表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘密の戦争  作者: 六福亭
12/15

12 リート、ほっとする

 魔物たちが、はっとして扉を睨む。一番扉の側にいたリートが、代表して薄く薄く開いた。


 地下通路にたった一人で立っていたのは、オグマだった。リートはわっと叫んで、飛び降りた。そのままオグマに飛びつこうとしたけれど、2、3歩距離をとられてしまう。

「待て」

 両手を広げ、オグマはリートを制止する。彼の肌からうっすらと煙が立ち昇っていることにリートは気がついた。

 魔物やレイラも降りてきた。オグマはにっこり笑い、不安げな彼らに応えてみせた。

「安心しろ、もう出てきても大丈夫だ」

「あいつらは?」

 オグマが意気揚々と答える。

「皆まとめて、地上に追い出した。脅かしてやったから、二度とここに降りてこようなどと思わないだろう」

 オグマは、宝石の入った袋を魔物にわたした。

「盗まれた宝石だ。だが、全ては取り返せなかった。申し訳ない」

「十分だよ」

 魔物が袋を開けると、緑や青、紫の宝石のまばゆい光があふれ出した。

「魔法は、また作り出すことができる。生きてさえいればね……」

「それより、あいつらの仲間はまだまだ地上で牙を研いでいるはずだ。そいつらも何とかしないと安心できないな」

 オグマは、額にかかった短い白髪をかきあげた。髪の隙間から、灰や火の粉がぱらぱらと舞い降りた。

「……手を貸してくれる?」

「勿論」

 オグマは宙を睨み、指の先に火を灯した。

「一人残らず、燃やし尽くしてやる」

 頼りになる、とリートは安堵した。周りの魔物たちも、ほうと息を吐いた。だけどレイラだけは、不安そうにオグマを見つめていた。

「あいつらがいつ攻めてきてもいいように、備えておこう」

 オグマの言葉に、ハルアとスニが同時にうなずいた。スニが指笛を吹くと、あちこちに隠れていた魔物たちが集まった。

「怪我をしていない者は、残った宝石や作業の道具を例の部屋へ運ぶんだ」

「ニーやノノたちの弔いは?」

 誰かが尋ねた。スニはまだ、ニーの頭をしっかりと抱えたまま、答えた。

「それも、すぐにやろう。だけど、手当てや避難が優先だよ」

「また、人間が爆弾を持って襲ってきたらどうしよう?」

 小さな女の子が、甲高い声で尋ねた。まだ、ほんの2、3歳にみえる。恐怖で目が大きくなっている。

 スニの代わりにオグマが返事をした。優しい声だった。

「もう二度と、奴らの好きにはさせない。あなたたちの代わりに俺が戦う」

 わたしも。レイラが、リートにだけ聞こえる声で呟いた。ぼくも、とリートは心の中だけで答えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