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【悲報】ダンジョン攻略JK配信者、配信を切り忘れて無双しすぎてしまいアホほどバズって伝説になる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第一部 第七章 雷神と小さい魔術師と月の魔術師とトンデモ兵器
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116話 龍は一体何なのか

「ごめんなさい!」


 謎の龍を倒し、上域より先の中域に進み、そこにある安全地帯を速攻で見つけてそこで休憩を取ってすぐに、美琴はフレイヤに頭を下げる。

 最初はフレイヤも、いきなり美琴が頭を下げて目を白黒させていたが、すぐに頭を下げた理由に思い当たったのか、納得したように困った笑みを浮かべる。


「別に、気にしなくても大丈夫ですよ」

「そうは言うけど、フレイヤさんの魔導兵装を壊しちゃったことは紛れもない事実だから。私はフレイヤさんみたいにそういうのは作れないけど、でも必ず何らかの形で償うから!」

「ですから、気にしなくてもいいですってば。確かにあの個体は壊れましたけど、完全に壊されていませんから」

「……どういうこと?」


 頭を上げると、どういうことなのかを証明するかのようにフレイヤが、バレーボールほどのサイズの球体を取り出して起動させる。

 すると、あのボス部屋で間違いなく破壊してしまったはずの殲撃の女王(クイーン)が、フレイヤの背後に姿を現す。


「殲撃の女王も守護の王(キング)もこの核が本体で、この姿はこれに搭載されている機能で、込められている魔力を物質に変換することで構築されたものなんです。なので、確かに先ほどの殲撃の女王は再生できないほどのダメージを受けましたが、核がこうして無事ならいくらでも新しい姿を作ることができるんです」

「何よそれぇ……」


 その核が弱点だというが、フレイヤは魔導兵装を何もない場所から取り出している、つまりは美琴のように何か特殊な収納道具を持っているということになる。

 その収納道具がどこにあるのかは見て分からないし、自らそれを捨てたり中にあるものを取り出して晒さない限り、女王と王は現れている姿は破壊されても、また別の姿を魔力が続く限り無限に作り続けることができる。


 作っているものがぶっ飛んでいてもう何がなんだかよく分からなくなっているが、とりあえず白衣を着て彼女の研究を手伝うことになったり、リタと同じようなメイド服を着てしばらく彼女に奉仕する、なんてことはしなくていいようだ。


「それより、あれはどうします?」

「あれねえ……」


 美琴とフレイヤは、非常に警戒した様子で灯里の方を向く。

 美琴達は確かに、安全地帯にいる。それなのに先ほど倒した龍の、ミニサイズな奴が灯里の頭の上に乗って丸くなっている。


 あれは確かにモンスターであるはずだ。ダンジョンにいるということは少なくともそういうことになる。

 ダンジョンに現れるモンスターは例外なく、ダンジョンに向けられる恐怖をメインとした数多くの人間の負の感情が、大魔(霊気)を使って姿を作ったものだ。

 それ故に、人間ではほぼ作ることができない正の魔力、呪力とは極端に相性が悪く、ほんの少しそれが体に流れ込むだけで四等から三等の怪異やモンスターであれば瞬殺でき、それ以上でも大幅な弱体化を期待できる。


 それで、安全地帯は正のエネルギーに満ち溢れている場所なので、例え深層のボスモンスターであっても、ここに引きずり込むことができれば瞬殺することができる。

 それなのに、灯里の頭の上に乗っているミニ龍は、なんてことのない顔で丸くなって目を閉じている。


『考えられることとしては、あれは怪異でもなければモンスターでもない、正真正銘の神獣であること。あるいは、神獣まではいかずとも、精霊の類でしょうね』

「まあ、ここで消えないってことはそうなるけど、そうなるとどうやってここに潜り込んだのか、そしてどのタイミングでこの結晶を体の中に埋め込まれたのかって話になるのよね」


 ブレスレットの中から、真っ黒の結晶を取り出しながら、ミニ龍と交互に見比べながら言う。

 猪原の時は、彼が外出した際ではないかとおおよそのあたりを付けることはできるが、今回に関してはどのダンジョンに行くのかすら配信を始めるまでは、両親と昌、灯里以外には誰にも知らせていない。

 そう考えるとこの四人が誰かにリークしたのかと疑いをかけることはできるが、両親は仕事が美琴の影響ですさまじいことになってそれどころじゃないし、昌と灯里は美琴を裏切るようなことはしない。


 とすると、この話をしていないが反則的な手段で全てを知ることができるマラブかと思うが、彼女はフェニックスとベリアルと交わした神血縛誓で、美琴を傷付けることが決してできないため、それもありえない。

