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【悲報】ダンジョン攻略JK配信者、配信を切り忘れて無双しすぎてしまいアホほどバズって伝説になる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第一部 第七章 雷神と小さい魔術師と月の魔術師とトンデモ兵器
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101話 超火力を抑えた戦い

 最初に灯里のクランメンバーとしての初仕事をした後、ルナ、美琴の順番で単独でモンスターを倒していった。

 美琴はいつも通り、雷速での超速移動と優れた薙刀術、あるいは雷を纏ってワンパン。

 ルナは自分と自分が次に発動する魔術にバフをかけながら、モンスター相手に強烈なデバフも使用して、逃げられなくしてから強化された魔術で葬っていた。

 三人の超火力が揃ったパーティーは、もはや下層のモンスター程度では足止めにもならないくらいになり、戦っている時間よりも歩いている時間の方がずっと長いという事態になっていた。


”分かっちゃいたけどつえーよwww”

”美琴ちゃんは神様だから分かる。灯里ちゃんは炎限定で威力がぶっ壊れになる杖を持ってるから分かる。ルナちゃんはバフとデバフを両方同時に使えて、シンプルに魔術師として強いから分かる。その三人が揃ったらここまでえぐいことになるのは分かってた。でもまだ連携とかしないでここまではちょっとおかしいと思ったけど、個人火力がイカレてて理解できるのなんか草”

”モンスターと戦う時間より探す時間の方が長くなるのは当たり前だけど、瞬間火力が揃いも揃って高すぎるせいで、一分も持たないのやばいwwwww”

”ツウィーターのトレンドに、『超火力百合パーティー』が入っててワロス”

”個人でこんなに強いんだから、連携したらもっとヤバいことになるんだろうなって”

”ルナちゃんの本気バフがかかったら、もう誰も美琴ちゃんを止められないだろうなあ”

”しかも何が怖いかって、そこに雷薙のバフも入るからもっと強くなれるっていう”

”あの、ダンジョンに潜ってちゃいけない強さしてません?”

”それは前から言われてる”

”今更美琴ちゃんからライセンス剥奪できないし、そんなことしたらギルドとこの国の損失に繋がっちまう”


 ほとんど止まることなく進み続ける美琴達に、コメント欄は大盛り上がりを見せる。

 ルナは今日も配信をしているため、彼女の方からの視聴者の流入もあり、彼女の配信も美琴の方からの視聴者の流入もあって、どちらも同じように盛り上がっている。

 こつこつと視聴者を増やし続けてきた経験があるからか、美琴の方から大量の視聴者が流れ込んできても、いくらかの緊張は見られるが大勢に観られることに慣れがあるからか、あの時の美琴ほどの緊張は見られない。


 美琴もルナのように、どこか一度配信を行っているパーティーに入ってノウハウを学び、独立後に自分のチャンネルを作ればあの時あんなに緊張しなくて済んだのかもしれないと思うが、後の祭りだ。

 あの大バズりがあったおかげで今の自分があるし、あの時は死ぬほど緊張していたが、今はとても楽しく活動できているので、もしもは考えることはあっても戻りたいとは思わない。


「よし、これでお互いの戦い方とかは多少は把握できたと思うし、次からは連携していきましょう」

「了解です!」

「分かりました。となると、ここからは美琴さんは雷を使わないということですか?」

「そうね。あれ使ったら基本なんでもワンパンしちゃうから」


 力を七分割していると言っても、結局は神の権能、神の力そのものだ。どれだけ弱くても、モンスターからすれば驚異的な威力のものに他ならない。

 雷を使うと、確かに見た目的にはかなり見栄えするが、戦闘が一瞬で終わってしまうため配信映えはしない。

 一応、視聴者達はみんな、美琴が超ハイスピードで次々とモンスターをぶち倒していくのを見たいそうなので、実は結構雷を使ってほしいと望まれている。


「ここからは、私は雷で身体能力を底上げする程度に止めるわ。灯里ちゃんとルナちゃんはいつも通りやってもらっていい?」

「いつも通りでいいんですか?」


 灯里が首を傾げながら聞いてくる。

 彼女も自分の魔術の威力がかなり高いことを理解しているので、いつも通りで行くと連携も上手くできないのではないかと思ったのだろう。


「いつも通りでいいのよ。私は散歩感覚で行けちゃうけど、灯里ちゃんやルナちゃんはそうもいかないでしょうし」

「一応下層のモンスターならソロで行けますよ、私」

「初めて会った時、ミノタウロスを両断していたものね」

「ついさっき、下層モンスターを一人で倒したんですけど……」

「……あれ? もしかして、このパーティーって連携にあまり向いていない?」


”あまりっていうか、全く向いてないね”

”個人能力が高すぎることが問題になるってことある?www”

”普通パーティーメンバーが優秀なら、その分連携とかやりやすくなるはずなのに、強さがバグってるせいで連携しづらいとか草”

”もしかして、頑なにパーティーを組もうとしない上位探索者って、今の美琴ちゃん達と同じようなことになるから?”

