99話 炎と月の魔術師と雷神JKの三つ巴配信
【美琴ちゃんのクラン】現時点で夢想の雷霆が世界トップクラスで注目されている件【今後どうなる】
345 無名の眷属
海外SNSや掲示板でも、美琴ちゃんに会うためだけに来日したいって言ってる奴いて驚いたな
346 無名の眷属
可愛いもんね
347 無名の眷属
日本人は外国人からすれば、年齢以上に若く見えて小柄で可愛いらしいからな。そこに着物を着て、侍要素が加わればもう人気は止まらんよ
348 無名の眷属
やっぱ何日か前のあの忍者漫画の雷遁を真似たのが、デカい起爆剤になったみたい
349 無名の眷属
ここまで来たら、須佐〇乎も再現しても驚かん
350 無名の眷属
そこまでやったら侍ガールじゃなくて忍者ガールになっちまうwww
351 無名の眷属
おいお前ら! 美琴ちゃんの配信告知来てるぞ!
【復活!】灯里ちゃんとルナちゃんと一緒に下層攻略!【クラン活動も今日から始動】
352 無名の眷属
マジか! 体調よくなったんだな
353 無名の眷属
三日間か。まあ短い方か
354 無名の眷属
美琴ちゃんも女の子だし、そりゃ体調が死ぬほど悪くなる日だってあるよな
355 無名の眷属
なんか絶妙にキモいやつがいる気がするのは気のせいか?
356 無名の眷属
灯里ちゃん、ルナちゃんの加入OKしたんだ。これは特上の百合百合てぇてぇが見れそうだ
♢
「眷属の皆さん、こんにちは! 心配をかけてごめんなさい、本日は元気な琴峰美琴の攻略配信の時間だよ!」
「皆さんお久しぶりです、燈条灯里です。今日から正式に、美琴さんのクラン『夢想の雷霆』の一人目のメンバーとして活動していきます」
「やっほー! 今日も美琴様の配信にお邪魔します! みんな大好き、ルナだよ!」
三日間の月一体調不良を乗り越え回復した美琴は、灯里とルナと共に下層に来ている。
いつもは上層からのスタートだが、三日間の体調不良で視聴者達に心配をかけたため、今日はできるだけ多くの見せ場を作ろうと張り切ったのだ。
既にエレベーターの建設が始まっている大穴を、現場監督に少しだけ無茶を言って通してもらい、灯里とルナを抱えて下層まで直通で降りて行き、そこで配信を始めたのだ。
”待ってたよ!”
”元気そうで何より”
”ロリとロリと高身長お姉さんとか、もう絵面だけで死ねる”
”灯里ちゃんとルナちゃんのタイプが正反対なのも、なんかいいね”
”これだけでてぇてぇ”
”美琴ちゃんの髪型がいつもと違う!?”
”猫耳ツインテ美琴ちゃんだ!”
”あ゜”
”み゜”
”かわっっっっっっっっっっ(心停止)”
配信を始めると、いつも通りすさまじい速度でコメントが流れていく。
元気そうで何よりというコメントが多いが、それに次いで多いのは灯里と一緒にルナがいることと、美琴の髪型が普段とは違う猫耳ツインテールになっていることだ。
「灯里ちゃんは、二つ返事でルナちゃんがパーティーに加わることを許可してくれたのよ。むしろ、同い年の友達が増えるから喜んでって。時間になるまでの間に打ち解けて、お互いちゃん付けで呼んでたよ」
「そ、それ言わないでくださいよ……」
「もう友達になったんだしいいじゃーん」
「うぅ……。ルナちゃんは気にしなさすぎだよお……」
配信裏のことを話されるのが恥ずかしい灯里は、顔を赤くして控えめに抗議するが、まったく気にしていない様子のルナがぎゅーっと抱き着く。
性格どころか生まれ育った国そのものが違う二人だが、やはり同い年の同性であることも手伝って、あっという間に親しくなった。
あとは、二人とも魔術師であるからだろうか。
ルナは一般的な魔術ではない月魔術を使い、灯里は杖の補助なしでもそれありの炎魔術と同じ威力と精密さを発揮する腕を持ち、お互いにどのような鍛錬や研究を日常的にしているのかを話し合っていた。
魔術のことは何も分からないので、二人が何を話しているのかは全く理解できなかった。ただ、年下の可愛い女の子が、楽しげに話しているのを微笑まし気に眺めていた。
「この髪型? アイリにやられた」
”アイリちゃん?”
