33話 Side 繝輔ぉ繝九ャ繧ッ繧ケ
本日より「この作品」は週に二、三回更新になります
『いきなり地面突き破って女の子二人が出てくるわ、赤い髪のほうがいきなりモンスターを何もないところから出したと思ったら、いきなり空に雷雲が出てきて落ちた雷が全部モンスター倒したりって、もう意味分からなかったですよ』
『マジで死ぬかと思いました。でも、美琴ちゃんのおかげで助かったんです! もう一生推していきますね!』
『あの日、妻と娘がモンスターに襲われそうになったのですが、美琴ちゃんのおかげで二人とも無事でした。文字通りの恩人です。もうどのようにしてお礼を行ったらいいか分かりませんよ』
薄暗い路地裏でフードを深くかぶった人物、背恰好からして少女が、壁にもたれかかりながらスマホに映っているニュースを見ている。
取り上げられているのは、都市伝説上の存在としか思われていなかった魔神の出現と、それを世田谷の街の住人を守りながら一人で倒した美琴のことだった。
もちろん騒ぎになっているのはテレビだけでなく、ネット掲示板でも大盛り上がりを見せている。
”美琴ちゃんがやばすぎるwww”
”前から雷を呪力なし魔力なしで操ってるから雷神じゃないかって言われてたけど、マジで雷神だったの草”
”今更雷神ですって言われても、そうですかしか言えん。とっくに俺らの中じゃ、美琴ちゃんはカッコ可愛い女神様だから”
”過去に地上で発生した百鬼夜行並みのモンスターが出て来たのにどれも瞬殺で、ハルバードぶん回すだけで建物消し飛ぶアモンとかいう化け物の攻撃ほぼ全部避けて、一人で倒すとかやばすぎるって”
”あの空すら割ったやつとか、何度見ても鳥肌もんだよ”
”美琴ちゃんは途中で配信切ってたけど、あやちゃん側の配信が切れてなかったの奇跡だな”
”トライアドちゃんねるの三人、あの非常事態でも配信が続いていたことにツウィーターでガチ謝罪してる”
”動画も出してるね”
”元から美琴ちゃん人間じゃなさそうなことしてたけど、マジもんの神様だって知って妙に納得したよな”
”まさかあの立派なおっぺえの谷間から刀引っ張り出すとは思わなかった”
”おっぺぇソードだな!”
”あの刀すら羨ましいと感じたおれはもう重症だ。誰か助けてくれ”
”安心しろ、俺もあの刀が羨ましいわ”
”繰り返し見ているけど、最初から最後まで意味分からん規模の戦いだな。建物倒壊しているのに、なんで死亡者ゼロなの? 奇跡やん”
SNSや掲示板でも美琴一色に染まっており、彼女の本名である「雷電美琴」や「魔神」、「美琴ちゃん」と打てば、数えきれないほどの書き込みがされている。
その中でも一番多く出てくる関連ワードは、「死亡者ゼロ」だ。
美琴がアモンを打倒した日。それはかつてないほどの規模の戦いとなり、多くの建物は倒壊し、怪我人も出た。
しかし不思議なことに、死者は一人として出なかった。
色々な考察がされたが、今のところ美琴が街の人全員を庇いながら戦ったからだという説が一番有力だ。
……しかし、真実は違う。
あの時の戦いで、実際は多くの人間が死に瀕した。
倒壊した建物の下敷きになったし、アモンの攻撃の余波で建物が消し飛んだ時に体が半分千切れて瀕死になった人もいた。
なら政府の圧力による真実の隠匿か。答えは否だ。
「お疲れ様です、繝輔ぉ繝九ャ繧ッ繧ケ」
「……あぁ、繝吶Μ繧「繝ォじゃん。久しぶりね」
想像以上に話題に上がっているなとフードを深くかぶっている少女が苦笑を浮かべていると、何の前触れもなくいきなりすぐ近くに、アッシュブロンドの女性が姿を現す。
ちらりと目をやると、繝輔ぉ繝九ャ繧ッ繧ケと呼ばれた少女は見知った顔だと分かり、一瞬だけ高めた警戒心を解く。
「ほんと、疲れたよ。繝舌い繝ォ繧シ繝悶Νは建物に被害が出ないように立ち回って攻撃していたけど、繧「繝「繝ウのやつはお構いなしに好き勝手暴れてくれやがったおかげで、もう大変だったよ」
「ですがあなたのその懸命な救助活動のおかげで、死者ゼロ人という奇跡が起きたじゃありませんか」
「人の懸命な努力を奇跡で片付けないで。ま、世間は真相知らないから、繝舌い繝ォ繧シ繝悶Νが一人で守ったってことにするんでしょうけどね」
「それが一番都合がいいでしょう。わたしやあなたは表に出ていませんし、あの戦闘狂を倒したのは彼女ですから」
少女が繝吶Μ繧「繝ォと呼んだ、顔の左半分をアシンメトリーのアッシュブロンドで隠した女性が言うと、少女はやれやれと肩を竦める
