12・千尋の学校生活
今更ですが、この作品は『PARALLER DRAGON STORY』のリメイクみたいなモノなんですわぁ! アッチでは此処まで行けなかったけど、此処まで来れましたわ!
千尋は教室に入ると、窓際から二列目の後部の自分の席に座った。千尋が登校した事に気付いた、クラスの二人組の男子生徒が、小声で会話をした。
「なあ…椎名って女みたいだよな?」
「ああ…髪長くしてさ…女のフリかよ…」
その会話は千尋を馬鹿にしている様であった。
「ってかさぁ…噂では椎名って…親を殺したって聞いたぞ?」
「マジかよ…女みたいな顔をして、恐ろしいな…あっ」
二人は慌てて千尋を見るが、千尋は窓の外を見つめて、聞こえていない様であった。
「危ねぇ…椎名に聞かれたかと思った…」
「……」
本人達は小声で言ったつもりだが、千尋には聞こえていた。幸いにもクラスには殆ど生徒が居なかった為、男子生徒の二人の会話が聞こえたのは、千尋だけであった。
「……」
それでも千尋は聞こえなかったふりをして、机に伏す様にし、始業を待つ事にした…その様子を外から見ている、青い瞳の存在に気付かずに…。
※ ※
一時間目の授業が始まり、千尋を始めとしたクラスメート達は、教壇の教師の授業を聞いていた。しかし中には授業を受けているフリをしながら、思い思いの事をしている生徒も居るのであった。
「……」
そんな中千尋は授業を聞きながらも、自宅アパートに居るアスルの事を考えていた。
『アスル…今頃何をやっているのかな…』
昨夜やって来た、異世界の存在であるドラゴンのアスル。そのアスルに結婚を申し込まれるという、驚愕の連続に見舞われた千尋。正直千尋はどう答えれば良いか分からなかった。
アスルはドラゴンであり、何より牡のドラゴン。千尋も見た目は女の子であるが、性別は男の子である。アスルは自分の世界では、異類婚姻や同性婚は普通に行われていると言っていたが、それはアスルの世界での話であった。
その為か単純にアスルに対して、無意識に何かあるのか、千尋は答えが出せなかった。
『多分アスルは…私が断っても、笑って許してくれそうな気がするけど…』
まだ会ってから半日くらいしか経っていないが、千尋にはアスルは優しいドラゴンだと感じられた。
『どうしようか…』
そう思いながら千尋は、窓の外を見つめた…一瞬何か大きなモノが通り過ぎた。
「んっ?…」
何かと思い見つめていると…窓の外にアスルが飛んで現れ、笑顔で千尋に手を振っていた。
「ああっ!!!」
「!?!?!?」
突然の事に千尋は大きな声を上げてしまい、クラス中が騒然となり千尋に注目した。
「何だ椎名!? どうした!?」
授業を行っていた男性教師が、千尋に尋ねた。
「えっ、あっ…あの…」
「何だよ椎名。窓の外に何か居るのか?」
一人の男子生徒の声が上がった。
「あっ…違っ!」
慌てて否定しようとするが、クラス内の人間全員が窓の外を見た。窓の外にはまだアスルが居る。
『ど、どうしよう…』
千尋はアスルの存在がバレてしまうと考えてしまう。それはアスルとの生活が終わってしまう事を意味していた。異世界のドラゴンの存在が認知されれば、当然ながら捕獲しようとする事になると、映画とかで想像出来たからだ。
『アスル…』
千尋は俯きながら、申し訳なさそうな声を、心の中で呟いた。
「…何だ。何も居ないじゃないか」
「…えっ?」
教師の言葉に千尋は窓の外を見るが、其処にはまだアスルの姿が在った。
「何を見たんだ、椎名?」
「えっ…その…」
生徒の一人が尋ねるが、千尋は答えに詰まってしまう。何故か自分以外の教師や生徒には、アスルの姿は見えない様だ。
「どうしたんだ?」
「あっ…えっと…」
教師に尋ねられて、千尋は考えた答えを出した。
「…すいません…トイレに行きたいんです…」
恥ずかしそうに千尋が呟くと、クラス中から爆笑の声が上がった。
「椎名。トイレに行きたいなら、普通に言え! 行ってこい」
「すいません…」
呆れる様な教師の言葉に、千尋は謝りながら教室を出る。向かうのはトイレ…ではなく、校舎の外であった。
この展開は、『PARALLER DRAGON STORY』で考えていた展開。
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