葛藤とタジルでの調査
牢獄 – イーラ
アルマザ帝国の首都にある牢獄の暗闇の中、
黒い夜明け組織のメンバー、イーラ・グリムは冷たい床に座り、
両手を縛られたまま、かすかな松明の光が疲れた顔を照らしていた。
彼女は捕まった瞬間を思い出す。
拘束される中、兄のカイン・グリムが倒れるのを見た――その時、意識を失った。
イーラ:「兄さん……兄さん……!」
生まれて初めて感じる、言葉にできないほどの空虚。
魂の一部が引き裂かれたようだった。
イーラ(かすれた声で):「リーダーは私たちを見捨てた……全てを……。」
供給本部 – ドルイス
アルマザ軍の供給本部。
衣服・武器・防具を管理するこの場所では、担当者が慌ただしく報告書をまとめていた。
「第3工場――タジール村からの物資が不足しています!」
緊急報告が次々と積み上げられ、調査局に送られる。
調査官ドルイスは机に座り、次々と報告を読み進めていた。
ペンの音だけが部屋に響く。
助手:「ドルイス様、新しい報告書です。衣服倉庫から!」
ドルイス(退屈そうに):「読むがいい、私は忙しい。」
助手(報告を読み上げる):「タジール村の工場が2週間連続で納品を遅らせています。」
ドルイスは手を止めた。
ドルイス:「……タジール村?」
彼は過去の報告を思い出し、書類を見返す。
ドルイス(小声で):「何かがおかしいな……」
ペンを置き、真剣な目で助手に告げた。
ドルイス:「上層部に伝えろ。調査部隊をタジール村へ派遣する。」
助手:「了解しました!」
丘 – シーグランとハマン
別の場所では、シーグランが丘を登っていた。
汗が光り、筋肉が動くたびに空気が震える。
その姿を見て、ハマンが静かに言った。
ハマン:「よし、行くぞ。稽古を始める。」
シーグラン(力強く):「はい、隊長!」
岩が砕けるほどの速度で二人はぶつかり合う。
シーグランは父の背後に回り込もうとするが、ハマンは即座に反応し、強く押し返す。
地面が割れ、風が巻き上がる。
まるで炎と影の舞踏のようだった。
シーグランは青い炎のようなエネルギーを放つ。
ハマンは目を細め、微笑んだ。
ハマン:「悪くない……。」
その瞬間、ハマンの姿が消える。
シーグラン:「……どこだ!?」
上空から声が響く。
ハマン:「ここだ、休むな!」
二人の力がぶつかり、空気が熱に歪む。
最後に、ハマンは息を整えながら小さく呟いた。
ハマン:「まだ伸びるな……お前は。」
滝 – イザンとシャミール
滝の前、イザンと師のシャミールが向かい合っていた。
轟音の中、声だけが鮮明に響く。
シャミール:「間違いを避けたいなら――騎士をやめろ。」
イザン:「そんな……ありえない!」
シャミール:「だろうと思った。もう一つの道は、感情を制御することだ。」
イザン:「制御……?どうすればいい?」
シャミール(静かに):「誰にも執着するな。心を預けるな。壊れるだけだ。」
イザン:「それは……理不尽だ。」
シャミール:「理不尽だからこそ、やるんだ。
絆を強くするな。冷たくなれ。
心で動く騎士は、最初の戦で砕ける。」
イザン:「じゃあ、どうすれば心を黙らせられる……?」
シャミール:「疲労は体だけではない。心にもある。
いいか、イザン。
“努力を拒めば、後悔を選ぶことになる。”」
イザンは黙り込む。
シャミールは背を向けながら言った。
シャミール:「だが……感情を完全に捨てたら、人ではなくなる。
敵と同じ“人の皮を被った怪物”になる。」
シャミールは立ち去る。
滝の前で、イザンは拳を握りしめ岩を叩く。
岩が砕け、水しぶきが顔を濡らす。
イザン(小声で):「俺に……冷たくなれるのか……?」
遠くからシャミールが見下ろし、呟いた。
シャミール:「すまない、イザン……だがこれはお前のためだ。
お前のような者は……変わらなければ早く死ぬか、悪魔になる。」
会議室 – アルダ隊
会議室では、アルダが仲間たちを見渡していた。
ラエド、アミール、ナダ、アナス、アドナン、ワエル――六人が揃う。
アルダ:「タジール村の調査を任せる。
住民の様子が奇妙だ。裏で何かが起きている可能性がある。
真相を突き止めろ。」
全員:「了解!」
アルダ:「油断するな。この任務……ただの調査ではないかもしれん。」
出発の直前、部屋の蝋燭が一つ、静かに消える。
語り手:「誰も知らなかった――
タジール村には、一人の将軍の裏切りを暴く“真実”が眠っていることを。」




