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169話 病みつき必至の手打ちうどん

「はあぁ……! 私の家に美琴先輩がいる……! しかもエプロン姿で……!」

「毎度思うけど、結構な重症よねルナちゃんって」

「狂信者ですから」

「もっとマシな言い方ない?」


 地獄のような深層攻略配信の翌日。

 美琴はもう少しで終わりそうな冬休みの宿題と筆記用具の入った鞄を持って、ルナの家に灯里と一緒にやって来た。


 ツウィーターでもあらかじめ告知しておいたが、今日はルナからのお願いで料理配信と勉強会をすることになっている。

 メインはあくまで料理配信ではなく、配信外で行う勉強会だ。

 魔術師をやっているのだし数多くの魔術を自在に操れているのだから、決して勉強ができないなんてことはないはずなのだが、そこは単に美琴と一緒に勉強したいだけなのだろう。


 今日は華奈樹と美桜は新宿ダンジョンに行って二人だけで攻略配信をすると言っていたし、綾人も連日美琴と一緒にいると冬休みが開けた後で何を言われるのか分からないからと距離を取られている。

 フレイヤは昨日回収したヴラドの核石を売らずに、一つで数億という目玉が飛び出る金額の核石を一つと現状二つしかないそれを破壊されるということで特大ダメージを与えられたギルド職員の胃袋を犠牲に、ギルドに解析をしたいと交渉してその権利を勝ち取り研究室に籠っている。

 謎に昌と交友があったリタと親交を深めようとも思ったが、今日はその昌から呼び出されているようで、一緒に料理しようという誘いをやんわりと断られている。


 そう言うことなので今回は美琴、灯里、ルナの三人だけの配信だ。

 これが攻略配信だったら実に平和でも何でもない、むしろもっとヤバくなる組み合わせだ。


「はいはい、感動していないで、ルナちゃんは美琴さんからどの料理を教わりたいの?」


 感激しっぱなしのルナを現実に引っ張り戻す様に、灯里がルナのほっぺをむにーっと引っ張りながら言う。


「美琴先輩から教えてもらえるものなら何でもって言いたいけど、それだと困るだろうから頑張って一つに絞ったの。先輩、私おうどんを作ってみたいです」

「おうどんかあ。思っている以上に力仕事なのと結構時間かかるから、あまりやったことないのよね。ちなみに道具とかは、」

「昨日のうちに全部買い揃えてきました!」

「わお、長い麺棒もある」


 ルナ自身が自分のチャンネルを持っており収益化を達成していること、美琴と関わるようになりクランメンバーとなったことで、一気に二百万人まで登録者を爆増させたことで収益も激増し、そこに美琴から給料という形でお金を受け取っているため中学生が持っていい額ではないほどの貯金がある。

 基本は魔術の研究資金として使うと言っていたが、こういうものにも容赦なくお金をぶち込んでいくようだ。


「んふふー。美琴先輩と一緒にお料理ー♪」

『ものすごい上機嫌ですね』

「なんていうか、知れば知るほど面白い子だよね、ルナちゃんって」

「魔術の造詣はすごいんですけどね。最近フレイヤさんとも魔術談義して、意見が食い違って少し激し目な口論みたいになっていましたし」

『確か配信をしながらの魔術談義でしたよね。大分激しい討論になって、フレイヤ様のラボメン(視聴者)とルナ様の視聴者が若干引いていました』

「どれだけ激しく言い合ってたのよ」

「魔術師として譲れないものというのはあるのですよ。あ、別に喧嘩したとかじゃないので安心してください。フレイヤさんとは仲よしですから」

「あの後普通に、一緒に喫茶店も行っていたしね」


 本当にどんな討論をしたのかが気になるので、家に帰った後でそのアーカイブを探してみることにする。

 道具は揃っているので、配信が始まるまでに素材を用意して並べていく。

 美琴の家のキッチンも大分広いが、屋敷と言ってもいいほど大きなルナの家のキッチンは、美琴の家のものよりも広い。

 素材を全部並べても全然余裕があり、少しだけ羨ましく感じる。


 配信を始めるまで頭の中でうどんの作り方を進行の仕方を組み立てていき、残り五分となったところでヘアゴムで髪の毛を一つに束ねて手を洗う。

 全員でポニーテールになったところで時間となり、ルナと揃って配信を始める。


「みんな大好き、夢想の雷霆支援担当のルナだよ! 今日は告知した通り、美琴先輩に来てもらってるよー」

「眷属のみんな、こんにちは。こうして人の家で料理するのに慣れてなくて、若干緊張している美琴です」

「美琴先輩も緊張するんですね」

「そりゃ人間だもの」

『能力は魔神ですけどね』

「それがなければただの女子高生ですー」


”いええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!”