”ありえるわあwwww”

”じゃあさ、美琴ちゃんは雷の力を一切使わない、雷薙も開放しない縛りをして、灯里ちゃんは炎以外の魔術に限定して、ルナちゃんもバフを過剰にかけないようにするとかどう?”

”名案ニキ出てきてワロス”

”その案いいじゃん”


「確かに、その案いいかも。採用させてもらおうかな」


 コメント欄に出てきた、能力をかなり制限する縛り攻略。

 美琴は権能を使わずに純粋な身体能力と薙刀術だけで、灯里は炎以外の魔術、ルナはバフをかけすぎないようにすれば、かなりいいバランスになるのではないだろうか。


 そうと決まれば早速その通りにしていこうということになり、灯里は氷魔術を中心に使っていくことになる。

 その際、氷魔術も素の能力で威力が高すぎるから止した方がいいのではと言われたが、他の四元素だと足場を悪くするか風でスカートがめくれてしまうため使いたくないと言い、視聴者達を説得していた。


「とはいえ、認識された瞬間に変な領域に放り込んでくる系のモンスターとかは、流石に見つかる前に瞬殺しないといけないんだけど」

「マスカレード・マリオネットですよね。認知されると本体が結界を張って中に引きずり込まれて、その中で役を無理やりやらされるんでしたっけ」

「そ。前に一回引きずり込まれて、危うく毒リンゴ食べさせられて毒殺されるところだったわ」

「白雪姫ですか?」


 マスカレード・マリオネットは、両手から大きな人形を二体下げて常に動かして遊んでおり、認識された瞬間そのモンスターを舞台主にランダムで、世界の童話や神話などを舞台の劇が強制的に行われる結界を張る。

 そこに巻き込まれると、巻き込まれた生き物は全て役を強制され、その舞台となっている物語通りに勝手に動かされる。


 前に美琴が白雪姫の舞台の結界に放り込まれ、危うく毒リンゴを口にするところだったが、どうにか権能を開放して結界を破壊し、そのまま本体を倒している。

 月の体調不良二日目の時に何気なく見ていたフレイヤの配信では、見つかる前に持っているランスを全力投擲して暗殺していた。

 何もかもが無茶苦茶な攻略の仕方をしていたが、自分も同じことをやっているので何も言えなかった。


「……うーわ」

「どうしたの、ルナちゃん」

「ちょっと面倒なのが出てきました」

「面倒なの……。あぁ、確かに地味に面倒ね」


 何が面倒なのか。それを直接聞くより早く、姿を見せる。

 姿を見せたのは妖鎧武者だが、一体ではなく二体だ。


 長く生きればその分だけ強くなっていくモンスター。

 そんな妖鎧武者が二体同時に姿を見せるということは、基本一緒に行動しているということだ。

 そして一緒に行動しているということは、モンスターや探索者と戦わなくても、妖鎧武者同士で戦い続けているということになる。

 妖鎧武者同士でしか戦っていないと他のモンスターとの戦いは苦手になるが、人とほぼ同じ姿をしているため、対人戦闘はかなり得意だ。


 少し珍しい組み合わせのものと出会ったなと思っていると、二体の妖鎧武者が得物を構えて、こちらに向かって疾走してくる。

 出会って即戦闘かと短く息を吐き、意識を切り替えて薙刀を構える。


月夜の繚歌(ムーンフェイズ)月魄の王冠クラウン・オヴ・セレネ!」


 踏み込む直前にルナがバフをかけ、美琴の頭の上に銀色の女王の王冠が現れる。

 体の奥から力が湧いてきて、体が軽く感じる。


 地面を蹴って前に飛び出すと、権能もなし、雷薙のバフもなしでありながらすさまじい速度で妖鎧武者との距離を詰める。

 咄嗟に反応した左の妖鎧武者が、刀を振り上げて脳天目がけて振り下ろしてくるが、それに合わせるように灯里が氷の剣を飛ばしてきて、間に割り込ませて防ぐ。


 低い姿勢のまま下から上に薙刀を振り上げる。

 攻撃を食らうまいと後ろに下がろうとするが、いつの間にルナが行動デバフ系魔術を使ったのか、動きがやたらと鈍い。

 やはりこれに頼り切ってはいけないなと思いながら、美琴の攻撃を防ごうと構えた刀ごと両断しようとする。


 薙刀が妖鎧武者に当たる直前、もう一体が真下から刀を振り上げて上に弾き上げて軌道を逸らし、倒そうとしていた個体の頭の兜の立物を切るだけに留まった。

 個人主義の塊のような妖鎧武者が同族を守るのは珍しいと思いながら、明後日の方向に向かって振り抜いた雷薙を引き戻し、弾く際に振り上げられ、今まさに振り下ろされてくる刀を迎え撃とうとするが、ほぼ同時に先に美琴が倒そうとしていた武者も突きを放ってくる。


