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墓守は眠らない  作者: 鳴神とむ
第一章 三日月の章
3/5

(3)

 ポケットから懐中電灯を出して、鈴音の背中を照らしてみる。そしてゆっくりと横に移動させれば──。



(やっぱりか)



 懐中電灯の光は誰も照らしてはいなかった。鈴音は一人で喋っている。



(何が目的だ?)



 純粋に万華鏡を探して欲しいわけじゃないだろう。そうやって霊は、視える人間を探しては騙して身体を乗っ取ろうとする。



(いざとなったら真言唱えて──いや待て。面倒は見なくていいって、あいつ言ってたよな)



 鈴音の自信たっぷりな顔を思い出して、再びイラッとする。



(……知らね。俺は墓荒らしを探すか)



 そう思って踵を返すと、ザッザッと土を掘るような音が聞こえてきた。



(墓荒らし──!?)



 虎太郎はすぐに辺りを懐中電灯で照らす。

 しかし音は聞こえるものの、その姿は見えない。



「くそっ、どこだ!?」



 暗闇の墓地を走りながら、今日こそ絶対捕まえてやる!と虎太郎は思った。



 音のする方へ走るが、やはり人影は見当たらない。自分の足音に気づかれたとしても、気配くらいは感じるはずだ。



「……くそっ……」



 音に追い付いたと思ったら、次はまた違う場所から音がする。まるで、こっちの動きを把握していて、おちょくられているみたいだ。



 グループでの犯行か?

 いや──その前に墓荒らしは人間なのだろうか?



 虎太郎の背中に悪寒が走る。

 ゴクリと唾を飲み込むと、背後に何かの気配を感じた。



「おぬし、さっきから何をしてるのじゃ?」


「!?」



 振り返ると、おかっぱ頭の少女がいた。

 鈴音もいる。



「なん……だよ、お前かよっ……」



 どうやら音を追いかけているうちに、鈴音たちと合流してしまったようだ。



「わらわは『お前』ではないぞよ、わらわは──」


「ねえっ、もしかしてあれかな!?」



 鈴音が木の下に落ちている万華鏡らしきものを指差した。



「おおっ、そんなところにあったのじゃな」



 おかっぱ頭の少女が嬉しそうに万華鏡を取りに行く。瞬間、虎太郎の全身が総毛立った。



「だめだ、逃げろっ!!」



 口が勝手に動いていた。

 同時に身体も動き、気づいた時には墓石に身体を打ち付けられていた。



「霧島くんっ!!」



 鈴音の声で我に返る。

 背中に鋭い痛みが走り、苦痛で顔が歪んだ。



(今、何が起きた!?)



 数分前の記憶を思い出す。



(ああ──そうだ。俺はあの子を守ろうとして、何かに吹っ飛ばされて……)



 目の前には、万華鏡を手にしたおかっぱ頭の少女が立っていた。そしてその背後には、二メートルほどの巨大な黒い塊があった。



「……っ……」



 あまりにもおぞましい姿に言葉を失う。

 黒い塊からは人間の手足が何本も生え、ギョロッとした目玉が無数についていた。




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