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89話 テスト明けダンジョン攻略配信

 翌日の学校帰り。

 いつも通り配信をしにダンジョンに足を運んだが、いざ配信を始めると視聴者達に昨日のことを掘り返され、どれだけ話題を変えようと頑張っても強引な軌道修正をされて戻ってきた。

 それを数度繰り返した末に、美琴は壁の方を向いて膝を抱えて座り、いじけていた。


「どうせみんなは、私の言うことを聞いてくれないんだ……」

『いじけ姿が百万人に見られておりますよ』

「もうどうでもいいや……」

『今回は重症ですね』


”ガチいじけ美琴ちゃん久々に見た”

”膝抱えて壁向くのは、あのおうち帰りたいボイス以降だね”

”マジで何しても可愛いのは反則過ぎるっぴ”

”リアルタイムで雷神美少女のいじいじタイムが観られるなんて、なんて幸運なんだ!”

”これはスクショせねばっ”

”今正面からのぞき込んだら、絶対にパンツ見えるよな”

”抱えている膝とおっぱいの間に挟まりたい”

”何だったら普段から見えてるあの谷間に挟まりたいわ”

”おい、ここ現役女子高生の配信ぞ。そんな変態コメント書き込むな腋に挟まりたい”


 壁をスクリーンにして投射されたコメント欄を見ると、慰めのコメントがびっくりするくらい少なかった。

 今までも配信の中で、視聴者達があまりにもからかいすぎたせいでいじけることはあったが、何度観ても彼らは美琴のいじけ姿が観たいらしい。

 それを知ってますます味方はいないのだと思い、抱えている膝に顔をうずめる。


 結局配信を始めてから二十分間そこから動かなかったのだが、視聴者の数は減るどころか増加していた。


「どうしてみんなはそんなに、私のことをいじめるの」


”え、だって可愛いから”

”可愛い女の子をいじめたい”

”いじめられてむすーっとするのが観たいからかなー”

”好きな女の子をついついいじめちゃうのが、男の悲しい性なんだ……”

”シンプルに反応が可愛いからなー。あとは今回は、グッズとかが気になりすぎた”

”写真集とか最高じゃないですか! ついにモデルデビューとかしそう”


「お母さんの事務所でモデルすると、調子に乗るから嫌なのよ。中学生の時に一回だけ読モで撮影に行ったことあったけど、調子乗ったお母さんに着せ替え人形にさせられたし、カメラマンの人も一緒に撮影してたモデルの女の人もノリノリになって、予定より大幅に遅れたことがあるの。それ以降、もう撮影には行かないって決めているのよ」


 中学生の時の美琴は、今ほど身長は高くなかったし体形も今ほど凹凸が激しくなかった。

 それでも母親譲りの顔と、右目の泣きぼくろと右の口元の艶ぼくろもあって幼くして美人だと言われ、読モとして撮影に行って雑誌に載った時は、ネットでちょっとした話題になったことがある。


 ただそんなことがあったから、琴音は美琴に対して非常に甘いから絶対他より優遇するだろうし、利かせなくてもいいような融通を利かせるかもしれないと思ったため、事務所には所属しないとはっきりと明言したのだ。

 その時の琴音は、それはもう絶望の淵に叩き落とされたような顔をしていたのを、今でもはっきりと思いだせる。

 そんな顔をするくらいなら、最初から下手に優遇しすぎなければよかったのにと思ったものだ。


「あ、そうだ。言い忘れてたことがあった。灯里ちゃんだけど、今ちょうどテスト期間中だから探索には来られないって。明日で最終日って言っていたから、それまではソロ活動になるわね」


 他にも何かあるような雰囲気だったが、本人から言おうとしないので追及するつもりもない。

 一応、なんとなく予想はしているが、あくまで予想でしかないので配信の中でそれを口にしないでおく。


”そっかー。まだテスト中なんだ”

”小柄ロリっ子が机に向かって勉強していると思うと、萌える”

”ちっちゃい子が頑張る姿っていいよね”

”ナイスボディーお姉ちゃんに勉強見てもらっている幼女というシチュが見たいです”

”誰かそれでイラスト描いてくれ!”

”言い出しっぺの法則というのがあってだな?”


