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67話 百足の獣

 下層と同じ洞窟のようなところをイメージしていただけに、いきなり過去に飛ばされたかのような風景に、思わず足を止めてしまう。

 特に混乱を招いているのは、地下にあるはずの場所なのに、地上と同じように青空と太陽、そして流れる雲があることだ。


「何、ここ……」

「ここ、本当にダンジョンなのですか?」

「ダンジョンはどこもかしこも不可思議なことばかりと聞くが、なんと奇怪な」


 後続が控えているので、突っかからないように第一班全員が前に出て、残りが来るのを待つ。


”ここマジでダンジョンなんか?”

”中世のどっかの海外みたいな光景だな”

”どっかで見たことあるように感じると思ったら、ここ多分ルーマニアの風景が再現されてんじゃね?”

”こんなゴリゴリの海外みたいな場所なのに、日本の妖怪の大百足が基の和性モンスターがいるわけ?”

”景色と湧くモンスターが一致しなさすぎて頭バグりそうwww”

”今までのダンジョンと全然違うから、超戦いづらそうじゃん”

”誰がダンジョンの中で、こんな市街地戦をすることになるなんて予想できるよ”


 どこまでも洞窟のような光景が続くと思っていたらしい視聴者も、この光景に困惑している様子だ。

 少し遅れて第二班、第三班も到着し、がらりと変わった景色を見て困惑する。


「おいマラブ! これは一体どういうことだ!? どうしてダンジョンの中に、地上と同じような景色がある!?」

「私に聞かないでくれる? 多くのことを知っているけど、全知全能ってわけじゃないの。もし私がそんなだったら、こんなことにはならなかったでしょうしね」


 まだ少しふらふらしているマラブのところに、仁一が大股で近付いてきて肩を乱暴に掴み、どういうことなのだと怒鳴るように説明を求める。

 それに対してマラブは、呆れたように深く長いため息を吐いてから、突き放すように答える。

 どうして仁一は、彼女がこのことを知っている前提できたのかは分からないが、今のやり取りから察するに、専属アドバイザーという肩書きは嘘ではないようだ。


 それにしても本当に不思議な光景だと周りを見回していると、背筋を大量の虫が這いずり回るような凄まじい悪寒を感じ、反射的に体に雷をまとわせて本能に従い、真上を仰ぎ見てから雷鳴を轟かせて跳び上がる。

 視界に映ったのは、全長数十メートルという異常な大きさをした、全身を黒い甲殻で覆い赤い足を無数に生やした化け物、大百足だった。


「セエエイ!!」


 裂帛の気合と共に雷薙を上に振り上げて、落下してきている大百足を大きく弾き上げ、そのまま雷の足場を作ってそれを蹴り、電磁加速させた右の回し蹴りを頭に当たる部分に叩きこんで蹴り飛ばす。

