過ぎ去りし日曜日
ある日、いつものように神様からの「お言葉」とやらを伝える煌びやかな牧師様は言いました。
「神様は小銭が嫌いですので、お札を入れてください。特に一万円札がお好きです」
知らないため息が聞こえてくる。
いつも怖い顔した牧師様は、今はにこやかに笑っている。
キラキラしたシルクのロングドレスの女性が「何か」を、蝶ネクタイした紳士然の男性に渡す。
黒い羅紗で覆われた内側が赤い、綺麗な金色リボンな巾着袋を。
渡された男性はポケットから何か取り出し「それ」に入れ、更に隣人に手渡そうとする。
だけど、集合体はモーゼが川を割るように逃げていく。
集まった人達が押し付けあい、泳ぎ回る「集金袋」。
たった一個の小さな袋に対して、ここに集まった様々な顔が、様々な表情を浮かべている。
純真無垢な笑顔のすっぴん女性は無邪気に、紫色のアイシャドウをした女性が渋々ながら、どこか諦めたように、みんなその寄付袋に降伏し「紙切れ」を入れていく。
私は不思議そうなにその袋に纏わる悲喜交々を眺めたあと、ゆっくりと、私と手を繋いでいた隣の女性を見上げた。
彼女は舌打ちしながら、黒い塊を受け取った。
私の手を離し、吐き捨てるように彼女は言う。
「あんたがいるから」
そばで見る金色リボンは光を反射し、黒い背景に綺麗に浮かんでいる。
私はそのリボンが酷く、美しいと思った。
「彼女」は再度舌打ちし、その袋に財布から取り出した紙切れを入れ、少し乱暴に「それ」を隣の男性に渡した。
普段の牧師様のような嫌な顔をしながら、改めて乱暴に私の手を掴み、睨みつけている。体温のない冷たい、だけど繋がっているはずの彼女の手に力が入る。
そして、赤いマニュキアが私の肌色に食い込み、みるみるうちに彼女の爪先にある私の肌は、青黒くなっていく。
怖い。
私の腕の先で彼女と目が合う。
ふと、どこかから機械音がした。
そっちに目を逸らしたら「目が覚めた」。