”美少女×ロリ×ロリ×ポニテ×エプロン=天国過ぎて死”

”全員ポニテのエプロンとかもう可愛すぎて死ねる”

”やっぱ並びが姉妹のそれなんだよなあ”

”毎度思うけど、美琴ちゃんスタイルよすぎてエプロン越しでもでっかい果実が激しく主張してて目が離せない”

”おかしいねえ。普段の着物よりもよっぽど露出がないのに、こっちの方がエロく感じてしまうねえ”

”大人の魅力にあふれすぎているJKと、ちょっと背伸びしてる感のある銀髪JCと、妹感超満載な小柄ロリっ子JC”

”もしここにリタさんもいたら、多分今頃開幕ずっとスクショしてた。まあ今もしてんだけど”

”高身長で大人な雰囲気のあるJKのポニテとかもう最高なんすわ”

”可愛い私服の上にエプロン着ているだけなのに、ものすごい新妻感あって最高”

”アイリちゃん、ちょっと少しだけ目線が上になるように映して。そして美琴ちゃんは見上げながら「おかえりなさい、あなた」って言って”

”おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい最高かよ”

”絶対恥ずかしがりながら言いそうだから、ますます新妻感が出てくるじゃまいか”

”そうなると隣にいるロリっ子たちが妹から娘になっちまうwww”

”娘にしちゃ大きいけど、それはそれでヨシッ!”


「相変わらず美琴先輩の視聴者って変なの多いですよね」

「ルナちゃんはどっちかというとこっちって、自分で言っていなかったっけ?」

「そうだよ?」

「そ、そんな『当たり前でしょ?』みたいな顔されながら言われても……」


 開幕早々大量のコメントが濁流のように流れていき、その中に己の願望を書きこんだ内容のコメントも流れている。

 初めての料理配信の時も、新妻感があっていいと言われて少し恥ずかしかったが、改めてそう言われるとやはり恥ずかしい。


「さ、本題に移りましょう。今日私達が作ろうとしているのはおうどんなのよ。意外と時間かかるから普段はあまり作ることってないんだけど、やっぱり自分で一から作ったほうが美味しいのよね」

「出来たてって言うのもありますからね」

「先輩が作ったって言う付加価値もありますから、多分うちの視聴者と先輩の視聴者が死ぬほど欲しがりそうですね」

「もうすでにそんなコメントがたくさん書き込まれているわよ」


 手打ちうどんだと言った瞬間から、一瞬だけ流れが鈍くなってから爆発するようにそのうどんが欲しいというコメントでコメント欄が埋め尽くされる。

 もちろん調理師免許なんてものを持っていないので販売するなんてことはできないし、生めんは日持ちしないので仮に売ることができるのだとしても、希望者に送るなんてことはしない。


「それじゃあ早速やっていきましょう。まずは水回しからね」

「水回しって何ですか?」

「簡単に言えば、小麦粉と塩水を合わせることね。基本の塩分濃度、冬季や夏季で塩分濃度が変わってくるの。今は十二月だから、冬季の水回しね。使う小麦粉の大体半分くらいの塩水を作るの」

「結構たくさんなんですね」

「冬場は固くなりやすいからねえ。仕方がないのよ」


 早速作業に取り掛かる。

 塩水の塩分濃度が十パーセントになるように計りながらボウルに塩と水を入れていく。その作業は灯里とルナに任せて、美琴は隣で小麦粉を大きなボウルにふるっていく。

 五から六人分のうどんを三人がそれぞれ作るため、全部で十五から十六人分だ。たくさん用意してくれてはいるが、この一回で小麦粉をかなりの量使った。


 これだけの材料を先に揃えてくれたのだから、今度お菓子か何かを上げようと思いながら小麦粉をふるう。

 ふと隣に目を向けると、慣れない手つきで慎重に計りながら塩水を作っているのが可愛らしい二人が映る。


「で、できました」

「よし、それじゃあ次ね。こっちの振るった小麦粉に、その塩水を半分回しながら入れて、水がかかっている場所に乾いている小麦粉をかけて混ぜてね。それが終わったら残りの半分も入れちゃって、しっかりと混ぜちゃってね」