 大きく鈍い音を立てて、全員がいる場所から大きく離れた場所に大百足が落ち、美琴は元居た場所に着地する。


「全員戦闘準備! 大百足は大量の百足型モンスターを引き連れて攻撃してきます! 大百足は私に任せて、皆さんは大型の百足モンスターの対処をお願いします!」


 想像以上の硬さを持つ甲殻に、割と本気で薙刀の一閃と蹴りを叩き込んだはずなのだが、小さな亀裂を入れるだけに留まっていた。

 それを見てすぐに参加者全員に指示を出し、美琴は背後に三つの一つ巴紋を出現させる。


「雷電美琴! この作戦の指揮官はこの俺だ! 勝手な真似は───」

「ここにいる全員の命がかかっている状況で冗談を言うのはやめてください! 死にたくなければ早く武器を構えて、大百足が呼び出した大型百足の対処に専念してください!」


 この期に及んで自分が中心だと言う仁一に、言葉を遮るように若干キレながら声を荒げる。


「おっしゃお前ら! 美琴ちゃんからの指示が出たぞ! 大百足に集中できるように、俺らは雑魚狩りだ!」

「雑魚狩りっつっても、人間サイズの超でっかくてキッショい深層モンスの百足だけどな! 食われんじゃねえぞお!?」

「「「「応!」」」」


 仁一が指示を出している時よりも圧倒的に士気が高くなった参加者達が、やる気に満ち溢れて武器を構え、魔術と呪術の呪文を唱え始める。

 そんな光景を見て、仁一は何かをギャーギャーと喚いていたが、余計な情報は完全に遮断して、雷を体にまとわせて雷薙の名前を開放して強化する。


「妾も加勢しようではないか」

「あなただけに、いいところを見せるわけにはいきませんからね」


 右手に刀、左手に脇差を持った美桜と、強烈な神聖な気配を発している古刀、和泉守藤原兼定いずみのかみふじわらかねさだ、通称九字兼定(くじかねさだ)を抜刀した華奈樹が隣に立つ。

 美桜の持つ二刀は、刀身が薄っすらと桜色に染まっており、強烈な退魔の力が込められている退魔の剣だ。

 一方で華奈樹の持つ九字兼定は、呪具でも退魔の剣でもないが、魔を退ける九字が刻まれている神霊宿りの古刀であるため、ただの呪術師でも何でもない名匠が鍛えた刀でありながら、怪異やモンスターに対して異常なまでの特効性を持っている。


「ありがたいわね。でも私だって、これ相手に手加減するつもりはないから、思いっきり行くけど付いてこられる?」

「誰に物を言っているのですか? 私は特等退魔師ですよ」

「華奈樹とぬしには敵わぬが、速度だけならば誰よりも速い妾にそれを聞くとは、愚問じゃな」

「頼もしいわね。それじゃ、行くわよ!」


 ぐっと姿勢を低くして、雷鳴と共に飛び出す美琴。

 少し遅れて、人間離れした超速で踏み出す華奈樹と、疾風のように鋭く加速する美桜。


 大百足は先に急接近してきた美桜に合わせるように、巨大な顎を開いて食らいつこうとしてくるが、美琴の肉の味の代わりに強烈な雷の味を味わわせる。

 体に真雷を撃ち込まれて痺れる大百足に、遅れて接近してきた華奈樹が甲殻と甲殻の間に刀身を滑り込ませて傷を付ける。

 雷撃の攻撃から回復した大百足は、現時点で自分の体に一番大きな傷を付けた華奈樹を標的にするが、美桜が凄まじい連撃を全く同じ個所に叩きこんで殻を割り、その中にある肉を削ぎ落す。


 素早い動きで華奈樹は死角に回り込んだため標的から一旦外れ、大百足が美桜に狙いを定めるが、自分自身を雷のように撃ち出しながら強烈な突きを繰り出し、胴体を半分に千切る。

 これで倒れてくれれば非常に楽なのだが、根が怪異と同じであるためその程度のダメージなどたちどころに再生されてしまう。


「やはりそう簡単にはいかぬか」

「これで決着が着いたら楽ですけど、そこは地上と変わりませんね」

「むしろ今までの敵が弱すぎただけじゃな。胴体を両断されても生きているのはおらんかったが、これくらいしぶとい怪異は茶飯事じゃしのう」

「普段どんなのと戦っているのよあなた達」


 一秒もかけずに回復しきった大百足を見ながら、満足そうな笑みを浮かべる美桜と、もうそういうものは見慣れたと言わんばかりの顔をする華奈樹。

 呪術師や退魔師の仕事は大分過酷だという話はよく耳にするが、この大百足のようなものが日常茶飯事とか、少し過酷すぎやしないだろうか。


『お嬢様、どうして陰打を抜刀しなかったのですか? あれであれば、一振りであれを消滅させられたでしょう』


 少し離れた場所で大百足と、それが呼び出した人間サイズの百足の行動を予測演算しながら記録していたアイリが、ピアスを通じて聞いてくる。


「真上にいたからそんなの使ったら崩落の危険があって使わなかったのと、どんなモンスターがこの先待ち構えているのか分からないから、少しでも温存しておきたいから。最初から全力で戦っていたら、いくら無尽蔵に雷が使えると言っても、消耗がないわけじゃないし。あとは純粋に情報が欲しい」

