8 リートと魔物、見つかる
「おや、坊やに嬢ちゃん!」
黒服の男だ。顔に見覚えがある。さっき危うく逃れた少年たちだと気づいて、残酷な笑みを浮かべていた。
「また会ったようだな?」
ポケットを宝石で膨らませ、右手には長い銃を持った男が、リートたちに近づいてくる。スニが、リートの背中を押した。
「リート、逃げな」
「やだよ!」
争う二人の足下に、男が何かを放り投げた。視線を落として、リートは凍りついた。
ニーの頭部だった。
スニがその場にへたり込んだ。土気色のニーの首は、まるで生きているみたいに目をかっと見開いている。
「探し物だろ。手だとか足だとかは、見つけられたか?」
スニがニーを胸に抱えた。そのまま動かないので、リートは彼女を揺さぶった。
「立って!」
男はもう、二人から三歩も離れていない。
「ここで死ぬのと、地上で奴隷になるのとどっちがいい?」
リートは答えず短剣をまた構えた。
「いいのかな? 俺にかすり傷一つでもつけたら、お前ら皆地獄行きだ」
「違うよ!」
リートは叫ぶ。
「ぼく、大地の子じゃない。空の人と、人間の子どもだ。スニたちは関係ない!」
「手が震えてるぜ、坊や。怖いんだろう」
違う。怖くなんかない。ただ、人に刃を向けるのが初めてなだけだ。
リートの額に、男が銃口を当てた。
「十秒数えるうちに、ナイフを捨てろ。でなけりゃ頭に穴が空くぜ」
男はリートの顔を覗き込み、あざ笑った。
が、次の瞬間、その顔が驚きに緩んだ。
リートもつられて後ろを見る。
部屋が、光り輝いていた。緑色の爽やかな光が、部屋いっぱい明るく照らしていた。
何もないように見える空間から、誰かが出てくる。二人だ。光が消えてしまってから、リートは歓声を上げた。
「師匠!!」
オグマが出現した。目の前に弟子がいることに当惑して、目を丸くしている。その後ろから、黒髪のやせた少女が、ひょっこりと顔を覗かせた。
「ノール姉さん……!」
喜びで油断したリートの短剣を、男が叩き落とし、銃の引き金をひきかけた。
「動くな……!」
オグマが、弟子に銃を突きつける男の興奮しきった顔を見た。灰色の目が、みるみるうちに怒りでつりあがった。