帝国への道
初めて訪れる大都市。圧倒的な城壁、賑やかな市場、そして帝国騎士学校の門が ヤザン の前に立ちはだかる。
だが彼を待ち受けるのは、ただの入学試験ではなかった――運命を左右する第一歩である。
都市の驚き
ヤザン と シャーミル は山道を進み続け、やがて遠くに高い城壁と空を突く塔を持つ巨大な都市が姿を現した。
ヤザン の目は驚きで大きく開かれた。
– 「なんてことだ…こんな大きなものを見るのは初めてだ!」
都市の門では、武装した兵士の前に長い列ができていた。順番が来ると、シャーミル は三日月と黄色い星が刻まれた金属の札を取り出した。
それを見るやいなや兵士の顔色が変わり、直立して敬礼した。
– 「どうぞ、お通りください!」
ヤザン は驚きで固まり、シャーミル は不思議な笑みを浮かべながら通り過ぎた。
城壁の内側に入ると、ヤザン は新しい光景に圧倒された。人であふれる市場、響き渡る商人たちの声、あらゆる物を売る店、香辛料や焼きたてのパンの匂いが辺りに漂っていた。
最初の食事
ヤザン は突然、肉を焼く屋台の前で立ち止まった。滴る肉汁が炭火に落ちて煙を上げている。
シャーミル はその視線に気づき、笑った。
– 「食べてみたいか?」
ヤザン は恥ずかしそうにうなずき、数分後には夢中で肉を頬張っていた。シャーミル は小さく笑い声を漏らした。
その後、彼らは シャーミル の旧友が営む薬草店へ行き、貴重な薬草を渡した。そして、簡素な宿へ向かい、その夜を過ごすことにした。
最後の夜
ヤザン が眠る準備をしていると、窓際に座る シャーミル が静かに言った。
– 「明日は帝国騎士学校の入学試験だ。よく眠れ…お前の人生は大きく変わるだろう。」
ヤザン の胸中には不安が渦巻いた。合格できるのか?自分の力の秘密は分かるのか?そう考えながら、不安定な眠りに落ちた。
試験の朝
夜明けと共に、シャーミル が強くドアを叩いた。
– 「起きろ、少年!寝ている暇はないぞ。」
二人は通りの屋台で目玉焼きと焼きたてのパンを食べた。ヤザン は緊張のあまり食欲がなく、ほとんど手を付けなかった。
それに気づいた シャーミル は微笑み、言った。
– 「心配するな…始まりは誰にとっても難しい。学校では試練もあり、仲間もできる。お前の人生はもう以前のものではなくなる。」
ヤザン はため息をつき、ゆっくりと一口食べた。
騎士の制服
その後、シャーミル は公式の制服を売る店に立ち寄り、帝国騎士学校の制服を ヤザン に買い与えた。
ヤザン はその布を触りながら感嘆した。
– 「こんな立派な服を着るのは初めてだ…とても着心地がいい。」
シャーミル は笑った。
– 「必要になるさ。これが始まりにすぎない。」
学校の門
帝国の旗がはためく巨大な門に到着すると、シャーミル が三日月と星の刻印を見せただけで、兵士は軍人のように敬礼した。
– 「どうぞ、お通りください!」
ヤザン は シャーミル が受ける大きな敬意に驚きを隠せなかった。
校長室
学校の中庭には訓練する生徒たちがあふれ、高い建物が遠くまで広がっていた。
受付の金髪秘書は最初は鋭い視線を送ったが、シャーミル を見るとすぐに姿勢を正し、敬礼した。
– 「影の将軍…ご用件は?」
彼女は校長室に入り、報告した。
– 「校長先生、影の将軍 シャーミル が面会を求めています。」
– 「シャーミル だと?!すぐに通せ!」
校長は自ら立ち上がり、深々と敬礼した。
– 「影の将軍殿、お越しいただき光栄です。」
シャーミル は軽く笑みを浮かべ、すぐに本題に入った。
– 「頼みがある。この少年を学校に入学させたい。」
校長は ヤザン をじっと見つめた。
– 「彼はあなたの息子ですか?ご存知の通り、入学できるのは氏族の子弟のみです。」
シャーミル は一瞬沈黙し、静かに答えた。
– 「彼は亡き妹の息子だ。」
校長はため息をつき、頷いた。
– 「なるほど…あなたの家族であれば特例を認めましょう。ただし、入学試験を受けなければなりません。試験は一時間後、訓練場で始まります。」
シャーミル は ヤザン を見て、優しく微笑んだ。
– 「さあ、少年…お前の力を見せてみろ。」