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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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35/75

マヤの叫び(まやのさけび)

その日、第三班にとっては地獄のように厳しい一日だった。

特にリーダーのラーカンに降りかかった痛みは、尋常ではなかった。

それは肉体的な痛みというより――まるで“死そのもの”を体験するような苦痛だった。


場面は変わり、隠れ家の中。

アズロンが椅子に腰かけ、その前には壁に寄りかかって気を失っているシグランの姿がある。


「……スカイがあの致命的な技を使ったな。俺の出番はないようだ。」

アズロンはそう呟き、静かに目を閉じた。


一方その頃、アルダのチームは白い怪物と激しく交戦していた。

アルダの攻撃は凄まじいが、敵もまた異様な強靭さを誇っていた。


「くそっ、まるで巨大な肉の塊を殴っているようだ!」

アルダは舌打ちし、岩に腰を下ろした。


「おい、みんな。見せてみろ。お前たちがどこまでやれるか!」


「はい、師匠!」とライドが叫び、

アスマとワーイルも構えを取った。


「この気味の悪い化け物を倒すなんて、本気ですか?」

ワーイルが不満を漏らす。


ライドが叫び、拳に炎をまとわせる。

まるで溶岩の塊のような一撃を繰り出すが、

怪物は片手で受け止め、その腕が溶けても、すぐに再生した。


「なんだと!?」ライドが目を見開く。


続けてアスマが風の嵐を放ち、怪物をわずかに吹き飛ばす。

だがその傷もすぐに癒える。


ワーイルが皮の剣を放つが、

剣は弾かれ、まるでゴムのように跳ね返る。


「無理だ……こんなの倒せるわけがない!」


アルダは腕を組み、冷静に見守っていた。

「弱音を吐くな。自分たちで攻略法を見つけろ。」


「方法があるなら教えてくださいよ!」ライドが叫ぶ。


「ラーカンたちの報告によると、あの怪物は“無属性の打撃”でしかダメージを受けない。

だが……お前たちにはあの少年、イェザンのような膂力はない。」


「まさか、あの落ちこぼれの方が俺より強いって言うのか?」

ライドが苛立つ。


「そうは言っていない。」アルダは目を細める。

「言葉の裏を読め。力だけが全てではない。」


その言葉を聞き、アスマの脳裏に過去の訓練の光景がよみがえる。


―――フラッシュバック―――


学院時代、アルダの指導で、三人は一匹の魔獣を相手にしていた。

だが、それぞれが勝手に動き、連携はバラバラ。

結果、アスマとワーイルが負傷し、ライドは死にかけた。


土壇場でアルダが飛び込み、三人を救う。


「お前たちの利己心は仲間を殺す。

 読め、行間を。力に頼るな。知恵を使え。」


―――現在―――


アスマは目を見開いた。

「……そうか。」


怪物が地面を叩き、衝撃で大地が裂けた。


「危ない!」ワーイルが叫び、間一髪でかわす。


怪物の腕が地面に張り付き、引き抜こうともがく。


「見つけた……!」アスマが閃いたように叫ぶ。

「足を固定して、同じ場所を集中攻撃するのよ!」


「なるほど!」ライドが頷く。


「ワーイル、氷で足を固めて!」


「了解!」

ワーイルが大量の氷を生成し、怪物の足を凍らせる。


「ライド、今よ!」

ライドが再び炎を拳にまとわせ、

渾身の力で怪物の顔面を叩きつけた。


だが、怪物はなお動こうとする。

そこにアスマが風の嵐を叩きつけ、足を切断した。


巨体が崩れ落ちる。


「面白いじゃないか……」アルダが微笑む。

「ライド、腰だ! そこが弱点だ!」


「任せてください!」

ライドが叫び、渾身の連撃を腰部に叩き込む。


怪物の再生が止まり、沈黙した。


「やったぞ!」ライドが歓声を上げる。

「終わった……!」アスマとワーイルも笑顔になる。


アルダは小さく呟いた。

「アスマ・カザミ……本当に天才だ。誇りに思う。」


だが、その直後――

残骸の中から黒い肉塊がうごめき、再び飛びかかった。


アルダが即座に前に出て拳を叩き込み、粉砕した。


「よし、ラーカンたちを追うぞ。」


――同じ頃――


ラーカンは地に倒れ、激痛に喘いでいた。

「ぐっ……があああ!」


その姿を冷たく見下ろすのは、カインとオウス。

イェザンは必死に見つめ、拳を握る。


「師匠……! 俺は何をすればいいんだ!」


マヤが歯を食いしばる。

「……何もできない……また、みんなの足を引っ張るだけ……」


オウスの冷たい声が頭に響く。

「弱虫め。」


その瞬間、マヤは叫び、全身から膨大なエネルギーを放った。

大地が震え、空気が震動する。


スカイが顔を上げた。

「……なんだ、このエネルギーは……!」


オウスが驚愕の目で振り返る。

「まさか……泣き虫が覚醒したのか!?」


イェザンが呟く。

「マヤ……こんな姿、初めて見る……。」

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