すぐに姿を消したら、ここが近いと悟られるだろうが!

考えろ、愚か者め!」

フィクス(厳しく):

「…もういい。ダリ、コル! 準備しろ。

俺たちが出て、時間を稼ぐ。

今日、我らの騎士団が到着するまで… 少しでも遅らせるんだ。」



シーン4:地上 ― 思いがけない出会い

地上では、アスマが小さなウサギの傷を包帯で巻きながら悲しげに見つめていた。

そのとき――地面の下から微かな金属音。

ふと目を向けると、土に覆われた隠し扉があった。

アスマ(驚きながら):

「これは…… 何?」

そっと近づく。

だが、突然――扉が開き、三人の男が現れる。

フィクス、コル、ダリだ。

コル(嘲るように):

「なんだ? 女か?」

ダリ(いやらしく笑いながら):

「これが騎士だって? かよわい顔してるじゃねえか、ははは!」

アスマ(毅然と):

「本を表紙で判断するな… 下衆が。」

ダリ(嗜虐的な笑みを浮かべながら):

「ほう…… 面白いじゃねえか。

その綺麗な身体――まずは遊んでやってから、バラバラにしてやる!」

ダリの両腕から巨大な鉤爪が突き出す。

アスマは一歩後ずさる。

アスマ(衝撃に満ちて):

「なに…!? その爪……まるで獣のよう!」

ダリ:

「コル、フィクス! 手を出すな。こいつは俺の獲物だ!」


シーン5:最初の戦い

ダリが猛スピードで突進。

アスマは辛うじてかわす。

彼の一撃で木々が真っ二つに裂け、破片が飛び散る。

アスマの左腕に血が滲む。

アスマ:

「速すぎる……! 全く見えなかった……」

ダリ(血を舐めながら):

「うまいな…… この味、最高だ、ハハハ!」

怯えを感じるアスマ。

背後からコルが素早く回り込み、奇襲を仕掛けようとする。

しかし――

ダリ(怒鳴りながら):

「下がれッ! 俺の獲物に手を出すな!」


シーン6:影の中のワーイル

そのとき、ワーイルが木の陰に身を潜めていた。

彼はアスマが三人の敵に囲まれているのを見て、震える。

ワーイル(動揺して):

「な、なんだ… あの爪……あいつは化け物なのか?

いったい何が起きてるんだ……!」

小声で呟く。

「アルダ師匠…… ラーイド……どこにいるんだ……!?」

遠くでは――

ラーイド:

「何も見つからない……。」

アルダ:

「こちらもだ。まさか…… まだ森の中に……!? なら、確かにここだ!」


シーン7:戦いの再開

ダリ:

「さあ見せてもらおうか…… アルマザ騎士団の力を!」

アスマ:

「望むところよ!」

アスマが両手を広げ、周囲の空気を操る。

一瞬にして鋭い風刃が放たれ、ダリを襲う。

ダリは避けきれず、体を切られ吹き飛ばされる。

木々の枝が次々と切り裂かれた。

コル(驚愕):

「すげぇ……!」

フィクス(微笑みながら):

「これがアルマザ王国の血族の力……

彼らは“天から授かった”多様な遺伝子を持つ。

一方、我らカグラ帝国には、そうした自然の力が存在しない。

だからこそ我らは“科学”と“遺伝の実験”に頼るのだ。

我らの秘密の研究所では、獣や希少な生物の遺伝子を

人間に組み込み、超越した力を得ようとしている。

そうしてようやく、アルマザとの“差”を縮めてきた。

だが――奴らはいまだ我々を凌駕している。」

コル:

「だから奴らは世界で最も広大な土地を支配しているのか。」

フィクス:

「ああ。そして、その影響力も絶大だ。」

ダリ(立ち上がりながら笑う):

「ククッ…… 面白くなってきたじゃねえか!」

ダリは両手を広げる。

コル(緊張して):

「まさか…… あの“最強技”を使う気か!?」

フィクス:

「ああ…… 奴は本気だ。早く終わらせるつもりだ。」


シーン8:回転の突撃

アスマは鋭い眼差しでダリの動きを見据える。

次の瞬間――

ダリの身体が猛烈な勢いで回転し始める。

まるで人間の竜巻のように、凄まじい風圧を撒き散らしながら突進してきた!