『左様で。そのくせ、三鳴は使っているのですね』

「強化じゃなくて蓄積だけにしているから無問題」


 そんな会話をしていると、大百足がギチギチギチッ! と耳障りな音を鳴らして、大量の人間サイズ百足を呼び寄せる。

 ただでさえ百足の見た目は気色悪いというのに、それが人間と変わらない大きさとなると、気色悪さは数倍だ。


「ただでさえ、虫ってあまり得意じゃないのに……」

「昔は男子に交じって、カブトムシとかを捕まえに行っていた者のセリフとは思えんな」

「そんな昔の話を今持ってこなくてもいいじゃないですか! ……美桜と美琴は平気なんですか?」

「妾は平気じゃな。確かに気持ち悪いとは思うが、所詮はモンスター。怪異と変わらん」

「近付かれなければ特に」

「……あなた達二人のその考え方が羨ましいです」


”あのー、仮にも下層ボスモンス以上の脅威の一般湧きモンスが目の前にいるんですが?”

”なにこの、久しぶりに会った友達と昔話に興じてるみたいな緩い雰囲気”

”ビッグサイズ百足と、マウンテンサイズ百足が目の前にいるのに緩すぎるこの三人www”

”誇張なしで何千回も言われているけどさ、それで普通の女子高生は無理があるってwwwww”

”完璧な奇襲を仕掛けてくるくらいには知能が高いモンスターなはずなんですが”

”人間サイズ百足も、余裕で下層モンスを蹂躙できる強さを持っているはずなんですぜ、お嬢さん方”

”過去に大百足ワンパンの実績があると安心感が違う”


 がさがさがさと肌が粟立つような音を立てながら迫ってくる、大量の百足達。

 虫が大嫌いな人がこれを見たら泡を吹いて気絶してトラウマになり、その後しばらく悪夢で見るに違いないであろう景色を前に、三人は特に動じない。


 雷薙を低く構えた美琴は雷を刀身にまとわせて、そのまま間合いを大幅に拡張して薙ぎ払う。

 百足の体が平べったいのでいくらか逃すが、それは退魔師の幼馴染二人がサクッと両断して、その体を崩壊させる。

 虫型のモンスターでありながら非常に高い知性を持っている大百足は、呼び出した仲間があっという間に倒されるのを見て、若干怖気付いているようにもたげさせている体を後ろに引かせるが、すぐにまた顎を開いて襲い掛かってくる。


 美琴が捉えきれない速度で移動することをとっくに学習しているようで、同じように素早く移動できるが美琴ほどではない、美桜と華奈樹を狙っている。


「させない!」


 左右に分かれて疾走する二人を追いかけようとするが、動き出しを抑えるように雷を上から落として地面に叩き付ける。

 すかさず華奈樹達が超速接近して、すさまじい速度で足を片っ端から斬り落としていく。

 美桜は二刀流で圧倒的な手数で。華奈樹は手数こそ美桜より少ないが誰よりも腕の立つ剣術と、生まれ持っているとある能力を使って、全ての足を一撃で斬り落とす。


 二人の超速連撃によって足を斬り落とされた大百足は、起き上がることはできるが移動することができなくなっていた。

 もちろん倒されたわけではないので、斬られた足は斬られたところから再生していくが、華奈樹の斬った足の再生が美桜のと比べて異様に遅く、再生しきる前に美琴が雷を斬撃として飛ばして焼き斬る。