「それにしても、二つに分かたれた繝舌い繝ォ繧シ繝悶Νの力のうち、どうして善性の豊穣の神としての力だけがこの極東に来たのでしょう」
「さあ? 雷電家を含めた雷一族は少なくとも千年以上前からあるし、そのご先祖様になった一族の崇め奉ってる神、つまり豊穣の神の側面の繝舌い繝ォ繧シ繝悶Νなんてもっと前からいたみたい。おおむね、どこぞの旅好きの酒飲みが運んだんじゃない?」
「それは繝舌Ν繝舌ヨ繧ケのことですか?」
「あいつ以外に誰がいるのよ」
「彼は一応狩猟の魔神なのですが」
「世界を狩りしながら回るって言っておきながら、世界中のお酒を片っ端から飲んで回ってたの忘れたわけ?」
アッシュブロンドの女性はそう言われて、すっと目を逸らす。
「最近じゃあいつ、自分で美味しいお酒がたくさん飲みたいからって酒類製造免許取って、一部を販売しつつ家でがばがば飲んでるわよ」
「……今度お酒をもらいに行きましょう」
「今のあんたは女子高生でしょう。それを理由に断られるよ。あいつのお酒への執着は尋常じゃないんだから」
もし無理にでも持ち出そうものなら、血相変えて止めにかかってくるか泣きそうな顔をするだろうと容易に想像できて、苦笑する少女と繝吶Μ繧「繝ォ。
「今後はどうするおつもりですか?」
「んー、今まで通りでいいんじゃない? 繝舌い繝ォ繧シ繝悶Νは人に危害は加えないし、何なら人を守るから。それに、その器自体は普通の女子高生を謳っているからね。下手に干渉したら、こっちがやられかねない」
たとえ豊穣の神としての力しかなくとも、下手な魔神よりも強い。それはアモンとの戦いで証明されている。
何より最後にアモンを倒した、胸の谷間から引っ張り出したあの刀。あれは美琴の肉体に宿る神の力を一滴も残さずに凝縮して物質化させたもの。
神の力が体から抜けるという大幅な弱体化を受ける代わりに、それを補うように魔神規模で制誓呪縛に似たものによる強化が入る。
その状態でも使えるのはごく限られた短い時間だけのようだが、その使用時間の短さもまたえげつない強化を与えているだろう。
本気を出される前であれば少女も繝吶Μ繧「繝ォも倒すことはできずとも制圧はできるかもしれないが、あれを出された状態だと手も足も出ないだろう。
「そうですね。わたしも彼女がのびのびと配信して、視聴者と楽しそうにしているのが一番だと思います」
「へえ、珍しく意見があったわね」
「わたしの雇い主が、彼女の配信が好きなようなので」
「雇い主って言うと、あの下手すれば魔神すら殺しかねないバケモノ性能の魔導兵装を大量に作ってる、あのお嬢様のこと? 配信観てるんだ」
過去にあったことのあるその雇い主の少女のことを思い出し、彼女の作る数多くの異常スペックの兵装の数々も思い出し、ぞっと体を震わせる。
「毎回ではありませんが、時々。元々両親経由でお二人は面識がありますからね」
「へー。ま、ともかくあの子には干渉しないようにしましょう。また今回みたいなことがあったら、できれば早く来てよ? 今回はどうにかして死亡者は出さなかったけど、次もしまた魔神が来て戦ったらどうなるか分からないから」
「えぇ、承知しております。ですがわたしの最優先は雇い主の方ですので、そちらの方でイレギュラーが発生した場合は、そちらを優先させていただきます。ではそろそろ戻らないといけない時間ですので、失礼します」
「はいはい」
アッシュブロンドの女性の言葉に適当に返事すると、女性の姿が消える。まるで最初からそこにいなかったかのように。
「相変わらずの速さね。最速の魔神の名前は伊達じゃないわ」
少し前まで女性が立っていた場所を見ながらそう言い、持っているスマホをポケットの中にしまって壁から離れる。
びゅう、と少し強い風が吹き、被っているフードが外れる。
隠れていた髪、明るい茶髪があらわになって肩より少し下で緩く縛っているおさげが風に揺れる。
「さて、それじゃそろそろ帰りますか。宿題やらないと真面目にヤバい」
ぐーっと伸びをした少女はぽつりと呟き、アモンのものとは違い優しい包み込むような炎をまとって、その場から消え去った。
お読みいただき、ありがとうございます。
もし少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
ブックマーク登録と、評価(【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に)して応援していただけると狂ったように喜びます。
なにより作者のモチベーションに繋がります。
なにとぞ応援よろしくお願いします!




