5 魔物、リートに「戦争だ」と言う
凄まじい爆発音と共に眩しい光が弾け、リートは何も分からないままに気絶した。
気がついた時、リートは仰向けに寝転んで、見知らぬ魔物に介抱されていた。起きようとすると、頭や手足のあちこちが鈍く痛んだ。
「大丈夫かい」
魔物が、心配そうにリートをのぞき込んだ。
「は、はい……」
何が大丈夫なんだか自分でも分からないままリートは答え、魔物の手を借りて体を起こした。
目に映ったのは、初めて入る部屋の武骨な内装だった。金槌やてこなどの道具が壁際にずらりと並んでいた。
辺りは騒々しい。ばたばたと走り回る何人もの足音や、盛んに口論する声が聞こえてくる。
「ハルアと……スニは?」
魔物が優しく答えた。
「二人は無事だ。今、別の部屋で手当を受けてるよ。ハルアがけっこう重い怪我をしてね」
「ニーも?」
魔物の顔がさっと曇った。
「ニーは死んだ」
リートは呆然として魔物と見つめ合った。魔物の若々しい顔に、濃い陰が落ちている。
__さっきまで、普通に会話を交わしていたのに。
信じがたいと思いながらも、魔物の言葉を否定することはできなかった。
「何が起きたの?」
リートが覚えているのは、けたたましい音と、失明するほどの光だけ。
「地図の部屋を、人間が爆破した」
魔物が低くゆっくりと言った。
「戦争が、始まったんだ」