「雷霆万鈞!」


 華奈樹達が大百足から離れるのを確認して、空間がねじ切れるほどの一撃を放って、大百足の体の四割を消滅させる。

 これで終わってくれと思うが、あの巨大な体のどこかにある弱点を外したのか、消滅した部分が再生していく。

 アモン戦と違って、大百足は美琴達に、人間サイズ百足は後ろの参加者達に分かれているため、あの時のように全てを一瞬で片付ける必要がない。


 深層のモンスターの生態はほとんど分かっていない。

 見た目と名前が判明している個体はいくつかいるが、それだけしか判明していないため、こうして戦闘を少し意図的に長引かせて情報を得なければいけない。

 もちろん、どこが弱点なのかというのも把握しなければいけないため、一撃で体を全部消滅させてしまえば、得られる情報も得られない。

 そのため、参加組から離れているため割と思い切って全力を出してもいいのだが、今後攻略をする人達のために情報を得ないといけないため、全力が出せないでいる。


 しかしこれ以上戦闘が長引くと、他のモンスターが音を聞きつけて集まってきてしまう。

 ちらりと後ろを見ると、参加組の方に向かって行った人間サイズ百足は、大方片付いたようだ。


 大百足は別に、この一体だけというわけではない。

 戦い方だって、成り立ちは特殊とはいえ生き物であるため個体差も当然あり、一体から十分な情報を獲得できても、他の個体に通用するとは限らない。

 この個体はもう少しだけ戦い方を引き出させてから、もうそろそろ蓄積が終わるので、それをぶつけて終わりにしようと決める。


「うわっ!?」


 雷をまとって近接戦闘を仕掛けようと姿勢を低くすると、出鼻を挫くように大百足が口から何かを吐き出してきた。

 咄嗟にそれを後ろに跳んで回避すると、鼻を突くような刺激臭がする粘着質なものが、地面にくっついた。

 その攻撃は一回で終わらず、連射能力はそこまで高くはないのか一発一発少し間があるが、連続してその何かを放ってくる。


 しまいには移動した先を予測してきて吐き出してきたので、それを雷で焼き払い、吐き出されたをそれを見る。

 すさまじい刺激臭で顔をしかめ、恐らく消化液か何かだろうと当たりを付ける。

 粘着質なのはこれで動きを封じつつ、捕食した際に溶かしやすくするためだろう。

 触ればもう少し分かることもあるかもしれないが、こんなものに触る勇気もないので、まだ放たれている消化液を回避する。


 離れていては延々と消化液を吐き出し続けるだろうと、それを避けながら接近していき、吐き出しが終わった瞬間雷鳴を轟かせる。

 先ほどと同じように胴体を半分に千切り飛ばそうとしたのだが、この攻撃も学習しているようで、動き出す直前で回避行動を先に取られてしまい、空振りに終わる。


 雷の力場を発生させて、突進の速度をそのまま大きくカーブして、電磁加速で自身を加速させながら、更に加速度が最大点に達する瞬間に足場を作ってそれを蹴り、電磁加速の勢いプラス雷速で突きを放つ。

 流石にこの加速には反応できなかったようで、胴体が半分に千切れて地面に落ちる。

 しかし、やはり核を破壊できなかったようでまた再生していく。


「あぁああああああああああああ、もう! いい加減倒れてくれない!?」


 今までは首を刎ねるか胴体を両断することで倒せていたのに、無駄に生命力があってしぶといこともあって、中々倒されてくれない。

 雷を雷薙にまとわせてそれを巨大なハンマーの形にして、いい加減にしろという思いをありったけ込めて振り下ろす。


 叩き潰されるように甲殻が割れ、内側にある柔らかい肉を狙って華奈樹達が左右から迫り、再生していく甲殻を亀裂の部分から剥がしていき、そこにピンポイントで雷を落として特大ダメージを叩き込む。

 止めを刺そうとしているのか、華奈樹が兼定を上段に構えるのが見え、これで終わりかと思いきや大百足が体を大きくうねらせて、乗っている美桜と華奈樹を振り下ろし、そのまま見境なしに大暴れする。


