06・アスルの魔法と自制心
アスルの容姿を、少し変更しましたわぁ。
スッ…
「!…」
口付けをされるかと思った千尋だが、アスルは何もせずに話した。
「…僕は千尋が好きで愛している…けど千尋の考えを無視して、行動を起こすつもりはないよ」
アスルは床に着陸して、千尋を見上げる。
「だから千尋のペースで、此れからの関係を築いていこう」
そう笑顔で千尋に伝えるアスル。
千尋は少なくともアスルが、無理矢理自分に従わせるという考えが無い事に、一先ず安堵した。ドラゴンであり魔法も使えるというアスルに、千尋は勝てる考えは無かったからだ。
「…えっとその…あっ、お風呂用意するのを忘れた!」
話題を変えようと考えた結果、千尋は風呂に湯を張るのを忘れていた事を思い出した。それを聞いたアスルは…
「この世界では確か、機械で湯を沸かす技術を会得していたね…ねえ千尋。僕に任せてくれない? 凄いのを見せてあげるよ」
「???」
千尋にはアスルが、何をしようとしているか分からなかった。
アスルを連れて千尋は浴室へと行く。アパートの浴室の為少し狭かったが、千尋は一人暮らしの為、此れで充分な広さであった。湯船はまだ水を張る前だった為、空っぽの状態である。
「それでどうするのアスル?」
「本来なら湯を張るけど…ちょっと見てて」
そう言うとアスルは、右手の手袋を外して、右手を湯船に入れた。
『アクア・バースデ』
アスルが何かの言葉を唱えた瞬間、アスルの右手から大量の水が現れて、あっという間に一杯になった。
「えっ…ええっ!? アスル! 一体何を!?」
突然の事に千尋が慌てて尋ねると、アスルは特に戸惑いもせずに、千尋の方を向いて答える。
「魔法だよ。僕の魔力を水に変換して、放出したんだ…けどこのままだと水のままだから、温めないと…」
そう言うと再び、湯船の方を見た。
『ファイア・ヒート』
アスルが再び呟くと、水は湯気を放ち始めた。
「今のは火の魔法を熱に変換して、手から放出したんだ」
「…凄いね…アスルはこんな事が出来るんだ…」
先程魔導師と言っていた事から、魔法が使える事は理解していたが、実際に見てみるとその凄さが分かってくる。
「そんなに褒められると…照れちゃうな…」
アスルは照れた様子で言った。
「千尋。僕の魔法は此れから君の為に使うよ。何でも言ってね」
「……」
アスルはそう言ってくれたが、千尋は本当にそれで良いのかと思い、答える事は出来なかった。
「…千尋?」
「あ、何でも無いよ…これで入れるね…そうだ。アスルも一緒に入らない?」
千尋が提案すると、アスルは青い瞳を見開いて驚いた。
「…えっとその…僕は千尋の事が好きだけど…千尋はその…裸見られて良いの?」
アスルが戸惑いながら聞いてきて、千尋は先程のアスルの告白を思い出すが、自分が言い出した事なので、今更撤回出来なかった。
「…うん、まあ良いよ…アスルも私も男だし…」
「…じゃあ…入ろうか…」
「…うん」
気まずさを感じながらも、一緒に入浴する事を決める。
※ ※
バサッ…
脱衣所代わりのキッチンにて、アスルは着ていた上着を脱いで、両足のベルトを外した。
「……」
チラッと後ろの千尋を見ると、千尋は既に全裸になっており、その肌を全て露出していた。
「…ゴクリ…」
千尋の一糸纏わぬ姿に、アスルは自然と生唾を飲み込んでしまう。
『…やはり千尋は綺麗だ…』
自分の想いの寄せる人の裸身の美しさに、アスルは見惚れてしまう。
『…駄目だ駄目だ…僕は千尋の同意を得ない限り、絶対に千尋には手を出さないと決めたんだ…』
心の中で必死に自制するアスル。
「あの…アスル?」
「!」
身に着けていた物を全て外して動かないアスルに、千尋が声をかける。まさか自分の裸に見惚れていたとは気づかずに…。
「あっ、何でも無いよ…」
「??? じゃあ入ろうか…」
「うん…」
千尋はアスルを連れて、再び浴室へと入る。アスルは体が熱くなるのを感じながら、千尋に付いて行く。
好きな子と一緒に入浴…生殺しやな…。
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