アスマは必死に右へ、左へと避ける。

風圧だけで木々が砕け、地面がえぐれ、砂塵が舞い上がる。

背中を強打され、アスマは地面に叩きつけられる。

それでも歯を食いしばり、立ち上がる。

再び突進してくるダリ――

アスマは腕で受け止めるが、そのまま吹き飛ばされ、

木に叩きつけられる。

アスマ(息を切らしながら):

「……これで終わりなの……?」

意識が遠のく中、彼女の脳裏に幼い日の記憶がよみがえる――


シーン9:フラッシュバック ― 少女時代の記憶

少女の頃のアスマ。

彼女の周囲に少女たちが集まり、嘲るように笑っていた。

少女たち:

「見て! 赤い髪! まるで戦場の血みたい!」

「こんなの、貴族の家の子じゃないわ!」

髪を乱暴に引っ張られ、アスマは涙を流す。

震える手で自分の髪を抱きしめながら――

屈辱と孤独が胸を締めつける。


現在 ― 森の戦場に戻る

背後では、木陰からワーイルがその光景を見つめていた。

ワーイル(心の中で叫ぶ):

「アスマが……このままじゃ死ぬ!

くそっ…… 俺は、何をしてる……!

怖いだけの、臆病者か……!」

彼は震える足を見下ろし、涙をこぼす。

ワーイル(叫ぶように心の中で):

「……俺は…… もう逃げないッ!」


シーン9:ワーイルの過去 ― 子供の頃

少年のワーイル。

ベッドで眠る彼の毛布を、怒鳴りながら父親が剥ぎ取る。

父:

「怠け者め! 起きろ! 訓練に行け!」

ワーイル(眠そうに):

「父さん…… 眠いよ…… 少しだけ……」

父(怒鳴りながら服を掴む):

「眠いだと!? 来い!

お前はユキナラ一族の誇りとなるべき人間だ!

俺は果たせなかった…… だが、お前が夢を継ぐんだ!」

ワーイル(泣きながら):

「そんなの……無理だよ……!」

父(怒りに満ちて):

「情けない! お前なんか息子じゃない!

俺は……そんな弱者を息子に持った覚えはない!」

父が手を上げ、少年を殴る。

ワーイルは倒れ、涙を流す。

そこに母親が駆け寄り、優しく抱きしめる。

母:

「ワーイル……父さんを恨まないで。

あの人はね、あなたに“夢”を託したの。

自分が果たせなかった“族長の座”を……。」

ワーイル(涙を拭きながら):

「……族長……? それが父さんの夢だったの?」

母(穏やかに):

「そうよ。けれどね、あなたが強くても弱くても、

母さんにとっては大切な息子。それだけでいいの。」


シーン10:現在 ― 再び戦場へ

現実に戻る。

ダリが再びアスマへ襲いかかる。

アスマは満身創痍で、もう動けない。

アスマ(かすれた声で):

「もう……避けられない……」

目を閉じる。

その瞬間――

地面が凍りついた。

空気が震え、白い冷気が辺りを包む。

ダリの動きが止まり、木の幹に凍りつけられる。

沈黙――。

ゆっくりと木の影からワーイルが姿を現す。

足取りは重いが、決意の光を宿している。

アスマ(驚愕):

「ワーイル……!?」

ワーイル(力強く):

「ごめん、アスマ。

最初から……君を助けるべきだった。」

フィクス(驚きの声で):

「くっ……! 仲間が来たのか……!」

コル(青ざめて):

「な、なんだ!? 氷……!?

アルマザの騎士たちは本当に“祝福”を受けているのか……!

まさか、あの男が氷を……!?」

カメラがゆっくりとワーイルに寄る。

怯えていた青年の目に、今は確かな光が宿っていた。

その姿は――英雄そのものだった。


遠く離れた場所で、アルダが立ち止まる。

彼は空を見上げ、仲間の力を感じ取る。

アルダ:

「……感じる……ワーイル、アスマ……! もう少しだ、俺が行く!」

その頃、ラーイドも力の波動を感じ、拳を握りしめる。

ラーイド:

「ははっ、来たな……! あの二人の力……! 待ってろ、すぐ行く!」


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