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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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腐敗した贅沢の香り

タジール村の近く。

森の奥、革工場のそばに、地中へと続く隠された入口がある。

扉は木々と落ち葉の間に巧妙に隠されていた。


地下へ降りると、そこには暗い回廊。

壁に灯された数本の蝋燭だけが、かすかに闇を照らしている。

左に三つの牢。右にも三つ。

そしてその奥に、一つの部屋があった。


牢の中には、五歳から十歳までの子供たちが五人ずつ閉じ込められている。

すすり泣く声が闇の中に響くが、誰も叫ばない。恐怖が声を奪っていた。


「お父さん…お母さん…どこなの…?こわいよ…!」

小さな少女が泣き叫ぶ。

隣の少年が囁く。「大丈夫。俺が君を守るから。」


その瞬間、影の中から見張りの男が現れ、嘲るように笑った。

「守る?…何からだ?」

鍵の音。牢の扉が開く。

男は少年の首を掴み、持ち上げた。


少年は男の顔に唾を吐きかける。

「もう一度言ってみろ…!」

激怒した男は少年を壁に叩きつける。

鈍い音、そして口から血がこぼれた。


「このクソ野郎!殺してやる!」

少女の叫びが牢に響く。


そこへ別の看守が入ってきた。

「ドライ、何をしてる?子供相手に何ムキになってんだ。出ろ、ここで騒ぐな。」

ドライは舌打ちして牢を出た。


――同じ頃。

アルダ、アドナン、アスマ、ライド、ウェアル、アミル、アナス、ナダの八人がタジール村に到着する。


「よし、まずは治安責任者の下士官に会おう。」


彼らは小さな砦に向かう。

門番たちが叫ぶ。「騎士たちが来たぞ!急げ、下士官殿に知らせろ!」

兵士が走り込む。「ロック・リコマ下士官!八名の騎士がこちらへ!」

ロックは眉をひそめた。「騎士だと?妙な話だ…。」


彼は命じる。「村人たちに静かにしていろと伝えろ。余計な口を開けばどうなるか思い知らせてやれ。」

「了解、下士官殿!」


「食卓を整えろ。すべて豪華にな。」

「はい、ロック様。」


「彼らを通せ。」

扉が開かれた。「ようこそ、どうぞお入りください。」


砦の中庭には、珍しい花と草木が咲き乱れていた。

アルダが匂いに気づく。「この香り…見たこともない。」

アスマが微笑む。「きれい…まるで別世界ね。」

ナダも息を吸い込む。「なんて爽やかな香り…。」


ロック・リコマが迎え入れる。「アルマザ騎士団の諸君、ようこそ。よく来てくれた。」

彼らは中へ。壁には装飾品と絵画が並び、奥には豪華な食卓があった。


アドナンが小声でつぶやく。

「小さな砦で、どうしてこれほどの財が…?」


ロックは笑みを浮かべる。「さあ座ってくれ。国家の騎士にふさわしいもてなしだ。」

アドナンは答える。「感謝しますが、我々は任務中です。これはアルマザ帝国監査局の許可証です。」

「任務とはいえ、腹が減っては戦はできぬ。食いながら話そうじゃないか。」

ロックの強引なすすめに、彼らは席についた。


――場面転換。滝のほとり。


イゼンが無言で立ち尽くしている。

丘の上からシャーミルが彼を見つめる。

一時間が過ぎ、彼は降りて声をかける。


「決めたか?」

イゼンはうつむいたまま答える。

「シャーミル様…オタラ村で初めて会った日のことを覚えていますか?」

「もちろんだ。お前は訓練を拒んでいた。」

「そう…あの時は何も分かっていなかった。でも今は違う。」

シャーミルは微笑み、呟く。「ようやく悟ったか…普通に生きる道を選ぶと思ったが。」

イゼンは顔を上げ、目に決意を宿す。

「どんな代償を払っても、俺は諦めない。」

「――『燃えるような始まりを持たぬ者に、輝かしい終わりはない』…か。まったく、父親そっくりだな。」

シャーミルは空を仰ぎ、イゼンの父・リースの幻を見る。

「お前の遺したもの…手強いな。」

そして真顔に戻る。

「よし、今から死ぬ覚悟をしろ。これは訓練ではない。限界を越えろ。」

「了解!」イゼンの声が森に響く。


――死の谷。

シグランは巨大な岩の上に座り、静かに気を集中させていた。

遠くからハーマンが見守る。


――村の中央。

ロックの命で派遣された兵士が住民たちに叫ぶ。

「口を開けば、お前たちの子供の命は知らんぞ!」


――再び、食卓の場。

食事の後、アドナンが立ち上がる。

「倉庫管理者からの報告です。革鎧の在庫が減っているとのこと。原因を調べたいのですが。」

「いいだろう。」ロックは頷く。「だが村人は我々に協力しない。気をつけろ。」

「了解。無理をおかけしません。我々だけで向かいます。」

「好きにしろ。」


アミルが微笑む。「料理、とても美味しかったです。」

一行は砦を後にした。


――道中。

アルダとアドナンは、あの豪華さの裏に何か不穏なものを感じていた。

歩く途中、森の奥で異様な気配がする。


「俺たちが確認する。お前たちは工場へ行け。」

「了解。何かあれば知らせろ。」


別行動。

アルダたち――ライド、アスマ、ウェアルが森へ向かう。

木々の影に何かが潜んでいた。

「騎士…?なぜここに…?」

振り向こうとした瞬間、アルダが現れる。

「服装が…アルマザのものじゃない!」


その時、煙幕が炸裂!

謎の人物は姿を消す。

「逃げたか!全員散開しろ、探せ!」アルダの声が森に響いた。


――その頃、アドナンは工場へ。

門前で証書を見せる。「アルマザ監査局の騎士だ。」

返事はない。

扉を叩くと、怯えた職工が顔を出す。


中に入ると、働いている者の少なさに気づく。

「この規模の工場で、この人数か?」

「す、すみません。半分の者が辞めてしまって…代わりがいないのです。」

「言い訳は聞きたくない。村で何が起きている?」

「何も…何もありません!」

「そうか。なら俺が確かめる。」


――遠くから、三人の謎の影がその様子を見つめていた。

「…彼ら、ここまで来るとはな。警戒を強めろ。」


──そして、物語は次の幕へ。

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