接続(L)───(I)形成(F)(S)!」


 そちらの攻撃には反応しないでいると、灯里が氷の盾を張って防いでくれる。

 すぐにその氷の盾を破壊しようとするが、先ほどフランケンシュタインと戦う時のように、何かを砕くような音が後ろからしたと思うと、頭上に氷の巨大な槌が形成されて、落下する。

 それを避けるために二体が揃って離れようとするが、一体は確実に今すぐに倒してしまいたいため、逃がさないと腕を掴んで、少し危険だが灯里達側に投げ飛ばす。


 すぐに起き上がって引き離されたもう一体の方に向かおうとするが、一歩進んだところで動きを止める。

 美琴が遮るように立ちふさがっているのを見て、倒さなければ合流できないと判断したのだろう。


 八相に刀を構え、凄腕の剣士のように隙を見せないでいるが、ここはダンジョンで相手はモンスター。弱肉強食の世界であるため、相手を倒すためならどんな手でも使って生き延びる。


「月夜の繚歌・繊月(クレセント)!」


 ルナが月の攻撃魔術を起動し、背後から攻撃を仕掛ける。

 それに反応した妖鎧武者は、振り返りながら綺麗な弧を描く細い三日月を弾こうとするが、月はかなり強化されているのか弾かれることなく刀をへし折る。


 得物を失い、月に衝突して吹っ飛んできた妖鎧武者に向かって踏み込み、雷薙を鋭く突き出して一撃で胸の中心にある核を破壊する。

 最後まであがこうとしていたが、命を繋ぐ核を破壊されては長く生きられず、そのまま力なくだらりと腕を下ろして折れた刀を落とし、体を崩壊させていく。


 その背後から引き離された妖鎧武者が猛烈な速度で突進してくるが、美琴がさっと右に避けると呪文を唱えずに、まるでオーケストラの指揮者が指揮するような動きをした灯里の周辺に氷の塊が形成され、それが一か所に集まって大きな槍となって撃ち出される。

 時折呪文を唱えずに魔術を使うことがあるが、あれはいったいどんな技術なのだろうかと、興味が湧いてくる。


 巨大な氷槍が撃ち出され、真っすぐ妖鎧武者に向かって進んでいく。


「月夜の繚歌・白月の祝福ブレス・オヴ・ホワイト!」


 直撃する寸前でルナがまた月魔術を使う。

 すると、ただでさえ巨大だった氷の槍が更に巨大になり、速度も増して衝突する。

 硬いものが砕けるような音が鳴り、そのまま進んで壁にぶち当たる。


 驚いたようにルナの方を見ると、灯里も自分の魔術があそこまで強化されるとは思っていなかったようで、同じように驚いた表情を浮かべている。

 もしかしなくても、この二人が組むだけでもほとんどのモンスターは倒せてしまうのではないだろうか。


「あ、美琴さん!」


 ボス戦はこの二人だけで戦わせてみるのはどうだろうかと考えるが、流石に中学生の女の子にそんな鬼畜なことはできないので自分で却下していると、氷が砕ける音と共に灯里の警告が飛んでくる。

 振り返ると、あちこちの鎧が砕けた妖鎧武者が、半ばから折れた刀を持って突進してきており、最後の瞬間まで戦って見せるという意思を感じる。


 灯里が魔術を使おうと呪文を唱えようとするが、それを目線だけでやめさせる。

 真っ向から剣術勝負をするのもいいが、あまり長いこと戦闘をするとその音に他のモンスターが引き寄せられてくるので、早急に片を付けなければいけない。

 幸い、今の美琴にはルナのバフがかかっているので、すぐに終わる。


 武者が自分の間合いまで近付いて、喉元目がけて突きを繰り出してくるが、それを容易く弾いて逸らし、薙刀を引き戻し上から振り下ろす。

 その振り下ろしを防ごうと横に構えるが、体の発条を使った鋭い一閃に強力なバフがかかっているため、防御ごと切り裂く。

 核を両断されても、先に倒した個体同様体が消滅するまで戦おうとするが、崩壊は体のはしから始まるため、すぐに足がなくなって立てなくなり、そのまま体が消滅する。


「……うん、やっぱルナちゃんの支援が別格ね」


 核石だけを残して消滅したのを確認し、それを拾いながら素直な感想を口にする。


「私も、魔術があそこまで強化されるなんて思わなかったです」

「灯里ちゃんは、元の魔術の数値が高いからバフの効果が分かりやすく大きく出て来るみたいですね」

「今の状態のままボス戦に行くなら、好きなだけバフとデバフを使ってもいいけど、普通のモンスター相手にデバフも併用すると、ちょっと過剰かな。というわけで、ボス戦まではデバフは禁止ね」

「あらら。でも美琴先輩が言うんだし、分かりました!」

「私の言うことが全部正しいわけじゃないから、もしそれを使わないとかなり危ないような場面になったら、普通に使ってもいいからね?」


 美琴の言うことは何でも無条件で呑みそうなルナに、苦笑を浮かべながら言う。

 とりあえず、ここまですれば何でもかんでも瞬殺するということはなくなるようなので、この下層上域のボスまではこのままで行くことが決定した。

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