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禁断の森とシャーミルとの出会い


ある朝、マルワンが市場へ行っている間に、イザンは森へ入る決意をした。

そこで彼は小さく弱々しい獣の子を見つけた。イザンは微笑み、リンゴを与えた。だが突然、ライオンほどの大きさを持つ凶暴な獣が現れた。短剣のような牙と剣のような爪を持ち、イザンに襲いかかった。彼は吹き飛ばされ、木に激しく叩きつけられた。


イザンは動けず、目を閉じて最期を待った。


その瞬間、祖父マルワンが飛び込み、彼を救った。攻撃を代わりに受け、その老いた体は痛みに震えていた。彼は荒い息で言った。

「大丈夫か、坊や? 怖がるな……だが忠告を聞かなかったな。それでも責めはしない……父親に似ただけだ。」


だが森は容赦しなかった。さらに四匹の獣が現れ、彼らを取り囲んだ。

疲れた体で立ち向かいながら、マルワンは叫んだ。

「逃げろ! 逃げるんだ、イザン!」


少年が動く前に、一匹の獣がマルワンに飛びかかり、その喉を切り裂いた。頭は地面に転がり、血が土を染めた。


イザンは衝撃で立ち尽くした。恐怖、悲しみ、怒りが入り混じり、声すら出せなかった。

その瞬間……四匹の獣は次々と倒れ、静かに絶命した。


イザンが顔を上げると、そこには一人の男が立っていた。白い長髪が風に揺れ、ゆったりとした衣が翻る。目は冷たく、まるで別世界から来たようだった。

イザンは耐えきれず、涙をこらえたまま気を失った。


彼は死の寸前だった……だが、その謎めいた男によって救われたのだった。


シャーミルとの出会い

イザンは見知らぬ小屋で目を覚ました。恐ろしい悪夢の後、体中は汗で濡れていた。動こうとすると激痛で叫んだ。


男は近づき、言った。

「傷は深い……何とか治療したが、動くな。私は敵ではない。」


彼は温かいスープとパンを差し出した。イザンは警戒していたが、男が口を開いた。

「私の名はシャーミル。君の父の友人であり、母のことも知っている。父はレイス、母はラヒールだ。」


イザンの目は大きく開かれた。

「父を知っているの? 強かったの? 人々に愛されていた?」


シャーミルは小さく笑った。

「質問が多いな……全てには答えられないが、一つだけ確かに言える。彼は偉大な男だった。」


日々が過ぎ、イザンの傷は異常な速さで癒えていった。シャーミルは驚きながらつぶやいた。

「ラザン一族の血……驚異的な回復力だ。」


イザンは驚くべき速さで回復した。母と祖父の墓を訪れ、長く泣き続けた。

その時シャーミルは言った。

「祖父は穏やかな人生を求めていた……安らかに眠れ。」


そして付け加えた。

「私の役目は終わった……行かねばならない。」


だがイザンは懇願した。

「連れて行って! ここでは誰も僕を受け入れない。」


シャーミルは立ち止まり、彼の目を見つめた。その奥に、かつて自分も知った孤独を感じた。

静かに言った。

「考えさせてくれ。」


器の試練

翌朝、イザンは主張した。

「シャーミルおじさん、僕はあなたのように強くなりたい!」


シャーミルは答えた。

「強さは痛みしかもたらさない……だが、お前は父に似て頑固だな。」


彼は澄んだ水を満たしたガラスの器を取り出し、前に置いた。


シャーミルの試み:

– 一度目:水は漆黒に染まり、まるで夜が流れ込んだようだった。

– 二度目:巨大な眼のような黒い渦が現れ、凝視してきた。

– 三度目:器は砕け、水は黒い霧となり……その後、シャーミルはイザンの背後に立ち、言った。

「これが……闇の呪いだ。誰もが持つものではない、だが私を選んだ。」


イザンの試み:

彼はためらいながら近づき、指を水に浸した……だが水は澄んだままだった。

闇も光も、何も起こらなかった。


困惑した彼は言った。

「何も起こらない……僕には力がないの?」


無力感に打ちひしがれ、涙がこぼれそうになった。


魂の鏡

シャーミルは正面に座り、静かに言った。

「心配するな……これは原始的な試験にすぎない。器は最強の力しか映さない。だが魂が隠すものは映らない。」


彼は近づき、続けた。

「本当の方法は“魂の鏡”と呼ばれている。そこでは肉体ではなく、精神が試される。原石に手を置けば、自分の内なる世界を見る。その光景が元素を決めるのだ。」


彼は天井を見上げ、思い出すように語った。

「砂漠を見た者は……大地。

炎を見た者は……火。

川を見た者は……水。

空を見た者は……風。

稲妻を見た者は……速度と野心。

影を見た者は……闇。

光を見た者は……純粋なる本質。」


イザンの目は彼に釘付けとなり、好奇心と困惑が胸を燃やした。

シャーミルは微笑み、付け加えた。

「その時が来れば、少年よ……魂の鏡の前に立つだろう。その時初めて……本当の自分を知るのだ。」

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