 口で言うよりも美琴が実践したほうが早いと、美琴の分の塩水を半分回し入れてから周りの乾いている小麦粉を水をかけた場所にかぶせるように混ぜ、その後で残った半分の塩水を入れて全体的にしっとりしてそぼろ上になるまで混ぜていく。


「こんな風になったらしっかり混ざった証拠よ。こうなったらボウルの中で一つにまとめて、ジッパーとかに入れて乾かないように中の空気を抜いてしっかりと口を閉じて、十分くらい寝かせておくの」

「ここまでは簡単なんですね」

「ここまではって言うか、基本全体的に簡単なのよ、うどんって。ただシンプルに面倒なだけで。ほら、二人もやってみなさい」


 促すと、二人とも美琴が見せた手本のように作業を始める。

 コメント欄でも言われているが、こうして料理を教えていると年下の背が低い女子中学生に料理を教えている姉のような気分になってくる。

 変な言い方になるかもしれないが、こうして二人がクランに入ってくれたおかげで、疑似的に姉のような気分になれてとても嬉しい。


 灯里は美琴と会ってから料理に目覚めたようなので少し慣れた様子だが、ルナはまだあまり料理をしたことがないのか、少しあたふたしながら混ぜている。

 助けを求めるような視線を向けてきたので、仕方がないなと微笑みを浮かべてから、後ろからルナの手を包むようにしながら教える。


”あ゜”

”てぇてぇッ……!!!!!!!!!!!!!!!”

”尊ッッッッッ”

”なんだよこれぇ……。てぇてぇが過ぎるだろお……”

”ルナちゃんがものすごく幸せそうな顔しててワロス”

”死ぬほど羨ましいんですが”

”俺もああやって後ろから手取り足取り教えてほしい姉が欲しい人生だった”

”絶対めちゃくちゃいい匂いするだろうし、柔らかいのが当たってめちゃくちゃ幸せだろうな”

”今からでもロリになってこの空間に混ざりたい”

”ロリになってでも美琴ちゃんに手取り足取り料理を教えてもらいたい”

”ショタが混ざるのは許されますか?”

”構わん、行け”

”後ろから巨乳JKに抱きしめられたい変態が多くて草”

”ルナちゃんの付術(エンチャント)で自分の感覚を我ら視聴者にも共有できないかな”


 ルナから離れてコメント欄を見ると、変態的なコメントがたくさん書かれているのが見えて、相変わらずだとため息が出そうになる。


「相変わらず変なところで盛り上がるわよね、うちの視聴者って」

『それだけ今のお嬢様の行動は、皆様に刺さるということなのでしょう』

「ものすごく不純なものを感じる」

『事実その通りでしょうね。殿方というのは、どうしても女性の胸に目を奪われてしまう方が多いですから』

「……変態」


 むすっとしながらほんのりと頬を赤らめて、胸を隠す様に両腕を交差させる。

 それすらも視聴者的には嬉しいのか、余計にコメントが加速していく。もう救いようがないのかもしれない。


 灯里とルナが最初の作業を終えたので、美琴がまた手本を見せるように先に次の作業を始める。

 二人とも生地をボウルの中でまとめるのに少し時間がかかっていたので、先に終わらせていた美琴の生地は十分休ませられた。


「次はこれを伸ばしてから畳んでいくっていう作業があるんだけど……女の子の場合、力がどうしても男の子より弱かったりするし、結構腕が辛いから綺麗なビニールに入れて踏んでやった方が楽には楽なのよね」

『ただ問題は、お嬢様がそれをするとこのように、コメント欄に変態しか湧かなくなります』

「予想はしていたけどやっぱりこうなるのね。というわけだから、どっちにしろ変態が湧きそうだけど、私は手でこねるわね」

「私も、足で踏むのはなんだか抵抗があるので、ここは魔術で強化しながらやります」

「わ、私も。……こんな風に魔術を使うことになるなんて思わなかったかも」


 手でこねると言うと露骨にがっかりするようなコメントがいくつか流れたが、結局美琴が手でこねるからいいじゃないかと、また変な盛り上がりを見せるコメント欄。

 もしここで足で踏んでやっていたら、確実に想像もできないような変態コメントがたくさん流れたに違いない。

 そんなことよりも、料理は好きだし苦労する分出来上がった後が美味しいのでこういう力仕事は苦にならないのだが、魔術で体を強化できる二人がなんだかとても羨ましく感じる。