「イラストで思い出したけど、ツウィーターに、その……、え、えっちなイラストあげている人がいるみたいだけど、私基本そういうのは完全にNGだから。もし見かけたらすぐにこっちから通報して削除申請するから」


 テスト勉強の休憩中に、読書する本もなかったのでツウィーターを眺めていたのだが、その時に制服を着崩して行為に及んでいる自分のイラストを見てしまい、思わずスマホを全力投球するところだった。

 今思い出しても顔から火が噴き出そうなほど恥ずかしく、どうしてそんなものを描く人がいるのか、甚だ疑問だ。


『それについてはご安心を。先週お嬢様が見かけたのは完全に事故ですが、この私が不健全で汚らわしい十八禁イラストがお嬢様の目に入らないよう、二十四時間体制で監視しております』

「その割には、一個だけとはいえ見かけちゃったんですけど」

『ですからあれは事故です。上がった瞬間にお嬢様が見てしまえば、事前対処などできません。どうしてそういうものの運ばかりはいいのでしょうね』

「できれば他の方に運が行ってほしかったよ……」


 とにかく、美琴の十八禁イラストは全面禁止だと再度視聴者達に通達して、もし見かけたら保存せずに報告するようにと釘を刺す。


『もし保存するようであれば、この私が直々に大量の複製体を生成してアカウントを特定し、そこからスマホやパソコンをハックして全てのデータを消去しに行きます』


”こえぇよwww”

”アイリちゃんならマジでやりかねん信頼感がある”

”人間より人間臭いところある瞬間あるけど、やっぱりAIなんだなって”

”写真フォルダに入ってるたくさんの美琴ちゃんの可愛い写真を消されたくないので、えっちイラスト見かけたら即通報します!”

”目覚ましに登録してるおうち帰りたいボイス保護のため、全霊をもってして協力します”

”このAIどこまで進化すれば気が済むんだよwww”

”製品化のために作られた試作品て言ってたけどさ、もうこのまま製品化してもいいだろ”

”進化しすぎたらデデンデンデデンな世界になっちまう”

”そうなっても美琴ちゃんいるから大丈夫じゃね?”


「いい加減、お父さんが嬉々としてアイリの後継機作りそうで怖いよ」

『すでに着手しているそうですよ』

「もう作ってるんだ……」

『だた、私が進化しすぎたせいで全く同じものを作ることができないと、嘆いておられましたが』


 アイリは人間には危害を加えないようにというプログラムが組まれているので、世界中にあるミサイルの制御装置を乗っ取って全部撃って、人類を絶滅させるなんてことはできないようになっている。

 とはいえど、絶えず自己進化を続けているので自分でプログラムを書き換えていてもおかしくないかもしれない。

 もしそんなことをしていたら、美琴が責任を持って全てのアイリを破壊するつもりだ。


 そろそろいい加減に活動をしないといけないので、ダンジョンを進んでいく。

 今日はできるなら深層に行ってみたいが、あそこまで行くと帰ってくるまでにも時間がかかってしまうので、潜っていられる時間が少なくなってしまう。

 三日後は土曜日で、その日は灯里は家族で出かける予定が先に入っているため、その日はソロになるので行けるかもしれない。


『今日はどこまで行くおつもりですか?』

「下層までかな。深層も一人で行けるんだし行きたいけど、放課後攻略だとあまり長いこと潜っていられないし」

『でしたら、土曜日は深層まで行くおつもりですね。その日は灯里様のご都合でソロですから』

「そうね。もう土曜日の枠作っておいてくれる?」

『かしこまりました。何でしたらドラキュラのところまで行きますか?』

「それは当日決めるから、くれぐれもタイトルとか概要欄には書かないでよね」


 開幕速攻で城ごと吹っ飛ばす一撃を放てば、恐らく一瞬で勝負はつくだろうが、それだと面白みに欠けてしまう。

 かといって、真っ向勝負を挑めばあれは未だに原理不明なすり抜け回避で避けられるので、長期戦になってしまうかもしれない。

 具体的なヴァンパイアの倒し方を調べてから行った方が、長くなりすぎず短くなりすぎずちょうどいい時間で視聴者を楽しませることができるかもしれない。


「よっし。それじゃ、ちょっと久しぶりなダンジョン攻略を始めますか」


 ぐーっと伸びをしながら言い、雷薙を取り出して下層に向かって歩き始める。

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