 大暴れに巻き込まれそうになった二人を瞬時に救出し、巻き込まれない位置まで距離を取る。


「助かりました」

「手負いの獣は、最後に何をするか分からんのう」

「獣って言うか、殺虫剤かけられてもがいている虫みたいだけど」

「妙に想像しやすい例えで言わないでくださいっ」


 美琴の例えにゾッとしたのか、顔を少し青くした華奈樹が自分の二の腕をさする。


 大暴れする百足はそのまま美琴達の方に向かってきており、このまま下がれば後ろの人達も巻き込んでしまうだろう。

 いくつか攻撃手段などを引き出すことができたので、もうここいらで倒してしまおうと、華奈樹達を後ろに下がらせてから全ての雷を蓄積に回す。

 一瞬のうちに三つ金輪巴紋になり、雷薙を掲げて雷を収束させようとするがそれをやめて、雷薙をしまって力の一部を分離させて弓を構築して雷を収束させて一本の矢を構築する。


「諸願七雷・三紋弓式───白雷の矢」


 矢を番えて落ち着いて狙いを定め、あちこちを破壊しながら迫ってくる大百足の頭目がけて、破滅の矢を放つ。

 大爆発のような特大の雷鳴と共に放たれた矢は、刹那の間に大百足に到達し、その硬い甲殻ごと問答無用で粉砕して圧倒的電圧と電流で灰にする。

 遅れて、矢が通った場所の周辺がその衝撃波で破壊され、たった一本の矢で地形が大きく変わりかけた。


 初めてこの弓式を使った時は、まだ加減が分からずダンジョンの壁に特大の横穴を作ってしまったが、今回はあらかじめ飛翔距離を定めておくことで、余計な被害を出さないようにしていた。

 おかげで大百足の先にある町並みや地面、壁に特大の風穴をぶち空けるなんてことはなかったが、矢が通った場所に尋常じゃない被害が出ていた。

 恐らく、射程を短くしたことで勝手に制誓呪縛のような縛りと強化が入ったのだろう。そうでなければ、こんなことにはなるはずがない。


『分割状態でも壁に穴を開けるんですから、七分の一を物質化させて体から離したところで、それ以下の威力になるわけがありませんよね』

「これ、本当にどうにかして威力絞らないと」

『白雷が原型なのですから、無理ではないでしょうか。一天でも過剰な性能をしていますから。ですがその殲滅力は、この深層では重宝されるでしょうし、今はまだ絞る必要はないでしょう』

「本当かなあ」


 弓を消して戻った力を一つにまとめ、しまっていた雷薙を取り出す。


「前に配信で一回だけ使っていたのを見ましたけど、こうして目の当たりにすると過剰すぎますね、それ」

「つくづく、美琴が人間側でよかったと安心しておる」

「美桜、それ私のことを化け物って言ってるようなものなんですけど」

「化け物ではないが、ある種の神様みたいなものじゃろう。視聴者の眷属達からは、ぽんこつ女神やぽんこつ雷神などと呼ばれておるのじゃろう?」

「ぽんこつはすっごい余計だけどね」

「あながち間違っていないと思うのは妾の気のせいかのう?」

「酷い!」


 幼馴染をぽんこつ呼ばわりするとは何事か! と、もちもちで柔らかい美桜の頬を軽く摘まんで、むにーっと左右に引っ張る。

 しかし大して痛くないからか、あるいはからかっていること自体が楽しいのか、おかしそうに目を細める。


「二人とも、向こうの方も終わったみたいですし戻りましょう。ここへはお遊びで来ているわけじゃないんですから」


 流れるような動作で兼定を納刀した華奈樹が、じゃれついている美琴達に少し呆れたような目を向けながら言う。

 彼女の言う通り、参加組の方も人間サイズ百足の掃討を完了したようで、大分疲れた様子で美琴達のことを待っていた。

 もう少しこの油揚げと稲荷寿司大好きな、絶対に狐が混じっているであろう幼馴染にお仕置きをしたかったが、華奈樹の言う通り遊びで来ているわけではないので、頬から手を離して参加組の方へと戻っていく。

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