03・ありえない来訪者
この話を書くに至ったのは、僕の好きなカードゲームの『白い竜』を見てて、思いついたんや!
都内にある2ⅮKのアパート。そこが千尋の家であった。千尋は買ってきた食材を台所に置いて部屋の奥に行き、制服から私服へと着替える。
室内の構造は、玄関の右側に小さなキッチンが備え付けられており、反対側にはトイレとバスルームがあった。奥の部屋は二つ有り、一つは千尋の部屋であり、もう一つはテーブルやテレビが置かれた部屋である。
テレビや机などが置かれているが、それはどこか寂しさを感じさせる雰囲気を出していた。そして何より、個人の私物は千尋の物は有るが、両親の物は一つも無かった。
「ただいま、お父さん、お母さん」
私服に着替えた千尋が声をかけたのは、両親が写った写真であった。
千尋の両親は、四年前に事故で亡くなっていた。その後、母方の伯母夫婦に引き取られたが、諸事情でこのアパートに一人暮らしをしていた。
「さて、夕ご飯を作ろうかな…」
何処か寂しげな表情で、夕食の支度に執りかかる千尋。
※ ※
「少し多めに作り過ぎたね…」
山盛りになったチャーハンが入った皿を見ながら、千尋は呟いた。どうやら作る量を間違えたらしい。
「まあ良いか…明日の夕飯にすれば良いし」
そう言って千尋は、チャーハンが乗った皿を、居間にあるテーブルに運んだ。そしてコップに麦茶を注いで、テレビを点けて、食べる準備を終えた。
「いただきます」
千尋はスプーンでチャーハンを食べようとした。その時…
コンコン…
「!」
ベランダの窓から、何かで叩かれる様な音がした。
「?…」
千尋はベランダの方を見るが、この部屋は二階の為、誰かがノックしたとは考えられず、風で何かが当たった音だと考えた。
コンコン…
するとまた、窓を叩く様な音が聞こえてきた。
「……」
千尋は流石に気になり、ベランダに近づいた。
ガラッ!
千尋はベランダの窓を開けてみるが、やはり其処には誰も居なかった。
「こんばんは」
「!?」
突然声がしたので、千尋は辺りを見回すが、やはり誰も居ない。
「ここだよ」
「!」
ふと下から声がしたので、千尋は視線を下に向けると…ヌイグルミが居た。
それは薄青色のドラゴンを象った、一m程の大きさのヌイグルミの様で、どういう訳か、上着の様な物を着込んでいた。
「何でヌイグルミが…? こんなのあったっけ?」
千尋が疑問を口にすると…
「僕はヌイグルミじゃないよ」
と、そのヌイグルミ…だと思ったモノが喋った。
「わっ!?」
あまりの事に千尋は、声を上げて飛び退いてしまう。その様子をヌイグルミ…基、小さなドラゴンは、クスクスと笑う。
「そんなに驚かなくても…まあ仕方ないか…」
ドラゴンは部屋の中へと入ってくる。千尋は入って来た事に戸惑うが、相手が小さいとは、伝説の生物であるドラゴンの為、追い出せなかった。
ドラゴンは千尋の前まで来ると、翼を小さく羽ばたかせて、千尋の目線まで浮かんだ。
「初めまして、椎名 千尋。僕の名前はアスル。よろしくね」
ニッコリと笑いながら、そのドラゴン…アスルは名乗った…千尋の名前を呼びながら。
アスルの名前は、スペイン語で『青』を意味していますんや。
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