 袋から取り出した生地を打ち粉をしたまな板の上に出して、まずは薄く伸ばす。

 表面がつるっとしてから生地を畳み、また目いっぱい押して伸ばす。

 これを何度か繰り返すと生地が伸びなくなるので、周囲を畳みながら丸い形に整えて、再び袋に入れて二十分ほど休ませる。

 この後の工程は薄く伸ばすのしと、切りやすいようにする畳みと切るだけである。


「生地がこんな風になるまで何回もこねてね。ちなみに踏んでやると独特のコシができて美味しくなるから、もしやってみたくなったらやってみてね」

「はーい!」

「機会があったら踏むのもやってみます」


 それぞれがそう言いながら、自分自身に強化魔術を施してから美琴がやったように薄く伸ばしてから畳むを繰り返す。

 少し強めに身体強化をかけているからか、恐らく踏んでやるのとあまり変わらない力がかかっているようだ。


 こういう時に便利だなと思うのだが、呪力も魔力もないのであんなことはできない。

 華奈樹や美桜、綾人のように錬気呼吸法ができればいいのだが、三人とも感覚でできているタイプの人間なので、教えてもらってもいまいち理解ができずにいる。

 しかし錬気呼吸法ができると、体力の消耗などを大分抑えられるし、もしかしたら魔神の力と合わせて使うこともできるかもしれないので、彼女達がこっちにいる間根気強く説明を受けようかと、割と本気で悩む。


 そうこうしているうちに二人とも出来上がったので、数分間軽い雑談をしてからまた美琴が手本を見せる。


「これが終わったら、次はおつゆを作ったりトッピングを作ったりする作業に入るから、実はここが結構楽しみなポイントなのよね。麵の幅をここで決められるし」

「美琴さんは少し幅広の方が好きなタイプですか?」

「んー、スタンダードな方かな。あまり太いとちょっと食べづらいって言うのもあるからさ。あとあまり広くし過ぎちゃうとおうどんって言うよりほうとうみたいになっちゃうから」

