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07・千尋とアスルの入浴

 書いててドギマギしてまう…。自分で考えて書いておるのに、実際に書くと恥ずかしい…。

 浴室は狭かったが、千尋と小柄なアスルだけなら、充分な広さであった。

「じゃあアスル。私から先に洗うね」

「う、うん…」

「?…」

 何処か戸惑っているアスルに違和感を感じながらも、千尋はアスルに背中を向けて、頭を洗い出した。

「……」

 頭を洗っている千尋を、黙って見つめているアスル。

『…綺麗だ…』

 アスルは千尋の体を見ながら、心の中で呟く。

 元の世界で千尋を見つけてから、アスルは千尋に美しさを感じていた。その千尋が今、自分の前で裸身を晒して、無防備に背を向けている。

 幾ら自分が絶対に無理矢理事を行わないと言ってはいたが、流石に愛している存在が目の前で無防備な姿を晒しているのは、アスルにとって生殺しである。

『千尋…僕は君がずっと好きだった…愛して愛して堪らないんだ…』

 千尋への想いを、心の中で呟くアスル。

「…スル? アスル?」

「!?」

 何時の間にか洗い終わった千尋が、心配そうにアスルを見ている。

「あっ、千尋。何…」

 千尋の姿を見て、アスルは言葉を詰まらせた。

 普段結んでいる髪は、湯に濡れて水滴を滴らせているが、何より無防備な裸身を晒している…そして下の方も…。

「あ…う…」

 顔を赤くしながら、アスルは必死に声を出そうとしている。

「? アスル?…! あっ…」

 其処で漸く千尋は、アスルが何故自分を見て、赤くなってる理由を察した。

「あ、ご、ごめんねアスル…君は私の事が好きだから…その…私の体を…見て…」

 千尋はクラスの男子が、『そういう』雑誌の話をしているのを、偶に聞こえてしまう為、今のアスルは、男子生徒が女性の体に魅力を感じているのと、殆ど同じだと感づいたのであった。

「あ、そ、その…千尋は悪く無いよ。僕が勝手に見惚れただけだし…」

 急に冷静さを取り戻したアスルは、千尋に非が無い事を伝える。

「う、うん…あのアスル…良かったらその…私がアスルの事を洗おうか…」

「えっ…?」

 突然の千尋の申し出に、アスルは驚く。

「その…アスルに気を使わせた…お詫びなんだけど…良いかな?」

「えっと…じゃあ…お願い…」

 アスルは千尋の申し出を受け入れる。


※      ※


 ゴシゴシゴシ…


 アスルの体を千尋は、体洗い用のネットで、丁寧に洗っていく。

「アスルの体って、凄く鍛えているね」

 落ち着いたのか、千尋がアスルの胸筋を洗いながら言った。アスルの体は鱗に包まれているが、首から股までは柔らかい皮膚で覆われていた。胸を触るのは流石に悪い気がしたが、千尋は男同士という事で自己完結した。

 尚、最初は頭を洗おうとしたが、アスルが最後で良いと言った為、体を先に洗っている。

「僕達ドラゴンは、ガッシリとした体つきが多いからね」

 アスルも少し落ち着いたのか、普段通りの穏やかな口調で答える。

「魔導師って言っていたから、体は華奢なイメージがあるけど…」

「う~ん…大部分の魔法を営む者達はね…でも僕は接近戦も行うから、体は鍛えている方だよ」

「格闘術とか?」

「それと剣術だね…ウフフ…」

 腹部を洗い出した途端、アスルが笑い出した。

「あっ…お腹嫌だった?」

「ううん。少しくすぐったかっただけだよ。気にしないで」

 アスルが優しく伝える。

 千尋は腹部を洗い終えると、ガッシリとした腕と鋭い爪が生えた手を洗い、同じくガッシリとした足を洗った。

「アスル。背中を向けて」

「うん」

 千尋に言われて、アスルは千尋に背中を向ける。背中には左右対称の翼が有り、千尋は背中と翼を丁寧に洗った。そして長い尻尾に触れる。

「あっ…」

 途端に甘い声が、アスルから漏れ、千尋は反射的に離した。

「ご、ごめんアスル…嫌だった…?」

 本能的に千尋は、尻尾はアスルの体で触ってはいけない場所と考え、慌てて謝罪する。

「い、いや…確かに僕、尻尾は敏感だけど…千尋なら良いよ…」

と、照れた笑みを浮かべながら、アスルは千尋に伝える。

「じゃ…じゃあ…少しずつ…」

 千尋は再び尻尾に触れて、ゆっくりと洗っていく。その間アスルは、ときより甘い声を漏らしてしまった。

「じゃあ最後に頭ね…」

「お願い」

 最期にアスルの頭を洗う千尋。アスルは目を閉じて泡が入らない様にする。

 千尋は頭部を洗いながら、アスルの後頭部の二本の角と、額の鋭い角を丁寧に洗う。

「ありがとう…其処を触らせるのは、千尋が初めてなんだ」

 額の角を洗っている時、アスルが千尋に言った。それはつまり、それだけ千尋を信用してくれている事である為、千尋は少し嬉しかった。

「お湯を流すよ」

 そう言って千尋はシャワーのノズルを取り、スイッチを操作してお湯を出し、アスルの全身の泡を洗い流した。

「はぁ~…気持ち良かった…ありがとう、千尋」

「どういたしまして。それじゃあ湯船に入ろうか」

 そう言うと千尋は湯船へと入るが…

「!!!」

 その際にアスルの目に、千尋の尻が写ってしまった。

「……」

 下半身に熱を感じてしまうアスル。

「どうしたの? アスル?」

 どうやら今度は気付いていないらしく、千尋は呑気に尋ねる。

「…何でも無いよ」

 千尋に気付かれない様に直ぐに体を落ち着かせ、笑顔を見せながら答えるアスル。そしてアスルも翼で浮かびながら、千尋の入っている湯船に身を沈めた。


 ヨハンがシャロンの体に魅力を感じる様に、アスルも千尋の体に魅力を感じてしまうんや!

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