 ならば他の魔神かとも考えられるが、特別他の魔神に詳しいわけじゃないので、何も分からない。


「美琴さん、その結晶を見せてもらってもいいですか?」

「いいわよ。というか、これフレイヤさんが持っててもいいわよ。なんかこれ、あまり持っていたくないのよね」


 猪原から奪い取ったものと同じで、あまり長くそれに触れていたくない。強い負の念が溢れていて、あまり長いことそれに触れていると中てられてしまいそうだ。

 そんな危険なものをフレイヤに渡すのは少しだけ気が引けたが、彼女に何か不調が出るようなら瞬時に粉砕できるように、左手に雷薙を出しながら彼女に渡す。


「うっ……。随分強い負の念ですね。これを魔導兵装の動力源にできないかと思いましたが、無理そうですね」

「そんなこと考えてたんだ」

「この大きさの結晶で、あれだけの威力の黒い雷を自在に操っていたんです。有効活用できるなら、最大限それを活かすまでです。無理っぽいですけど」


 強烈な負の念に若干中てられてしまったのか、ほんの少し顔色を悪くしながら美琴に返そうとする。

 しかし、リタがそれを遮るようにフレイヤの手から拾い上げる。


「リタさん?」

「美琴様はどうやら、これをあまり持っていたくなさそうでしたので。どういうことか、わたしはこれの近くにいてもなんともないので、これはわたしの方でどうにか致します。それでよろしいでしょうか?」

「私としては別にいいんだけど、本当にいいの?」

「えぇ。これに耐えられるのであれば、それを活用しない手はありませんから」


 そう言って、リタはそれを腰に着けているポーチの中にしまう。


「これで問題は一つ解決しましたが、やはり灯里様の頭を陣取っているあの小さい龍も問題ですよね」

「うーん……。ここに来る途中で目を覚まして、小さくなっても龍だから暴れるようならすぐに倒そうと思ってたんだけど、何もしないで私の手から離れて灯里ちゃんの方に行ったのよね」

「なんだか不思議な感じです。さっきまで私達と殺し合いをしていたのに、今はこうして私の頭の上にいるなんて」

「絵面だけ見れば、小動物に懐かれている女の子なんだけど、いかんせんそれがただの小動物じゃないのがね」


”気のせいかな、ちっちゃくなってから神聖さをあの龍から感じる”

”実はモンスターでも怪異でもなく、ガチのマジで神獣の龍だったりして”

”いろんなものを引き寄せる美琴ちゃん(魔神がいい例)がいるから、否定できねえ”

”ぶっちゃけそういうものの類じゃなければ、安全地帯に連れ込むことはできんのよ”

”美幼女と龍のコンビも中々いいけど、さっきまでマジで殺し合いしてたからハラハラする”

”何かあっても、灯里ちゃんが傷付くよりも速く美琴ちゃんが片付けてくれる信頼はあるけどさあ……”

”《探索者ギルド世田谷支部》☑:雷電特等探索者。配信終了後すぐに、その龍を連れてギルドに来てください”

”ふぁ!?!?!?!?!?!?”

”なんでギルドが一配信者の配信に張り付いてんだよwwwwwwwww”

”えぇwwwwww”

”予想外すぐるwwwww”


 コメント欄に有識者でもいないかと、流れていくコメントを眺めていると、その中にギルドからのコメントを見つける。

 内容は、予想していたので驚きはしなかった。


「美琴さんの配信では何かしらの問題が起きて美琴さんが解決して、割とすぐにギルド職員が来るのを見たので、職員が張り付いているのではないかといわれていましたけど、まさか本当に張り付いているとは」

「まあ、こうだろうとは思ってたから。とりあえずオッケーです」


 配信終了後はそのままギルドに足を運ぶことを了承し、今日もまた帰りが遅くなり

そうだと先に琴音と龍博にメッセージを送っておく。あの二人も忙しいので、恐らく今日も帰ってこれないかもしれないが。


「それじゃあ休憩を取った後は、下層中域の攻略を始めましょう。灯里ちゃんはここからは初見よね?」

「は、はい!」

「上域でも十分危険だったけど、中域はもっと危険だから、しっかりと気を引き締めるように。掠り傷一つ負わせるつもりはないけど、万が一な出来事があったら全部あなた一人で対応しないといけなくなるから」

「わ、分かりました!」

「でも緊張のし過ぎも危ないから、ほどほどにね」


 まだ十五歳でここに連れてくるのはまだ早いのではと今でも思うが、いつまでも中層止まりでは彼女の成長のためにもならないので、そこは心を鬼にする。

 美琴の口から直接、さっきいた場所よりも危険だと言われ、緊張した様子でぐぐっと気合を入れるが、すぐに優しい手付きで頭を撫でながら緊張はほどほどにと言う。

 頭を撫でられるのが気持ちいいのか、ほんのりと頬を赤らめながらすっと目を細め、それがまるで子猫のように見えて、抱きしめてもふもふしたいという衝動に駆られるが、それを必死に我慢する。


 安全地帯でしっかりと休息を取った後、四人は中域のボス部屋を目指しつつ、初めて訪れる新宿ダンジョンなのでできるだけ隅々まで探索しようと、大回りになりすぎない程度に進んでいく。

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