「ほうとう美味しいですよね。あきる野市に、ものすごく美味しいほうとう屋さんがあって、一回だけ行ったことあるんです」

「へー。お母さんの実家の近くにそんなお店があるんだ。それってどんなお店?」

「六兵衛って言うお店です。あ、今度先輩と灯里ちゃんの三人で行きましょうよ! あそこ、本っ当に美味しいんです!」

「そこまで言われると気になっちゃうじゃない。スケジュール確認しないと」


 目を輝かせながら体を使って美味しいんだってことをアピールするルナが可愛くて仕方なく、そのルナが美味しいと言い気になったので冬休みの間のどこかで行ってみたい。

 特にスケジュールは入っていなかったはずだが、この配信と勉強会が終わったら真っ先にスケジュールを確認しようと決め、麺棒で生地を伸ばす。

 打ち粉を敷いたまな板の上で、厚さが均等になるように何度も麺棒で伸ばしていく。

 美琴の好みは大体三ミリ程度の厚さなので、そこまで薄くなったところでのしを終わらせる。


 次は畳んで切る作業だ。

 山折りと谷折りを交互に繰り返す屏風たたみで三ツ折りにして、全体に打ち粉をふる。

 今回は厚さをどうしようかと少し考えて、こちらも同じ三ミリ幅で切ることにする。


 用意してくれた包丁で生地を切るが、しっかりと手入れがされているのか切れ味がよくてとても切りやすい。

 ルナの母親が料理上手だと言っていたし、こういう道具の手入れも怠っていないのだろう。


 全部切り終えたので、くっつかないように一人分程度の麺を取ってねじり、一つの束にする。

 それを六回繰り返して、六食分のうどんが完成する。


「はい、これであとはおうどんを茹でておつゆとトッピングを作るだけ。時間はかかって面倒だけど、作業そのものは簡単でしょ?」

「本当に簡単ですね」

「しかもこれ、手打ちだから当然市販のものよりもずっと美味しいわよ。もしかしたら手打ちうどんにはまって、しばらく抜け出せないかもよ」


 そういう美琴も初めて手打ちうどんを作ってから、一月近くほぼ毎日うどん生活をしていた時期があった。

 それほどまでに自分で作ったうどんが美味しかったのだ。もしかしたら、また同じようにしばらくハマるかもしれない。


 ルナと灯里も、美琴が市販のよりもずっと美味しいと言ってから早く食べたいと思ったのか、目をキラキラとさせながら包丁で慎重に同じ幅になるように生地を切っていく。

 並んで切っている光景が愛らしくて思わず写真を一枚とりそうになるのを我慢して、ルナに断ってからコンロでお湯を沸かしつつうどんのつゆを作り、トッピング用のえびと舞茸てんぷらと、人参と玉ねぎのかき揚げを作る。


「できました。わぁ、てんぷらだあ……!」

「舞茸とえびのてんぷらと、かき揚げ……。すごく美味しそうです!」

「ありがとう、灯里ちゃん、ルナちゃん。まだもうちょっとかかりそうだから、食べたい分のおうどんをここに置いて待っててくれるかしら」

「お手伝いしましょうか?」

「ううん、大丈夫。そんなに時間はかからないから」


 そう言うと、少し申し訳なさそうにしつつも今日のお昼に食べる分のうどんを置いて、灯里とルナはリビングに向かって行った。


『お嬢様が揚げ物だなんて、珍しいですね』

「やっぱりおうどんと言ったらてんぷらだからね」

『普段は揚げ物だからと滅多に作らないのに、こういう時はおつくりになるのですね』

「まるで人の家のキッチンなら油が跳ねても構わないと思っているみたいな言い方ヤメテ」


 変な言い方をするアイリにツッコミを入れつつ、揚がったえびを菜箸で摘まんで、キッチンペーパーの上において余分な油を取る。

 残りのてんぷらとかき揚げも手早く作り、てんぷらの生地が残ったのでそこに砂糖とシナモンを入れて、ちょっとしたお菓子もどきを作る。


 それぞれのうどんを分けて茹でて、つゆを器に入れてからうどんも入れ、その上に揚げたてのてんぷらとかき揚げを盛り付ける。

 お盆の上に置いてから七味がないかを探し、なかったので自分で持ってきた七味を出してリビングに持っていく。

 灯里とルナは先に宿題を黙々と進めており、声をかけるまで気付かないほど集中していた。


 二人にうどんを渡してから揃っていただきますと言ってから、打ちたての手打ちうどんを食べる。


「ん~! 今まで食べてきたうどんの中で一番美味しい!」

「これ、美琴さんの言う通りしばらくずっとハマるかも……」

「でしょ? ちなみにお蕎麦も手打ちでやるとしばらく抜け出せないわよ。難易度はお蕎麦の方が高いけど」


 ちゅるちゅるとうどんを啜って食べると、しっかりと出汁の効いたつゆと絡まってとても美味しい。

 薄味で作るつもりが、ミスって少し多めにめんつゆを入れてしまったが、結果的にいい味になったので良しとしよう。

 てんぷらも、衣につゆが染み込んで揚げたて特有のさくさく感はなくなってしまったが、こちらもいい味になってとても美味しい。


 しばらく手打ちうどんを作っていなかったが、こうして久々に食べるとやはり手打ちが一番美味しい。

 こんなに美味しいものが時間と労力こそかかるが、水と塩と小麦粉だけでできるのだから、作らない手はない。

 夕飯に華奈樹と美桜にも食べさせて、気に入るようなら彼女達がこっちにいる間にたくさん作らせようかと考える。


 出来たてうどんに舌鼓を打った後、配信を終了してから勉強会だ。

 美琴は冬休みの宿題を終わらせてしまったが、勉強は決して怠らない。

 二年生でやるところは一学期の時点でとっくに先取り学習してあるので、普段は自分のその学習で得た知識が間違っていないかの確認のために復習をしている。

 今回も予習復習をしっかりと行っており、休み明けにスタンバイしている確認テストに備えておく。


 自分の勉強もしつつ灯里とルナの質問にも答えながら、三人だけの勉強会を楽しんだ。

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