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墓守は眠らない  作者: 鳴神とむ
第一章 三日月の章
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(4)

「おぬし、なぜわらわを助けたのじゃ?」


「……わ、わかんねーよ……身体が勝手に……。いや、今はそんなこと話してる場合じゃないだろっ……」



 早くこの場から逃げないと、今度は確実に殺られる。しかし足が震えて動かない。



「なに、あれ……私、あんなの見たことないっ……」


「鈴音、走れ! 今すぐ墓地から出ろ!」


「……霧島くんっ……」



 青ざめて身体を硬直させる鈴音を奮い立たせるために、虎太郎は腹の底から叫ぶ。



「くそっ、しっかりしろ、俺!」



 そして震える自分の足をガンガン叩いた。



「霧島くんっ……」


「行け、鈴音! 早く!」



 鈴音のあんなに自信満々だった表情は消えていた。泣きそうな顔で頷くと、出口へ向かって走り出す。

 が、黒い塊がその後を追おうとした。



「……させるかよっ! ノウマクサマンダ、バザラダンカン!」



 虎太郎は両手を使って印を結び、真言を唱えた。黒い塊の化け物は一瞬揺らぐ。しかし何事もなかったように再び動きだした。



「無駄じゃ。おぬしの霊力では足止めにもならぬ」


「!」



 どうやらおかっぱの頭の少女には、自分の能力を見抜かれているようだ。

 父親のやり方を真似て真言を唱えてはみたものの、効力がないのなら意味がない。



「くそっ……」



 真面目に修行しなかったことを今更後悔する。しかし目の前には巨大な黒い塊の化け物がいて、鈴音が狙われているという状況は変わらない。なんとかしなければ──!



「……霊力が足りねぇんなら、腕力でぶっ飛ばしてやるよ!」



 虎太郎は雄叫びを上げながら、黒い塊の化け物に立ち向かっていった。四方八方を向いていた目玉たちは、一斉に虎太郎に集中する。

 


 黒い塊から何本もの長い手が伸びてきたが、虎太郎はそれを素早く避けて、力の限り殴り付けた。



 ぶしゅっ、と目玉が潰れる。

 しかしすぐに複数の手に腕と足を掴まれ、黒い塊の中に引きずりこまれそうになった。



 ドンッ!!



 瞬間、背中に強い衝撃を受けた。誰かと一緒に地面に倒れ込む。そのおかげで危機一髪、黒い塊から逃れることができた。



「バカっ!! 死ぬ気なの!?」



 耳元で怒鳴られキーンとなる。



「鈴音!? なんで戻っ……」


「なんで戻ってきたかわかる!? あんな化け物、あんただけで倒せるわけないじゃない!!」


「!」



 鈴音は虎太郎に怒鳴りながら泣いていた。



「やめてよね、そういうの! 自分の命、粗末にしないで!!」


「……っ……」



 別に死ぬつもりはなかった。

 でも流石に無鉄砲過ぎたと、虎太郎は反省した。



「……ごめん。何か別の方法を探そう」



 鈴音は涙目で頷く。そんな鈴音の姿を見て、虎太郎の心に灯がともる。

 鈴音は命の恩人だ。鈴音が戻ってきてくれなかったら、自分は死んでいた。そして「命を粗末にするな」と自分のために涙まで流してくれた。



 鈴音を守らなければ。

 ──いや、守るんだ。



 だけど真言で祓うこともできないなら、どうすればいい? 自分はだめでも、父親なら祓えるのか?



「おお~、キラキラして楽しいのじゃ」



 緊迫している状況で、おかっぱ頭の少女は呑気に万華鏡を覗いて遊んでいる。



「お前……まるっきり他人事だな」



 そういえばさっき無意識に助けたが、よくよく考えてみればおかっぱ頭の少女は幽霊だ。物理的なダメージはないはず。

 それに思い返せば少女が姿を現してから、あの化け物が現れた。これは偶然か?

 一体、少女は何者なのか?





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