”いつも見ているアイリちゃんには腕なんてありませんが”
”自分でやったのが恥ずかしいからって、下手な言い訳はしないほうがいいですぜお嬢様”
”お可愛いことを”
「本当にアイリにやられたんだって。ほら、見なさいこれ」
『新しく搭載した、万能アームです。これでお嬢様の代わりに、様々なことができるようになりました』
父親の会社から販売されている浮遊カメラ。
それは買った当初は美琴の頭の半分程度だったはずだが、いつの間にか美琴の頭より少し大きいくらいにまで大きくなっていた。
毎日観ていると変化に気付きにくいとは言うが、ここまで大きくなったのに気付かなかった自分が愚かだと頭を抱えた。
ちなみに、空間投射ホログラムは最初からあるが、アイリの声を発するスピーカーは本来は着いていないもので、後から付け加えたものらしい。
ではどこでそんな改造を行っているのか問いただしたところ、家の地下に龍博の作業部屋があり、そこにある使わなくなったジャンク品などを使って日々改造を行い続けていたとのこと。
今回新しく搭載された万能アームも、美琴が三日間体調を崩してその間家事を満足にできないのを見て、そこの地下の作業部屋で作って取り付けたらしい。
なお、しっかりと球体状のボディーの中に折りたたんでしまえる。
万能アームの見た目は、細かい作業ができるようにと人間の手を模して造られているため、絶妙に気味悪く感じる。
「アームの性能を確かめるためって、配信を始める前に勝手に結った髪を解かれて、勝手にこんな形にさせられた」
「でも、美琴さんあまり嫌がっていませんでしたよね」
「どんな髪型にされるのか分からなかったからね。アイリが眷属のみんな側だってこと忘れてた」
”いいもん見れた!”
”アイリちゃん、ありがとう。あんた最高の味方だよ”
”いつも大人びて見える髪型だから、ツインテは新鮮”
”保存保存保存保存保存保存保存保存保存保存保存保存!!!!”
”くそぅ! 美琴ちゃんはどうしていつも、俺のスマホの写真フォルダを圧迫してくれるんだありがとうございます!”
”これからしばらくその髪型のままでいてほしい”
”可愛いしか勝たん”
案の定、視聴者達は猫耳ツインテールとなっている美琴のことを、可愛いと連呼しまくる。
ここで下手に照れ隠しすると、調子に乗ることは分かっているのであえて反応しないでいるつもりでいたが、流れ続ける可愛いコメントを見るたびに顔が熱くなっていくのを感じる。
「きょ、今日は下層の攻略とボス戦がメインになるわ。ルナちゃんは前のパーティーで何回か下層ボスに挑んだ経験はあるけど、灯里ちゃんはまだ中層ボスの餓者髑髏だけだし」
「今から少し緊張してきました……」
「だいじょーぶだいじょーぶ。私がいるし、何より美琴様がいるんだから」
「ルナちゃん、今更だけど私のことを様付けで呼ぶのをやめてくれないかしら? あまり落ち着かないから」
「分かりました。じゃあ、先輩と呼びますね! 美琴様のような背が高くて超綺麗な先輩が欲しかったんです!」
「先輩かあ。まあ、可愛い後輩ができたんだし、うん。それでもいいわよ」
できれば灯里と同じようにさん付けで呼んでほしいが、先輩と呼ばれるのも悪くないと感じたため、そのままにしておく。
年下の子に先輩と呼ばれると、なんだか不思議な感じがする。一つ大人になったような、自分が先導して教えるような立場になったような、そんな感じだ。
「じゃあ今日は、下層をあちこち適当に歩き回ってモンスターを倒しながら、三人の連携を練習していってからボスに挑みましょう」
美琴はルナの戦い方や支援方法を知っているが、灯里はまだ何も知らない。
既に仲よくなって得意な魔術などを話し合っていたが、言葉で知るのと実際に見て体験して知るのとでは雲泥の差だ。
知識として知っているだけの状態でいきなりボスに挑むより、ある程度下層のモンスターで慣らしてから挑んだ方が、連携もしやすくなりストレスも軽減できる。
「今日が私達夢想の雷霆の初仕事ですので、頑張ります……!」
「ほどほどにね」
「いいなー、美琴先輩のクラン。私も入ってみたい」
ルナが羨望の眼差しを灯里に向けながら言う。
美琴のヘビーリスナーであることは以前会った時に確定しているので、同じ視聴者でありながら美琴のクランの最初のメンバーとした所属することになった灯里が、何よりも羨ましく思えるのだろう。
「正直ルナちゃんも結構強いし、誘おうかなとは思っているかな。ただ、知り合いに限定しちゃってるから、まだ二回しか会っていないルナちゃんをいきなり誘うわけにもいかないのよね」
「だったらこれから毎日一緒にダンジョン潜りましょう」
「わ、私も、ルナちゃんが来てくれると嬉しい、です」
「随分仲良くなったわねえ」
仲がよくなることはいいことだと微笑ましく思いながら出発し、最初は基本ソロだけで攻略していくはずだった自分のチャンネルが、だんだんと人数が増えて行っていることに苦笑を浮かべる。




